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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アイリッジは戻り歩調で年初来高値視野、16年7月期増益予想でフィンテックも強化
- 2016/4/22 07:28
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アイリッジ<3917>(東マ)はスマホをプラットフォームとして企業のO2Oマーケティングを支援するO2Oソリューション事業を主力としている。O2Oソリューション「popinfo」の利用ユーザー数は16年3月時点で3500万を突破した。16年7月期は人材採用など先行投資費用を吸収して増益予想である。さらにFinTech(フィンテック)ソリューションの開発も推進して中期成長期待が高まる。株価は戻り歩調の展開で1月の年初来高値が視野に入ってきた。
■O2Oソリューション事業を展開
08年8月モバイル関連ビジネスを事業目的として設立、09年11月携帯電話待ち受け画面にポップアップで情報配信するフィーチャーフォン対応popinfo(ポップインフォ)提供開始、10年2月popinfoに配信エリア設定可能なGPS配信機能を搭載、10年7月スマートフォン対応popinfo提供開始、15年7月東証マザーズに新規上場した。
自社開発O2Oソリューション(組み込み型プログラム)である位置情報連動型プッシュ通知ASPのpopinfo提供をコアサービスとして、popinfoを搭載したO2Oアプリの企画・開発、さらに集客・販促を中心としたO2Oマーケティング企画・運用支援の提供まで、企業のO2Oマーケティングを支援するO2Oソリューション事業を包括的に展開している。
O2O(online to offline)とは、消費者にオンライン(webサイトやアプリ)を通じて各種情報を提供し、オフライン(実店舗)への集客や販売促進に繋げるマーケティング手法である。
位置情報連動型プッシュ通知ASPのpopinfoは、企業や店舗のスマートフォンアプリに組み込み、アプリユーザーのスマホ待ち受け画面に、伝えたい商品・イベント・クーポンなどの情報やメッセージをプッシュ通知によって配信できるO2Oソリューションである。そして「位置情報×属性情報×時間」を組み合わせて指定した場所・人・時間帯で配信が可能なため、たとえばアプリユーザーが実店舗指定エリアに接近するとイベント・セール・タイムサービスの情報を配信するなど、実店舗への誘導・集客や販売促進に高い効果を発揮する。
■ストック型ビジネスモデル、導入アプリ数・利用ユーザー数は増加基調
収益はアプリ利用ユーザー数に応じた従量課金型の月額報酬(popinfoサービスのライセンス収入)、およびアプリ開発・コンサル等(popinfoを組み込んだO2Oアプリ開発に係る収入、O2O促進マーケティングに係る収入)である。導入企業数の増加と利用ユーザー数の増加に伴って収益が積み上がるストック型ビジネスモデルだ。そしてO2Oやオムニチャネル化の進展とともに、popinfo導入アプリ数およびアプリ利用ユーザー数とも増加基調である。
15年10月現在で、GU(ジーユー)、三井ショッピングパーク、三菱東京UFJ銀行、三井住友カード、阪急阪神、東急電鉄、トリンプ、トヨタカローラ神奈川などの大手企業に採用され、小売・流通、金融、交通など業種を問わず大手企業を中心に、popinfo導入アプリ数は300アプリ(導入社数ベースでは100社弱)を超えている。最近では金利情報や地域イベント情報を配信するために、地銀の導入が増加しているようだ。当社の第3位株主であるNTTデータ<9613>経由の導入も増加している。
最近の導入事例として、16年3月にNTTデータ<9613>と共同で全国農業協同組合連合会(JA全農)が公開開始したスマホアプリ「JA全農」を構築し、プッシュ通知機能にpopinfoを活用したNTTデータの金融機関向けスマホアプリ「アプリバンキング」が鳥取銀行に採用された。またアトラ(大阪市)が手掛ける健康と美容のための情報サービス「HONEY-STYLE」のスマホ向けアプリを開発した。全国各地の「HONEY-STYLE」と連携した鍼灸接骨院の来院予約やポイント通帳など豊富な機能が搭載されている。
さらに4月1日にはハーバーソリューションズ(東京都)が企画・開発・運用する「減災・防災アプリ」にpopinfoが導入されたと発表している。東京都港区がバージョンアップした「港区防災アプリ」に採用されている。4月14日には新生銀行のサイト常駐型コンシェルジュサービス「アレコレ相談室」の導入にあたり、AIエンジンの選定やユーザーインターフェースの制作などの支援を行ったと発表している。4月18日にはシダックスグループのレストランカラオケ・シダックス(全国約270店舗)のスマホ向けアプリのリニューアルに、popinfoおよびpopinfoクーポンが新たに搭載されたと発表している。
popinfo利用ユーザー数(プッシュ通知配信に同意しているユーザー数、アプリごとにカウント)は14年1月1000万ユーザー突破、14年9月1500万ユーザー突破、15年3月2000万ユーザー突破、15年9月2500万ユーザー突破、16年1月3000万ユーザー突破した。そして4月14日には16年3月時点で3500万ユーザーを突破したと発表している。
■スマートフォンの普及も追い風として急成長
15年10月には有限責任監査法人トーマツが発表したTMT(テクノロジー・メディア・テレコミュニケーション)業界の収益(売上高)成長率ランキングである第13回「デロイト トウシュ トーマツ リミテッド 日本テクノロジー Fast50」において、直近4年間の売上高成長率763.69%を記録し、50位中5位を受賞した。
