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【アナリスト水田雅展の銘柄診断】星光PMCは戻り高値圏で堅調、16年12月期増収増益予想
- 2016/4/8 09:41
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
星光PMC<4963>(東1)は製紙用薬品事業、印刷インキ用・記録材料用樹脂事業、化成品事業を展開し、次世代素材セルロースナノファイバー(CNF)など成長市場・新分野開拓の戦略を推進している。16年12月期は製品販売構成の高収益化などで増収増益予想である。そして新中期経営計画では18年12月期の営業利益率8%以上を目標としている。次世代素材CNFの事業化も期待される。株価は戻り高値圏で堅調な動きだ。16年1月高値を目指す流れに変化はないだろう。
■製紙用薬品、印刷インキ・記録材料用樹脂、および化成品を展開
DIC<4631>の連結子会社で、製紙用薬品事業、印刷インキ用・記録材料用樹脂事業、および化成品事業(14年4月、興人フィルム&ケミカルズの化成品事業を承継したKJケミカルズを子会社化)を展開している。
高付加価値製品の拡販、中国事業の再構築、東南アジア市場への積極展開、次世代素材セルロースナノファイバー(CNF)、導電性ナノ材料(銀ナノワイヤー)、光学弾性樹脂(OCA)など、成長市場・新分野開拓の戦略を推進している。
■次世代素材CNFの事業化推進
次世代素材CNFは、すべての植物の植物細胞壁の骨格成分であるセルロースを、ナノサイズまで細かくほぐすことによって得られる繊維である。鋼鉄の5分の1の軽さで5倍以上強く、熱による変形が少ないなどの特徴がある。樹脂の補強材として機能させることで、自動車用樹脂の強度向上や金属部材からの置き換え、家電・モバイル機器の軽量化などでの需要が期待されている。
当社は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のCNF開発プロジェクトの中核企業として早期事業化を目指し、13年2月に経済産業省イノベーション拠点立地推進事業に採択された。14年6月には産官学連携型コンソーシアム「ナノセルロースフォーラム」が設立され、当社を含めて100社以上が参画した。また14年11月には竜ヶ崎工場におけるCNF実証生産設備が完成し、本格的な変性CNFサンプルの提供を開始している。
銀ナノワイヤーについては14年9月からサンプル出荷を本格開始した。直径がナノサイズ、長さがミクロンサイズの繊維状の銀を溶液中に分散させて透明導電性電極を形成し、ウェアラブル端末や大型ディスプレイへの利用が期待されている。
■営業損益改善基調
14年12月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)53億36百万円、第2四半期(4月~6月)61億68百万円、第3四半期(7月~9月)60億64百万円、第4四半期(10月~12月)64億02百万円、営業利益は第1四半期1億40百万円、第2四半期17百万円の赤字、第3四半期77百万円、第4四半期1億19百万円だった。営業損益は第2四半期をボトムとして改善基調となった。
■15年12月期は大幅増益で営業損益改善
前期(15年12月期)は前々期(14年12月期)比2.5%増収、4.1倍営業増益、2.6倍経常増益で、純利益は10億72百万円の黒字(前々期は18百万円の赤字)だった。
売上面では製紙用薬品事業が堅調に推移し、化成品事業のKJケミカルズの増収も寄与した。利益面ではロジンなど原材料価格上昇に対する製品価格是正によるギャップ解消、コスト削減の進展、化成品事業および中国事業の収益改善などが寄与した。減価償却費は同12.3%減の10億60百万円、設備投資は同22.3%減の8億38百万円、研究開発費は同1.0%減の16億39百万円だった。
売上総利益率は23.5%で同4.2ポイント上昇、販管費比率は18.1%で同0.1ポイント上昇した。営業利益増減分析によると、増益要因は原材料価格上昇に対する製品価格是正によるギャップ解消4億60百万円、製造経費減少1億20百万円、販管費減少80百万円、中国子会社の収益改善3億42百万円、化成品事業の収益改善4億14百万円、その他14百万円で、減益要因は単体ベースの売上減少1億72百万円、製品構成差2億39百万円、新規事業開発費の増加21百万円としている。
営業外では為替差損益が悪化(前々期は差益1億10百万円計上、前期は差損59百万円計上)した。特別利益では前々期計上したKJケミカルズ子会社化に伴う負ののれん発生益3億70百万円が一巡したが、次世代素材CNFの開発で経済産業省イノベーション拠点立地推進事業に採択され、パイロットプラント完成に伴って交付された国庫補助金2億54百万円を計上した。また固定資産受贈益97百万円を計上した。特別損失ではパイロットプラントに係る固定資産圧縮損1億67百万円を計上したが、前々期計上した減損損失7億05百万円が一巡した。
ROEは5.4%で同5.5ポイント上昇、自己資本比率は69.7%で同1.8ポイント上昇した。配当性向は33.9%だった。
セグメント別の動向を見ると、製紙用薬品は売上高が同2.3%増の158億21百万円、営業利益(連結調整前)が同67.1%増の12億93百万円だった。15年1月~12月の紙・板紙の国内生産は前年比1.0%減少したが、国内市場および中国市場での差別化商品の拡販、コスト削減・合理化の進展、中国事業の収益改善などで増収増益だった。
印刷インキ用・記録材料用樹脂は売上高が同9.9%減の53億63百万円、営業利益が同2.4倍の1億49百万円だった。15年1月~12月の印刷インキの国内生産が同2.3%減少し、オフセットインキ用樹脂、水性インキ用樹脂、記録材料用樹脂の売上も減少したが、コスト削減・合理化の進展で営業損益が大幅に改善した。化成品事業は、売上高が33億84百万円(前々期は第2四半期から連結して25億58百万円)で、営業利益が3億21百万円(同92百万円の赤字)だった。
