【アナリスト水田雅展の銘柄分析】パイプドHDは16年2月期業績予想を減額したが影響限定的、17年2月期の増収増益期待

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 パイプドHD<3919>(東1)は旧パイプドビッツが株式移転で設立した持株会社である。情報資産プラットフォーム事業を主力として、広告事業やソリューション事業なども展開している。16年2月期業績予想を減額して減益予想となったが、17年2月期は増収増益が期待される。株価は2月安値から切り返している。16年2月期業績減額の影響は限定的で戻り歩調の展開だ。なお4月1日に16年2月期の決算発表を予定している。

■旧パイプドビッツが株式移転で持株会社を設立、グループ再編も推進

 旧パイプドビッツが15年9月1日付で株式移転によって純粋持株会社パイプドHDを設立し、新パイプドHDが15年9月1日付で東証1部に新規上場した。

 15年3月にはパイプドビッツ総合研究所を設立した。政府の政策に対して情報通信技術の活用や課題、先行事例などさまざまな調査研究や実証実験を行い、公表や提言などを通じて地域や社会の課題解決に貢献するとしている。15年5月には自治体広報紙へのオープンデータ利活用モデル事業化を目的として新会社パブリカを設立した。

 15年12月には、16年3月1日を効力発生日として子会社パイプドビッツの事業の一部を会社分割(新設分割)もしくは当社が出資する新会社へ事業譲渡し、それらの事業を新設会社へ承継すると発表した。子会社パイプドビッツのメディアストラテジーカンパニー(新会社名はゴンドラ)、アパレル・ファッションカンパニー(新会社名はフレンディット)、および美歴カンパニー(新会社名は美歴)について、個別事業に経営資源を集中させることを目的として、分社化もしくは新会社を設立する。

 なお3月15日には、デジタルCRM事業を展開する持分法適用関連会社カレン(東京都、15年3月出資、15年12月追加出資して出資比率47.18%)を連結子会社化すると発表した。持株比率は50%未満だが、協業・関係性が強化されており、当社グループにおける影響度も増してきたと判断した。

■国内最大規模の情報資産プラットフォーム「スパイラル」が基盤

 国内最大規模の情報資産プラットフォーム「スパイラル」を基盤として、情報資産プラットフォーム事業(データ管理などクラウドサービス提供)、広告事業(アフィリエイトASP一括管理サービス「スパイラルアフィリエイト」など)、およびソリューション事業(ネット広告制作、アパレル・ファッションに特化したECサイト構築・運営受託、子会社ペーパレススタジオジャパン(PLSJ)のBIMコンサルティング事業など)を展開している。

 情報資産プラットフォーム事業では「スパイラル」、アパレル特化型ECプラットフォーム「スパイラルEC」、会計クラウド「ネットde会計」「ネットde青色申告」、クラウド型グループウェア×CMS×SNS連携プラットフォーム「スパイラルプレース」などを主力としている。

 また薬剤・医療材料共同購入プラットフォーム「JoyPla」、美容関連のヘアカルテ共有サービス「美歴」、地域密着型SNS「I LOVE 下北沢」、政治・選挙プラットフォーム「政治山」、BIM建築情報プラットフォーム「ArchiSymphony」などを展開し、14年3月にはアズベイスを子会社化してコールセンタープラットフォームサービス「BizBase」にも事業領域を広げている。

 15年9月には、地域密着型SNS「I LOVE 下北沢」が、下北沢東会(あずま通り商店街)と共同の連携体で実施する「外国人来街者に向けた街の魅力発信事業および、おもてなし提供等事業」が、経済産業省の「平成27年度地域商業自立促進事業」に採択された。

 なお16年1月には子会社パイプドビッツが、ITサービスマネジメントシステムISO20000-1認証を更新、品質マネジメントシステムISO9001認証と情報セキュリティマネジメントシステムISO27001認証を継続した。

