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【アナリスト水田雅展の銘柄診断】クレスコは年初来安値に接近だが売られ過ぎ感、17年3月期も増収増益基調期待
- 2016/4/19 07:31
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
クレスコ<4674>(東1)はビジネス系ソフトウェア開発を主力に、カーエレクトロニクス関連など組込型ソフトウェア開発も展開している。中期成長に向けてオリジナル製品や次世代技術の開発を推進している。受注が高水準であり、16年3月期に続いて17年3月期も増収増益基調が期待される。株価は地合い悪化も影響して年初来安値圏だが売られ過ぎ感を強めている。指標面の割安感も見直して反発のタイミングだろう。なお5月9日に16年3月期決算発表を予定している。
■ビジネス系ソフトウェア開発が主力のIT企業
ビジネス系ソフトウェア開発(アプリケーション開発、基盤システム構築)事業を主力として、組込型ソフトウェア開発事業、その他事業(商品・製品販売)も展開している。15年3月期の顧客業種別売上構成比は、ソフトウェア開発の金融・保険関連41.2%、公共・サービス関連20.1%、流通・その他21.3%、組込型ソフトウェア開発のカーエレクトロニクス6.2%、通信システム3.8%、情報家電・その他6.9%だった。
中期成長に向けた重点施策としては、品質管理とプロジェクトマネジメント力の向上、組込型ソフトウェア開発事業の再構築、新ビジネスモデル創出と事業領域拡大、クラウド関連ソリューションの展開、グループ連携強化による収益性改善、ニアショア開発・オフショア開発の推進(地方分散開発体制強化と海外開発体制整備)などを掲げている。
なお16年2月にはサッカーJ1リーグのFC東京(東京フットボールクラブ)とクラブスポンサー契約を締結した。また経済団体「新経済連盟」に入会した。
16年4月には連結子会社を再編し、SAP社のERPの導入支援・保守運営を展開する連結子会社クレスコ・イー・ソリューションが、SAP社のERPと各種顧客システムの連携を支援するエス・アイ・サービス(15年4月に完全子会社化)を吸収合併した。
■オリジナル製品や次世代技術の開発を推進
オリジナル製品に関しては「インテリジェントフォルダ」「クレアージュ」や、SAP基幹業務をモバイル化して業務効率を向上させる新ソリューション「モビック」などの拡販を推進している。
15年5月には、旅行などのシーンで行われる点呼確認作業をビーコンとスマートデバイスを使って自動化するソリューション「みんなのてんこ」を販売開始した。訪日外国人旅行客に対するサービス向上を実現するため16カ国後に対応した適切な言語で通知する機能も備えている。
16年3月にはIoTビジネスの利活用を強力にサポートする企業向けIoTプラットフォーム「KEYAKI(けやき)」の開発を発表した。Beaconプラットフォーム「BeaconBridge」の後継ソリューションで、Beacon以外にもNFC等の近距離無線機器、各種センサー、マイクロサーバー、スマートフォンなど多種多様で大量のIoTデバイスに対応し、外部アプリケーションサービスの接続を担うIoTプラットフォームである。なお「BeaconBridge」の提供は16年3月末をもって終了し、16年4月以降は「KEYAKI」に移行する。
■中期成長に向けてアライアンス・M&Aも積極活用
得意分野を持つビジネスパートナーとのアライアンス・M&A戦略も積極活用している。
13年4月ソリューション事業のクリエイティブジャパンを完全子会社化、企業コンサルティング事業のエル・ティー・エスを持分法適用会社化、13年9月三谷産業<8285>とクラウドサービス事業で協業、14年3月ゴマブックスと提携して企業内文書デジタルサービスの提供開始、14年8月高速クラウド構築支援サービスでSkeed社と技術提携、14年12月受託ソフトウェア開発のエー・アイ・エム・スタッフを持分法適用会社化した。
15年3月には技術提携先のSkeedの第三者割当増資を引き受けて(出資比率12.1%)提携関係を強化した。15年4月にはSAP社の基幹業務パッケージの導入支援を主力とするエス・アイ・サービスの株式100%取得して完全子会社した。ERP事業を一段と強化する。
15年5月には子会社のクレスコ北陸がアップゾーン(東京都)と資本業務提携してモバイルポータル事業に参入した。アップゾーンが提供するスマホ向けアプリケーション作成プラットフォーム「misterPARK」を中核に置いた多面的なモバイルポータル事業を展開する。
15年7月にはソフトバンクの「IBM Watsonエコシステムプログラム」の初期エコシステムパートナーに選定された。テクノロジーパートナーとしてPepperをはじめとするロボット、モバイル、パソコンに対するさまざまなアプリケーション開発を通じてWatsonによるビジネス変革を支援する。
15年9月にはKii社、KDDI<9433>、大日本印刷<7912>が設立したIoT時代の新たな企業間連携を生み出す企業連合「Kiiコンソーシアム」に参加した。現在21社が参加している。
■第4四半期の構成比が高い収益構造
15年3月期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)58億10百万円、第2四半期(7月~9月)61億89百万円、第3四半期(10月~12月)61億55百万円、第4四半期(1月~3月)69億09百万円、営業利益は第1四半期3億80百万円、第2四半期5億89百万円、第3四半期5億43百万円、第4四半期5億01百万円だった。
第4四半期の構成比が高く、案件別の採算性も影響する収益構造だ。なお15年3月期の売上総利益率は18.0%で14年3月期比1.1ポイント上昇、販管費比率は10.0%で同0.4ポイント低下、ROEは14.1%で同3.4ポイント上昇、自己資本比率は60.8%で同1.3ポイント上昇した。配当性向は28.5%だった。
■16年3月期第3四半期累計は大幅増収増益
