【アナリスト水田雅展の銘柄分析】平山は売り一巡して出直り、16年6月期は減益だが配当は増額
- 2016/3/30 08:20
- 株式投資ニュース
平山<7781>(JQS)は国内製造業向けアウトソーシング事業(製造請負)を主力としている。16年6月期業績予想を減額して減益予想となったが、配当予想は記念配当を加えて増額した。改正労働者派遣法も追い風で17年6月期は収益改善が期待される。株価は売り一巡して切り返す動きだ。6月期末一括で3%台後半の予想配当利回りも注目点となる。16年6月期減益予想の織り込みが完了して出直り展開だろう。
■国内製造業向けアウトソーシング事業(製造請負)が主力
1955年創業(1967年設立)で、15年7月JASDAQに新規上場した。国内製造業向けのアウトソーシング事業(製造請負)を主力として、連結子会社トップエンジニアリングの技術者派遣事業、その他事業(現場改善コンサルティングサービス、教育サービス、有料職業紹介など)も展開している。11年には製造請負事業者改善推進協議会が運営している製造請負優良適正事業者認定制度を第1号で取得(14年4月更新)した。
「設備と敷地を持たない製造業」を標榜して「人に付いた技術で日本のものづくりを支援する」をコンセプトとしている。主力のアウトソーシング事業では当社に所属する現場改善コンサルタントと連携したサービスを提供して、顧客企業の製造現場における生産性向上、コスト削減、さらに「ものづくり力」強化に繋げていることが強みだ。
さらなる請負現場「ものづくり力」の高度化のために、中核になる生産管理者の育成を強化するとともに、製造企業OBシニア層の技術を再開発し、製造現場の改善をワンストップで提案できる体制を構築することに経営資源を最優先で投資している。
また従来の派遣・請負会社のイメージを脱却し、社内で育成した人材を社会に還元する「教育会社」を目指している。そして社員に対しては、キャリアカウンセリングやメンタル支援などの従業員支援制度(EAP=Employee Assistance Program)をベースとして、資格・技能取得支援制度によるキャリアアップ制度を運用し、有期雇用から無期雇用へと転換するステップを用意している。
なお15年7月には当社独自の求人サイト「ものっぷ」を新規オープンしている。簡単な仕事検索、PDFやEXCELによる履歴書のダウンロードなど、今までにない仕事の探し方を実現した。ものづくりでキャリアアップを目指す方を応援するサイトとして、求職者の仕事探しをサポートする。
■テルモ向けを主力に大手優良企業グループと強固な取引関係を構築
主要取引先は、テルモ<4543>(15年6月期売上構成比47.1%)向けを主力として、LIXILグループ、TOPPANグループ、TOTOグループ、トヨタグループ、リコーグループ、三菱グループなどがある。
多種多様な業種・工程での実績を持ち、業界を超えた製造技術・ノウハウを蓄積していることも強みだ。そして国内に残る業種・商品分野に注力し、大手優良企業グループと強固な取引関係を構築している。
海外はベトナムとタイに現地法人(非連結子会社)を設置し、日本国内のエンジニア不足に対応した外国人技術者の採用、および東南アジア諸国の日系企業との取引拡大を推進している。今後はM&Aも積極活用する方針だ。
なお16年2月に、当社の非連結子会社である平山タイの子会社JOB SUPPLY HUMAN RESOURCE(JSHR、当社の孫会社)が、JOB SUPPLY(JS)社から、JS社の主力事業である人材派遣事業(約1700名)を譲り受けると発表した。
■長期的目標は売上高営業利益率8%
経営目標としてはグループ売上高200億円の早期達成を目指し、売上高営業利益率を中期的に5%、長期的に8%に向上させる方針だ。重点戦略としては、コンサルティング機能の強化や外国人技能者の積極的活用により、現場改善力・収益力を高めて差別化や顧客の囲い込みを推進する。
そして国内製造業向けアウトソーシング事業における既存取引先の事業所拡大・安定化、既存製造派遣取引先のインソーシング(製造請負)化、自社管理業務および既存インソーシング契約取引先業務の改善、新規取引先の開拓(インソーシング案件獲得)、ハイエンド派遣・設計エンジニア派遣の拡大などを推進する。
海外展開については、タイ、ベトナム、インドネシアでのコンサルティング事業の拡大、インドネシア、フィリピンへの拠点展開などを推進し、東南アジアでの人材ビジネス企業、コンサルティング企業、教育関連企業へのM&Aも検討する方針だ。
なおJS社から人材派遣事業(約1700名)を譲り受けたタイのJSHR社については、中期的に4000名体制を目指すとしている。
■売上総利益率改善して収益拡大基調
15年6月期のセグメント別売上高はアウトソーシング事業が同9.6%増の79億34百万円、技術者派遣事業が同4.4%増の9億15百万円、その他が同7.0%増の1億47百万円だった。
また15年6月期の売上総利益率は17.4%で14年6月期比0.3ポイント上昇、販管費比率は13.2%で同横ばい、ROEは14.0%で同1.2ポイント低下、自己資本比率は36.8%で同5.2ポイント上昇した。配当性向は24.9%だった。
■16年6月期第2四半期累計は主要取引先における減産などが影響して減益
今期(16年6月期)第2四半期累計(7月~12月)連結業績は、売上高が46億25百万円、営業利益が66百万円、経常利益が42百万円、純利益が20百万円だった。前年同期は四半期連結財務諸表を作成していないが、会社資料による参考値との比較では3.9%増収、69.0%営業減益、80.4%経常減益、83.3%最終減益だった。
