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【アナリスト水田雅展の銘柄診断】マルマエは16年8月期通期予想を2回目の増額修正、FPD分野の受注好調が牽引
- 2016/4/4 07:37
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
マルマエ<6264>(東マ)は半導体・FPD製造装置に使用される真空部品などの精密切削加工事業を展開している。4月1日に16年8月期通期業績予想の増額修正を発表した。15年12月25日に次ぐ2回目の増額修正で減益幅が縮小する見込みだ。FPD分野の受注好調が牽引する。そして下期予想に依然として保守的な印象が強く、3回目の増額の可能性がありそうだ。株価は2月の直近安値から切り返して戻り歩調である。16年1月の630円、さらに15年12月の764円を目指す展開だろう。なお4月11日に第2四半期累計の業績発表を予定している。
■真空部品や電極などの精密切削加工事業を展開
半導体・FPD(フラットパネルディスプレー)製造装置に使用される真空部品や電極などの精密切削加工事業を展開し、新規分野として光学装置・通信関連分野なども強化している。
15年1月に事業再生計画(11年7月に事業再生ADR成立)を終結した。16年10月末日の最終弁済をもって終了する計画だったが、強固な収益体質の確立と財務体質の改善に目途がついたため、終了期間を前倒しして15年1月末日をもって事業再生計画を終結した。債務の株式化を行ったA種優先株式については15年5月に取得(246株、1株につき100万円)して消却した。
15年9月には商工組合中央金庫とのコミットメントライン契約(借入限度額50百万円)および当座貸越契約(借入限度額1億50百万円)を締結した。事業展開での資金需要に伴う手元資金の一時的な減少を防ぎ、経営のさらなる安定化を図る。
■15年8月期は財務改善も進展して初配当を実施
15年8月期は半導体分野およびFPD分野の好調な受注が牽引した。売上総利益率は30.9%で同2.6ポイント上昇、販管費比率は9.7%で同1.7ポイント低下した。特別利益には「中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業に係る補助金」15百万円、および繰延税金資産1億13百万円を計上した。
ROEは100.7%で同22.9ポイント低下、自己資本比率は32.7%で同10.3ポイント上昇、BPSは135円80銭で14年8月期の28円68銭から大幅に改善した。そして96年のマザーズ上場以来初となる年間36円(期末一括)の配当を実施した。配当性向は11.3%だった。
15年8月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(9月~11月)3億84百万円、第2四半期(12月~2月)6億39百万円、第3四半期(3月~5月)5億59百万円、第4四半期(6月~8月)5億42百万円、営業利益は第1四半期41百万円、第2四半期1億30百万円、第3四半期1億40百万円、第4四半期1億39百万円だった。収益改善基調だ。
■16年8月期第1四半期は大幅増収増益
今期(16年8月期)第1四半期(9月~11月)の非連結業績は、売上高が前年同期比60.9%増の6億19百万円、営業利益が同3.8倍の1億55百万円、経常利益が同3.5倍の1億48百万円、純利益が同2.4倍の1億円だった。
分野別の受注高は、半導体分野が同4.5%減の2億73百万円、FPD分野が同3.0倍の2億61百万円、その他分野が同98.7%減の2百万円、分野別の売上高は、半導体分野が同36.8%増の3億26百万円、FPD分野が同2.4倍の2億48百万円、その他分野が同14.3%増の36百万円だった。
売上原価で材料費や労務費、販管費で人件費が増加したが、増収効果と生産性向上効果で大幅増益だった。売上総利益率は35.3%で同9.9ポイント上昇、販管費比率は10.2%で同4.5ポイント低下した。
■16年8月期通期業績予想を2回目の増額修正
4月1日に今期(16年8月期)第2四半期累計および通期業績予想の修正を発表した。FPD分野の受注が好調に推移している。
第2四半期累計の非連結業績予想は、前回予想(12月25日に増額修正)に対して、売上高を31百万円増額、営業利益を47百万円増額、経常利益を45百万円増額、純利益を47百万円減額し、売上高が前年同期比12.5%増の11億51百万円、営業利益が同56.1%増の2億67百万円、経常利益が同48.8%増の2億50百万円、純利益が同4.4%減の1億73百万円とした。純利益は税効果会計における繰延税金資産の減少を反映するため減益となる。
