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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】京写は調整一巡して戻り歩調、17年3月期は新規取引も寄与して収益拡大
- 2016/3/28 07:26
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
京写<6837>(JQS)はプリント配線板の大手メーカーである。16年3月期は海外工場における内製稼働率低下や円安による輸入販売品・原材料の調達コスト上昇で減益予想だが、17年3月期は新規取引も寄与して収益拡大が予想される。中期的には自動車ヘッドライトのLED化進展が期待され、京都大学との次世代無線通信技術「カオスCDMA」共同研究も注目点となる。株価は2月安値から切り返している。指標面の割安感も強く、調整が一巡して戻り歩調の展開だろう。
■プリント配線板の大手メーカー
プリント配線板の大手メーカーである。世界最大の生産能力を誇る片面プリント配線板、および両面プリント配線板を収益柱として、実装治具関連事業も展開している。
プリント配線板は防塵対策基板、高熱伝導・放熱基板、ファイン回路片面基板などに技術的な強みを持ち、生産は国内および中国、インドネシアに拠点展開している。また実装治具関連事業も強化し、14年10月にはキクデンインターナショナルからフロー半田付け搬送キャリア事業を譲り受けた。
15年3月期製品用途別売上構成比は自動車関連29.4%、家電製品26.3%、事務器12.8%、映像関連7.0%、アミューズメント5.6%、その他18.9%だった。幅広い用途と顧客層(国内1000口座、海外300口座)を獲得し、さらにLED照明関連の需要拡大も背景として、製品サイクルの長い自動車関連や家電関連を一段と強化している。
なお海外展開に関しては、中国における韓国LGエレクトロニクスとの取引拡大に向けて15年9月に韓国駐在員事務所を設置し、自動車関連の拡販に向けてメキシコに販売会社を設立準備中(16年3月ごろ手続完了予定)である。
■政府のLED照明普及促進政策や自動車ヘッドライトのLED化進展も期待
中期経営計画では目標数値として、最終年度16年3月期売上高200億円(片面プリント配線板100億円、両面プリント配線板85億円、実装治具関連事業15億円)、売上高営業利益率6%(既存製品の営業利益率は6.5%以上)、ROE15%以上、ROA6%以上を掲げている。
重点戦略としては、LED照明関連など環境対応製品の強化、ボリュームゾーンである片面プリント配線板分野における圧倒的トップシェアの獲得、グローバル戦略強化と海外生産の拡大、技術革新やコスト対応による収益力向上、基板・実装関連に次ぐ第3の事業の確立に取り組んでいる。
LED照明関連については、直管型LED照明の普及進展に加えて、自動車ヘッドライトのLED化進展も期待されている。自動車ヘッドライト関連の大手メーカーへの供給も拡大しているようだ。
さらに政府が省エネ対策として、エネルギー消費の少ないLED照明の普及を促進するため、エネルギー効率の悪い白熱灯に対する規制を強化する方針を示したことも追い風となりそうだ。
■京都大学と次世代無線通信技術「カオスCDMA」を共同研究
15年7月に京都大学との共同研究契約締結を発表した。梅野健教授(京都大学大学院情報学研究科)の研究室と、次世代無線通信技術の「カオスCDMA」の産業利用化を目的として共同研究する。
梅野健教授がカオス理論を用いて開発した「カオスCDMA」は、非常に高い通信安定性、高速通信、限られた周波数帯域で、多数の端末の同時アクセスを可能にする周波数共有技術である。有線通信と同等の性能を持ち、セキュリティ上重要な機密性も非常に高い無線技術で、信頼性や安定性の面で無線LANの課題を解決できるとされている。
この技術の実用化が実現した場合、産業機器などのように、これまで有線通信が前提だった製品の無線通信化が可能になるため、配線の束が不要になるなどコストダウンや利便性の向上が図られる。また通信分野、工作機械、監視カメラ、ドローン、自動車など、さまざまな用途への利用や製品展開も期待できるとしている。
■LED照明関連の市場拡大が収益に追い風
15年3月期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)41億65百万円、第2四半期(7月~9月)44億41百万円、第3四半期(10月~12月)45億35百万円、第4四半期(1月~3月)45億36百万円、営業利益は第1四半期2億53百万円、第2四半期2億33百万円、第3四半期2億39百万円、第4四半期1億91百万円だった。