アウトソーシング事業の引き合い・受注は概ね堅調だったが、製造請負部門の主要取引先数社における一部製品の減産が影響し、さらに製造派遣部門で顧客からの受注に対して適正な人員数確保に至らず、採用コストや外注コストが増加したことも影響して大幅減益だった。売上総利益は7.1%減少し、売上総利益率は15.9%で同1.9ポイント低下した。販管費比率は14.5%だった。営業外費用では株式交付費6百万円、株式公開費用14百万円、為替差損6百万円を計上した。特別利益では固定資産売却益3百万円を計上した。
セグメント別動向を見ると、アウトソーシング事業は売上高が同3.8%増の40億66百万円で、営業利益(連結調整前)が同22.3%減の3億70百万円、技術者派遣事業は売上高が同0.9%増の4億60百万円で、営業利益が同20.0%減の24百万円、その他事業は売上高が同24.1%増の98百万円で、営業利益が同5.3%増の20百万円だった。
稼働人員数は2600名で同83名(3.3%)増加し、OS取引先数は84社で同5社(6.3%)増加した。またアウトソーシング事業の分野別売上構成比は、医療機器・医薬品50%(15年6月期54%)、オフィス用品15%(同16%)、食品12%(同10%)、建設機械7%(同7%)、住宅設備7%(同7%)、自動車部品6%(同4%)、その他8%(同2%)だった。
なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(7月~9月)22億74百万円、第2四半期(10月~12月)23億51百万円、営業利益は第1四半期0百万円の赤字、第2四半期66百万円だった。
■16年6月期減益予想だが、配当予想は記念配当で増額
今期(16年6月期)通期連結業績予想(2月12日に減額修正)は、売上高が前期比8.2%増の97億39百万円、営業利益が同67.2%減の1億24百万円、経常利益が同75.3%減の94百万円、純利益が同78.8%減の41百万円としている。平山タイとJSHRを新規連結することによって、13百万円の営業赤字と2百万円の営業外費用を取り込む見込みとしている。
需要が旺盛で増収予想だが、適正人員の確保難などで大幅減益予想だ。売上総利益率は同1.6ポイント低下の15.8%、稼働人員数(平山タイ、JSHRを含む)は同1881名(66.9%)増加の4693名(うち海外1700名)、OS取引先数は同14社(14.6%)増加の110社(うち海外12社)を想定している。
なお期初計画との比較では、アウトソーシング事業は主要取引先における減産の影響で、医療機器・医薬品分野の受注量が期初計画比5%、精密機械分野の受注量が同15%下回る見込みだ。また受注に対する適正な人材採用が進まず、生産量の伸び悩みや外注費の増加も影響する。技術者派遣事業は需要が旺盛だが、技術者採用停滞で派遣人員の増加が遅れているようだ。
セグメント別計画は、アウトソーシング事業の売上高が同5.0%増の83億26百万円、営業利益が同17.4%減の7億79百万円、技術者派遣事業の売上高が同0.7%減の9億08百万円、営業利益が同14.8%減の46百万円、その他の売上高が同3.5倍の5億05百万円、営業利益が同33.3%減の24百万円としている。
下期の重点取組事項としては、アウトソーシング事業において、人材確保・適正配置の推進による利益率改善、新規(15年~16年)取引先の改善活動による利益率の向上、常用雇用化推進による社員定着率の改善、取引先の多角化推進としている。技術者派遣事業では中途採用への注力と外国人技術者の採用・育成強化、その他事業ではコンサルタント増員によるコンサルティングサービスの拡大およびタイ子会社の拡大を図る。
配当予想(2月12日に増額修正)は年間38円(期末一括、普通配当6円+上場記念配当32円)としている。前回予想(8月13日公表)の年間37円34銭(期末一括)に対して66銭増額で、配当性向は161.9%となる。前期の年間35円22銭(期末一括)との比較では2円78銭増配となる。
利益配分については、将来の事業展開と経営体質強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当の継続という観点から配当性向25%を基本としている。このため今回の業績予想減額修正に伴って普通配当37円34銭を6円に修正し、普通配当の配当性向を25.0%とした。ただし15年7月10日に期超え上場したことを勘案し、修正した普通配当6円に上場記念配当として32円を加えて年間38円とした。
■株価は16年6月期業績予想減額修正で急落したが売り一巡
株価の動きを見ると、16年6月期業績予想の減額修正を嫌気して2月16日の上場来安値807円まで急落したが、その後は1000円近辺で推移して売り一巡感を強めている。
3月29日の終値990円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS23円47銭で算出)は42倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間38円で算出)は3.8%近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1089円89銭で算出)は0.9倍近辺である。時価総額は約17億円である。
週足チャートで見ると安値圏でモミ合う形だが、日足チャートで見ると25日移動平均線を突破し、25日移動平均線が上向きに転じてきた。6月期末一括で3%台後半の予想配当利回りも注目点となる。16年6月期減益予想の織り込みが完了して出直り展開だろう。