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【アナリスト水田雅展の銘柄診断】MRTは自律調整一巡感、遠隔診療「ポケットドクター」など中期成長力を評価
- 2016/4/20 08:14
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
MRT<6034>(東マ)は医師プラットフォームを運営し、非常勤医師紹介などの医療人材紹介事業を主力としている。さらにスマホ・タブレットを用いた遠隔診療サービス「ポケットドクター」を積極展開する方針だ。4月19日には平成28年熊本地震の支援を目的として「ポケットドクター」の無償提供を発表した。株価は急騰後の自律調整が一巡して再動意の構えだ。中期成長力を評価する流れに変化はなく上値を試す展開だろう。なお5月10日に16年3月期決算発表を予定している。
■医師プラットフォーム運営で医療人材紹介事業が主力
インターネットを活用した医師プラットフォームを運営し、医師を中心とする医療人材紹介事業を主力としている。東京大学医学部附属病院の医師互助組織を母体としているため、医師視点のサービスや医師を中心とする医療分野の人材ネットワークが強みであり、東大卒医師の3人に1人はMRT会員に登録している。
主力のサービスは、非常勤医師を紹介する外勤紹介サービスの「Gaikin」、常勤医師を紹介する転職紹介サービスの「career」である。15年3月期末時点で医師紹介件数は累計70万件を突破した。
また看護師・薬剤師・臨床検査技師・臨床工学技士・放射線技師などの転職・アルバイト情報サイト「コメディカル」も運営し、15年4月には医師とコンシューマを繋ぐ医療情報発信メディア「Good Doctors」も開始した。
■医師と医療機関を繋ぐ強力なネットワークが強み
医局は教授を中心とした医師同士の相互扶助組織として存在し、各医局には数人から数百人の医師が存在している。医局は大学・診療科ごとに存在し、大学医局だけでも全国で2000以上存在している。そして医局は医師の人事業務も統制し、大学病院以外の医療機関の多くは医局の人事によって医師が供給(派遣)され運営が成り立っている。また大学病院で勤務している医師が大学病院以外で勤務することを医師間では「外勤」と呼び、医師は大学医局の指示のもとで「外勤」を行っている。
外勤紹介サービスの「Gaikin」は、非常勤を希望する医師会員と医療機関との間で、インターネット技術を活用した当社の人材紹介システムを利用して、反復継続的に自動マッチングを行うサービスである。
転職紹介サービスの「career」は、常勤医師紹介専任スタッフが直接面談を行い、会員医師の要望を把握したうえで、求人側の医療機関と転職(常勤医師)希望の医師をマッチングするサービスである。
また医局向けサービスの「ネット医局」は、医局単位の医師ネットワークを構築するため、医局管理業務を支援するグループウェアを医局に無償提供している。医局管理業務の効率化を推進し、当社にとっても医局単位で医師をカバーして全国的に医師会員数を増やすことが可能となる。また「Gaikin」と「ネット医局」を組み合わせることで、市中病院への医師供給という医局機能を補完する。
国内の医師需要については、高齢化社会の進展に伴って医療ニーズが増加する一方で医師の供給不足が深刻化し、中期的に医師の売り手市場が予想されている。また医師の地域偏在という地域間格差問題が存在する一方で、医師流動化が活発になることも予想されている。このため医師紹介市場においてはインターネットの活用や、医局との関係による競争優位性の確保が重要になる。こうした事業環境に対して、医師会員向けに提供する情報・サービスの付加価値を高めるとともに利便性も向上させて、医師と医療機関を繋ぐ強力なネットワークを構築していることが強みだ。
■全国へネットワーク展開
中期成長戦略としては、医療・ヘルスケア情報プラットフォームを拡充し、全国へネットワーク展開して全国大学医局へのサービス導入を目指している。15年3月には全国展開への第一歩として名古屋営業所を開設し、15年9月には名古屋営業所に続く2拠点目となる大阪営業所を新規開設した。5年後の関西地区医師紹介件数5万件の達成を目指している。
■M&A・アライアンス戦略を積極推進
M&A・アライアンス戦略を積極活用してシェア拡大を推進している。さらにコンシューマ向けサービスなどの新規事業も推進する方針だ。
15年2月には、日本最大級の税務相談ポータルサイト「税理士ドットコム」を運営する弁護士ドットコムと業務提携、GMOリサーチと業務提携、オウンドメディア構築事業のリボルバーと業務提携した。15年4月には国内最大級のショッピング・オークション一括検索サイト「オークファン」を運営するオークファンとデータ収集・解析において連携した。15年5月にはベビシッターサービス「キッズライン(KIDSLINE)」を運営するカラーズと業務提携した。
