【アナリスト水田雅展の銘柄分析】テクマトリックスは自律調整一巡して上値試す、17年3月期も増収増益基調期待

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 テクマトリックス<3762>(東1)はシステム受託開発やセキュリティ関連製品販売などの情報サービス事業を展開し、ストック型ビジネスやクラウドサービスを強化している。11日には新たな医療クラウドサービス「NOBORI-PAL」の提供開始を発表した。16年3月期2桁増収増益・増配予想で、17年3月期も増収増益基調が期待される。サイバーセキュリティ関連などのテーマ性も注目点となる。株価は上場来高値圏で堅調に推移している。自律調整が一巡して上値を試す展開だろう。なお5月9日に16年3月期決算発表を予定している。

■システム受託開発やセキュリティ関連製品販売などを展開、クラウドを拡大

 ネットワーク・セキュリティ関連のハードウェアを販売する情報基盤事業、医療・CRM・EC・金融を重点分野としてシステム受託開発やクラウドサービスを提供するアプリケーション・サービス事業を展開している。

 重点戦略として、ストック型ビジネスの保守・運用・監視サービス関連の戦略的拡大、クラウド関連事業の戦略的・加速度的推進、ネットワーク・セキュリティ関連商材およびサービスの充実などを推進している。

 クラウドサービスでは、コンタクトセンター向けCRMシステム「Fast Cloud」や医療情報クラウドサービス「NOBORI」など、各分野で独自クラウドサービスを開発・展開している。15年10月には米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が提供する「AWSパートナーネットワーク(APN)」に参加するため「APNスタンダードコンサルティングパートナー」の認定を取得した。

 4月11日には、医療情報クラウドサービス「NOBORI」をプラットフォームとした、新たな医療クラウドサービス「NOBORI-PAL」の提供開始を発表した。サービス拡充を進めて初年度延べ80施設での利用を目指すとしている。

■中期成長に向けてM&A・アライアンスを積極活用

 中期成長に向けてM&A・アライアンスを積極活用するとともに、グループ再編も推進している。14年2月に子会社の沖縄クロス・ヘッドが台湾のデータセンター事業者eASPNetと事業協力についての覚書を締結、14年3月にクロス・ヘッドを完全子会社化した。

 14年7月に日本事務器(NJC)と医療情報クラウドサービス「NOBORI」に関する販売代理店契約を締結、14年8月に沖縄クロス・ヘッドが日本HPと業務提携、14年10月にクロス・ヘッドが仮想化技術の米Pica8(ピカエイト)社に出資、ソフトバンクテレコムなどと3社共同でクラウド型医療情報サービス「地域健康・医療情報プラットフォームサービス(HeLIP)」の提供を開始した。14年12月にはクロス・ヘッドがエヌ・シー・エル・コミュニケーションの株式を追加取得して完全子会社化し、15年4月合併した。

 15年3月にはApple関連技術の研修サービスを提供している子会社カサレアルが、JetBrains社(チェコ)とトレーニングパートナー契約を締結し、サムライズム(東京都)とJetBrains社製品を利用した研修に関する業務提携を開始した。またスリーゼットに対して医療情報クラウドサービス「NOBORI」を、クリニックを対象としてOEM提供する契約を締結した。

 15年5月には医療サービス事業に特化したベンチャー企業である中国の北京ヘルスバンク・テクノロジー有限公司と合弁契約を締結し、15年8月合弁会社(北京ヘルステック医療情報技術有限公司、当社出資比率40%)を設立した。当社子会社の合同会社医知悟が開発した遠隔医療ソフトウェアのライセンスを供与して、中国において遠隔医療事業を展開する。

 15年6月にはクロス・ヘッドが、クライアント仮想化ソフトウェア「OVD」の開発元であるカナダのInuvika(イヌビカ)社に出資した。クロス・ヘッドは「OVD」の国内卸・日本語環境対応開発支援を行っており、今後3年間で2万ライセンスの販売を目標としている。

 15年9月には米Parasoft社が開発したソフトウェア開発・テスト管理プラットフォーム「Parasoft DTP」の販売を開始した。また沖縄クロス・ヘッドがスプラッシュトップ(東京都)および日本ヒューレット・パッカードと共同でリモートデスクトップサービス「Reemo(リーモ)」の提供を開始した。さらにオーストリアのRanorex社が開発したUI(ユーザーインターフェース)テスト自動化ツール「Ranorex」の国内総販売代理店権を獲得した。

