- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- 【アナリスト水田雅展の銘柄分析】神鋼商事は下値切り上げて戻り歩調、指標面の割安感を見直し
【アナリスト水田雅展の銘柄分析】神鋼商事は下値切り上げて戻り歩調、指標面の割安感を見直し
- 2016/3/25 07:42
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
神鋼商事<8075>(東1)は鉄鋼・非鉄金属関連の専門商社である。神戸製鋼所<5406>グループの中核商社としてグローバル展開を加速している。16年3月期は減益予想だが17年3月期は収益改善基調が期待される。株価は地合い悪化の影響を受けた2月安値から下値を切り上げている。4~5倍近辺の低PER、3%台後半の高配当利回り、0.4倍近辺の低PBRという指標面の割安感を見直して戻り歩調の展開だろう。
■神戸製鋼所グループの中核商社
鉄鋼製品、鉄鋼原料、非鉄金属、機械・情報、溶接材料・機器などを扱う専門商社である。中期経営計画(14年3月期~16年3月期)では、神戸製鋼所<5406>グループの中核となるグローバル商社を目指し、数値目標として16年3月期売上高1兆円、経常利益90億円、海外取引比率40%以上を掲げている。
■M&Aも積極活用
14年7月には筒中金属産業が新設分割によって設立した国内卸売事業会社(現コベルコ筒中トレーディング)の株式70%を取得して子会社化した。
15年5月には子会社のコベルコ筒中トレーディングが筒中金属産業から、韓国でアルミ高精度厚板の切断加工・卸売事業を展開している韓国筒中滑川アルミニウムの株式88.89%を取得して子会社化(現ケーティーエヌ)した。
15年8月にはミャンマー・ヤンゴン市に神鋼商事ヤンゴン支店を開設した。同支店を市場調査・情報収集の拠点として、鋼材・非鉄製品・溶接材料など取り扱い製品の拡販や、神戸製鋼グループの進出支援を図るとしている。
15年9月には、非鉄金属材料の素材および加工品を販売する中山金属が新設分割によって設立する国内外卸売事業会社の株式80%を取得(16年1月)し、国内外卸売事業会社および海外子会社を子会社化すると発表した。株式取得対象の国内外卸売事業会社の商号は中山金属(新)とする。海外子会社は中国(上海)、タイ、インドネシアの3社である。
16年2月には神戸製鋼所の子会社エヌアイウエルの株式80%を16年4月1日付で神鋼商事に譲渡すると発表した。エヌアイウエルは溶接材料、溶接機器、産業用機械などを扱う商社で、06年に神戸製鋼所が100%子会社化した。今回の株式譲渡によって、神戸製鋼グループとして溶接事業におけるメーカーと商社の機能を明確化し、神鋼商事の商社としての事業領域でシナジーを追求する方針だ。なおエヌアイウエルは16年4月1日付で社名をエスシーウエルに変更する。
■メキシコ線材二次加工拠点でグローバル展開加速
14年9月にはメキシコにおける線材二次加工拠点となる合弁会社を設立した。出資比率は当社40%、メタルワン25%、神戸製鋼所10%、大阪精工10%、メキシコGrupo Simec10%、米O&k American5%である。
メキシコは世界の自動車・自動車部品メーカーの進出で自動車関連産業の成長が期待されており、自動車用ファスナーや冷間鍛造部品などの素材となる冷間圧造用鋼線を製造する。
■経常利益拡大基調
15年3月期の四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)2140億42百万円、第2四半期(7月~9月)2124億16百万円、第3四半期(10月~12月)2140億78百万円、第4四半期(1月~3月)2298億71百万円だった。経常利益は第1四半期16億38百万円、第2四半期13億59百万円、第3四半期17億44百万円、第4四半期18億34百万円だった。経常利益は拡大基調だ。
なお15年3月期の売上総利益率は2.98%で14年3月期比0.17ポイント上昇、販管費比率は2.20%で同0.07ポイント上昇、ROEは10.2%で同0.5ポイント上昇、自己資本比率は10.2%で同1.2ポイント上昇した。配当性向は17.8%だった。
■16年3月期第3四半期累計は減収減益
今期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比5.0%減の6088億18百万円、営業利益が同9.4%減の44億18百万円、経常利益が同2.4%減の46億28百万円、純利益が同3.4%減の29億68百万円だった。
