【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ジャパンフーズは調整一巡して上値試す、17年3月期も増益基調期待

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ジャパンフーズ<2599>(東1)は飲料受託生産の最大手である。飲料受託生産の収益力強化に加えて、新規事業分野への展開も強化している。16年3月期は期初計画を上回る大幅増益(3月17日に利益を増額修正)で、17年3月期も増益基調が期待される。株価は3月の年初来高値圏から一旦反落したが、0.8倍近辺の低PBRも評価材料であり、調整が一巡して上値を試す展開だろう。

■飲料受託生産の国内最大手、フレキシブルで効率的な生産に強み

 伊藤忠商事<8001>系で飲料受託生産(OEM)の国内最大手である。品目別では炭酸飲料と茶系飲料を主力として、コーヒー飲料、果汁飲料、機能性飲料、酒類飲料、ファーストフード店のディスペンサーでサービスされる業務用濃縮飲料(ウーロン茶、アイスコーヒーなど)を製造している。

 主要得意先はアサヒ飲料、キリンビバレッジ、伊藤園<2593>、サントリー食品インターナショナル<2587>などの大手飲料メーカーである。容器別ではペットボトル飲料が主力で、缶飲料は戦略的に減少させている。

 さまざまな容器(ペットボトル、瓶、缶)の飲料を世界最大級の本社1工場で生産し、市場環境や顧客ニーズの変化に対応したフレキシブルで効率的な生産を強みとしている。容器のコストダウンなどにも積極的に取り組んでいる。また本社工場のある千葉県長柄町は、首都圏に近いロケーションという競争優位性に加えて、表層地盤の揺れやすさが0.4~0.6と安定しているため災害優位性にも優れている。

■上期(4月~9月)が繁忙期、下期(10月~3月)が閑散期の収益構造

 15年3月期の四半期別推移を見ると、受託製造数量は第1四半期(4月~6月)1344万6千ケース、第2四半期(7月~9月)1068万9千ケース、第3四半期(10月~12月)735万3千ケース、第4四半期(1月~3月)926万ケース、売上高は第1四半期89億32百万円、第2四半期67億28百万円、第3四半期45億49百万円、第4四半期46億53百万円、営業利益は第1四半期6億37百万円、第2四半期1億54百万円、第3四半期4億67百万円の赤字、第4四半期2億65百万円の赤字だった。

 夏場の上期(4月~9月)は繁忙期だが、冬場の下期(10月~3月)は飲料業界全体の閑散期となって生産量が減少するため、下期は営業損益が赤字となる収益構造だ。ただし15年3月期の第4四半期は第3四半期に比べて赤字が大幅に縮小した。15年3月期は消費増税の影響や夏場の天候不順の影響を受けたが、受託製造数量増加や生産性向上などで営業損益は改善基調となった。

■16年3月期から一部取引形態を変更、減価償却方法を変更

 なお16年3月期から、一部飲料メーカーとの取引形態変更(有償支給から無償支給に変更)に伴って、見かけ上の売上高は大幅に減少するが、実質的な売上高である加工賃収入に影響はない。また建物およびリース資産を除く有形固定資産の減価償却方法について、16年3月期から「主として定率法」を「主として定額法」に変更した。

■16年3月期第3四半期累計は大幅増益

 前期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)の非連結業績は、売上高が前年同期比39.5%減収だったが、営業利益が3.1倍増益、経常利益同3.1倍増益、純利益が2.7倍増益だった。

 一部飲料メーカーとの取引形態変更(有償支給から無償支給に変更)に伴って見かけ上の売上高は大幅減収だが、実質的な売上高となる加工賃収入は増収だった。受託製造数量は同0.5%増の3165万9千ケースだった。消費増税などの影響が一巡して飲料業界全体の販売数量が同3%増(飲料総研調べ)と上向き、積極的な営業活動による新規商材の獲得効果も寄与した。

 売上総利益は同43.7%増加した。加工賃収入の増加に加えて、電力・燃料等のユーテリティ関連コストの低減、自社でペットボトルを製造することによる製造利益の取り込み、原価低減による変動経費の減少、減価償却方法変更に伴う減価償却費の減少も寄与した。販管費は同横ばいだった。特別利益では国庫補助金10億76百万円、特別損失では固定資産圧縮損7億71百万円、関係会社株式評価損3億80百万円を計上した。

 なお四半期別の推移を見ると、受託製造数量は第1四半期(4月~6月)1405万7千ケース、第2四半期(7月~9月)1122万9千ケース、第3四半期(10月~12月)637万3千ケースで、売上高は第1四半期55億28百万円、第2四半期40億56百万円、第3四半期26億33百万円、営業利益は第1四半期10億54百万円、第2四半期5億10百万円、第3四半期5億45百万円の赤字だった。

■16年3月期通期は計画超の大幅増益、17年3月期も増益基調期待

 前期(16年3月期)通期の非連結業績予想については、3月17日に修正(売上高を減額、利益を増額)を発表した。前回予想(4月24日公表)に対して売上高を10億円減額したが、利益は営業利益を3億20百万円、経常利益を3億円、純利益を30百万円増額した。

 利益面において、原油価格下落メリットで燃料費等の単価が大幅に下落し、ユーテェリティを含めたコスト低減策も寄与して、営業利益、経常利益とも期初計画を大幅に上回ったようだ。なお特別利益に国庫補助金収入10億76百万円を計上したが、特別損失に固定資産圧縮損7億71百万円、関係会社株式評価損3億80百万円を計上し、税金費用も増加したため、純利益の修正幅は小幅にとどまった。

 修正後の予想は、売上高が前々期(15年3月期)比36.8%減の157億円、営業利益が同16.9倍の10億円、経常利益が同16.7倍の10億円、純利益が4億20百万円の黒字(前々期は24百万円の赤字)とした。