■マイナンバー関連の受注好調

 15年7月には「スパイラル・マイナンバートータルソリューション」の提供を開始した。マイナンバー運用体制整備をトータルサポートする。また「スパイラル・オムニチャネルソリューション」の提供を開始した。マルチクラウドの活用により、オムニチャネル化に向けたスモールスタートを切ることができるオムニチャネル実践基盤で、情報資産プラットフォーム「スパイラル」が顧客情報統一管理を担う。

 マイナンバー関連の受注が好調のようだ。15年9月にはビューティサロンチェーン運営のDu-Pay(東京都)、プレナス<9945>、15年11月には飲食店チェーン運営のキープ・ウィルダン(東京都)、一級建築事務所のINA新建築研究所(東京都)、アリさんマークの引越社(東京都)、首都圏模試センター(東京都)、人材派遣型CROのイーピーメイト(東京都)からの受注を発表している。

■ストレスチェック義務化関連も注目

 15年9月には、クラウド型ストレスチェックサービス「こころの診断センター」の提供を開始し、TAC<4319>がメンタルヘルス対策サービスとして創設する「ストレスチェック義務化トータルソリューション」に採用された。TACは改正労働安全衛生法(ストレスチェック義務化)対応サービスとして、Webストレスチェックおよびメンタルヘルス対策研修ならびに組織診断をワンストップで提供する。

 改正労働安全衛生法(ストレスチェック義務化)は、メンタルヘルス対策の充実・強化等を目的として、従業員50人以上の全事業所にストレスチェック実施を義務付ける内容で、15年12月1日に施行された。

■M&A・アライアンス戦略も積極推進

 M&Aアライアンス戦略では、15年2月に世界有数のソフトウェアベンダーである米スプリンクラー社の日本法人スプリンクラー・ジャパン社に出資(A種優先株式)し、15年3月には米スプリンクラー社に純投資目的で総額約4百万米ドル出資した。

 15年4月には子会社PLSJとエヌ・シーエヌ(岐阜県)が住宅業界向けBIM事業を展開する合弁会社MAKE HOUSEを設立、ソフトブレーン<4779>と業務提携した。

 15年7月には講談社が刊行する女性誌「ViVi」のEC事業展開に関して、当社が新設する子会社ウェアハートと講談社との間で業務提携した。システム開発、ECサイト構築、商品仕入および物流についてウェアハートが担当する。

 3月15日にはSBIインベストメントが運営するFinTechビジネスイノベーション投資事業有限責任組合(FinTechファンド)に1億円出資すると発表した。またベトナムの事業法人MQ社と共同で、ベトナムにおけるC2Cマーケットプレース事業(フリマ事業)およびEC事業等を目的とする新会社MOKI(当社出資比率25%)の設立に関する基本合意書を締結したと発表している。

 3月24日には、当社連結子会社ゴンドラ、ジェイアール東日本企画(東京都)、TWENTY FOUR(東京都)、ビーマップ<4316>の4社共同出資により、インタラクティブ(双方向)コミュニケーション業務を展開する新会社を設立(16年4月13日、ゴンドラ出資比率10%)する協定を締結したと発表している。

■契約数増加に伴うストック型収益構造

 15年2月期(旧パイプドビッツ)の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)7億14百万円、第2四半期(6月~8月)7億98百万円、第3四半期(9月~11月)8億00百万円、第4四半期(12月~2月)8億61百万円、営業利益は第1四半期1億40百万円、第2四半期1億65百万円、第3四半期1億71百万円、第4四半期1億49百万円だった。

 契約数増加に伴って収益が拡大するストック型の収益構造である。15年2月期末の有効アカウント数(全事業合計)は1万757件で、14年2月期末比661件増加した。また15年2月期のROEは15.9%で14年2月期比2.2ポイント低下、自己資本比率は77.6%で同0.2ポイント低下した。配当性向は34.1%だった。

■16年2月期第3四半期累計は先行投資負担で減益

 前期(16年2月期)第3四半期累計(3月~11月)連結業績は、売上高が28億46百万円、営業利益が4億29百万円、経常利益が4億19百万円、純利益が1億99百万円だった。前年同期(旧パイプドビッツ3月~11月)との比較で見ると23.1%増収、9.9%営業減益、11.4%経常減益、27.6%最終減益だった。先行投資負担で減益だった。