主要需要家である鉄鋼・半導体・電機業界向けの取り扱い減少、鋼板製品の市況低迷、輸入鉄鋼原料の販売価格下落、国内人員増加などで減収減益だった。なお売上総利益率は3.27%で同0.28ポイント上昇したが、販管費比率は2.54%で同0.31ポイント上昇した。
営業外では、為替差損益が悪化(前期は差益6億20百万円計上、今期は差損5億69百万円計上)したが、デリバティブ評価損益が改善(前期は評価損7億58百万円計上、今期は評価益3億18百万円計上)した。また営業外収益で受取配当金が増加(前期は5億61百万円計上、今期は8億02百万円計上)した。持分投資損益は前期並み(前期は利益2億48百万円計上、今期は2億53百万円計上)だった。特別利益では固定資産売却益が一巡(前期は4億05百万円計上)した。
セグメント別(連結調整前、経常利益)の動向を見ると、鉄鋼は同1.7%増収で同8.1%増益、鉄鋼原料は同15.3%減収だが同69.0%増益、非鉄金属は同3.7%増収だが同15.2%減益、機械・情報は同3.5%減収で同67.6%減益、溶材は同0.9%減収で同63.8%減益だった。
鉄鋼は鋼板製品の市況が低迷したが、円安や米国子会社の好調が寄与した。鉄鋼原料は輸入鉄鋼原料の価格が大幅下落したが、取扱量は増加した。非鉄金属は自動車用アルミ部材などが好調だったが、半導体向け銅板条などの取扱量が減少した。機械・情報は連結子会社における特定案件の追加原価計上が影響した。溶材は中国の造船向けなどが減少し、海外現地法人における先行投資も影響した。
なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)2163億60百万円、第2四半期(7月~9月)2031億23百万円、第3四半期(10月~12月)1893億35百万円、経常利益は第1四半期20億49百万円、第2四半期12億46百万円、第3四半期13億33百万円だった。
■16年3月期通期減益見込みだが、17年3月期の収益改善期待
今期(16年3月期)通期の連結業績予想(7月29日に利益を増額修正)は、売上高が前期(15年3月期)比1.1%増の8800億円、営業利益が同8.7%減の62億円、経常利益が同4.2%減の63億円、純利益が同1.9%減の39億円としている。
国内人員増加やメキシコ新工場立ち上げ費用などで減益予想だが、円安による収益改善、受取配当金の増加に加えて、海外子会社の初期投資費用の発生時期を見直した結果、期初計画に比べて減益幅が縮小する見込みだ。
配当予想(4月28日公表)は前期と同額の年間8円(第2四半期末4円、期末4円)としている。予想配当性向は18.2%となる。配当については企業体質の強化と将来の事業展開に必要な内部留保等を考慮しつつ、各期の業績に応じた配当を継続していくことを基本方針としている。
セグメント別の計画(連結調整前)を見ると、鉄鋼は売上高が3090億円で経常利益が28億円、鉄鋼原料は売上高が2530億円で経常利益が8億円、非鉄金属は売上高が2420億円で経常利益が13億50百万円、情報・機械は売上高が760億円で経常利益が10億50百万円、溶材は売上高が430億円で経常利益が4億円としている。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が69.2%、営業利益が71.3%、経常利益が73.5%、純利益が76.1%である。今期(16年3月期)は減益予想だが、来期(17年3月期)は収益改善が期待される。M&A戦略やグローバル展開が加速し、キシコ新工場も寄与して中期的に収益拡大基調だろう。
■株価は2月安値から下値切り上げて戻り歩調
株価の動きを見ると、地合い悪化の影響を受けて急落した2月12日の昨年来安値184円から下値を切り上げている。そして3月24日には211円まで上伸した。調整が一巡したようだ。
3月24日の終値211円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS44円04銭で算出)は4~5倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間8円で算出)は3.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS479円84銭で算出)は0.4倍近辺である。時価総額は約187億円である。
日足チャートで見ると25日移動平均線を突破し、25日移動平均線が上向きに転じた。また週足チャートで見ると13週移動平均線突破の動きを強めている。4~5倍近辺の低PER、3%台後半の高配当利回り、0.4倍近辺の低PBRという指標面の割安感を見直して戻り歩調の展開だろう。