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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アスカネットは戻り歩調、16年4月期増収増益予想でAIプレートも着実に進展
- 2016/4/21 06:30
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アスカネット<2438>(東マ)は、主力の遺影写真加工や写真集制作関連が安定収益源であり、新規事業の空中結像AIプレートも製品化に向けて着実に進展している。16年4月期増収増益予想で、17年4月期も収益拡大基調が期待される。株価は2月安値から下値を切り上げて戻り歩調だ。自己株式取得や4月期末の株主優待制度も評価材料であり、強基調への転換を確認して戻りを試す展開だろう。
■写真加工関連事業が安定収益源、新規事業も育成
葬儀社・写真館向け遺影写真合成・加工関連のメモリアルデザインサービス(MDS)事業、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集制作関連のパーソナルパブリッシングサービス(PPS)事業を主力としている。
MDS事業は全国の葬儀社との間にネットワークを構築してデジタル加工処理を行っている。操作不要のフルリモートコントロール方法で、約2170ヶ所の葬儀社向けなどBtoBを中心に年間約32.6万枚の写真画像を提供している。収益は加工オペレーション収入、サプライ品売上、ハード機器類売上などである。
PPS事業は「1冊からの本格的写真集」をインターネットから受注して制作するサービスである。約3500社の写真館向け(BtoB)や一般コンシューマー向け(BtoC)に、年間約34.2万冊の写真集を提供している。高度なカラーマネジメント技術やオンデマンド印刷制御技術などを強みとしている。なおBtoC関連では16年2月にスマホから発注できる「MYBOOK LIFE」をリリースした。
遺影写真のMDS事業は葬儀関連、写真集のPPS事業はウエディング関連や卒業・入学イベント関連などが主力市場であり、景気変動の影響を受けにくい安定収益源である。
さらにエアリアルイメージング(AI)事業や、NTTドコモ<9437>向けフォトブック・プリント商品のOEM供給など、新規事業・サービスの育成にも注力している。
■空中結像AIプレート事業は製品化に向けて着実に進展
空中結像技術エアリアルイメージング(AI)プレートは、画像映像を表す光を特殊なパネルを通過させることによって反対側の空中に映像を結像する新技術である。AIプレートだけで空中ディスプレイが可能となるシンプルな構造が特色であり、サイネージ関連をはじめとして車載、医療、操作パネル、飲食、アミューズメントなど多方面の業界・業種から注目されている。
独自技術を強固にするための特許申請を進めるとともに、将来的には自ら立体映像を空中に創出する技術の確立も目指している。そして基本技術を確立し、AIプレート試作品の販売を進めながら、低コストと大量生産を可能にする本格量産技術(ファブレス形態で製造して自社ブランドで販売)の確立に取り組んでいる。
15年4月に「AIプレート量産技術の現状と今後の方向性」を発表した。AIプレート量産については、ガラス素材による量産と樹脂素材による量産に分けられ、それぞれ複数の協力会社と取り組んでいる。ガラス素材プレートはコストおよび量産性が相対的に劣るものの、結像品質は相対的に優れている。樹脂素材プレートはコストおよび量産性が相対的に優れており、結像品質は想定的に劣る。両素材に一長一短があるため、並行して量産技術の確立に挑んでいる。
ガラス素材プレートについては量産技術を確立し、品質の安定・向上、歩留まりの向上への改善を進めている。樹脂素材プレートについては、試作品の製造手法とは全く異なる新しい方法にトライしている。技術課題が解決しだいα版の開発に取り掛かる。また大型パネルや視野角拡大タイプの研究・試作も進めている。
当社が想定している第一段階の量産は、リスク等を考慮して現有の設備やラインを最大限に活用することを前提としており、いきなり大規模・大ロットの量産を指向していない。複数の製造方法のうち最も優れた方法が明確になった時点で、専用ラインの立ち上げなどにより多量の量産が可能な体制を段階的に構築する方針としている。
