イベント先取り・見切り発車が出尽くし気味なら同時進行中の防災・震災関連株でヘッジも一考余地=浅妻昭治

編集長の視点

<マーケットセンサー>

 東証マザーズ指数が、今年2月の安値から67%超も急伸して、「アベノミクス相場」の初動段階の2013年5月高値を突き抜け、2007年1月以来、9年3カ月ぶりの高値に躍り出たことには大いに驚かされた。しかし、それを上回るサプライズだったのは、日経平均株価の急騰であった。今年4月8日の安値から前週末15日取引時間中の高値までわずか5日間で1400円超幅もの大幅上昇となった。誰がこの急騰を仕掛けたのか、この急騰に追随できた投資家がどれだけあったのかなどと、ただただ恐れ入るばかりの投資家も少なくなかったと推察している。

 東証マザーズ指数の急騰は、そーせいグループ<4565>(東マ)のストップ高が、直接のスプリングボードとなった。海外子会社が、アイルランドの製薬大手と提携し、業績そのものも黒字化基調を強めたこと評価したことが要因で、これをマザーズ市場に大挙して買い出動してきた外国人投資家もサポートしたとみられている。ただ、この外国人投資家の強気姿勢の背景には、今年7月にも日本取引所グループ<8697>(東1)が、大阪証券取引所に東証マザーズ指数の先物取引を導入させるべく準備を進めていることがあるとも推測された。指数先物が上場されれば、株価連動性を強めるのは時価総額の大きいマザーズ銘柄である。そーせいGは、同市場の時価総額トップであり、仮に同社株が東証第1部に市場変更されたとしても、時価総額ランキングの上位にはバイオ株が顔を並べており、これがバイオ株にストップ高続出の潜在材料と一部でマーケット・コメントされた。

 一方、日経平均株価の急騰は、株安の3大リスクといわれた原油安、円高・ドル安、中国経済不安が後退したことが買い手掛かりとなった。原油安は、4月17日に開催される主要産油国による増産凍結のための関係閣僚会議への期待も背景となっており、また円高・ドル安一服も、4月15日まで開かれていた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議後の為替介入思惑や、4月27日から開催予定の日銀・金融政策決定会合での追加緩和策催促などが、3大リスク解消につながるとして折からスタートした日米の企業業績への好影響を見込んで先取りされた。

 要するにマザーズ指数や日経平均株価の急騰は、いずれも良くいえばイベントのポジティブな先取り、悪くいえばしびれを切らした見切り発車ということになる。このイベントが、一部通過する今週は、この楽観見通し通りに株式市場が展開してくれれば問題はないが、株価特性通りに「理想で買って現実で売る」などのしっぺ返しを食うようだと、ハシゴを外されて高値から目をつぶって飛び降りなくてはならない投資家が続出しないとも限らないのである。

 このマザーズ指数や日経平均株価と異なり、前週末の15日に同時進行形で株価が急騰してセクターがあった。麻生フオームクリート<1730>(JQS)、日本乾溜工業<1771>(福)、地盤ネットホールディングス<6072>(東マ)がストップ高し、年初来高値を更新する銘柄も多数に上った。4月14日の午後9時26日に発生した熊本地震の被災状況が、テレビでライブ中継されるとともに、復旧・復興需要を見越した関連株買いがスタートしたのである。

 地震で亡くなられた方々があり、被災者も多数に上るなか、このセクター株を取り上げるのは何を不謹慎とキツくお叱りを受けそうで、亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、被災者の方々にも衷心からお見舞いを申し上げるが、日本列島には、今回の震源となった活断層が2000カ所超もあり、「地震列島」のどこでいつ大震災の発生に見舞われるか他人事ではない。だからこのセクター株の動きは、あの2011年3月11日に発生した東日本大震災と同様に一過性に終わらず長期化する可能性があり、日本固有のリスク要因として再び取り沙汰されることも想定される。

 あの東日本大震災では、原発事故が重なったことから日経平均株価が、瞬間的に1600円安、16%超も急落し、そのなかで逆に復旧・復興需要関連株に加え、ミネラルウォーター株、放射能測定器株、放射能汚染除染関連株などにまで関連株買いが広がった。今回の熊本地震も、14日の震度7の前震に続き、16日未明にはマグニチュード7.3の本震が発生するなど断層帯に沿って大分県側まで地震が群発し、さらに今回の震源地から南西方面でも地震活動が活発化する傾向を強めるなど深刻度を強めている。

 この影響は、国民経済的にも再稼働が進められている原発問題への見直し機運や、九州地方に展開している上場企業の工場や店舗の稼働再開動向の不透明化、クルーズ船でアジア各地から九州地方に来日する外国人観光客への先行き懸念など予断を許さず、2011年3月相場の繰り返しとなるかがまず焦点となる。こうした問題の先行きをテレビのライブ映像で確認するのが前提となるが、東日本大震災当時と同様に防災・震災関連株へのアプローチを強めるのも、株価ヘッジ方法としてあるいは有効になるかもしれない。

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