【アナリスト水田雅展の銘柄分析】川崎近海汽船は調整一巡して出直り、17年3月期も増益基調期待

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 川崎近海汽船<9179>(東2)は近海輸送と内航輸送を主力として、新航路の開設や新規分野への進出を積極化している。原油価格下落メリットなどで17年3月期も増益基調が期待される。株価は3月の戻り高値圏から反落したが、5~6倍近辺の低PER、3%台の高配当利回り、0.4倍近辺の低PBRと指標面の割安感は強い。調整が一巡して出直り展開だろう。なお4月29日に16年3月期決算発表を予定している。

■近海輸送と内航輸送を展開、新規分野のオフショア支援船は16年竣工予定

 石炭・木材・鋼材輸送などの近海部門、石炭・石灰石・紙製品・農産品輸送やフェリー輸送などの内航部門を展開している。

 中期成長に向けた新規分野として13年10月オフショア・オペレーションと均等出資で合弁会社オフショア・ジャパンを設立した。日本近海における海洋資源開発・探査・掘削設備・洋上再生可能エネルギー設備に関わるオフショア支援船業務に進出する。

■新規航路開設も積極化

 15年12月、静岡県清水港と大分県大分港をRORO船で結ぶ新規航路を16年10月に開設すると発表した。清水~大分間を20時間で結ぶ週3便運航を予定している。トレーラーでの海陸一貫輸送によって九州と首都圏、東海甲信地域を結ぶ物流のモーダルシフトが加速し、ドライバー不足問題の解決策の一つとして期待されている。

 また15年12月には当社、ネスレ日本、一般財団法人日本気象協会の3社が、気象予報を活用した海運により、日本のモーダルシフトを推進することで合意した。

 16年3月には岩手県宮古港と北海道室蘭港を結ぶ新たなフェリー航路(宮古~室蘭326km)の開設を発表した。航路開設時期は18年3月予定で1日1往復、毎日運航する。宮古港、室蘭港とも近隣に国立公園など観光資源が豊富なため旅客需要も期待できるとしている。

■修繕費が増加した15年3月期第1四半期をボトムに営業損益改善基調

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)111億91百万円、第2四半期(7月~9月)122億87百万円、第3四半期(10月~12月)119億83百万円、第4四半期(1月~3月)104億85百万円、営業利益は第1四半期56百万円の赤字、第2四半期8億59百万円、第3四半期9億60百万円、第4四半期5億98百万円だった。

 所有船のドック入りが集中して修繕費が増加した第1四半期をボトムとして、営業損益は改善基調である。また15年3月期の売上総利益率は12.9%で14年3月期比0.7ポイント上昇、販管費比率は7.8%で同横ばい、ROEは2.2%で同0.2ポイント低下、自己資本比率は56.3%で同3.6ポイント上昇した。配当性向は57.8%だった。

■16年3月期第3四半期累計は大幅増益

 前期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比6.8%減の330億54百万円、営業利益が同40.7%増の24億80百万円、経常利益が同32.6%増の24億40百万円、純利益が同22.8%増の16億円だった。

 ドライバルク市況の低迷が続く外航海運は厳しい事業環境で、燃料油価格下落に伴う燃料調整金の減少などで減収だったが、全体として安定した輸送量を確保し、為替の円安、燃料油価格の下落、積極的な営業展開、コスト削減効果などが寄与して大幅増益だった。

 なお売上総利益率は15.9%で同3.4ポイント上昇、販管費比率は8.4%で同0.9ポイント上昇した。営業外では為替差損益が悪化(前期は差益1億30百万円計上、今期は差損14百万円計上)したが、金融収支が改善(前期は60百万円の赤字、今期は29百万円の赤字)した。特別利益では固定資産売却益2億99百万円が一巡したが、特別損失では減損損失14百万円、用船契約解約金38百万円が一巡した。

 セグメント別に見ると、近海部門は売上高が同4.8%減の122億89百万円、営業利益が7億42百万円の赤字(前年同期は9億92百万円の赤字)だった。バルク輸送の荷動き低迷や市況低迷の継続などで減収だったが、コスト削減効果などで営業赤字が縮小した。