 売上総利益率は72.5%で同5.1ポイント低下、販管費比率は57.5%で同0.5ポイント上昇した。営業外費用では持分法投資損失12百万円を計上、特別損失では組織再編費用18百万円を計上した。第3四半期末の有効アカウント数(全事業合計)は1万907件で、15年2月期末比338件増加(獲得数1667件、解約数1329件)した。

 セグメント別の動向を見ると、情報資産プラットフォーム事業は売上高が前年同期比15.5%増の22億29百万円、営業利益(連結調整前)が同14.9%減の3億91百万円、広告事業は売上高が同63.6%増の1億68百万円、営業利益が同5.7倍の42百万円、ソリューション事業は売上高が同60.2%増の4億48百万円、営業利益が3百万円の赤字(前年同期は9百万円の黒字)だった。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(旧パイプドビッツ3月~5月)9億35百万円、第2四半期(同6月~8月)9億46百万円、第3四半期(新パイプドHD9月~11月)9億64百万円、営業利益は第1四半期1億64百万円、第2四半期1億78百万円、第3四半期86百万円だった。

■16年2月期通期業績予想を減額、配当予想は据え置き

 2月29日に前期(16年2月期)通期の連結業績予想を減額修正した。前回予想(9月1日公表、旧パイプドビッツ3月31日公表数値と同じ)に対して、売上高を80百万円減額、営業利益を2億40百万円減額、経常利益を2億60百万円減額、純利益を2億50百万円減額した。

 修正後の前期(16年2月期)通期の連結業績予想は売上高が39億20百万円、営業利益が5億80百万円、経常利益が5億60百万円、純利益が2億40百万円とした。旧パイプドビッツの15年2月期との比較では23.6%増収、7.2%営業減益、11.7%経常減益、35.5%最終減益となる。増益予想から一転して減益予想となった。

 売上面では、ソリューション事業の売上高は想定を54百万円上回ったが、情報資産プラットフォーム事業の売上高が想定より1億34百万円下回った。利益面では、情報資産プラットフォーム事業における売上未達で、パイプドビッツの利益が想定を98百万円下回った。パブリカにおける先行投資負担も影響した。またソリューション事業では、黒字化を見込んでいたペーパーレススタジオジャパンの営業利益が40百万円の赤字となり、ウェアハートにおける先行投資負担80百万円も影響した。

 なお特別損失に、ペーパーレススタジオジャパンののれん減損11百万円、美歴の美容師名鑑プロジェクト事業に係るのれん一時償却5百万円、合計16百万円を計上し、これに伴う繰延税金資産8百万円を税効果会計上で取り崩す処理を行う。

 配当予想は据え置いた。旧パイプドビッツが実施した8円(第2四半期末)および新パイプドHDが実施する10円(期末)を合計して、15年2月期比2円増配の年間18円(第2四半期末8円、期末10円)としている。予想配当性向は29.6%となる。

■中期経営計画の目標数値を見直し

 14年3月策定の「中期経営計画2017」では、15年2月期から17年2月期を「次世代ITベンダーへと革新する3ヵ年」と位置付けて、目標数値に17年2月期売上高92億円、営業利益28億円を掲げていたが、先行投資の進捗状況などを踏まえて2月29日に業績目標の見直しを発表した。修正後の目標数値は17年2月期売上高55億円、営業利益14億円とした。

■株価は戻り歩調

 株価の動きを見ると、2月12日の上場来安値974円から切り返している。16年2月期業績予想減額修正の影響は限定的で、3月24日に1216円、そして28日には1275円まで上伸した。戻り歩調の展開だ。

 3月28日の終値1275円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS30円67銭で算出)は41~42倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間18円で算出)は1.4%近辺、実績連結PBR(第3四半期末実績の連結BPS238円92銭で算出)は5.3倍近辺である。時価総額は約103億円である。

 日足チャートで見ると上向きに転じた25日移動平均線がサポートラインの形となった。また週足チャートで見ると13週移動平均線を突破した。続いて26週移動平均線も突破すれば上げ足を速めそうだ。

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