【アナリスト水田雅展の銘柄分析】トレジャー・ファクトリーは中期成長シナリオに変化なく17年2月期も増収増益基調

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 トレジャー・ファクトリー<3093>(東1)はリユースショップをチェーン展開し、新業態開発や買い取り強化に向けたアライアンス戦略を積極推進している。また18日にはタイに合弁で現地法人を設立すると発表した。海外展開を開始する。中期成長シナリオに変化はなく、16年2月期に続いて17年2月期も増収増益基調だろう。株価は2月の戻り高値から反落してモミ合う展開だが、調整が一巡して戻りを試す展開だろう。なお4月13日に16年2月期の決算発表を予定している。

■リユースショップを首都圏中心にチェーン展開、関西へもドミナント出店

 首都圏を中心として、総合リユース業態「トレジャー・ファクトリー」や服飾専門リユース業態「トレファクスタイル」などのリユースショップを直営店中心にチェーン展開している。

 15年2月期末時点の店舗数は直営総合業態「トレジャー・ファクトリー」50店舗、直営服飾業態「トレファクスタイル」24店舗、新業態の古着アウトレット業態「ユーズレット」1店舗、スポーツ・アウトドア業態「トレファクスポーツ」1店舗、事業を譲り受けた「ブランドコレクト」業態2店舗、およびFC総合業態「トレジャー・ファクトリー」4店舗の合計82店舗である。

 中期成長戦略として、多店舗展開(複数の業態を組み合わせて年間10店舗強の新規出店、および関西地域でのドミナント出店)、既存店活性化(店舗移転・リニューアルによる収益力改善、既存店の売上総利益率改善)、ネットへの取り組み強化(宅配買い取りの強化、ネット経由の販売強化)、そして新業態開発を推進している。

 関西地域でのドミナント出店については、13年5月に総合業態の関西1号店・神戸新長田店、15年2月には服飾業態の関西旗艦店となるアメリカ村店(大阪市中央区)、そして15年11月には総合リユース業態・松原店(大阪府松原市)をオープンし、関西圏の店舗数は合計7店舗となった。

■新業態の開発・出店も積極化

 新業態はスポーツ・アウトドア用品専門業態「トレファクスポーツ」1号店の横浜市・青葉台店を14年9月にオープンし、ネット通販も強化して13年4月に楽天市場へ出店した。また新規事業として10年10月からブランドバッグ&ファッションのオンラインレンタルサービス「Cariru」を運営している。

 14年10月にはファーストザウェーブ社の「ブランドコレクト」事業(ウェブサイト、フルフィルメントセンター1拠点、ブランドコレクト原宿店)を譲り受けて、15年1月原宿2号店をオープンした。ネットでの事業展開を加速するとともに、ハイブランド・高価格帯のブランド古着に特化した都心型店舗の新業態としてファッションカテゴリーを強化する。

 また15年8月には「ブランドコレクト」が、サイバーエージェント<4751>の運営する国内最大級のユーズドショッププラットフォーム「Ameba古着屋」に出店した。

■アライアンスも活用して出張買い取りサービスを強化

 アライアンスも積極活用して出張買い取りサービスを強化している。15年2月に不動産賃貸仲介大手のハウスコム<3275>、8月にミニミニ(東京都)と業務提携した。ハウスコム店舗、ミニミニ店舗で契約したお客様限定で、引越と不用品買い取りの一括対応サービス「トレファク引越」を割引料金で提供して買い取りを強化する。

 15年6月には、大規模マンションの管理組合を対象にした新サービス「リユースコンシェルジュ for mansion」を開始した。マンション専用リユース品の定期回収システム「シールdeリユース」、特定の日に自宅へ訪問する「不用品買い取りフェア」、高価格アイテム専用の出張査定「ブランドアイテム専用出張査定サービス」を組み合わせたサービスである。

 15年9月には、引越と不用品買い取りの一括対応サービス「トレファク引越」について、オフィス移転にも対応し、対象エリアも関東・関西・九州エリアに東海エリアが加わると発表した。

 なお15年9月には、東京都内のタワーマンションを中心に進めているマンション専用リユース品の定期回収システム「シールdeリユース」が、2015年度グッドデザイン賞を受賞したと発表している。住民は専用シールを貼って指定の置き場に出すだけで、無料かつ複雑な手続きなく、気軽に不用品を再流通させることができる。