 配当予想は前回予想(4月24日公表)を据え置いて、前々期と同額の年間27円(第2四半期末10円、期末17円)としている。推定配当性向は31.0%となる。

 新規商材受託などで受託製造数量が増加し、実質的な売上高となる加工賃収入および売上総利益が増加基調である。操業度上昇効果やコストダウン効果も寄与して、今期(17年3月期)も増益基調が期待される。

■コア事業の収益拡大に向けた投資と新規ビジネスの拡大を推進

 中期成長戦略については、コアビジネス(国内飲料受託製造事業)の収益拡大に向けて将来を見据えた投資の着実な推進、低重心経営の実践、新規商材への取り組み強化、および新規ビジネス(海外飲料受託製造事業、国内水宅配事業、自社ブランド商品、その他)の着実な推進と事業収益の拡大、そして成長戦略を支える経営基盤の強化としている。

 コアビジネス(国内飲料受託製造事業)では積極投資を推進し、12年7月に本社工場で世界最新鋭の炭酸・非炭酸兼用無菌充填ライン(Eライン)が稼動した。また14年3月には既存の大型ペットボトルライン(Tライン)もリバイタライズ(機能増強)で炭酸・非炭酸兼用無菌充填ライン化した。

 新規ビジネス分野では、国内で水宅配事業を展開するウォーターネット、および中国で飲料受託製造事業を展開する東洋飲料(常熱)有限公司(東洋製罐との合弁)への出資比率を引き上げている。ウォーターネットの販売数量、東洋飲料(常熱)の受託製造量とも順調に増加し、ウォーターネットは黒字が定着したようだ。

 東洋飲料(常熱)は中国における日系初の飲料受託製造会社で、国際的な認証規格「FSSC22000」も取得している。第1期として2ライン(12年8月および9月)、第2期として2ライン(13年5月および8月)が稼働し、さらに15年8月には1ラインを大型PET対応に改造した。15年は中国系メーカーを中心に取引先が大幅に増加し、受託製造量が拡大する16年の黒字化を目指している。

 自社ブランド商品に関しては、本社工場がある千葉県産の農林水産物を使用した商品「おいしい房総サイダー」シリーズなどを、千葉県を中心に販売している。16年4月には「千葉の醤油サイダー」を新たに「千葉のしょうゆサイダー」としてリニューアル販売開始した。千葉県銚子市のヤマサ醤油の協力を得て、甘辛団子風のちょっぴり甘く、後味にしょうゆの風味がほのかに残るサイダーに仕上げた。

■16年4月以降にポスト中期経営計画を公表の方針

 前々期(15年3月期)は消費マインドの低迷や全国的な天候不順の影響を受けたが、中期経営計画「JUMP2015」で打ち出した経営方針および方向性を堅持し、成長戦略を着実に推進するとしている。

 15年10月には組織変更を実施した。国内外での新規ビジネス創出・推進機能の強化を図るため、新規ビジネス事業部に海外チームを新設した。さらに水宅配事業の強化を図るため、新規ビジネス事業部のWNチームを移管してウォーターネット事業部を新設した。新規ビジネス分野の業容拡大・収益化を加速させる戦略だ。

 15年12月には、コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方、コーポレート・ガバナンスの体制ならびに運営に関する事項を定めた「コーポレート・ガバナンス基本方針」の制定をリリースした。当社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を図るため、当社経営の透明性・公正性を高め、企業活動が適正かつ適切に行われる仕組み(コーポレート・ガバナンス)を構築・運営する。

 そして16年4月以降にポスト中期経営計画を公表する方針としている。新規ビジネス分野を含めてM&Aの活用も視野に入れて、戦略的パートナーである伊藤忠商事や東洋製罐との連携も強化するようだ。

■飲料受託生産の役割・存在感が一段と高まる

 飲料業界全体が天候の影響を受けやすいことに加えて、大手飲料メーカーの内製拡大による受託製造量の減少を懸念する見方もあるようだが、夏場の繁忙期と冬場の閑散期という季節間の需要格差が大きい業界のため、大手飲料メーカーにとって内製拡大は設備投資や固定費負担の面でリスクが大きい。

 また飲料メーカーは経営効率化の観点からも、経営資源の重点をマーケティング分野にシフトする動きを強めている。このため飲料受託生産の役割や存在感は一段と高まっている。そして当社は飲料受託生産の最大手として、高品質でフレキシブルな生産対応が可能な強みを発揮して受託製造量の増加が期待される。中期的に収益拡大基調だろう。

■株主優待で積極還元

 配当の基本方針は、健全な財務体質を目指し、将来の事業発展に備えた設備投資等のための内部留保を確保する一方、業績に応じた安定かつ継続的な配当を行うとしている。

 また株主優待制度を実施して積極還元姿勢を示している、株主優待制度は毎年3月31日時点の1単元(100株)以上所有株主を対象として、自社製品詰め合わせセットなどを贈呈している。

■株価は調整一巡して上値試す

 株価の動きを見ると、16年3月期利益増額修正を好感して3月後半には年初来高値1200円まで上伸した。その後は4月以降の地合い悪化も影響して一旦反落したが、大きく下押す動きは見られず1150円近辺で推移している。好業績を評価する流れに変化はないだろう。

 4月13日の終値1154円を指標面で見ると、前期推定PER(会社予想のEPS87円08銭で算出)は13~14倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間27円で算出)は2.3%近辺、前々期実績PBR(前々期実績のBPS1464円85銭で算出)は0.8倍近辺である。時価総額は約59億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線および26週移動平均線近辺から切り返す動きだ。0.8倍近辺の低PBRも評価材料となる。調整が一巡して上値を試す展開だろう。

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