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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】PALTEKは16年12月期は為替影響除く実力値ベースで営業増益予想
- 2016/4/21 06:36
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
PALTEK<7587>(東2)はFPGAを主力とする半導体輸入商社で、受託設計・開発のデザインサービス事業や新規分野のスマートエネルギー事業も強化している。4月19日には米フリアーシステムズ社の高度道路交通システム(ITS)向け赤外線センサ製品の販売開始を発表した。16年12月期は為替影響除く実力値ベースで営業増益予想である。世界的にFPGAをメインチップとする流れで自動車の先進運転支援システム関連としても注目度が高まっている。株価は2月安値からの戻りがやや鈍い形だが、指標面の割安感も評価材料であり、調整が一巡して出直り展開だろう。なお5月9日に第1四半期業績の発表を予定している。
■FPGAなどの半導体販売・技術支援事業が主力
ザイリンクス社のFPGA(PLDの一種で設計者が手元で変更を行いながら論理回路をプログラミングできるLSI)を主力として、特定用途IC、汎用IC、アナログ、メモリなどを扱う半導体販売・技術支援事業、試作ボードや量産ボードなどを受託設計・開発・製造(ODM、EMS、OEM)するデザインサービス事業、さらに新規分野としてスマートエネルギー事業(病院・介護施設向け停電対策システム)を展開している。海外は香港に拠点展開している。
主要仕入先は、FPGAがザイリンクス社、汎用ICがNXPセミコンダクターズ社、マイクロチップテクノロジー社、アナログがリニアテクノロジー社、メモリがマイクロンテクノロジー社である。用途別には産業機器向けを主力としてFA機器、通信機器、放送機器、医療機器、車載機器向けなどに展開し、センサ分野のソリューションも強化している。主要販売先はNEC<6701>、京セラ<6971>、オリンパス<7733>などである。
■事業領域拡大戦略を積極推進
12年7月にODM/EMS事業推進、映像・画像処理関連自社製品事業の本格展開に向けてエクスプローラを子会社化した。同社はレート制御機能搭載「H.264コーデック装置」を開発し、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のイノベーション実用化ベンチャー支援事業として「レート制御機能搭載4K対応H.265コーデック装置実用化開発」および「超低遅延8K対応HEVC-ECFによるハイブリッド配信装置」が採択されている。
14年6月には子会社テクノロジー・イノベーションを設立した。サイミックス社から半導体事業およびMEMS(微小電気機械システム)事業を譲り受けて、特定顧客向け人感センサの信号処理ICの開発を推進する。
14年11月にはエクスプローラがフジテレビジョンと共同でH.264小型ライブ中継伝送装置「VideoCast Advance」を開発した。大規模な機材を使わず簡単にライブ中継することが可能になる。15年2月にはNHKと「H.264HD対応IP蓄積伝送装置」を共同開発した。火山噴火口、土砂流、津波などの監視を行う情報カメラで収録した映像を瞬時に活用することが可能になる。
15年2月には超高精度衛星測位システムを開発するマゼランシステムズジャパンと総販売代理店契約を締結した。センサ分野のソリューション強化の一環として、センチメートル級の精度が要求される産業機器や農業機械の自動運転向けなどにRTK(リアルタイム・キネマティック)GNSSシステムを提供する。
15年5月には、赤外線カメラのグローバルリーディングカンパニーである米フリアーシステムズ社の赤外線カメラに関するセンサ製品の販売を開始した。検査機器、防災機器、セキュリティ用監視カメラなど、さまざまな分野で成長が期待される赤外線カメラに関するソリューションを提供することが可能になる。
15年8月には、データ分析と予測サービスを提供して世界150ヶ国の企業と政府機関の意思決定と戦略策定を支援している米IHS社との販売代理店契約締結を発表した。これによって、顧客の製品企画や設計開発、迅速な電子部品・半導体の選定、半導体・電子部品の製造中止部品に対するリスク管理などに関するソリューションを提供することが可能になる。
15年10月には、病院向け停電対策システム提供の一環として、透析施設向けに72時間以上の電力供給を実現するプロパンガス式自家発電システムの提供を開始した。
15年10月にはマゼランシステムズジャパンの「低コストで実現された、自動運転用高精度衛星測位モジュールとIMU(慣性演算装置)との高度カップリングシステム」が、CEATEC AWARD 2015ソーシャル・イノベーション部門グランプリに選出された。
15年12月には、さくらインターネット<3778>の「さくらのクラウド」向けに、マイクロンテクノロジー社製SSD「M500DC」を提供して、14年11月から累計2000個の供給を達成した。
IoT関連では、16年2月に沖電気工業<6703>とIoT市場向けに920MHz帯の無線通信製品に対する販売パートナー契約を締結した。低コストで容易な無線ネットワークの構築を支援する。またIoT市場向けにゲートウェイを提供するロバステル社(中国)と販売代理店契約を締結した。高品質・低コストのIoTゲートウェイを提供することで国内外においてIoTインフラ構築を支援する。
4月19日には、赤外線カメラのグローバルリーディングカンパニーである米フリアーシステムズ社の高度道路交通システム(ITS)市場向け赤外線製品の販売開始を発表した。成長が期待されるITS市場向けにビデオ交通検知・監視ソリューションを提供する。
■15年12月期は大幅営業増益
前期(15年12月期)連結業績は前々期(14年12月期)比24.6%増収、35.0%営業増益、8.8%経常増益、19.9%最終増益だった。半導体事業は産業機器関連の新規顧客との取引開始が寄与し、医療機器、FA、ブロードバンド通信機器関連も好調に推移した。デザインサービス事業はIoT関連機器向け設計受託や、監視カメラシステム向け自社製品販売が好調だった。