15年6月には医療情報サービス「メドレー」を提供するメドレーの第三者割当増資の一部を引き受けて(保有割合1.7%)資本業務提携した。15年7月には決済サービスプロバイダのゼウス(SBIAXESグループ)と業務提携した。15年8月には痛みの少ない採血法による検査システムの事業化を目指しているエム・ビー・エス(MBS)と資本業務提携した。MBSの株式19.5%を取得(取得金額1億47百万円)して関連会社化した。MBSが研究開発している「指先採血検査」を軸として新たな医療・ヘルスケアサービスを共同開発する。
15年9月には健康コーポレーションの子会社RIZAPと戦略的業務提携した。パーソナルトレーニング事業で全国55店舗を展開しているRIZAPと提携し、医療シンポジウムの共同開催等の取り組みを行うことで、営業所を開設した東海および関西を含めて未進出エリアの医療機関・医師に対する認知度向上を図り、提携医療機関および登録会員医師の増加に繋げる。15年11月にはリクルートホールディングス<6098>のグループ会社リクルートメディカルキャリアと医師ネットワーク拡大のための営業連携を開始した。
■医科歯科予約・送客サービス展開に向けて光通信と資本・業務提携
15年12月には、光通信<9435>および光通信の連結子会社アイフラッグ(東京都)と、資本・業務提携および合弁会社設立を発表した。
医科歯科の予約・送客サービス(ユーザーと医科歯科を繋ぐプラットフォーム)を展開するため、会員数1000万人超を誇る「EPARK」ブランドで飲食店・医科歯科・美容院等の予約・送客サービスを中心としたソリューション事業などを展開する光通信と資本・業務提携を行い、また「EPARK」ブランドで医科歯科の予約・送客システムを運営するアイフラッグと合弁会社を設立する。
資本提携に関しては第三者割当で光通信およびアイフラッグに新株を発行した。合弁会社についてはMRT NEO(出資比率は当社60%、アイフラッグ40%)を設立した。
■遠隔診療サービス「ポケットドクター」を開始
15年9月にはIoTプラットフォームサービスのマーケットリーダーであるオプティム<3694>とIT医療・ヘルスケア分野で業務提携した。
そして16年2月、オプティムと共同で国内初となるスマホ・タブレット端末を用いた遠隔診療サービス「ポケットドクター」を発表した。オプティムの画面共有をベースとした遠隔支援技術と、当社の医療情報および医師・医療機関ネットワークを組み合わせることで、全国1340の医療機関の賛同を受け、16年4月からサービス開始する。
高齢化社会の進行に伴って通院が困難な高齢者が急増することも考えられ、遠隔診療の重要性が高まっている。政府が15年6月に決定した「経済財政運営と改革の基本方針2015(骨太の方針2015)」においても、遠隔医療の推進が盛り込まれているが、気軽に遠隔診療を受けられる身近なサービスは現時点では存在していない。このためオプティムと共同で遠隔診療サービス「ポケットドクター」を開発し、より質の高いサービスを提供する。
なお16年3月には遠隔診療サービス「ポケットドクター」が、経済産業省主催の第1回「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト2016」でグランプリを受賞した。
4月5日には脳波、心電・心拍、筋電などの生体信号センサーおよび生体信号データ解析アルゴリズムの開発・生産・販売を行っているニューロスカイジャパン(東京都)との業務提携を発表した。遠隔診断サービス「ポケットドクター」に生体信号データを取り入れ、在宅医療、遠隔医療、ヘルスケア分野を中心としてウエアラブル機器もしくは携帯型生体信号センサー機器の共同開発を目指す。また米国シリコンバレーに本社を置くニューロスカイの親会社Neuroskyへの資本参加を通じて、米国ならびにアジア諸国へのサービス展開を目指す。
4月19日には平成28年熊本地震の支援を目的として「ポケットドクター」の無償提供を発表した。被災地向けに「ポケットドクター for 震災支援版」を無償で提供する。
■16年3月期第3四半期累計は増収増益
前期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)の連結業績は、売上高が7億76百万円で、営業利益が2億19百万円、経常利益が2億11百万円、純利益が1億47百万円だった。