 内航部門は売上高が同7.9%減の207億62百万円、営業利益が同17.0%増の32億23百万円だった。不定期船輸送では小型貨物船の市況低迷が続いたが、鉄鋼やセメント向け専用船が順調だった。定期船輸送で大型船投入によるスペース拡大を活用した営業展開や繁忙期の休日臨時運航などが奏功した。フェリー輸送では宅配貨物などの活発な荷動きでトラック輸送が好調だった。

 四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)107億16百万円、第2四半期(7月~9月)114億84百万円、第3四半期(10月~12月)108億54百万円、営業利益は第1四半期3億円、第2四半期11億87百万円、第3四半期9億93百万円だった。

■16年3月期通期は再増額の可能性、17年3月期も増益基調期待

 前期(16年3月期)通期の連結業績予想(10月30日に売上高を減額、利益を増額)は、売上高が前期比6.4%減の430億円で、営業利益が同12.2%増の26億50百万円、経常利益が同6.6%増の26億円、純利益が同3.4倍の17億50百万円としている。配当予想(10月30日に増額)は同1円増配の年間11円(第2四半期末6円、期末5円)で、予想配当性向は18.5%となる。

 前提条件は、為替レートが1米ドル=120円(前期実績1米ドル=108円13銭)、燃料油価格がC重油4万6300円(前期実績6万8175円)としている。

 なお3月8日に固定資産譲渡と特別利益発生を発表した。船隊整備計画の一環として老齢船を処分し、連結子会社TROPICAL LINEが保有する固定資産(船舶一隻)を売却する。譲渡価格約3億51百万円、譲渡益約2億42百万円で、16年3月期の特別利益に計上する。16年3月期業績に与える影響については、修正が必要と判断される場合は速やかに開示するとしている。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は、売上高が76.9%、営業利益が93.6%、経常利益が93.9%、純利益が91.4%と高水準である。第4四半期における季節波動や近海航路での市況低迷などを勘案して通期会社予想を据え置いたが、円安や原油価格下落メリットなどに加えて、特別利益の発生も考慮すれば通期会社予想は再増額の可能性が高いだろう。そして17年3月期も増益基調が期待される。

■中期経営計画で18年3月期ROE8.9%を目指す

 15年4月に策定した15年度中期経営計画では、経営目標値として18年3月期の売上高495億円(近海部門175億円、内航部門320億円)、営業利益34億円(近海部門5億円の赤字、内航部門39億円の利益)、経常利益35億円、純利益24億円、ROE8.9%、自己資本比率61.1%、DER0.45倍を掲げている。前提の為替レートは1米ドル=120円、燃料油価格は7万1500円である。

 新造船建造等に対する3年間の合計投資額は133億円とした。期間中の新造船は近海部門の一般貨物船1隻(社船または傭船)、内航部門の石炭船一隻(傭船)、一般貨物船1隻(傭船)、石灰石専用船1隻(社船)、RORO船1隻(社船)、新規事業のオフショア船1隻(共有船)の予定である。

 近海部門では、喫緊の課題である収益改善に向けて、適正な船隊規模による効率配船と新規顧客の獲得を目指す。内航部門では、不定期船輸送における各専用船の安定輸送確保と新規貨物開拓、定期船輸送とフェリー輸送における新規航路の開設を進める方針だ。

 陸上輸送におけるドライバー不足で海上輸送へのモーダルシフトが注目され、中期的にはオフショア支援船業務や新航路開設も寄与して収益拡大が期待される。

■株価は調整一巡して出直り

 株価の動きを見ると、3月28日の戻り高値336円から反落して4月8日と11日の305円まで調整したが、2月安値293円まで下押す動きは見られない。調整が一巡したようだ。

 4月12日の終値311円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS59円61銭で算出)は5~6倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間11円で算出)は3.5%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS784円66銭で算出)は0.4倍近辺である。時価総額は約92億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線が戻りを押さえる形で反落したが、5~6倍近辺の低PER、3%台の高配当利回り、0.4倍近辺の低PBRと指標面の割安感は強い。調整が一巡して出直り展開だろう。

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