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【アナリスト水田雅展の銘柄診断】アーバネットコーポレーションは16年6月期増収増益・増配予想で依然として割安感
- 2016/4/6 07:14
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アーバネットコーポレーション<3242>(JQS)は、投資用マンションの開発・販売を主力としている。投資用マンションの需要は高水準であり、積極的対応として開発物件の分野を拡大する方針だ。16年6月期増収増益・増配予想で株価は戻り歩調である。1桁台の予想PERや5%近辺の高配当利回りと指標面の割安感は依然として強い。15年4月高値を目指す展開だろう。なお5月12日に第3四半期業績の発表を予定している。
■東京23区中心に投資用マンションの開発・販売
東京23区を中心に投資用・分譲用マンションの開発・販売事業を展開している。収益基盤強化に向けて15年3月に連結子会社アーバネットリビングを設立(15年7月操業)した。
当社は投資用ワンルームマンションの開発・1棟販売や分譲マンションの開発などのBtoB卸売、子会社アーバネットリビングは当社開発物件の戸別販売、他社物件の買取再販、マンション管理・賃貸などのBtoC小売を基本事業とする。
自社開発物件のブランドは、アジールコート(ワンルームマンション)、アジールコフレ(コンパクトマンション)、グランアジール(ファミリーマンション)、アジールヴィラ(戸建住宅)である。
REIT、ファンド、海外投資家の参入などで投資用ワンルームマンションに対する投資・購入マインドは旺盛である。日銀の異次元金融緩和、20年東京夏季五輪、脱デフレ、そして日本経済再生の流れも追い風となる。
■開発物件の分野を拡大方針
16年3月には、最近の東京23区における事業用地購入の環境、ならびに将来の不動産市場の環境を考慮し、これらへの積極対応として開発物件の分野拡大を発表した。
当社グループは東京23区駅10分以内を開発用地に特化して投資用ワンルームマンションの開発・1棟販売を事業の中核として成長し、さらにリーマン・ショック以降には分譲用ファミリーマンションならびにコンパクトマンションの開発・販売も行っている。
当該開発地域においての事業用地については、都心への人口流入や開発の一極集中による価格上昇もあり、優良事業用地の確保が若干難しい状況となっている。こうした環境に積極的に対応するため、従来の投資用ワンルームマンション用地としては取得してこなかった狭小用地についてもアパートや戸建住宅として開発し、開発物件分野の拡大による業績の向上を目指す方針だ。
なお当社グループの役割分担について、アパートならびに戸建住宅に関しては親会社アーバネットコーポレーションが開発し、子会社アーバネットリビングに物件譲渡したうえで、子会社アーバネットリビングから販売する。この方針に基づいて、2月末に竣工したアジールヴィラ西馬込(4棟)は子会社アーバネットリビングに譲渡する。
■海外投資家への直接販売も強化
都心部での事業用地取得難、土地価格上昇と建設コスト上昇による売上総利益率低下傾向という事業環境に対して、投資意欲旺盛な台湾・シンガポール・香港・中国本土の海外投資家への直接販売など販売手法の多様化、川崎市や横浜市など人口増加・優良地域への開発エリアの拡大、売上総利益率安定化に向けた分譲物件開発の平準化などの施策を強化している。
海外投資家への直接販売については、14年7月売買契約締結した投資用ワンルームマンション「アジールコート銀座イースト」(39戸、15年6月期売上計上)が第一弾となり、14年11月に投資用ワンルームマンション「アジールコート新宿」(38戸、16年5月竣工・16年6月期売上計上予定)の売買契約を締結した。
15年2月には、投資用ワンルームマンション「AXAS大森西アジールコート」(15年6月竣工、マンション74戸、店舗1戸)の店舗1戸の売買契約(15年6月期売上計上)を締結した。
15年10月には、投資用ワンルームマンション「アジールコート麻布十番(仮称)」(16年12月末竣工・引き渡し予定、56戸うち店舗1戸)の売却を発表した。東急リバブルソリューションン事業本部の仲介で海外法人との売買契約が成立した。売却価格は非公表だが15年6月期売上高の10%以上に相当する額としている。
15年12月には、投資用ワンルームマンション「錦糸町IVPJ(仮称)」(16年6月竣工・16年7月引き渡し予定、96戸)について、国内法人への1棟販売が確定したと発表した。売上計上は17年6月期で、売却価格は15年6月期売上高の10%相当額以上としている。なお本物件の取引は信託受益権売買としている。
