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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】JSPは4月上旬に急落したが売り一巡して反発、17年3月期増益基調期待
- 2016/4/14 06:35
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
JSP<7942>(東1)は発泡プラスチック製品専業の大手で、自動車用や住宅用など高付加価値製品の開発・拡販を推進している。16年3月期は増益・増配予想である。高付加価値製品の拡販、原料価格と販売価格の差であるスプレッドの適正水準への回復などが寄与して、17年3月期も増益基調が期待される。株価は4月上旬に急落する場面があったが、売り一巡して反発展開だろう。
■発泡プラスチック製品専業大手、高機能・高付加価値製品を開発・拡販
三菱瓦斯化学<4182>がTOB(買付価格2686円)を実施し、15年3月16日をもって同社の連結子会社となった。
発泡プラスチック製品専業の大手である。押出発泡技術をベースとするポリスチレン・ポリエチレン・ポリプロピレンシートなどの押出事業(産業用包装材、食品用包装材、広告用ディスプレー材、住宅用断熱材など)、ビーズ発泡技術をベースとする発泡ポリプロピレン・発泡ポリエチレン・発泡性ポリスチレン製品などのビーズ事業(自動車衝撃緩衝材、家電製品緩衝材、IT製品輸送用通い函など)、その他事業(一般包材など)を展開している。
■高機能・高付加価値製品の開発・拡販を推進
自動車部品用発泡ポリプロピレン「ピーブロック」や、住宅用高性能断熱材「ミラフォーム」など、高機能・高付加価値製品の拡販を推進するとともに、さらなる高機能新製品の開発を強化している。
15年1月には米国で電子線架橋法による発泡ポリエチレンシート「integxion事業に参入し、米ミシガン州ジャクソン工場内の新工場で生産開始した。一般の発泡ポリエチレンシートに比べて、より均一で微細な気泡構造と表面性能が特徴であり、医療用、自動車部品用など高品質・高機能分野での需要が期待されている。
さらに高機能新製品としては、多層化技術を用いた高性能発泡ポリエチレンシート「xealogic」、環境にやさしい植物由来のポリ乳酸発泡ビーズ・発泡体「LACTIF」、各種樹脂・金属・無機機材と発泡体との複合体「ACTech」、極めて高い光反射率(100%に近い)「超微細発泡シート」、ポリカーボネートを当社技術で発泡させて防蟻剤なしでシロアリに浸食されない唯一の発泡プラスチック断熱材「ミラポリカフォーム」などの開発や用途拡大を推進している。
■自動車用「ピーブロック」を国内外で生産拡大
14年4月には、発泡ポリプロピレンビーズ(成型品「ピーブロック」用ビーズ)の新工場として北九州工場が生産を開始し、国内では栃木県鹿沼市、三重県四日市市との3拠点体制を確立した。
海外生産は14年11月に中国・武漢およびタイで、それぞれ「ピーブロック」を製造販売する子会社の設立と新工場の建設を発表した。需要が拡大している中国およびタイにおいて「ピーブロック」の安定供給を図る。生産開始時期は中国が17年1月、タイが16年3月の予定だ。中国・武漢は中国における「ピーブロック」製造の4拠点目となる。
なおインドにおける「ピーブロック」生産については、工場建設を17年3月期以降に延期している。インドにおける需要は拡大基調だが、成長速度が依然緩やかであり、採算性の確保に時間を擁するためとしている。インド向けには当面、シンガポール子会社から製品供給する。
■16年3月期から有形固定資産の減価償却方法変更
15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)283億77百万円、第2四半期(7月~9月)298億89百万円、第3四半期(10月~12月)299億75百万円、第4四半期(1月~3月)286億82百万円、営業利益は第1四半期9億25百万円、第2四半期17億48百万円、第3四半期17億29百万円、第4四半期12億65百万円だった。
為替、原油価格、プロダクトミックスなども影響する収益構造である。15年3月期の売上総利益率は24.5%で14年3月期比0.7ポイント低下、販管費比率は19.7%で同0.2ポイント低下、ROEは6.5%で同1.7ポイント低下、自己資本比率は56.0%で同2.6ポイント上昇した。なお配当性向は22.1%だった。
16年3月期から、有形固定資産の減価償却方法を「主として定率法」から「主として定額法」に変更した。当社グループの生産設備は技術的陳腐化リスクが少なく安定的な使用が見込まれるため、定額法による期間損益計算がより合理的に使用実態を反映できると判断した。
■16年3月期第3四半期累計は大幅増益
前期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比0.8%減の875億45百万円、営業利益が同68.7%増の74億28百万円、経常利益が同52.6%増の72億50百万円、純利益が同48.6%増の52億09百万円だった。
国内景気回復遅れによる需要減少、原燃料価格下落に伴う製品価格改定などで減収だったが、高付加価値製品拡販によるプロダクトミックスの改善、国内における原料価格と販売価格の差であるスプレッドの適正水準への回復、償却方法変更による減価償却費の減少、海外事業における販売数量増加と円安に伴う円換算額の増加などが寄与して大幅増益だった。