通期の非連結業績予想は、前回予想(12月25日に増額修正)に対して、売上高を20百万円増額、営業利益を40百万円増額、経常利益を40百万円増額、純利益を15百万円増額し、売上高が前期(15年8月期)比1.2%増の21億50百万円で、営業利益が同6.7%減の4億20百万円、経常利益を同10.3%減の3億90百万円、純利益が同42.7%減の3億20百万円とした。減益幅が縮小する見込みだ。
配当予想については年間14円(第2四半期末7円、期末7円)としている。15年9月1日付の株式3分割を考慮して、前期の年間36円を株式3分割後に換算すると年間12円で、今期は実質的に前期比2円増配となる。予想配当性向は23.1%となる。
修正後の通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が53.5%、営業利益が63.6%、経常利益が64.1%、純利益が54.1%となる。下期については依然として保守的な印象が強く、通期会社予想は3回目の増額の可能性がありそうだ。
■月次受注動向は高水準維持、1月は前年同月比24.3%増
3月12日に発表した16年2月度の月次受注残高(速報値)は、半導体分野91百万円(前月比9.3%減、前年同月比44.4%減)、FPD分野1億99百万円(前月比8.5%減、前年同月比219.1%増)、その他分野13百万円(前月比9.4%増、前年同月比67.9%減)、合計3億04百万円(前月比8.1%減、前年同月比12.9%増)だった。
合計ベースで見ると、前月比では減少したが、前年同月比では大幅に増加した。半導体分野では、出荷検収は増加したが、受注が停滞した。FPD分野では受注が増加しながら、それ以上に出荷検収が増加したため前月比では減少となったが、前年同月比では大幅に増加した。
今後の見通しとして、半導体分野はエンドユーザーの大規模な微細化投資に伴って拡大傾向が強まる見通しだ。FPD分野は中小型から大型パネルまで幅広く設備投資が拡大しているため、高水準の受注と出荷検収が継続する見通しだ。携帯端末向けの設備投資は年半ばに一時減少するが、年末にかけて有機EL関連の受注が拡大する見通しだ。またテレビ向けに第10世代の大型パネル製造装置が具体化しており、受注品種拡大に向けた取り組みを行っている。
全般的に好調な受注状況であり、今後は大型真空パーツにおいて協力企業選定を進めることで生産性を改善し、小型真空パーツでは社内の試作能力を高めることで受注拡大を図るとしている。
■新中期事業計画「Evolution2018」で新規分野への参入も推進
15年10月に、新中期事業計画「Evolution2018」(16年8月期~18年8月期)を公表した。
半導体分野では微細化投資の本格化でエッチング、洗浄、ALDなどの工程で市場拡大が見込まれるため、洗浄分野への参入、エッチング分野での試作強化などを推進する。FPD分野では中長期的に8Kなどで需要拡大が見込まれるため、自社における設備投資ではなく、協力企業の拡大によって需要変動に対応する。その他分野ではスマートフォン関連の需要が継続し、自動車関連やロボット関連の市場へ参入するため、生産余力の効率的活用と協力企業の拡大を図る。
また半導体分野を成長ドライバーとする既存事業のブラッシュアップに加えて、現業とのシナジー効果や半導体・FPD分野の需要変動に対するリスクヘッジとして、売上高20億円規模までの中小企業を対象としてM&Aも積極活用する方針だ。M&Aの分野としては、半導体洗浄・樹脂パーツや自動車・ロボット部品などを想定しているようだ。
そして15年12月には鹿児島大学大学院理工学研究科との共同研究契約を締結した。リハビリ装置の研究開発と作業筋力補助ロボットの研究開発の2件について、早期の実用化を目指して共同研究する。
数値目標としては、18年8月期の連結売上高40億円、営業利益10億円(単体ベースで売上高30億円、営業利益7億円、M&Aで売上高10億円、営業利益3億円)を掲げている。また株主還元として配当性向35%以上(順次向上)を目指し、計画期間中に東証1部への市場変更を目指す方針だ。
■株価は戻り歩調で15年12月高値目指す
株価の動き(15年9月1日付で株式3分割)を見ると、2月の直近安値429円から切り返して戻り歩調の展開だ。3月23日には620円まで上伸した。
4月1日の終値580円を指標面で見ると、今期予想PER(修正後の会社予想のEPS60円74銭で算出)は9~10倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間14円で算出)は2.4%近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS135円80銭で算出)は4.3倍近辺である。時価総額は約32億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線と26週移動平均線を一気に突破した。また日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインの形になりそうだ。16年1月の630円、さらに15年12月の764円を目指す展開だろう。