 16年1月には新サービス「リユースコンシェルジュ for mansion」を、東京都江東区の大規模タワーマンションSKYZ TOWER&GARDENに導入した。

 3月8日には不動産事業を全国展開するハウスドゥ<3457>との業務提携を発表した。

 また引越と不用品買い取りの一括対応「トレファク引越」は提携引越会社数が10社を超え、対応エリアも関東・関西から九州・中部・東北へと広がっている。今後も提携引越会社数を随時増やすとともに、全国へ規模拡大を目指す方針だ。そして提携引越会社300社体制の構築を目指すとしている。

 なお3月17日に、キタザワ引越センターに対して、営業(競合行為)禁止差止請求訴訟を東京地方裁判所に提起したと発表した。

■タイに現地法人設立して海外展開開始

 3月18日には、タイに合弁で現地法人(出資比率は当社約49%、現地コンサルティング会社3社合計51%)を設立すると発表した。中長期にわたる持続的な事業成長に向けて、消費市場が成長しているタイにおいてリユースビジネスを展開する。

■第1四半期と第3四半期の売上総利益率が高くなる季節要因

 15年2月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)25億82百万円、第2四半期(6月~8月)23億36百万円、第3四半期(9月~11月)28億85百万円、第4四半期(12月~1月)28億79百万円、営業利益は第1四半期3億51百万円、第2四半期77百万円、第3四半期3億43百万円、第4四半期1億84百万円だった。

 既存店の売上総利益率は第1四半期66.8%、第2四半期65.9%、第3四半期66.5%、第4四半期63.4%だった。第1四半期と第3四半期は、引越シーズンなどで利益率の高い家電製品や家具の構成比が高まるため、売上総利益率が高くなるという季節要因があるようだ。また15年2月期のROEは21.0%で14年2月期比2.4ポイント上昇、自己資本比率は58.5%で同0.3ポイント上昇した。配当性向は17.7%だった。

■16年2月期第3四半期累計は増収増益

 前期(16年2月期)第3四半期累計(3月~11月)の連結業績は、売上高が前年同期比15.2%増の89億94百万円、営業利益が同8.8%増の8億42百万円、経常利益が同9.0%増の8億64百万円、純利益が同15.6%増の5億10百万円だった。

 売上面では、既存店売上高が同6.0%増収と好調に推移し、新規出店8店舗や販売単価上昇(3302円で同196円上昇)も寄与して2桁増収だった。商品別売上(直営事業)は、主力の衣料が同14.0%増収、服飾雑貨が同15.7%増収、電化製品が同18.6%増収となり、生活雑貨が同12.5%増収、家具が同11.3%増収、ホビー用品が同20.2%増収と好調だった。出張買い取りの増加で大型家電の仕入が増加したことも寄与した。

 コスト面では人件費や賃借料の増加、移転リニューアル3店舗の一時費用などを増収効果で吸収した。差引売上総利益率は65.2%で同1.0ポイント低下したが、販管費比率は55.8%で同0.5ポイント低下した。

 既存店の売上総利益率は65.3%で同1.2ポイント低下した。出張買い取り時の配送を順次外部委託に切り替えたため配送費用(仕入副費として売上原価に算入)が増加した。ただし出張買い取りを安定的にこなす体制ができたため、家電や家具の仕入が安定化して販売増に繋がっている。

 15年11月末時点の店舗数は、直営総合業態「トレジャー・ファクトリー」54店舗、直営服飾業態「トレファクスタイル」26店舗、古着アウトレット業態「ユーズレット」2店舗、スポーツ・アウトドア業態「トレファクスポーツ」2店舗、ブランド古着専門業態「ブランドコレクト」2店舗、FC総合業態「トレジャー・ファクトリー」4店舗の合計90店舗となった。

 なお四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)30億11百万円、第2四半期(6月~8月)27億08百万円、第3四半期(9月~11月)32億75百万円、営業利益は第1四半期3億95百万円、第2四半期37百万円、第3四半期4億10百万円だった。既存店の売上総利益率は第1四半期66.0%、第2四半期64.2%、第3四半期65.6%だった。

■16年2月期通期増収増益・増配予想、17年2月期も増収増益基調

 前期(16年2月期)通期の非連結業績予想(4月10日公表)は、売上高が前々期(15年2月期)比10.9%増の118億53百万円、営業利益が同8.2%増の10億39百万円、経常利益が同8.8%増の10億52百万円、そして純利益が同11.4%増の6億31百万円としている。

 配当予想(2月10日に増額修正)は年間13円(第2四半期末5円50銭、期末7円50銭)としている。15年6月1日付の株式2分割を考慮して15年2月期の年間18円を年間9円に換算すると4円増配となる。予想配当性向は23.0%となる。なお配当性向の目標は当面25%としている。

