【アナリスト水田雅展の銘柄診断】ワークマンは既存店堅調で16年3月期増収増益、17年3月期も増収増益期待

ワークマン 7564

 ワークマン<7564>(JQS)はワーキングウェア・作業用品専門店チェーンをFC中心に全国展開している。既存店売上が堅調に推移して16年3月期増収増益予想だ。そして17年3月期も増収増益基調が期待される。16年4月1日付で株式2分割を実施した。株価はやや戻りの鈍い展開だが調整一巡感を強めている。好業績や中期成長力を評価して出直り展開だろう。なお4月28日に16年3月期決算発表を予定している。

■ワーキングウェア・作業用品の専門店チェーンを全国展開

 ワーキングウェアや作業用品などの大型専門店チェーンをFC中心に全国展開している。ローコスト経営を特徴として「エブリデー・ロー・プライス」戦略を推進し、他社との差別化戦略としてPB商品「WORKMAN BEST」の開発・拡販、販売分析データの活用や単品管理プロジェクトの推進、より緻密な品揃えと地域特性に合わせた売り場づくりなどを強化している。PB商品については売上構成比30%達成を目指している。

 15年3月期末の店舗数は42都道府県下に、FC店(加盟店A契約店舗)が14年3月期末比23店舗増加の641店舗、直営店(加盟店B契約店舗およびトレーニングストア)が同4店舗減の108店舗、総合計が同19店舗増加の749店舗を展開している。FC比率は同0.9ポイント上昇して85.6%となった。なお14年11月には北海道、15年3月には熊本県に初出店した。

 ドミナントエリアの強化、出店エリアの拡大、既存店のスクラップ&ビルド(S&B)および不採算店舗の閉鎖、年商1億円店舗の拡大などを推進し、人口10万人に1店舗として中期的には25年に全国1000店舗を目指している。

 15年4月には、群馬県伊勢崎市に床面積1万坪の流通センターを新設するため、群馬県と用地売買予約契約に調印した。既存の伊勢崎流通センター(床面積7140坪)がフル稼働状態のため、近接地に新伊勢崎流通センターを建設(総投資額38億円程度、17年2月完成予定)し、東日本の伊勢崎流通センター(新旧2センターの一体運営)と西日本の竜王流通センター(滋賀県、13年稼働、床面積7180坪)の2拠点で、全国の店舗への物流をカバーする方針だ。

■第1四半期と第3四半期の構成比が高い収益構造

 15年3月期の四半期別の推移を見ると、チェーン全店売上高は第1四半期(4月~6月)173億65百万円、第2四半期(7月~9月)148億67百万円、第3四半期(10月~12月)218億27百万円、第4四半期(1月~3月)151億26百万円、営業総収入は第1四半期125億22百万円、第2四半期105億20百万円、第3四半期150億63百万円、第4四半期103億21百万円で、営業利益は第1四半期20億83百万円、第2四半期13億88百万円、第3四半期32億37百万円、第4四半期16億31百万円だった。

 第1四半期と第3四半期の構成比が高い収益構造だ。また15年3月期の営業総利益率は34.4%で14年3月期比0.1ポイント上昇、販管費比率は17.2%で同0.3ポイント上昇、ROEは14.0%で同0.8ポイント低下、自己資本比率は77.5%で同2.3ポイント上昇した。配当性向は30.2%だった。利益配分の基本方針は配当性向30%を目途としている。

■16年3月期第3四半期累計は増収増益

 前期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)の連結業績は、チェーン全店売上高が前年同期比2.5%増の554億29百万円、営業総収入が同1.4%増の386億29百万円、営業利益が同6.8%増の71億61百万円、経常利益が同6.3%増の80億14百万円、純利益が同6.8%増の47億08百万円だった。

 暖冬の影響を受けて15年12月の既存店売上高が前年比マイナスとなったが、全体として作業用品などを中心に既存店売上が好調に推移した。さらに新規出店、PB新商品積極投入、PB商品構成比上昇、客単価上昇、一品単価上昇、売上総利益率上昇、販管費抑制などで増収増益だった。秋冬PB商品発表会開催や情報誌への商品掲載などメディア戦略を推進し、客層拡大に向けた広告プロモーションを積極展開したことも寄与した。

 営業総収入の内訳を見ると、直営店売上高が同3.9%増の51億25百万円、加盟店向け商品供給売上高が同0.8%増の232億12百万円、加盟店からの収入が同3.1%増の77億84百万円、その他の営業収入が同3.7%減の25億06百万円だった。既存店売上高は同1.5%増だった。記録的な暖冬の影響を受けて15年12月が前年比マイナスだったが、全体として順調に推移している。