 15年10月には、トランスコスモス(タイ)とコンタクトセンターCRMシステム新製品「Fastシリーズ」のタイにおける販売代理店契約を締結した。国内トップクラスの導入実績を誇る「Fastシリーズ」のASEAN地区を中心とした海外展開を強化する。

 16年4月には、モール型ECサイトに出店するネットショップの受注処理・在庫管理業務を効率化するSaaS業務支援システム「楽楽バックオフィス」と、ジャックス・ペイメント・ソリューションズの後払い決済サービス「アトディーネ」の連携を開始した。

 16年3月には、カナダFinancialCAD社が開発した金融商品評価・分析ツール「FINCAD Analytics Suite」の国内総販売代理店として、最新版である「ver.2016」の国内販売を開始した。

 4月5日には、国内トップクラスの導入実績を持つコンタクトセンター向けCRM製品「Fastシリーズ」について、日本ユニシスとの販売代理店契約締結を発表した。

■第4四半期の構成比が高く、ストック型収益の積み上げも推進

 なお医療分野では、オンプレミス型(ユーザーがハードウェア、ソフトウェア、データを自分自身で保有・管理)システム提供から、クラウド型(ユーザーがインターネット経由で利用)サービス提供へビジネスモデル変更を推進しているため、14年3月期から医療情報クラウドサービスの売上と利益をサービス期間に応じて按分計上する方法に変更した。このため今後複数年に亘って売上と利益にマイナス影響となるが他事業の成長でカバーする。

 15年3月期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)39億49百万円、第2四半期(7月~9月)46億55百万円、第3四半期(10月~12月)43億75百万円、第4四半期(1月~3月)54億38百万円、営業利益は第1四半期63百万円、第2四半期2億87百万円、第3四半期1億92百万円、第4四半期5億88百万円だった。

 情報システム関連で第4四半期の構成比が高い収益構造である。15年3月期のストック型売上比率(単体ベース)は、情報基盤事業で14年3月期比3.5ポイント低下して40.2%、アプリケーション・サービス事業で同3.0ポイント上昇して41.8%となった。また売上総利益率は34.3%で同0.3ポイント低下、販管費比率は28.2%で同横ばい、ROEは9.4%で同4.2ポイント低下、自己資本比率は45.3%で同1.5ポイント低下した。配当性向は31.1%だった。

■16年3月期第3四半期累計は大幅増収増益

 前期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比16.2%増の150億79百万円、営業利益が同42.6%増の7億74百万円、経常利益が同47.2%増の7億77百万円、純利益が同90.0%増の4億47百万円だった。

 情報基盤事業、アプリケーション・サービス事業とも好調に推移して、売上高は第3四半期累計として過去最高となった。増収効果、クラウドビジネスの伸長、医療分野の収益改善が寄与して大幅増益だった。売上総利益率は32.1%で同2.2ポイント低下、販管費比率は27.0%で同3.1ポイント低下した。なお特別損失に事務所移転費用29百万円を計上した。

 セグメント別に見ると、情報基盤事業は売上高が同18.1%増の101億60百万円、営業利益が同12.9%増の6億75百万円だった。入札案件における価格競争や円安に伴う輸入価格上昇で利益率は低下したが、セキュリティ関連が牽引して売上高は過去最高となった。主力の負荷分散装置では次世代ファイアウォール関連が好調に推移した。マイナンバー制度を契機としてセキュリティ関連の需要が旺盛のようだ。セキュリティ関連の運用・監視サービスも伸長した。

 アプリケーション・サービス事業は売上高が同12.4%増の49億18百万円、営業利益が98百万円(前年同期は54百万円の赤字)だった。インターネットサービス分野はEC関連、ウェアラブル端末関連など既存顧客を中心に受託開発案件の受注が堅調だった。ソフトウェア品質保証分野は製造業や金融業向けテストツールの受注が好調だった。医療分野は医療情報クラウドサービス「NOBORI」が好調のようだ。会計処理方法変更に伴う経過処理で売上高が減少傾向だったが、契約施設数の増加に伴って売上高が増加傾向に転じたようだ。CRM分野は次世代製品の販売開始や大手システム・インテグレータとの業務提携効果でクラウド関連が好調に推移し、大型案件の受注にも成功した。

 なお受注高は、情報基盤事業が同19.8%増の115億48百万円、アプリケーション・サービス事業が同7.2%増の56億67百万円、合計が同15.4%増の172億16百万円だった。また受注残高は、情報基盤事業が同27.6%増の59億46百万円、アプリケーション・サービス事業が同23.8%増の50億76百万円、合計が同25.8%増の110億22百万円だった。情報基盤事業はセキュリティン関連の受注が好調で、アプリケーション・サービス事業はクラウドへのシフトに伴って受注残高が伸長した。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)48億48百万円、第2四半期(7月~9月)52億90百万円、第3四半期(10月~12月)49億41百万円、営業利益は第1四半期1億04百万円、第2四半期4億12百万円、第3四半期2億58百万円だった。