前期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)連結業績は、売上高が前年同期比16.2%増の210億90百万円、営業利益が同29.0%増の19億51百万円、経常利益が同37.5%増の23億24百万円、純利益が同35.3%増の16億02百万円だった。
金融・保険分野、公共・サービス分野を中心にソフトウェア開発事業が好調に推移して大幅増収増益だった。組込型ソフトウェア開発事業ではカーエレクトロニクス分野が好調だった。なお受注高は同17.2%増の221億21百万円だった。
開発の効率化も進展して売上総利益率は18.6%で同0.5ポイント上昇、販管費比率は9.4%で同0.4ポイント低下した。なお営業外収益では有価証券売却益が増加(前々期92百万円計上、前期2億23百万円計上)し、持分法投資利益が減少(前々期33百万円計上、前期22百万円計上)した。営業外費用では有価証券評価損が縮小(前々期66百万円計上、前期16百万円計上)した。特別利益では投資有価証券売却益が増加(前々期1億23百万円計上、前期1億49百万円計上)し、保険解約返戻金が増加(前々期2百万円計上、前期24百万円計上)した。特別損失では投資有価証券評価損28百万円を計上した。
セグメント別の動向を見ると、ソフトウェア開発事業は売上高が同16.7%増の174億96百万円、営業利益(連結調整前)が同26.3%増の22億34百万円だった。売上高の内訳は金融・保険分野が同20.9%増の88億75百万円、公共・サービス分野が同24.2%増の44億77百万円、流通・その他分野が同2.5%増の41億44百万円だった。金融関連の開発規模拡大が継続しているようだ。
組込型ソフトウェア開発事業は売上高が同14.0%%増の35億30百万円、営業利益が同17.1%増の5億01百万円だった。売上高の内訳は、通信システム分野が同8.1%減の6億62百万円、カーエレクトロニクス分野が同27.7%増の14億23百万円、情報家電・その他分野が同14.4%増の14億44百万円だった。カーエレクトロニクス分野は車載表示関連の開発が増加し、次世代の自動車自動走行関連の案件も含まれているようだ。
商品・製品販売・その他は売上高が同2.6%減の63百万円、営業利益が37百万円の赤字(前年同期は26百万円の赤字)だった。
なお四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)65億64百万円、第2四半期(7月~9月)72億55百万円、第3四半期(10月~12月)72億71百万円、営業利益は第1四半期4億23百万円、第2四半期7億85百万円、第3四半期7億43百万円だった。受注高は第1四半期72億86百万円、第2四半期70億27百万円、第3四半期78億08百万円だった。
■16年3月期増収増益・増配予想、17年3月期も増収増益基調期待
3月23日に16年3月期業績予想の修正(売上高、営業利益、経常利益を増額、純利益を減額)および配当予想の修正(期末増額)を発表した。
業績予想は前回予想(10月26日に増額修正)に対して売上高を10億円増額、営業利益を1億円増額、経常利益を2億円増額、純利益を1億20百万円減額し、修正後の前期(16年3月期)通期連結業績予想は、売上高が前々期(15年3月期)比14.1%増の286億円、営業利益が同19.2%増の24億円、経常利益が同25.0%増の28億円、純利益が同18.2%増の16億60百万円とした。連結子会社の組織再編に係る特別損失計上で純利益を減額したが、金融セグメントを中心とするシステム開発案件が増加し、販管費の抑制も寄与して増収増益予想である。
配当予想は前回予想(10月26日に増額修正)に対して期末4円増額して、年間50円(第2四半期末23円、期末27円)とした。前々期との比較では12円増配で予想配当性向は34.0%となる。なお配当に関しては、特別損益を零とした場合に算出される当期純利益の40%相当額をメドとした配当を継続的に実現することを目指している。売上高、営業利益、経常利益を増額したため、基本方針に基づいて配当も増額した。
さらに今期(17年3月期)も高水準の受注を背景に増収増益基調が期待される。国内のIT投資需要は、クラウドやモバイル端末を活用したシステムへの移行、ITシステム基盤の統合・再構築、ビジネスプロセスの可視化・最適化、ビッグデータの分析と活用、仮想化技術の導入、ソーシャル・テクノロジーのビジネス活用などを背景として高水準に推移する見込みだ。中期的にも収益拡大基調だろう。
■株価は指標面の割安感も見直して反発のタイミング
なお14年11月のドイツ銀行ロンドン支店を割当先とする自己株式を活用した第三者割当による第1回~第3回新株予約権の発行、および新株予約権買い取り契約(行使許可条項付・ターゲット・イシュー・プログラム「TIP・2014モデル」)について、15年3月12日に第1回新株予約権の権利行使が全て完了した。
第2回新株予約権については15年3月18日、5月12日、6月11日、7月9日、7月24日、8月21日、10月28日、11月25日に行使許可を発表している。
株価の動きを見ると、3月の戻り高値圏1800円台から地合い悪化も影響して反落し、4月18日には1579円まで調整して2月安値1547円に接近する場面があった。ただし売られ過ぎ感を強めている。
4月18日の終値1600円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS146円96銭で算出)は10~11倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間50円で算出)は3.1%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS990円11銭で算出)は1.6倍近辺である。時価総額は約192億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線が戻りを押さえる形となって反落したが、日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が拡大して売られ過ぎ感を強めている。指標面の割安感も見直して反発のタイミングだろう。