売上総利益率は29.3%で同4.8ポイント上昇、販管費比率は20.8%で同1.3ポイント上昇した。営業外では為替差損益が悪化(前期は差益1億15百万円計上、今期は差損4億62百万円計上)したが、持分法投資損益はやや改善(前期は損失2百万円計上、今期は利益12百万円計上)した。特別利益では新工場建設に伴う補助金収入3億01百万円を計上、特別損失では在ドイツ欧州孫会社における事業構造改革(老朽化した成形工場を17年3月閉鎖予定)費用4億11百万円を計上した。
セグメント別に見ると、押出事業は売上高が同4.9%減の291億54百万円、営業利益(連結調整前)が同86.7%増の22億80百万円だった。国内における需要減少などで減収だったが、原料価格と販売価格のスプレッドの適正化、償却方法変更による減価償却費の減少などが寄与して大幅増益だった。
ビーズ事業は、売上高が同2.7%増の540億45百万円となり、営業利益が同61.4%増の58億12百万円だった。国内における需要減少の影響があったが、高付加価値の発泡ポリプロピレン「ピーブロック」が、自動車部品への採用拡大や家電包材緩衝剤の需要拡大などで好調に推移した。円安に伴う円換算額の増加や償却方法変更による減価償却費の減少も寄与して大幅増益だった。その他事業は売上高が同12.4%減の43億45百万円、営業利益が同30.2%減の15百万円だった。
なお四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)278億04百万円、第2四半期(7月~9月)294億07百万円、第3四半期(10月~12月)303億24百万円、営業利益は第1四半期16億49百万円、第2四半期24億71百万円、第3四半期33億08百万円だった。営業損益は拡大基調だ。
■16年3月期通期大幅増益・増配予想、17年3月期も増益基調期待
前期(16年3月期)通期の連結業績予想(10月29日に売上高を減額、利益を増額)は、売上高が前々期(15年3月期)比1.2%減の1155億円、営業利益が同41.2%増の80億円、経常利益が同32.3%増の80億円、そして純利益が同28.7%増の52億円としている。最高益更新予想だ。
国内における需要低迷、原燃料価格下落に伴う製品価格改定などで減収だが、高付加価値製品拡販によるプロダクトミックス改善、原料価格と販売価格のスプレッドの適正化、償却方法変更による減価償却費減少(約6億60百万円)などで大幅増益予想だ。なお前提は為替レートが1米ドル=120円、1ユーロ=134円、原油価格(ドバイ)が1バーレル=50米ドルとしている。
主要セグメント別の計画は、押出事業の売上高が同1.0%減の395億10百万円、営業利益(連結調整前)が同79.4%増の24億18百万円、ビーズ事業の売上高が同微減の703億12百万円、営業利益が同36.1%増の66億07百万円としている。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が75.8%、営業利益が92.8%、経常利益が90.6%、純利益が100.2%と高水準である。通期利益予想は再増額余地があるだろう。さらに今期(17年3月期)も増益基調が期待される。
配当予想(1月29日に増額修正)は、同10円増配の年間40円(第2四半期末15円、期末25円)で、予想配当性向は22.9%となる。利益配分については、安定した配当を重視するとともに、各事業年度の連結業績と将来の事業展開に必要な内部留保の充実などを勘案しながら、総合的に決定する方針としている。
■新中期経営計画で18年3月期営業利益率6.5%以上目標
15年5月策定の新中期経営計画「Deepen&Grow2017」では、前提条件を1米ドル=110円、1ユーロ=140円、原油価格(ドバイ)1バーレル=105ドルとして、目標数値に18年3月期の売上高1350億円(海外が約530億円)、営業利益88億円(売上高営業利益率6.5%以上)を掲げた。セグメント別売上高は押出事業444億05百万円、ビーズ事業837億76百万円、その他事業68億19百万円としている。
有望テーマ絞り込みによる新製品の事業化を推進して、新製品売上高100億円を目指す。国内事業は高収益体質へのシフトを加速する。海外事業は「ピーブロック」の拠点拡大と能力増強を推進に加えて「ピーブロック」に次ぐ第2の柱の育成を目指す。そして3年間合計の設備投資額は約200億円としている。中期的に収益拡大基調が期待される。
■株価は4月上旬に急落したが、売り一巡して反発
株価の動きを見ると、4月上旬に2200円近辺でのモミ合いから下放れて急落する場面があったが、4月8日の年初来安値1845円から切り返しの動きを強めている。売り一巡したようだ。
4月13日の終値1941円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS174円43銭で算出)は11~12倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間40円で算出)は2.1%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS2190円61銭で算出)は0.9倍近辺である。時価総額は約610億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形となったが、日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が拡大して売られ過ぎ感を強めている。指標面に割高感はなく、売り一巡して反発展開だろう。