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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】クリナップは戻り歩調に変化なし、17年3月期の収益改善基調期待
- 2016/4/11 07:09
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
クリナップ<7955>(東1)はシステムキッチンの大手でシステムバスルームなども展開している。3月には全国102ヶ所目のショールームとして、八代(熊本県)ショールームをオープンした。住宅ローン金利低下も追い風となってリニューアル需要が増加し、17年3月期は収益改善基調が期待される。株価は戻り歩調に変化はなく、15年の高値圏を目指す展開だろう。
■システムキッチンの大手、システムバスルームも展開
厨房部門(システムキッチン)を主力として、浴槽・洗面部門(システムバスルーム・洗面化粧台)も展開している。中期経営計画では「ザ・キッチンカンパニー」の確立を目指している。
重点施策として、システムキッチン「S.S.」「クリンレディ」「ラクエラ」を軸とした商品ラインナップの充実、ブランド力の強化、中高級システムキッチンの市場シェア上昇および普及クラスの強化、全国のショールームへの集客強化と総合競争力の強化、会員登録制組織「水まわり工房」加盟店との連携強化とリフォーム需要の取り込み、トータルコストの低減、CPS活動の全社展開による業務効率化、20年サポートを支える業務システムの整備、そして海外事業の強化などを推進している。
リフォーム戦略では会員登録制組織「水まわり工房」加盟店が、15年3月期に前期比514社増加して5346社となった。海外展開では中国で瀋陽や蘇州など4地区にキッチン等の提供を開始した。台湾やベトナムでの販売も拡大しているようだ。
16年1月には、新機能「流レールシンク」を搭載して15年5月発売したシステムキッチン「クリンレディ」が、2015年日経優秀製品・サービス賞において優秀賞日経産業新聞賞を受賞したと発表している。
また16年2月には、クリナップ岡山工業津山工場のプレス棟建築工事ならびにプレスライン設備工事が完了し、システムキッチンのステンレス製カウンタートップおよびシンクのプレス成型加工の生産体制が整った。16年夏稼働開始見込みで、西日本における供給体制を強化する。
なお4月12日~17日にイタリア・ミラノで開催される世界最大級の家具見本市「ミラノサローネ2016」で、同時開催されるミラノ・デザインウィーク(ブレラ地区)に出展する。
■ショールームのリニューアルを推進
全国101ヶ所のショールームへの集客を強化するため、リニューアルと生活提案型ショールームへの転換を進めている。
15年3月期は5ヶ所の移転リニューアル、4ヶ所のリニューアルを実施した。また16年3月期は15年10月時点で合計7店舗のリニューアルを実施した。さらに16年1月には長野、16年3月には佐世保、松江、秋田、浜松をリニューアルし、全国102ヶ所目となる八代ショールーム(熊本県)を新設した。
■新設住宅着工やリフォーム需要の影響を受けやすい収益構造
15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)319億24百万円、第2四半期(7月~9月)284億53百万円、第3四半期(10月~12月)288億39百万円、第4四半期(1月~3月)270億23百万円、営業利益は第1四半期19億68百万円、第2四半期5億49百万円、第3四半期11億13百万円、第4四半期6億02百万円の赤字だった。
新設住宅着工件数やリフォーム需要の影響を受けやすい収益構造で、15年3月期は消費増税の影響長期化や原材料費の上昇などで営業損益が悪化した。また15年3月期のROEは14年3月期比7.0ポイント低下して1.5%、自己資本比率は同2.5ポイント上昇して65.7%、配当性向は96.0%だった。
■16年3月期第3四半期累計は大幅減益だが、四半期ベースでは改善基調
前期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比3.0%減の865億74百万円、営業利益が同51.6%減の17億57百万円、経常利益が同54.6%減の15億58百万円、純利益が同32.5%減の9億48百万円だった。
持家の新設住宅着工戸数は緩やかな回復傾向だが、リフォーム市場は節約志向の影響を受けたため減収となり、需要期に向けたショールームのリニューアルやCM等の実施、原材料価格の上昇なども影響して大幅減益だった。売上総利益率は33.0%で同1.4ポイント低下、販管費比率は31.0%で同0.7ポイント上昇した。なお特別損失では、前期計上の厚生年金基金解散損失引当金繰入額9億15百万円が一巡した。
部門別の売上高は、厨房部門が同3.0%減の673億42百万円、浴槽・洗面部門が同3.9%減の146億30百万円だった。厨房部門のシステムキッチン「S.S.」は数量・金額とも減少、「クリンレディ」は数量・金額とも増加、「ラクエラ」は数量・金額とも減少、また浴槽・洗面部門のシステムバスルーム「アクリアバス」は数量・金額とも減少、「ユアシス」は数量・金額とも減少した。
なお四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)271億23百万円、第2四半期(7月~9月)292億70百万円、第3四半期(10月~12月)301億81百万円、営業利益は第1四半期32百万円の赤字、第2四半期4億30百万円、第3四半期13億59百万円だった。営業損益は改善基調だ。
■16年3月期減益予想だが、17年3月期は収益改善基調期待
前期(16年3月期)通期の連結業績予想(11月2日に減額修正)は、売上高が前々期(15年3月期)比1.9%減の1140億円、営業利益が同50.5%減の15億円、経常利益が同53.4%減の12億60百万円、純利益が同32.1%減の6億円としている。配当予想(5月11日公表)は前々期と同額の年間20円(第2四半期末10円、期末10円)で予想配当性向は138.6%となる。
通期ベースでも消費増税後の厳しい事業環境が継続する見込みとしている。ただし15年5月に「流レールシンク」を標準装備して新発売したシステムキッチン「クリンレディ」や「美コートワークトップ」を標準装備したシステムキッチン「S.S.」などの拡販を強化する方針だ。さらに会員登録制組織「水まわり工房」加盟店との連携によるリフォーム需要の喚起、生産設備の増強、ショールームの改装、生産面での原価低減などを推進する。
なお通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は、売上高が76.0%、営業利益が117.1%、経常利益が123.7%、純利益が158.0%で、各利益は通期会社予想を超過達成している。16年3月期はリフォーム市場の停滞などで減益予想だが、住宅ローン金利低下も追い風となってリニューアル需要が増加し、17年3月期は収益改善基調が期待される。
■株価は戻り歩調に変化なく、15年の高値圏目指す
株価の動きを見ると、16年1月の昨年来安値644円から切り返し、3月30日の年初来高値799円まで上伸した。戻り歩調の展開だ。その後は地合い悪化の影響で上げ一服の形だが700円台は維持している。自律調整の範囲だろう。
4月8日の終値745円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想連結EPS14円43銭で算出)は52倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は2.7%近辺、そして前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS1358円69銭で算出)は0.5倍近辺である。時価総額は約312億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線を突破した。さらに13週移動平均線が上向きに転じ、26週移動平均線を上抜くゴールデンクロスが接近している。戻り歩調に変化はなく15年の高値圏900円台を目指す展開だろう。