■16年3月期通期は2桁増収増益・増配予想、17年3月期も増収増益期待

 前期(16年3月期)通期の連結業績予想(5月8日公表)については、売上高が前期(15年3月期)比10.8%増の204億円で、営業利益が同15.0%増の13億円、経常利益が同14.8%増の13億円、そして純利益が同43.7%増の8億40百万円としている。配当予想は同2円増配の年間17円(期末一括)としている。予想配当性向は21.2%となる。

 人件費の増加などを吸収して2桁増収増益予想だ。セグメント別計画は、情報基盤事業の売上高が同14.6%増の138億円、営業利益が同8.9%増の11億20百万円、アプリケーション・サービス事業の売上高が同3.6%増の66億円、営業利益が同78.2%増の1億80百万円としている。

 情報基盤事業では、サイバー攻撃に対応した次世代ネットワーク・セキュリティ関連商材・サービスが好調で、セキュリティ運用・監視サービス契約数も順調に増加する。またアプリケーション・サービス事業ではCRM分野、医療分野、インターネットサービス分野におけるクラウドサービスが好調に推移する。医療分野では医療情報クラウドサービス「NOBORI」の引き合いが好調だ。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が73.9%、営業利益が59.5%、経常利益が59.8%、純利益が53.2%である。やや低水準の形だが第4四半期の構成比が高い収益構造でありネガティブ要因とはならない。15年3月期は第3四半期累計の構成比が売上高70.9%、営業利益46.7%、経常利益45.4%、純利益37.9%だったことを考慮すれば、16年3月期第3四半期累計の進捗率は高水準である。通期ベースで増収増益基調であり、増額余地もありそうだ。さらに17年3月期も増収増益基調が期待される。

■中期的に年率売上高成長率10%目指す

 15年5月発表の中期経営計画「TMX3.0」では、経営目標数値として18年3月期の売上高251億円(情報基盤事業170億円、アプリケーション・サービス事業81億円)、営業利益23億50百万円(情報基盤事業16億円、アプリケーション・サービス事業7億50百万円)を掲げている。

 中期的には年率売上高成長率10%で、M&Aや海外展開を含めて事業規模250億円~300億円、そしてストック売上(クラウド、保守、運用・監視サービス)比率50%超を目指し、売上高営業利益率10%へ挑戦する。

 従来のIT産業の労働集約的な請負型ビジネスから脱却し、自らITサービスを創造し、ITサービスを提供する「次世代のITサービスクリエーター」そして「次世代のITサービスプラバイダー」への変貌を継続する。

 重点事業戦略は、クラウド関連事業の戦略的・加速度的推進、セキュリティ&セイフティの追求として、コストダウンによる高収益化やパートナーとのアライアンス強化も推進する。

 なお株主還元については連結配当性向20%以上を基本方針として、利益水準を踏まえた配当額の引き上げを重視し、株主優待制度の充実も推進する。

■株主優待制度は9月末に実施

 株主優待制度については、毎年9月30日現在の500株以上保有株主を対象として実施している。15年9月末の優待内容は、500株以上~1000株未満保有株主に対して1000円相当の商品または寄付から1点、1000株以上保有株主に対して3000円相当の商品または寄付1点を選択する内容だった。

 なお15年8月に自己株式取得を実施(取得株式総数347万8000株、買付価格881円、取得価額総額約30億64百万円)した。これによって楽天<4755>の議決権所有割合が31.57%から4.16%に低下し、大株主順位は第1位から第3位に低下した。楽天とは今後も良好な取引関係を維持するとしている。そして16年3月期末のROEは15.8%に向上(16年3月期業績予想数値で推計)する見込みだ。

■株価は上場来高値圏で堅調

 株価の動きを見ると、3月16日に上場来高値1975円まで上伸し、その後も上場来高値圏で堅調に推移している。そして4月11日には1940円まで上伸した。上値を試す動きだ。

 4月11日の終値1931円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS80円14銭で算出)は24倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間17円で算出)は0.9%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS530円20銭で算出)は3.6倍近辺である。時価総額は約239億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインの上昇トレンドだ。サイバーセキュリティ関連などのテーマ性も注目点となる。自律調整が一巡して上値を試す展開だろう。

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