またAIプレートは素材であるため、AIプレート供給先がAIプレートを活用して商品化することが量産の前提となる。したがってAIプレート供給先の実際の商品化までは一定の時間を要する可能性がある。このため16年4月期は小ロット案件を中心に確実に案件を積み重ね、その後の大ロット案件に繋げたいとしている。
15年10月開催「CEATEC JAPAN 2015」では、米インテル、NECソリューションイノベータ、NHKメディアテクノロジー、東京大学の協力を得て、先進的な技術との融合により、AIプレートが創りだす近未来を具体的に提案した。また1m四方の大型AIプレートを使用した迫力ある空中結像とインタラクティブな操作なども展示した。
16年2月にはインセル型液晶パネルとAIプレートを活用した「非接触入力装置および方法」の特許を取得した。16年3月にはAI事業における技術的優位性をより強固なものにするため、パイオニア<6773>が保有する空中表示技術に関する特許権(特許出願中を含む)を取得した。
製品化に向けた動きが着実に進展しているようだ。
■NTTドコモ向けOEM供給
15年5月には、NTTドコモの「フォトコレクションプラス」向けに、フォトブックおよびプリント商品の独占OEM供給を開始した。PPS事業において新たなサービスを開始することにより、急速に拡大しているスマートフォンによる写真アウトプット市場にも本格的にターゲットを拡大していくとしている。
なお14年12月開始した新しいギフトサービスシステム「ギフトネットコム」は15年4月末に新規のギフトコードの販売を終了し、販売済みギフトコードの交換は15年10月末に終了した。販売実績が予想を下回り、短期的には収益改善が見込めず終了の早期決断が望ましいとの結論となった。15年4月期に減損損失77百万円を計上した。
■第3四半期および第4四半期の構成比が高い収益構造
15年4月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(5月~7月)11億70百万円、第2四半期(8月~10月)11億55百万円、第3四半期(11月~1月)14億16百万円、第4四半期(2月~4月)12億37百万円で、営業利益は第1四半期1億55百万円、第2四半期1億26百万円、第3四半期2億60百万円、第4四半期97百万円だった。
葬儀関連、ウエディング関連、卒業・入学イベント関連などで第3四半期および第4四半期の構成比が高い収益構造だ。また15年4月期の売上総利益率は50.9%で14年4月期比0.6ポイント低下、販管費比率は38.1%で同1.7ポイント上昇、ROEは11.3%で同1.4ポイント低下、自己資本比率は85.6%で同1.1ポイント上昇した。配当性向は31.5%だった。
■16年4月期第3四半期累計は2桁営業増益
今期(16年4月期)第3四半期累計(5~1月)の非連結業績は、売上高が前年同期比2.9%増の38億51百万円で、営業利益が同11.2%増の6億02百万円、経常利益が同10.8%増の6億05百万円、純利益が同0.4%増の3億97百万円だった。
全体として売上高は計画を下回ったが、経費コントロールなどの効果で2桁営業増益だった。売上総利益率は51.1%で同0.4ポイント低下、販管比率は35.5%で同1.6ポイント低下した。なお特別利益で前期計上の受取保険金77百万円が一巡したため、純利益の伸びは小幅だった。
セグメント別(連結調整前)に見ると、MDS事業は売上高が同1.4%増の17億23百万円、営業利益が同0.1%減の5億57百万円だった。ハード機器やメモリアルビデオなどの葬儀演出関連は伸長したが、暖冬の影響で葬儀施工件数が例年より減少したため遺影写真加工収入が想定をやや下回ったようだ。
PPS事業は売上高が同4.5%増の20億85百万円、営業利益が同5.9%増の4億37百万円だった。BtoC関連の価格競争が厳しくOEM関連も想定を下回ったが、BtoBの主力製品「ZENレイフラット」などが好調に推移し、生産効率向上や効率的な広告宣伝の実施なども寄与した。なおBtoC関連ではスマホから発注できる「MYBOOK LIFE」を16年2月にリリースした。
AI事業は売上高が同10.8%減の40百万円で、営業利益が64百万円の赤字(前年同期は61百万円の赤字)だった。売上面では約30社の企業等へ納品したが少ロット注文にとどまり、一方では営業増員や特許申請などで経費が増加した。その他事業は15年10月末に「ギフトネットコム」サービスを終了し、売上高が1百万円(前年同期は0百万円)、営業利益が16百万円の赤字(同47百万円の赤字)だった。
なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(5~7月)11億97百万円、第2四半期(8~10月)11億96百万円、第3四半期(11~1月)14億58百万円、営業利益は第1四半期1億14百万円、第2四半期1億52百万円、第3四半期3億36百万円だった。
■16年4月期増収増益・増配予想で増額余地、17年4月期も収益拡大期待
今期(16年4月期)通期の非連結業績予想(6月9日公表)は、売上高が前期比8.9%増の54億22百万円、営業利益が同14.1%増の7億28百万円、経常利益が同13.8%増の7億32百万円、そして純利益が同13.4%増の4億81百万円としている。配当予想は同1円増配の年間9円(期末一括)で予想配当性向は31.2%となる。配当の基本方針として配当性向30%を目安としている。
セグメント別売上高の計画は、MDS事業が同4.5%増の23億84百万円、PPS事業が同10.0%増の29億01百万円、AI事業が同2.4倍の1億33百万円、その他が3百万円としている。
売上面では既存分野のMDS事業、PPS事業が引き続き順調に推移して増収基調だ。PPS事業のOEM供給も本格化が期待される。新規分野のAI事業では人員体制を増強して営業活動を開始し、試作品やガラス素材の小ロット量産品の販売を推進する。
利益面では、OEM供給に関しては本格的な製品供給に向けてコストが先行するため初年度は赤字を見込んでいる。また「ギフトネットコム」も15年10月まで商品交換のためのサービスを継続したため一定のコストが発生する。ただし全体としては増収効果、経費の適切なコントロール、有形固定資産の減価償却方法変更(定率法から定額法に変更)などで増益予想だ。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が71.0%、営業利益が82.7%、経常利益が82.7%、純利益が82.5%で、利益進捗率が高水準である。第3四半期および第4四半期の構成比が高い収益構造であり、下期はギフトネットコム関連費用が発生しないことも営業損益改善要因となる。
今期(16年4月期)は通期ベースで増収増益基調に変化はなく、増額余地がありそうだ。さらに来期(17年4月期)も収益拡大基調が期待される。
■株主優待制度は毎年4月末に実施
株主優待制度は毎年4月30日現在の株主に対して、所有株式数に応じて自社サービス(マイブック)割引利用券を贈呈している。100株以上400株未満所有株主に対して1000円割引利用券1枚、400株以上2000株未満所有株主に対して1000円割引利用券2枚、2000株以上所有株主に対して1000円割引利用券3枚を贈呈する。
■自己株式取得を実施
1月22日に発表した自己株式取得(取得株式総数の上限9万株、取得価額総額の上限1億円、取得期間16年1月25日~16年4月28日)については、3月31日時点の累計で取得株式総数3万5500株、取得価額総額4022万6800円となっている。
■株価は下値切り上げて戻り歩調
株価の動きを見ると、2月安値905円から下値を切り上げて戻り歩調の展開だ。そして4月20日には1575円まで上伸して1月の年初来高値1601円に接近する場面があった。
4月20日の終値1467円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS28円88銭で算出)は51倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間9円で算出)は0.6%近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS230円69銭で算出)は6.4倍近辺である。時価総額は約256億円である。
日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインとなった。また週足チャートで見ると上向きに転じた13週移動平均線がサポートラインとなり、続いて26週移動平均線を突破した。強基調への転換を確認した形だ。自己株式取得や4月期末の株主優待制度も評価材料として戻りを試す展開だろう。