「小回り三月」の相場格言通りに東証マザーズのフィンテック関連株にリバイバル相場発進が間近=浅妻昭治

編集長の視点

 為替相場に「一方向に偏った動きがみられる」そうである。そう指摘したのは、麻生太郎財務大臣である。前週末8日の閣議後の記者会見でのことで、同時に「場合によっては必要な措置を取りたい」とも牽制した。この口先介入に敬意を表してか、1ドル=107円台まで円高・ドル安となっていた為替相場は一時、1ドル=109円台まで円安・ドル高となった。このまま、生命線とされる1ドル=110円台まで押し戻して円高・ドル安収束となるか麻生大臣のお手並み拝見ということになる。

 株価の方も、「一方向に偏った動きがみられる」か、ここはぜひ日銀の黒田東彦総裁に確かめてみたいものである。最優先で確かめたいのは、東証第1部の動向だ。というのも、同総裁は、初のマイナス金利導入を決定した今年1月29日の金融政策会合後の記者会見でも、続く3月15日の同会合後の記者会見でも、マイナス金利は、ポートフォリオ・リバランスがよりしっかり進展しデフレマインドからの転換にポジティブに影響する趣旨の説明を再三していたからである。しかし、この追加緩和策を境に為替は、逆に前週末には1年5カ月ぶりの円高・ドル安水準、株価も、日経平均株価が、新年度相場入りとともに3年5カ月ぶりの7日続落となってしまった。これが、ポートフォリオ・リバランスやデフレマインドの転換にアゲインストな「市場の叛乱」とすれば、「一方向に偏った動き」には何らかの介入があるのかないのか、4月27~28日に開催予定の金融政策決定会合を待ちたいとするのが、当然の投資家心理になる。

 もう一つ確かめたいのが、東証マザーズ市場の動きである。しっかりポートフォリオ・バランスを実現して黒田総裁の眼がねにかなっているのか、それとも「一方向に偏った動きがみられる」と行儀の悪さに眉をひそめるのか、そのいずれになるかだ。前週末現在で、日経平均株価が、昨年末の大納会終値に対してなお3561円も未達となるなど、すべての市場がなおダウンサイド・リスクを否定できないのに対して、ひとり東証マザーズ指数のみが、大納会終値を162ポイントも上回り、「アベノミクス相場」以降の高値である2013年5月高値におよそ3年ぶりにあと30ポイント強と肉薄し、市場マインドをポジティブにしてくれているからだ。

 今回の牽引役は、そーせいグループ<4565>(東マ)である。アイルランドに本社を置く製薬大手アラガン社との提携を材料にストップ高を交えて急伸、前週末8日の売買代金は、全市場ベースでトヨタ自動車<7203>(東1)などの東証第1部銘柄を尻目にトップに躍り出た。つれてバイオ関連株にメドレックス<4586>(東マ)などストップ高する銘柄や年初来高値を更新する銘柄が相次いで指数を大きく押し上げた。そーせいGは、株価が2万円を上回る超値がさ株で、業績は黒字化したものの、ベンチャー企業であることを勘案してもPER評価では割高など、バイオベンチャー株全般に特有の投資性癖は否定できず、一般投資家が、組み入れに動いているといわれる機関投資家や外国人投資家に倣って高値で追随買いするには、よほどの勇気と決断が必要になる。それでもこのマザーズ指数の高値更新を黒田総裁が、当然のポートフォリオ・リバランスとするようなら、東証マザーズ指数にはなお高値追いの可能性が生じることになる。 

 東証マザーズ銘柄は、今年の年初相場で日経平均株価が、6日続落したなかでも逆行高し、市場の唯一の希望となった。このときは、民泊関連株、自動運転関連株、AI(人工頭脳)関連株、ドローン関連株、フィンテック関連株などの多彩なテーマ株が、それこそ日替わりでストップ高するなどして牽引役となったが、これを一方向に偏った動き」などと咎め立てる発言などは聞こえてこなかった。今回も同様だとすれば、あれから3カ月、相場格言の「小回り三月」からもリバイバル相場が発進するタイミングではある。今週初からの米企業の決算発表、4月26日開催のFRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(公開市場委員会)、同27日開催の日銀の金融政策決定会合、さらに4月中旬以降の日本企業の3月期決算発表などを控え、なお全般相場の先行き不透明感が漂い弱気観測も強い投資環境下では、今回のバイオ株に追随してテーマ株人気を再燃させるセクター株の再デビューが期待されることになる。

 なかでも、金融とIT(情報技術)を融合させて新しい金融サービスを創出するフィンテック関連株は、今年4月5日に自民党の金融調査会が、新金融サービス発展に向けた施策を政府に提言し、政府が、5~6月にまとめる新成長戦略に盛り込まれる手順となっているほか、今国会には銀行の持ち株会社にフィンテック関連のベンチャー企業の株式保有を解禁させる銀行法の改正案も提出されているなど、支援施策が、「一方向」へ動く転機にもなっている。

 フィンテック関連株は、さくらインターネット<3778>(東1)が、昨年12月中旬の初速段階で3日連続でストップ高し、さらに年明け後も連続ストップ高を交えて2110円高値までわずか1カ月で7.5倍の大化けを演じ、連想した関連株買いがマザーズ市場まで波及した。今回も、さくらネットのような牽引株の動向次第でフィンテック関連のリバイバル相場発進の期待が高まり、バイオ株に並ぶメーン・ストリート株に浮上する可能性が高まりそうだ。(本紙編集長・浅妻昭治)

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