アイフラッグとの合弁会社MRT NEOを連結子会社化し、資本提携したエム・ビー・エス(MBS)を持分法適用関連会社化したことに伴って、16年3月期第3四半期から連結財務諸表を作成した。このため個別業績で前年同期と比較すると、売上高は15.8%増の7億76百万円、営業利益は14.5%増の2億19百万円、経常利益は22.1%増の2億16百万円、純利益は35.0%増の1億51百万円の増収増益だった。
非常勤医師紹介などが順調に推移し、業容拡大に伴う人件費増加などを吸収した。全国展開の推進や、サービス充実・質の向上に向けた非常勤医師紹介に係る手数料率の一部改定効果なども寄与した。連結ベースの売上総利益率は84.2%、販管費比率は55.9%だった。営業外費用では株式交付費2百万円、持分法投資損失4百万円を計上した。特別利益では訴訟関連費用引当金戻入額21百万円、特別損失では本移転関連費用11百万円を計上した。
なお訴訟関連費用引当金戻入額は、当社と元取締役(元システム担当取締役)との間で係争していた民事訴訟について、15年11月26日付で東京高等裁判所が、元取締役の請求を全て棄却した第1審判決が相当として元取締役の控訴を棄却し、15年12月10日までに上告等がなされなかったため当該訴訟が確定したことに伴って計上した。
事業別売上高は、非常勤医師紹介「Gaikin」および常勤医師紹介「career」が7億36百万円、看護師・薬剤師・臨床検査技師・臨床工学技士および放射線技師紹介「コメディカル」が40百万円だった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(非連結4月~6月)2億88百万円、第2四半期(非連結7月~9月)2億32百万円、第3四半期(連結10月~12月)2億56百万円、営業利益は第1四半期1億01百万円、第2四半期49百万円、第3四半期69百万円だった。
■16年3月期通期は増収増益予想、17年3月期も増収増益基調期待
前期(16年3月期)通期の連結業績予想(1月26日公表)は、売上高が10億円、営業利益が1億80百万円、経常利益が1億65百万円、純利益が1億08百万円としている。単純比較はできないが、前々期(15年3月期)非連結業績の比較で見ると20.3%増収、4.1%営業増益、6.5%経常増益、13.7%最終増益となる。配当予想は無配継続としている。
第3四半期累計の営業利益は通期会社予想を超過達成しているが、遠隔診療サービス「ポケットドクター」提供開始にあたって、サービス認知に向けたプロモーション費用、被相談者である医師会員獲得費用、および医師報酬などサービス運営費用の発生を見込んでいる。またエム・ビー・エス(MBS)に対して持分法を適用し、指先採血検査サービス開発費用およびのれん償却に伴って、営業外費用で持分法投資損失10百万円の計上を見込んでいる。なお15年12月設立で新規連結のMRT NEOの影響は軽微としている。
また従来の非連結ベース業績の前提として、外勤医師紹介件数は同13.2%増の11万4500件、外勤医師給与取扱高は同13.3%増の71億円、ネット医局導入数は同90医局増の150医局の計画としている。事業別売上高は、主力の外勤紹介サービス「Gaikin」が同24.7%増の8億08百万円、転職紹介サービス「career」が同0.7%増の1億42百万円、転職・アルバイト情報サイト「コメディカル」他が同17.1%増の48百万円としている。
学会への参加、医師会員向けキャンペーン、営業増員、医師情報プラットフォームの利便性向上などの効果で、医師登録件数および医師紹介件数が順調に増加する。価格改定(15年4月勤務開始案件分から外勤紹介サービス「Gaikin」の医師紹介手数料を値上げ)効果も寄与して増収増益予想だ。さらに今期(17年3月期)も増収増益基調が期待される。
■株価は急騰後の自律調整一巡感、上値試す
株価の動きを見ると、2月4日発表のスマホ・タブレットを用いた遠隔診療サービス「ポケットドクター」を好感し、4月1日の上場来高値5780円まで急騰した。その後は目先的な過熱感を強めて利益確定売りが優勢になったが、4月7日の直近安値3955円から切り返している。自律調整が一巡したようだ。
4月19日の終値4900円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS44円54銭で算出)は110倍近辺、前々期実績PBR(非連結ベースの前々期実績BPS302円74銭で算出)は16.2倍近辺である。時価総額は約255億円である。
週足チャートで見ると過熱感を残しているが、日足チャートで見るとサポートラインの25日移動平均線が接近して目先的な過熱感がやや解消した。中期成長力を評価する流れに変化はなく、自律調整が一巡して上値を試す展開だろう。