【アナウンサー神主のため息】僕はコウノトリに運ばれてきた?

 先日、20代の若者たち数人と話をしていて驚いたことがあります。人間の命について話をしていました。すると一人の若者が自分はコウノトリに運ばれてきたと教えられ、子どもの頃それを信じていたというのです。コウノトリが赤ちゃんを運んでくる話は私も聞いたことがあります。この話はもちろん日本の話ではありません。ドイツのおとぎ話がもとになっているようです。

 私がここで問題にしたいのは、この日本の若者が子どもの頃、それを信じていたという事実です。なぜならコウノトリの話は、日本人の命に対する伝統的な考え方とはあまりにもかけ離れているからです。この青年は子どもの頃、日本人の考え方ではなくドイツの考え方をどうやら教えられたようなのです。おかしいと思いませんか。日本人の考え方を身につけた上で、他の国の考え方を知るのなら宜しいでしょう。そうではないところが私は問題だと思うのです。

 では日本人の命に対する考え方はどのようなものでしょうか。実は現在の日本人のほとんどがご存知ないのです。それは自信をもって言うことができます。なぜなら、この私も神主になる前は知らなかったからです。皆さん「中今を生きる」という考え方を知っていますか。おそらく初耳でしょう。説明しましょう。自分は今生きている。なぜ生きているかと言えば両親がいるからだ。両親は祖父母がいたから生まれたのだ。日本人は、このように一つの命には2、4、8、16、32、64・・・の命が関わっていると考えました。そして両親から繋がっている無数とも言える命の中のたった一つの命がなかったとしたら自分は生まれてこなかったと考えたのです。そうですよね。曾おじいさんがいなかったらおじいさんかおばあさんはいません。したがって両親のどちらかも存在しませんので自分もいないのです。すべての命がそろっている中で自分は奇跡的に命を引き継ぐことができたと日本人は考えたのです。やがて成人すると伴侶を得て子どもが生まれます。その子どもにもやがて孫ができるでしょう。このように命はご先祖から両親を通じて自分に引き継がれ、子孫に伝えていくべきものと考えてきたのです。

 自分の命は決して自分だけのものではなく、次々にリレーされるものであり、伝えられていく中の今を私たちは生きている。つまりこの考え方が「中今を生きる」です。神主の資格を取得する勉強の中でこの考え方を初めて知り、私は感動しました。同時に子どもの頃からこの日本人の伝統的な考え方を教えられなかったことを不思議に思ったのです。人間の命は永遠ではありません。長生きしても100年でしょう。しかし命をリレーすることで命は永遠になれるのです。自分を引き継いだ子ども、孫、ひ孫が存在することで自分が永遠になれると感じられるのです。素晴らしい考え方だと私は思いました。

 「ご先祖様」などという言葉は、現在の日本ではほぼ死語になりました。それはそうでしょう。私も含め戦後の日本では個人の大切さを重視するあまり「親は親、自分は自分―それぞれは別人格」と教えられてきたのですから無理もありません。私は神主になって両親やご先祖様を日々意識する生活をするようになりました。自分の命に関わった人たちが私を見つめ、守ってくれていると考えると実に心が穏やかなるのです。皆さんも日本人の伝統的な考え方を見直してみてはいかがでしょうか。命に対する日本人の考え方についてはまた書いてみたいと思っています。(宮田修=元NHKアナウンサー、現在は千葉県長南町の宮司)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■「ちきゅう」を投入、令和8年1月から2月にかけて実証  内閣府戦略的イノベーション創造プログラム…
  2. ■人工知能基本計画が始動、利活用から開発への循環促進、世界最先端のAI国家を標榜  政府は12月2…
  3. ■222社分析で売上2兆円台復帰、利益は1,435億580万円へ倍増  東京商工リサーチ(TSR)…
2026年2月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
232425262728  

ピックアップ記事

  1. ■上方修正を重ねる銘柄群が相場の主役に  同コラムは今週、ダブルセット銘柄、トリプルセット銘柄、フ…
  2. ■政治安定を好感、全面高期待が再燃  超短期決戦だった衆議院議員選挙が、昨8日に投票され即日開票さ…
  3. ■総選挙後に本番、米・卵関連株など食料品銘柄に再評価期待  消費税減税をめぐる関連株の動向が、過去…
  4. ■円安・円高が日替わり、内外市場で一波乱二波乱の可能性  内外のマーケットが激動含みである。これが…
  5. ■地方銀行:収益改善、昨年11月の業績上方修正が寄与  昨年来高値更新銘柄の1割超を占める銀行株は…
  6. ■超短期決戦の総選挙で市場動向が政治判断に影響  いよいよ衆議院議員選挙だ。みょう27日に公示され…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る