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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アルコニックスは自律調整一巡して戻り試す、17年3月期増収増益基調期待
- 2016/4/13 08:22
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アルコニックス<3036>(東1)は、商社機能と製造業を融合した「非鉄金属の総合企業」を目指してM&A戦略も積極活用している。16年3月期の純利益は子会社化した平和金属の負ののれん発生益を計上して大幅増益予想である。そして17年3月期も増収増益基調が期待される。株価は3月下旬の戻り高値圏から一旦反落したが、指標面の割安感は強い。自律調整が一巡して戻りを試す展開だろう。なお5月13日に16年3月期決算発表を予定している。
■商社機能と製造業を融合した「非鉄金属の総合企業」
軽金属・銅製品(伸銅品、銅管、アルミフィン材など)、電子・機能材(レアメタル・レアアース、チタン・ニッケル製品など)、非鉄原料(アルミ・亜鉛地金など)、建設・産業資材(配管機材など)を取り扱う非鉄金属商社である。
レアメタル分野に強みを持つことも特徴だが、中期成長に向けて商社機能と製造業を融合した「非鉄金属の総合企業」を目指し、M&Aも積極活用して、非鉄金属の周辺分野も含めた川上(製造)~川中(流通)~川下(問屋)を網羅するビジネス展開を推進している。
13年1月金属・化成品メーカーの米ユニバーティカル社を子会社化、13年3月アルミ合金スクラップ販売の大阪アルミセンターを子会社化、13年4月産業機械用精密加工部品メーカーの大羽精研を子会社化、14年4月住宅建設関連資材メーカーのケイ・マックを持分法適用関連会社化、14年11月子会社アルミ銅センター(大阪アルミセンターが14年9月1日付で商号変更)が稲田商会(福岡県北九州市)の銅リサイクル事業(稲田銅センター)を譲り受けた。
15年7月には、100%出資で設立した中間持株会社アルコニックス・トーカイが、東海溶業(愛知県豊田市)の全株式を取得して子会社化した。東海溶業は溶接材料の製造ならびに溶射加工事業を展開し、金型用肉盛溶材および溶射加工において業界で高い地位を確保している。また国内主要自動車メーカーを筆頭に優良大手企業を取引先として安定した収益基盤を確立している。当社グループの製造・加工分野に溶接・溶射加工という新たな事業基盤が加わった。
15年10月には非鉄金属専門商社の平和金属(大阪市)の株式を取得して連結子会社化(所有割合78.35%)した。株式取得時期が当初予定より遅れたが16年3月期第3四半期(10月~12月)から連結対象とした。同社は大手高炉メーカーの指定代理店で、国内の大手空調機器や自動車メーカーなどの優良顧客を持ち、グループに製造子会社も有している。
16年2月には、100%出資の中間持株会社アルコニックス・エムティが、金属製品の非破壊検査(表面探傷検査)および金属マーキングの国内トップ企業であるマークテック(東京都)の全株式を取得して子会社化した。
■収益は非鉄金属の市況が影響するが積極的なM&A効果も寄与
15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)484億04百万円、第2四半期(7月~9月)485億96百万円、第3四半期(10月~12月)546億06百万円、第4四半期(1月~3月)499億37百万円で、経常利益は第1四半期17億13百万円、第2四半期13億95百万円、第3四半期13億02百万円、第4四半期7億95百万円だった。
レアメタル・レアアースなど非鉄金属の市況、持分法投資損益、M&Aに伴うのれん償却や負ののれん益なども収益変動要因となるが、積極的なM&Aの効果も寄与して収益拡大基調である。15年3月期のROEは14.9%で14年3月期比2.5ポイント低下、自己資本比率は29.3%で同5.0ポイント上昇した。配当性向は14.6%だった。
■16年3月期第3四半期累計は負ののれん発生益で最終増益
前期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)連結業績は、売上高が前年同期比1.3%増の1536億14百万円、営業利益が同18.4%減の31億07百万円、経常利益が同24.1%減の33億48百万円、純利益が同39.9%増の45億06百万円だった。
レアメタル・レアアースの市況低迷などがマイナス要因だったが、自動車、空調機器、飲料缶、航空機、スマホ・タブレット端末関連などが堅調に推移し、第3四半期から新規連結した平和金属も寄与して増収となり、製造子会社の増益などで売上総利益は同2.8%増加した。ただし新規連結による陣容拡大や貸倒引当金戻入の減少などで販管費が増加したため営業減益だった。売上総利益率は6.0%で同0.1ポイント上昇、販管費比率は4.0%で同0.6ポイント上昇した。