 店舗展開は新規出店12店舗、閉店1店舗、S&B3店舗で、15年12月末時点の総店舗数は14年12月末比17店舗増加の760店舗(15年3月末比では11店舗増加)となった。うちFCは同6店舗増加の648店舗、FC比率は同1.1ポイント低下して85.3%となった。

 PB商品は473アイテムを展開し、PB商品の売上高は同23.1%増の109億86百万円となり、チェーン全店売上高に対する構成比は同3.4ポイント上昇して19.9%となった。加盟店向け商品供給売上高除く売上総利益率は61.3%で同2.0ポイント上昇、営業総利益率は34.8%で同0.5ポイント上昇、販管費比率は16.2%で同0.5ポイント低下した。

 四半期別の推移を見ると、チェーン全店売上高は第1四半期(4月~6月)181億27百万円、第2四半期(7月~9月)161億56百万円、第3四半期(10月~12月)211億46百万円、営業総収入は第1四半期126億71百万円、第2四半期109億75百万円、第3四半期149億83百万円で、営業利益は第1四半期22億35百万円、第2四半期18億30百万円、第3四半期30億96百万円だった。

■16年3月期増収増益、17年3月期も増収増益期待

 前期(16年3月期)通期の非連結業績予想(4月30日公表)はチェーン全店売上高が前々期(15年3月期)比4.5%増の723億30百万円、営業総収入が同3.8%増の502億40百万円、営業利益が同4.9%増の87億40百万円、経常利益が同4.6%増の99億円、純利益が同7.6%増の63億20百万円としている。5期連続の最高益更新見込みだ。配当予想は前々期と同額の年間87円(期末一括)で予想配当性向は28.1%となる。

 新規出店18店舗、閉店1店舗、S&B7店舗で、期末総店舗数は同17店舗増加の766店舗の計画だ。大分県と沖縄県に初出店する。新規出店はドミナントエリア構築に向けて、都市部への集中出店や新規地域での出店拡大を推進するとともに、FC化も推進している。

 なお既存店売上高は同3.0%増(客数が同0.5%増~1.0%増、客単価が同2.0%増~2.5%増)、PB商品売上高は同30%増の150億円、PB商品売上構成比は同4.0ポイント上昇の20.7%の計画としている。既存店の好調、新規出店の効果、競争力のあるPB新商品の積極投入、PB商品売上構成比上昇による粗利益率上昇などで増収増益予想だ。

 月次売上高(FC店と直営店の店舗売上高合計、前年比速報値)を見ると、16年3月は全店101.5%、既存店100.7%だった。平年よりも降水量が少なかったことで長靴や作業関連用品などが伸び悩んだが、気温の上昇とともに長袖ポロ・ハイネックシャツ、インナー類などが動き始めた。全体として堅調のようだ。なお15年4月~16年3月累計売上は全店103.2%、既存店102.2%である。16年3月の新規出店は2店舗で、16年3月末店舗数は766店舗となった。

 通期会社予想に対する第3四半期累計進捗率はチェーン全店売上高が76.6%、営業総収入が76.9%、営業利益が81.9%、経常利益が81.0%、純利益が74.5%と高水準である。16年3月期増収増益で、17年3月期も増収増益基調が期待される。

■中期成長シナリオに変化なし

 14年9月には、16年3月期から実施する「中期業態改革ビジョン」の中で、アベノミクス法人減税が実現して業績も増収増益が続けば、在籍社員の年収を現在の約600万円(平均年齢36.4歳)から5年を目途に約100万円引き上げる目標を織り込んだと公表している。小売企業の中でトップクラスの待遇や女性社員が第一線で働きやすい環境を作り、社員のモチベーション向上と業績拡大につなげる方針だ。

 テレビCM放映効果による知名度向上、積極的な新規出店、出店エリアの拡大、ドミナント出店の強化、PB商品力の強化、PB商品売上構成比上昇による売上総利益率改善、アルゴリズム自動選択型需要予測機能を持つ自社開発の発注システムによる発注作業の効率化などの効果で、中期成長シナリオに変化はないだろう。

■株価は調整一巡感

 株価の動き(16年4月1日付で株式2分割)を見ると、2月安値2995円後の戻りがやや鈍い展開だが、大きく下押す動きも見られず調整一巡感を強めている。

 4月5日の終値3370円を指標面(EPS、年間配当額、BPSは株式2分割調整後)で見ると、前期推定PER(会社予想のEPS154円99銭で算出)は21~22倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間43円50銭で算出)は1.3%近辺、前々期実績PBR(前々期実績のBPS1079円36銭で算出)は3.1倍近辺である。時価総額は約1379億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だが調整一巡感を強めている。好業績や中期成長力を評価して出直り展開だろう。

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