【株式評論家の視点】川崎近海汽船の中期経営計画に注目、近海部門の収支改善で収益向上、今期連続増配の年11円配当へ

株式評論家の視点

 川崎近海汽船<9179>(東2)は、1966年5月に会社設立以来、現在まで半世紀にわたり、海上輸送事業者として、国際物流を担う近海部門、国内の複合一貫輸送網で活躍する内航部門、そして産業と暮らしを支えるフェリー部門の三事業部門を基盤に置き、経営理念に「海上輸送のベストパートナー」を掲げて社会に貢献している。

 昨年4月末に2015年度中期経営計画(2016年3月期~2018年3月期)を策定。全体的課題として、近海部門の収支改善に傾注し、収益力の向上と安定配当の継続を目指しているほか、新鋭船の投入によりサービスのさらなる充実を図るとともに、新たな事業分野にも積極的に取り組み、収益の拡大を図っている。

 近海部門においては、収益の改善が喫緊の課題。そのためには、適正な船隊規模による一層の効率配船に加え、新規顧客の獲得を目指し、営業基盤である東南アジア域内に留まらず、北米航路を始め、東南アジア以西のエリアまで視野に入れた営業活動を展開している。バルク輸送では、遠洋区域を含め、より広域な地域での営業展開を図っている。木材輸送では、合板輸送での課題である積・揚地の集約を図り運航効率を高めるとともに、増加が見込まれるPKSなどバイオマス発電関連の貨物に関しては、適した船腹の確保にも取り組んでいる。鋼材・雑貨輸送では、引き続き積極的な営業展開を図り、合積み貨物を取り込むことでスペース効率を高め、収益改善を図っている。

 内航部門においては、不定期船輸送では、各専用船の安全運航の維持と安定輸送の確保に加え、新たな荷主、新規貨物の開拓を積極的に行い、新造船投入を含めた船隊整備を図っている。定期船輸送では、北関東地区の高速道路の整備に合わせ、茨城港(常陸那珂港区・日立港区)を基点とした北海道/関東/九州間の需要を更に取り込むべく、適切な船隊の整備を進めるとともに新規航路の検討を行っている。フェリー輸送では、八戸/苫小牧航路の4隻体制を維持し、安全運航に努めるとともに積極的な営業活動によりトラック、乗用車、旅客の輸送量の増加を図っているほか、平成30年の宮古/室蘭航路開設に向け、準備を進めている。

 新規事業においては、平成25年10月に株式会社オフショア・オペレーションとの共同出資により設立した株式会社オフショア・ジャパンでは、国内最高性能を誇る新造のオフショア支援船「あかつき」がこの3月に就航。この新造船の運航は、日本の領海・排他的経済水域での石油/天然ガス試掘、海洋資源物理探査、洋上再生可能エネルギー施設設置等を目的としており、これら支援船活動を実施していく。

 前2016年3月期第3四半期業績実績は、売上高が330億5400万円(前の期比6.8%減)、営業利益が24億8000万円(同40.7%増)、経常利益が24億4000万円(同32.6%増)、純利益が16億円(同22.8%増)に着地。

 前16年3月期業績予想は、売上高が430億5100万円(前期比6.4%減)、営業利益が26億5000万円(同12.2%増)、経常利益が26億円(同6.6%増)、純利益が17億5000万円(同3.5倍)と大幅増益を見込む。年間配当は11円(同1円増)と連続増配を予定している。

 株価は、1月5日の年初来高値355円から2月12日に年初来安値293円まで調整を挟んで3月28日高値336円と上昇。4月11日安値305円と下げて切り返す動き。中期経営計画の初年度となる前16年3月期営業利益は計画を上回る見通しで順調に推移している。中計では今17年3月期営業利益30億円目標を掲げているほか、増配含みと観測されており、今月28日に予定される3月期本決算の発表に期待は持てる。前期予想PER5倍台・PBR0.38倍と割安感が顕著。同配当利回り3.4%と利回り妙味もソコソコあり、見直し余地は拡がる。目先310円割れを下値として確認した感があり、上値抵抗線の26週移動平均線を突破出来るか注目したい。(株式評論家・信濃川)

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