16年1月には投資用ワンルームマンション「芝公園PJ(仮称)」(16年12月竣工・17年1月引き渡し予定、56戸)の売却確定を発表した。売上計上は17年6月期の予定である。国内個人投資家への1棟販売で、売却価格は15年6月期売上高の10%以上に相当する額としている。
■物件売上計上で四半期業績は変動
15年6月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(非連結7月~9月)29億47百万円、第2四半期(非連結10月~12月)18億84百万円、第3四半期(連結1月~3月)53億91百万円、第4四半期(連結4月~6月)16億88百万円、営業利益は第1四半期3億63百万円、第2四半期1億33百万円、第3四半期9億51百万円、第4四半期2億05百万円だった。
物件売上計上で四半期収益は変動しやすい収益構造である。15年6月期の売上総利益率は21.7%(14年6月期非連結ベースの18.8%に対して2.9ポイント上昇)だった。ROEは21.1%、自己資本比率は32.6%だった。また配当性向は31.3%だった。
なお配当性向についての基本方針は、従来は当期純利益から法人税等調整額の影響を排除した数値の30%を配当するとしていたが、16年6月期より当期純利益から法人税等調整額の影響を排除した数値の35%を配当するとしている。
■16年6月期第2四半期累計は売上高、利益とも計画超
今期(16年6月期)第2四半期累計(7月~12月)連結業績は、売上高が78億59百万円、営業利益が9億14百万円、経常利益が7億39百万円、純利益が4億86百万円だった。期初計画に対して売上高は1億09百万円、営業利益は64百万円、経常利益は59百万円、純利益は86百万円、それぞれ上回った。
自社開発物件に関しては、前期からの継続2件を含む投資用ワンルームマンション8棟の戸別決済、ならびに1棟販売で、合計288戸を売上計上した。また他社物件の買取再販物件を、1棟販売含めて合計31戸売上計上した。前年同期(15年6月期第2四半期累計、非連結決算)は投資用ワンルームマンション7棟の一部戸別決済267戸の売上計上だった。
事業別売上高は不動産開発販売が63億21百万円、不動産仕入販売が14億82百万円、その他が55百万円だった。売上総利益率は19.4%(前年同期の非連結ベースは18.7%)で想定を1%程度上回ったようだ。販管費比率は7.7%(同8.4%)だった。
なお四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(7月~9月)17億55百万円、第2四半期(10月~12月)61億04百万円、営業利益は第1四半期93百万円、第2四半期8億21百万円だった。
■16年6月期増収増益・増配予想
今期(16年6月期)通期の連結業績予想(3月10日に増額修正を発表)は、売上高が前期(15年6月期)比42.7%増の170億円、営業利益が同16.2%増の19億20百万円、経常利益が同16.1%増の16億20百万円、純利益が同16.8%増の10億20百万円としている。
配当予想(3月10日に増額修正を発表)は、前期比2円増配年間15円(第2四半期末7円、期末8円)としている。予想配当性向は36.7%となる。
低金利の継続、相続税増税による不動産投資の見直し需要の高まり、そして円安に伴って海外投資家が加わり、投資用ワンルームマンションに対する投資・購入マインドは旺盛である。増収増益基調が期待される。
■株価は戻り歩調、指標面に依然として割安感
株価の動きを見ると、2月の昨年来安値244円から切り返して戻り歩調だ。3月31日には323円まで上伸した。15年8月以来の戻り高値水準である。
4月5日の終値300円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS40円84銭で算出)は7~8倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間15円で算出)は5.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS203円43銭で算出)は1.5倍近辺である。時価総額は約75億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線に続いて26週移動平均線を突破した。そして13週移動平均線が上向きに転じた。強基調への転換を確認した形だ。1桁台の予想PERや5%近辺の高配当利回りと指標面の割安感は依然として強い。15年4月高値392円を目指す展開だろう。