なお四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)60億25百万円、第2四半期(4月~6月)60億75百万円、第3四半期(7月~9月)62億51百万円、第4四半期(10月~12月)62億18百万円、営業利益は第1四半期2億45百万円、第2四半期3億79百万円、第3四半期2億92百万円、第4四半期4億02百万円だった。営業損益は改善基調である。
■16年12月期も増収増益予想
今期(16年12月期)通期の連結業績予想(2月10日公表)は、売上高が前期(15年12月期)比1.1%増の248億30百万円、営業利益が同10.7%増の14億60百万円、経常利益が同13.8%増の15億20百万円、そして純利益が同5.3%増の11億30百万円としている。
配当予想は前期と同額の年間12円(第2四半期末6円、期末6円)で予想配当性向は32.2%となる。利益配分については、経営環境、業績、将来の事業展開および配当性向・配当利回り等を総合的に勘案し、適切な配当水準を維持しつつ、利益還元を行うことを基本方針としている。
国内樹脂の事業環境が厳しく、全体の売上高は微増収予想だが、製品販売構成の高収益化や中国事業の拡販などで2桁営業増益の予想としている。なお想定の為替レートは1ドル=123円、ナフサ価格は4万3000円、減価償却費は同0.1%増の10億05百万円、設備投資は同90.7%増の16億25百万円、研究開発費は同8.6%増の17億80百万円の計画としている。
営業利益増減分析計画は、増益要因が単体ベース売上数量増加1億80百万円、製品・原料価格バランス79百万円、製品ポートフォリオ改善1億61百万円、コスト削減1億円、中国子会社の収益改善35百万円、減益要因が製造経費増加2億15百万円、販売費増加1億96百万円、その他化成品事業2百万円としている。
セグメント別計画は、製紙用薬品事業の売上高が同2.3%増の161億80百万円、営業利益(連結調整前)が同18.8%増の15億36百万円、樹脂事業の売上高が同3.4%減の51億79百万円、営業利益が同45.0%減の82百万円、化成品事業の売上高が同2.6%増の34億72百万円、営業利益が同0.6%減の3億19百万円としている。
製紙用薬品事業では、国内における紙・板紙の需要が伸び悩む中、差別化されたソリューション提供による顧客との関係強化、高機能製品による新規商権獲得などで販売拡大を目指す。海外では製品ポートフォリオの拡充などで既存製造設備の稼働率向上を目指す。
印刷インキ用・記録材料用樹脂事業では、市場変化に対応した製品ポートフォリオの抜本的見直しと、生産体制効率化によって収益基盤を再構築するとともに、海外における印刷インキ水性化ニーズに応える樹脂の開発・販売を推進する。また化成品事業では、競争優位のモノマー・オリゴマーの拡販で事業基盤を強化するとしている。
■新中期経営計画で18年12月期営業利益率8%以上を目指す
16年2月策定した新中期経営計画「CS VISION-2」(16年12月期~18年12月期)では、基本方針を「環境変化に左右されない強固な国内事業基盤を構築して成長の礎とし、その基盤の上に、新規事業立ち上げによる事業の多角化と、アジアを中心としたグローバルな事業展開を通じて、持続的な成長を遂げる企業グループを目指す」としている。
具体的戦略としては、国内事業基盤の強化(製紙用薬品事業における高性能新規製品投入、樹脂事業における製品ポートフォリオ見直し、化成品事業における機能性モノマー・オリゴマー提供)、海外事業展開の加速(製紙用薬品事業における製品ポートフォリオ拡充、樹脂事業における印刷インキ水性化ニーズ捕捉、海外人材の育成・採用強化)、新規開発事業テーマの事業化(セルロースナノファイバーや銀ナノワイヤーなどの事業化)、事業領域拡大のための新規事業の探索・事業化(グループの強みを活かした新規事業参入機会の探索)、外部資源の活用(他社との業務・資本提携やM&Aの積極活用)、自ら変化・挑戦・成長する企業風土の醸成(チャレンジ精神に溢れる企業集団)としている。
経営目標数値としては、会社設立50周年にあたる18年12月期の売上高272億円(15年12月期比10.7%増)、営業利益22億円(同66.9%増)、営業利益率8%(同2.6ポイント上昇)以上、参考指標として海外売上高57億73百万円、海外売上高比率21.2%、ROE7.7%を掲げている。さらに、M&Aを実行して事業規模の拡大を図るため、適切な財務戦略に基づく資金枠を設定し、積極的に案件を探索するとしている。
事業別(連結調整前)の目標値は、製紙用薬品事業の売上高が173億34百万円(15年12月期比9.6%増)、営業利益が17億円(同31.5%増)、樹脂事業の売上高が58億66百万円(同9.4%増)、営業利益が4億78百万円(同3.2倍)、化成品事業の売上高が40億円(同18.2%増)、営業利益が4億48百万円(同39.6%増)としている。なお樹脂事業には新規開発事業を含んでいる。
■株価は戻り高値圏で堅調
株価の動きを見ると、2月安値815円から切り返し、3月22日に1305円、4月1日には1315円まで上伸した。戻り高値圏で堅調な動きだ。
4月7日の終値1222円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS37円27銭で算出)は32~33倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間12円で算出)は1.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS665円09銭で算出)は1.8倍近辺である。時価総額は約376億円である。
日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると26週移動平均線がサポートラインの形となった。強基調への転換を確認した形だ。次世代素材CNFも注目テーマとなって16年1月高値1577円を目指す流れに変化はないだろう。