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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】翻訳センターは16年3月期増収増益・連続増配予想、17年3月期も増収増益基調期待
- 2016/4/18 07:43
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
翻訳センター<2483>(JQS)は、70言語に対応した専門性の高い翻訳サービスを主力として、通訳サービスや国際会議運営なども展開している。16年3月期は増収増益・連続増配予想である。需要は高水準で17年3月期も増収増益基調が期待される。またインバウンド関連、16年伊勢志摩サミット関連、20年東京五輪関連、TPP関連とテーマ性も多彩である。株価は3月の戻り高値圏から一旦反落したが、調整が一巡して出直り展開だろう。なお5月12日に16年3月期決算発表を予定している。
■企業向け翻訳サービス事業を主力に業容拡大
特許・医薬・工業・法務・金融分野などの企業向け翻訳サービス事業を主力として、派遣事業、通訳事業、語学教育事業、コンベンション事業などを展開している。
翻訳事業では専門性の高い産業翻訳に特化している。グループ全体で約6300名の登録者を確保し、対応可能言語は約75言語と国内最大規模である。また取引社数は約4000社、年間受注件数は約5万9000件に達している。
業容拡大に向けて、12年9月に通訳・翻訳・国際会議運営のアイ・エス・エス(ISS)を子会社化、13年6月にアイタスからIT関連のローカライゼーション/マニュアル翻訳事業の一部譲り受けた。14年10月には医薬品承認申請・取得に関するメディカルライティング業務を専門に受託する子会社パナシアを設立した。
15年7月には、米国の調査会社Commom Senese Advisory社発表の「世界の語学サービス会社ランキング2015」において4年連続でアジア1位にランクインしたと発表した。また15年7月には通訳者・翻訳者教育事業を展開するアイ・エス・エス・インスティテュートが、インバウンド需要の増加に対応すべく電話通訳オペレーター養成講座を開設した。
15年8月には、工業・ローカライゼーション営業部が「Microsoft Visual Studio2015日本語版」の実機翻訳レビューにおいて適切なフードバックを行った功績が認められ、マイクロソフト米国本社から表彰された。
グループ再編では15年3月、ISSが100%所有する人材紹介事業のISSコンサルティングの全株式を同社代表取締役関口真由美氏に譲渡した。協業関係は継続する。15年12月には連結子会社の国際事務センターを当社に吸収合併した。グループ内で重複する経営資源を集約し、さらなる顧客サービスの拡充と効率的な業務運営を図る。
16年2月には連結子会社である中国・北京東櫻花翻訳有限公司を解散すると発表した。08年7月に設立して中国国内で事業展開する日系企業の翻訳案件獲得に取り組んできたが、市場動向や事業環境の変化を勘案した結果、収益確保が困難な状況が継続すると判断した。なお清算の日程については、現地の法律に従って必要な手続きが完了次第、清算完了の予定としている。また16年3月期業績に与える影響は軽微としている。
■翻訳サービス、通訳、国際会議の需要は拡大基調
企業のグローバル展開加速を背景として、翻訳サービスの需要は企業の知的財産権関連、新薬開発関連、新製品開発関連、海外展開関連、IR・ディスクロージャー関連を中心に拡大基調である。
また子会社のISSは国際会議運営の実績も豊富である。訪日外国人旅行客の増加、16年伊勢志摩サミット開催、20年東京夏季五輪開催なども背景として、通訳や国際会議の需要増加も期待される。
■総合的な言語ソリューションを目指してM&A・アライアンスも積極化
翻訳だけではなく、通訳、人材派遣、多言語コンタクトセンターなど総合的な言語ソリューションの提供を目指して、M&A・アライアンス戦略も積極活用している。
14年8月には、多言語対応コンタクトセンターサービスのディー・キュービックと、日本国内におけるマルチランゲージ・コンタクトセンターサービス(在日外国人を顧客とする企業や団体を対象とした通訳・翻訳サービス)に関して業務提携した。
15年4月には、ディー・キュービックの親会社キューアンドエーと合弁で新会社ランゲージワンを設立した。ディー・キュービックの多言語対応コンタクトセンターサービスを新会社ランゲージワンに移管し、センター運営およびサービスの強化を図る。
15年10月には、自動機械・電子機器の設計・製作事業およびドキュメントサービス事業を営むユースエンジニアリング(愛媛県)と、ドキュメントサービスにおける戦略的パートナーとして業務提携すると発表した。当社の翻訳サービス機能と同社のドキュメント制作機能を組み合わせて事業拡大を図る。
■翻訳サービス国際規格の認証取得
15年11月には翻訳サービスの国際規格「ISO17100:2015」の認証取得を発表した。適正な翻訳サービスの提供に必要な所定のプロセス要件を翻訳サービス提供者が満たしていることを評価する国際規格で、今後世界各国で広く普及していく見通しだ。なお当社は一般社団方針日本翻訳連盟からの委託により「ISO17100:2015」策定を担当する専門委員会の日本代表の一員として参加した。
また4月11日には、情報セキュリティ・マネジメントシステム(ISMS)の国際規格である「ISO/IEC27001:2013」の認証取得を発表した。今後も情報セキュリティ・マネジメントシステムの維持・向上に取り組むとしている。