事業別売上高は、半導体事業が同24.5%増の272億55百万円(FPGAが同53.4%増の134億12百万円、特定用途ICが同9.0%減の59億04百万円、汎用ICが同16.8%増の35億89百万円、アナログが同25.4%増の20億61百万円、メモリが同17.4%増の22億86百万円)で、デザインサービス事業が同21.3%増の13億54百万円、その他が同66.6%増の2億31百万円だった。
利益面で見ると、為替影響を含む売上総利益率は14.8%となり同1.2ポイント低下した。半導体事業において売上総利益率の低い案件の売上が増加し、新規顧客案件が取引開始当初はやや低採算となることも影響して、為替影響を除く売上総利益率が13.3%となり同1.3ポイント低下した。仕入先に対して保有する仕入値引きドル建て債権の評価額がドル高・円安によって4億31百万円の売上総利益増加要因(前々期は3億27百万円の売上総利益増加要因)となったが、全体として売上総利益率は低下した。販管費比率は10.1%で同1.6ポイント低下した。
営業外では為替差損益が悪化(前々期差益11百万円計上、前期差損1億29百万円計上)した。営業外収益では補助金収入が減少(前々期70百万円計上、前期40百万円計上)し、受取保険金が減少(前々期11百万円計上、前期0百万円計上)した。営業外費用では売掛債権譲渡損が増加(前々期19百万円計上、前期29百万円計上)した。
特別損失では投資有価証券評価損30百万円を計上した。なおROEは7.6%で同1.0ポイント上昇、自己資本比率は56.6%で同16.1ポイント低下した。配当予想は同7円増配の年間15円(期末一括、普通配当12円+記念配当3円)で配当性向は24.4%だった。
15年12月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)65億08百万円、第2四半期(4月~6月)68億円、第3四半期(7月~9月)73億34百万円、第4四半期(10月~12月)81億99百万円、営業利益は第1四半期4億59百万円、第2四半期2億88百万円、第3四半期2億20百万円、第4四半期3億94百万円だった。
■16年12月期は為替影響を含まず営業減益予想だが、実力値ベースは増益
今期(16年12月期)連結業績予想(2月9日公表)は、売上高が前期(15年12月期)比4.0%増の300億円、営業利益が同11.9%減の12億円、経常利益が同3.9%減の11億円、純利益が同3.7%増の7億円としている。
事業別売上高の計画は半導体事業が同3.1%増の281億円、デザインサービス事業が同18.2%増の16億円、その他が同29.3%増の3億円としている。新規顧客案件も順調に伸長する。
利益面では為替影響による仕入値引き債権の評価益を含まず、営業減益予想としている。売上総利益は45億25百万円、売上総利益率は15.1%、販管費は33億25百万円、販管費比率は11.09%の想定としている。
なお過去3期の為替影響を除いた場合の実力値ベース売上総利益は、13年12月期28億51百万円、14年12月期33億86百万円、15年12月期38億30百万円で、営業利益は13年12月期4億36百万円、14年12月期6億81百万円、15年12月期9億29百万円としている。したがって16年12月期営業利益予想の12億円は、15年12月期9億29百万円に対して実力値ベースで29.2%増益予想となる。
配当予想は年間13円(期末一括)としている。前期比2円減配の形だが、前期の年間15円には記念配当3円が含まれているため、普通配当ベースでは1円増配となる。予想配当性向は20.3%である。
■FPGAの市場拡大に注目
中期的な収益向上に向けた取り組みとして、半導体事業では高付加価値製品の取り扱い拡大、中核製品であるFPGAのさらなる拡販、第2の柱となる製品の売上拡大(センサー関連やIoT関連製品の拡充など)、医療・産業・通信・放送など成長分野への注力、デザインサービス事業では医療・放送・通信分野の受託設計・開発・ODM強化、自社製品の開発・販売強化、スマートエネルギー事業では病院・介護施設向け停電対策システムの構築・販売を強化する方針だ。
中核製品のFPGAに関しては通信・産業・放送・医療・車載機器分野において、新規顧客獲得を含めて拡販を強化する。FPGAは論理回路構成を自由に書き換えられるため、世界的なトレンドとしてプロセッサーを内蔵したFPGAをメインチップとする傾向を強めている。米インテルがFPGA大手の米アルテラを約167億ドル(約2兆7000億円)で買収したことでも注目された。そして今後は自動車の先進運転支援システム(ADAS)分野などを中心として市場拡大が予想されている。
センサ関連に関しては、赤外線カメラのグローバルリーディングカンパニーである米フリアーシステムズ社の赤外線カメラモジュールを、産業機器(検査機器、防災機器、産業向け携帯情報端末)やセキュリティ用監視カメラ向けに拡販する方針だ。高度なデザイン力やソリューション力を武器として中期的に収益拡大基調だろう。
■株価は調整一巡して出直り
株価の動きを見ると、急反落した2月安値502円からの戻りがやや鈍く、安値圏600円近辺で推移している。ただし2月安値まで下押すことなく調整一巡感を強めている。
4月20日の終値607円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS63円90銭で算出)は9~10倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間13円で算出)は2.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS825円98銭で算出)は0.7倍近辺である。時価総額は約72億円である。
週足チャートで見ると下値を切り上げながら13週移動平均線突破の動きを強めている。1倍割れPBRなど指標面の割安感も評価材料であり、調整が一巡して出直り展開だろう。