既存店は前期並みの増収率(7.9%増)と売上総利益率(65.6%)の達成を目指し、新規出店は11~13店舗の計画だ。中部地域や北関東など新規エリアへの出店も検討するようだ。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は、売上高が75.9%、営業利益が81.0%、経常利益が82.1%、純利益が80.8%である。第1四半期と第3四半期の売上総利益率が高くなるという季節要因を考慮しても、進捗率は高水準だろう。

 中期成長シナリオに変化はなく、来期(17年2月期)についても増収増益基調が予想される。

■16年2月の既存店売上は3ヶ月連続の前年比プラス

 なお月次売上(直営店の店舗売上、前年比速報値ベース)を見ると、16年2月は全店112.3%、既存店103.5%だった。既存店売上は3ヶ月連続の前年比プラスだった。生活家電、家具、衣料が好調に推移した。うるう年のため営業日が1日多かったことも寄与した。なお15年3月~16年2月累計では全店113.8%、既存店105.2%となった。

 新規出店は15年3月0店舗、4月1店舗、5月0店舗、6月1店舗、7月1店舗、8月1店舗、9月1店舗、10月2店舗、11月1店舗、12月0店舗、16年1月1店舗、2月0店舗で、16年2月末時点の店舗数は合計91店舗(15年2月末比9店舗増加)となった。

■中期成長シナリオに変化なし

 リユース市場は拡大基調であり、中期成長に向けて国内主要都市への新規出店や業態の多様化を加速させる方針だ。首都圏や関西圏を中心に年間10店舗強の新規出店で100店舗体制構築を当面の目標としている。

 知名度上昇、新業態を含めた積極的な新規出店、大口仕入や出張買い取りの強化、ネット事業の強化も寄与して中期成長シナリオに変化はないだろう。

■株主優待制度は毎年2月末に実施、16年2月期は抽選券の当選本数増加

 なお株主優待制度については毎年2月28日時点の1単元(100株)以上保有株主に対して「トレジャーチケット」を贈呈している。「トレジャーチケット」の内容は「トレジャー・ファクトリーオリジナルクオカード1000円分」、プレゼント抽選券「トレジャーロト」、および当社の店舗および宅配買い取りサービスで利用できる「買い取り金額アップクーポン」をセットにしている。

 16年2月期の株主優待プレゼント抽選券「トレジャーロト」の賞品については、1等がJCBギフトカード3万円分を抽選で5名、2等が食事券ジェフグルメカード1万円分を抽選で20名、3等がクオ・カード2000円分を抽選で100名に贈呈するとした。16年2月期の当選本数の合計は125本で、15年2月期の50本に対して75本増加した。

■株価は調整一巡して戻り試す

 株価の動きを見ると、2月1日の戻り高値1390円から反落し、概ね1100円~1200円近辺でモミ合う展開だ。ただし2月の直近安値1051円まで下押す動きは見られず、下値を切り上げて調整一巡感も強めている。

 3月28日の終値1167円を指標面で見ると、前期推定PER(会社予想のEPS56円55銭で算出)は20~21倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間13円で算出)は1.1%近辺、前々期実績PBR(前々期実績に株式2分割を考慮したBPS263円60銭で算出)は4.4倍近辺である。時価総額は約131億円である。

 週足チャートで見ると下値を切り上げて、26週移動平均線突破の動きを強めている。中期成長シナリオに変化はなく、調整が一巡して戻りを試す展開だろう。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■更新前のスーパーコンピュータの約4倍の計算能力  富士通<6702>(東証プライム)は2月21日…
  2. ■両社の資源を有効活用しSDGsに貢献  伊藤忠商事<8001>(東証プライム)グループのファミリ…
  3. ■純正ミラーと一体化し、左後方の視界を広げる  カーメイト<7297>(東証スタンダード)は、純正…
2024年3月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

ピックアップ記事

  1. ■投資と貯蓄の狭間で・・・  岸田内閣の「資産所得倍増プラン」は、「貯蓄から投資へ」の流れを目指し…
  2. ■「ノルム(社会規範)」解凍の序章か?植田新総裁の金融政策正常化  日本銀行の黒田東彦前総裁が、手…
  3. ■「日経半導体株指数」スタート  3月25日から「日経半導体株指数」の集計・公表がスタートする。東…
  4. ■投資家注目の適正株価発見ツール  日銀の価格発見機能が不全になる可能性がある中、自己株式取得が新…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る