営業外収益では、持分法投資利益が減少(前期は9億28百万円計上、今期は2億49百万円計上)した。ケイ・マックを持分法適用関連会社化したことに伴う負ののれん発生益が一巡した。受取配当金は増加(前期は67百万円計上、今期は2億12百万円計上)した。営業外費用では為替差損が減少(前期は3億90百万円計上、今期は30百万円計上)した。また特別利益に平和金属の株式取得に伴う負ののれん発生益19億75百万円を計上して純利益は大幅増益だった。
セグメント別(連結調整前)に見ると、軽金属・銅製品は同12.8%増収だったが、ケイ・マックの負ののれん発生益が一巡して経常利益は同24.3%減の20億43百万円だった。電子・機能材はスマホ・タブレット端末関連が伸長したが、太陽光発電関連部材の減少やレアメタル・レアアースの市況低迷などで同5.2%減収となり、経常利益は同10.1%減の11億54百万円だった。非鉄原料は中国経済の低迷の影響で同2.3%減収となり、経常利益は市況下落に伴う在庫評価損などで同84.8%減の43百万円だった。建設・産業資材は国内の配管機材などが低調で同9.9%減収となり、経常利益は同27.9%減の1億15百万円だった。
なお四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)529億30百万円、第2四半期(7月~9月)482億55百万円、第3四半期(10月~12月)524億29百万円、経常利益は第1四半期12億71百万円、第2四半期10億43百万円、第3四半期10億34百万円だった。
■16年3月期通期は最終増益予想
前期(16年3月期)通期の連結業績予想(11月6日に売上高、営業利益、経常利益を減額、純利益を増額修正)は、売上高が前々期(15年3月期)比2.2%増の2060億円、営業利益が同14.9%減の39億円、経常利益が同21.2%減の41億円、純利益が同36.9%増の48億円としている。純利益は平和金属の負ののれん発生益を計上して大幅増益予想だ。配当予想(5月15日公表)は同4円増配の年間44円(第2四半期末22円、期末22円)で、予想配当性向は11.8%となる。
セグメント別経常利益の計画は、軽金属・銅製品が同21.8%減の23億50百万円、電子・機能材料が同11.2%減の15億40百万円、非鉄原料が同88.8%減の30百万円、建設・産業資材が同13.0%減の1億80百万円としている。軽金属・銅製品は新規M&Aが寄与して増収を見込み、利益はケイ・マックの負ののれん発生益一巡の影響を除けば実質的に前期と同水準となる。建設・産業資材では新規連結の東海溶業が下期から本格寄与する。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が74.6%、営業利益が79.7%、経常利益が81.7%、純利益が93.9%と概ね順調な水準であり、通期増額余地もありそうだ。そして今期(17年3月期)も増収増益基調が期待される。
■新中期経営計画で18年3月期ROE13~15%程度目標
15年5月策定の新中期経営計画(16年3月期~18年3月期、1年ごとに見直すローリング方式)では、経営目標値として18年3月期の経常利益65億円超、純利益43億円超、ROE13~15%程度、NET/DER1.0~1.3倍程度を掲げ、3年間の投融資総額はM&Aを中心に200億円の計画としている。
セグメント別には、軽金属・銅製品が売上高982億円、経常利益34億50百万円、電子・機能材が売上高1008億円、経常利益23億80百万円、非鉄原料が売上高360億円、経常利益3億10百万円、建設・産業資材が売上高180億円、経常利益3億60百万円としている。
商社機能と製造業を融合した「非鉄金属の総合企業」を目指し、アクションプランとして、業容拡大に向けた川上・川中・川下等のM&A推進および新規事業投資案件の発掘推進、成長著しいレアメタルおよび電子・機能材料分野のさらなる強化、アルコニックスグループの商いの基盤をなすアルミ・銅分野の維持・拡大、環境問題に対応したリサイクル分野の強化、海外店ネットワークのさらなる充実による顧客ニーズ対応および地場取引・三国間取引の拡大に向けた商社機能の発揮としている。
積極的なM&A戦略も奏功し、グループのシナジー効果を高めて中期的に収益拡大基調だろう。
■株価は自律調整一巡して戻り試す
株価の動きを見ると、戻り歩調の展開で3月29日の戻り高値1670円まで上伸した。その後一旦反落したが1400円近辺から切り返す動きだ。自律調整が一巡したようだ。
4月12日の終値1475円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS372円83銭で算出)は4倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間44円で算出)は3.0%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS2053円83銭で算出)は0.7倍近辺である。時価総額は約190億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、13週移動平均線近辺で下げ渋る動きだ。サポートラインを確認した形だろう。指標面の割安感は強く、自律調整が一巡して戻りを試す展開だろう。