■第4四半期の構成比が高い収益構造
15年3月期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)21億08百万円、第2四半期(7月~9月)22億53百万円、第3四半期(10月~12月)23億07百万円、第4四半期(1月~3月)25億23百万円、営業利益は第1四半期16百万円、第2四半期1億38百万円、第3四半期1億31百万円、第4四半期2億19百万円だった。
収益構造は第4四半期の構成比が高い傾向があるとしている。15年3月期の売上総利益率は44.6%で14年3月期比1.0ポイント上昇、販管費比率は39.1%で同0.3ポイント低下、ROEは10.4%で同3.4ポイント上昇、自己資本比率は62.5%で同1.1ポイント低下した。配当性向は28.5%だった。
■16年3月期第3四半期累計は2桁増益
前期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比0.8%増の67億23百万円、営業利益が同21.4%増の3億46百万円、経常利益が同19.2%増の3億43百万円、純利益が同98.0%増の3億05百万円だった。
派遣事業が大幅減収だったが、翻訳事業が好調に推移した。利益面では販管費の減少などが寄与して2桁増益だった。売上総利益率は42.2%で同2.6ポイント低下、販管費比率は37.0%で同3.5ポイント低下した。営業外費用では持分法投資損失5百万円を計上した。特別利益では投資有価証券売却益1億72百万円を計上した。
セグメント別売上高を見ると、翻訳事業は同4.9%増の49億17百万円、派遣事業は前期に人材紹介事業の子会社を売却した影響などで同34.6%減の6億56百万円、通訳事業は製薬会社からの受注やIR通訳案件の増加で同4.1%増の4億90百万円、語学教育事業は同2.7%減の1億62百万円、コンベンション事業は「第7回太平洋・島サミット」や「アジア・オセアニアタックスコンサルタント協会大阪大会2015」などの大型案件が寄与し同49.0%増の3億80百万円、その他は外国出願支援サービスが好調で同38.1%増の1億15百万円だった。
翻訳事業の分野別売上高は、特許分野が米国特許法改正に伴う英日案件の増加も寄与して同5.3%増の13億62百万円、医薬分野が外資製薬会社からの安定した受注や国内製薬会社における受注拡大などで同5.8%増の17億28百万円、工業・ローカライゼーション分野が自動車セクターでの大型案件獲得などで同1.6%増の13億58百万円、金融・法務分野がIR関連資料の受注拡大などで同10.0%増の4億68百万円だった。各分野とも好調に推移している。
なお四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)21億10百万円、第2四半期(7月~9月)21億52百万円、第3四半期(10月~12月)24億61百万円、営業利益は第1四半期52百万円、第2四半期82百万円、第3四半期2億12百万円だった。
■16年3月期通期増収増益で連続増配予想、17年3月期も増収増益基調期待
前期(16年3月期)通期の連結業績予想(11月27日に投資有価証券売却益計上に伴って純利益を増額修正)は、売上高が前々期(15年3月期)比3.3%増の95億円、営業利益が同8.9%増の5億50百万円、経常利益が同9.4%増の5億50百万円、純利益が同51.9%増の4億30百万円としている。配当予想(5月13日公表)は同5円増配の年間53円(期末一括)で予想配当性向は20.8%となる。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は、売上高が70.8%、営業利益が62.9%、経常利益が62.4%、純利益が70.9%である。やや低水準の形だが、第4四半期の構成比が高い収益構造であり、通期ベースでも増収増益基調だろう。
■中期経営計画で18年3月期ROE10%以上目標
15年5月策定した第3次中期経営計画(16年3月期~18年3月期)では、目標数値として18年3月期の売上高110億円、営業利益7億50百万円、純利益4億50百万円、ROE10%以上を掲げている。また営業利益率については中期的に8%を目指すとしている。
重点施策としては、顧客満足度向上のための分野特化戦略のさらなる推進、ビジネスプロセスの最適化による生産性向上、ランゲージサービスにおけるグループシナジーの最大化を推進する。需要は拡大基調であり、中期的に収益拡大基調だろう。
■株価は調整一巡して出直り
株価の動きを見ると、3月14日の戻り高値3745円から一旦反落したが、2月安値2801円まで下押すことなく、4月7日の直近安値3110円から切り返している。調整が一巡したようだ。
4月15日の終値3425円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS255円26銭で算出)は13~14倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間53円で算出)は1.6%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS1671円18銭で算出)は2.0倍近辺である。時価総額は約58億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線が戻りを押さえる形だが、下値は13週移動平均線がサポートしている。調整が一巡して出直り展開だろう。