自動車や家電などの生産動向の影響を受けやすいが、LED照明関連の市場拡大が追い風である。15年3月期の売上総利益率は20.2%で14年3月期比横ばい、販管費比率は15.0%で同0.2ポイント低下、ROEは12.3%で同0.3ポイント上昇、自己資本比率は44.5%で同3.2ポイント上昇した。また配当性向は16.7%だった。
■16年3月期第3四半期累計は増収減益、中国の景気減速などが影響
今期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比10.1%増の144億70百万円、営業利益が同34.5%減の4億75百万円、経常利益が同36.2%減の4億79百万円、純利益が同13.3%減の4億86百万円だった。
製品別売上高は、片面板が同0.6%減の66億36百万円、両面板(多層板と銀スルーホール基板含む)が同27.1%増の58億90百万円、その他が同6.4%増の19億44百万円だった。
海外の自動車関連や国内の搬送用治具や実装事業が好調に推移し、LED照明関連も下期から回復傾向となって増収だったが、中国の景気減速の影響で片面板の受注が減少するなどプリント配線板事業が全体として伸び悩み、海外工場における内製稼働率の低下、円安に伴う輸入販売品や原材料などの調達コスト増加、搬送用治具事業譲受に伴う人件費の増加などで減益だった。
なお円安の影響は売上高で11億円強の増収要因、営業利益段階で1億円強の減益要因となったようだ。売上総利益率は18.4%で同2.0ポイント低下、販管費比率は15.1%で0.3ポイント上昇した。営業外収益では保険返戻金が減少(前期は45百万円計上、今期は19百万円計上)した。また為替差損益が悪化(前期は差損4百万円計上、今期は差損13百万円計上)した。特別利益では投資有価証券売却益1億90百万円を計上した。
なお四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)46億97百万円、第2四半期(7月~9月)46億81百万円、第3四半期(10月~12月)50億92百万円、営業利益は第1四半期1億94百万円、第2四半期60百万円、第3四半期2億21百万円だった。営業損益は第2四半期がボトムとなった可能性がありそうだ。
■16年3月期は減益予想だが、17年3月期は新規取引も寄与して収益拡大
今期(16年3月期)通期の連結業績予想(9月30日に減額修正)は、売上高が前期(15年3月期)比7.5%増の190億円、営業利益が同23.6%減の7億円、経常利益が同25.1%減の7億円、純利益が同15.4%減の5億80百万円としている。配当予想(4月30日公表)は前期と同額の年間8円(期末一括)としている。予想配当性向は19.8%となる。
通期ベースでも自動車関連は堅調に推移するが、家電製品向けを中心とする片面プリント配線板の受注減少、海外工場における内製稼働率の低下、中国における韓国LGエレクトロニクス向け立ち上げ延期、さらに円安に伴う輸入調達コスト増加などが影響して減益予想だ。なお通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は、売上高が76.2%、営業利益が67.9%、経常利益が68.4%、純利益が83.8%である。
今期(16年3月期)は減益予想だが、LED照明関連が回復傾向を強め、さらに第4四半期(1月~3月)には販売価格の是正、中国およびインドネシアにおける人員削減などが進展しているようだ。このため営業損益は第2四半期がボトムとなった可能性がありそうだ。そして来期(17年3月期)は、中国における韓国LGエレクトロニクス向け新規取引も寄与して収益拡大が予想される。
なお進行中の中期経営計画(14年3月期~16年3月期)について、事業環境の変化などで最終年度16年3月期の目標数値達成は難しくなったが、16年5月には新中期経営計画(17年3月期~)を発表する見込みだ。
■株価は調整一巡して戻り歩調
株価の動きを見ると、2月12日の昨年来安値235円から切り返している。3月24日には389円まで上伸した。16年3月期減益予想の織り込みが完了し、調整が一巡したようだ。
3月25日の終値360円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS40円47銭で算出)は8~9倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間8円で算出)は2.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS438円92銭で算出)は0.8倍近辺である。時価総額は約53億円である。
日足チャートで見ると上向きに転じた25日移動平均線がサポートラインの形となった。また週足チャートで見ると13週移動平均線を突破し、続いて26週移動平均線突破の動きを強めている。調整が一巡して強基調に転換したようだ。指標面の割安感も強く戻り歩調の展開だろう。