15年12月にはデロイト トウシュ トーマツ リミテッドが発表したTMT業界の収益(売上高)成長率ランキングである第14回「アジア太平洋地域テクノロジーFast500」において、直近3決算期の成長率190%を記録し、500位中233位を受賞した。
当社の成長要因として、外部要因ではスマホの普及とともにスマホを活用した企業のマーケティング活動が活発化していること、内部要因としてO2Oアプリ開発・リリース後も「新店舗オープンや季節イベントなどに応じたアプリ内企画」「利便性向上や機能追加」などに継続的に取り組んでいることがあげられる。O2O関連の技術面だけでなく、集客・販売促進の企画ノウハウも蓄積して、O2Oソリューションを包括的に展開していることが強みだ。
■顧客層拡大やサービスラインナップ拡充を推進
さらなる成長に向けて、顧客層拡大(大手企業への深堀、中堅企業への拡大)とサービスラインナップ拡充に取り組み、積極的な人材採用やサービス開発も継続している。サービスラインナップ拡充ではpopinfoの情報配信機能を軸として、アナリティクス機能、クーポン機能、ポイント管理機能、iBeaconを用いた来店検知機能、ゲーム機能、アプリ決済機能などの機能改善・拡充に取り組んでいる。
より効果的なO2Oマーケティングを実現するため、ビッグデータ解析の活用によって従来よりも精度の高いターゲティング機能の整備を図る、ポイント残高管理機能を強化するなど、従来の集客・販売促進だけでなくターゲティングや決済までを網羅する方針だ。16年3月にはスマホアプリ向けポイントシステム「popinfoポイント」の提供を開始した。自社ポイントを低コスト・短期間で簡単に導入でき、オムニチャネルに対応したポイント施策の運用を可能にする。
海外展開については、アジア圏からの訪日旅行客をターゲットとして日本の店舗への集客をサポートするインバウンド対応とともに、パートナーとのアライアンスによって中国・東南アジア市場に進出する方針だ。
■アライアンス戦略も積極化
16年3月にはNTTドコモ<9437>のO2O戦略子会社であるロケーションバリューと、O2Oアプリ開発・マーケティング分野において、戦略的パートナーとして業務提携した。
当社のpopinfoとロケーションバリューのModuleApps(モジュールアップス)は、提供するO2Oソリューションの特徴、強みとする開発手法、主要顧客業種などが異なっているため、O2Oソリューション開発リソース連携や共同開発など提携によって高い補完関係が実現できるとしている。また当社の約3100万ユーザー、ロケーションバリューの約1200万ユーザー、合計で約4300万ユーザー超となる国内最大級のO2O連携となる。
■中期成長に向けて「フィンテックとO2Oの融合」も推進
15年12月にはテックビューロ(大阪市)と業務提携した。テックビューロの国内唯一のプライベート・ブロックチェーン技術「mijin」を利用することで、高いセキュリティと効率の良いアプリ開発が可能になるため、当社の位置連動ソリューションであるpopinfoを組み合わせて、フィンテックとO2Oを融合し、信頼性の高いフィンテック関連スマートフォン用アプリの共同開発を開始する。
16年3月28日には、既存株主であるクレディセゾン<8253>が当社株式の約8.7%を追加取得し、当社、クレディセゾンおよびデジタルガレージ<4819>との3社連携を強化すると発表した。世界的な金融イノベーションの時代に向けたFinTech(フィンテック)ソリューションの共同開発を推進する。
なお3社連携にあたり、デジタルガレージの子会社で当社の第2位株主であるDGインキュベーションが、保有する当社株式28万300株(議決権数に対する割合10.22%)のうち24万株をクレディセゾンに譲渡した。
■利用ユーザー数の増加で収益拡大基調
利用ユーザー数の増加で収益は拡大基調である。15年7月期のサービス別売上構成比はO2O関連96.4%(うち月額報酬25.7%、アプリ開発・コンサル等70.7%)、その他3.6%だった。15年7月期末時点のpopinfo利用ユーザー数は14年7月期末比1027万増加の2403万だった。アプリ開発・コンサル等売上高のうち既存取引先は約6割、新規取引先は約4割だった。
15年7月期の売上総利益率は41.1%で14年7月期比0.3ポイント低下、販管費比率は26.6%で同9.1ポイント低下、売上高営業利益率は14.5%で同8.8ポイント上昇、ROEは12.2%で同7.0ポイント上昇、自己資本比率は82.4%で同0.4ポイント上昇した。配当は無配を継続した。
四半期別売上高の推移は、第1四半期(8月~10月)1億20百万円、第2四半期(11月~1月)1億54百万円、第3四半期(2月~4月)2億56百万円、第4四半期(5月~7月)2億13百万円だった。現在はアプリ開発・コンサル等の売上高構成比が高いため、多くの取引先の決算月(3月)を含む第3四半期(2月~4月)の構成比が高くなる傾向があるとしている。
■16年7月期第2四半期累計は増収増益、利用ユーザー数増加基調
今期(16年7月期)第2四半期累計(8~1月)の非連結業績は売上高が4億91百万円、営業利益が20百万円、経常利益が20百万円、純利益が12百万円だった。前年同期は四半期連結財務諸表を作成していないが、会社資料によると前年同期比79.1%増収、14.8%営業減益、14.3%経常減益、23.4%最終減益だった。中期成長に向けた採用費、人件費、自社サービス開発コストなどの先行投資負担が増加して減益だったが、大幅増収基調に変化はないようだ。
サービス別売上高は月額報酬が利用ユーザー数増加で同52.5%増の1億29百万円、アプリ開発・コンサル等が既存取引先との取引拡大や新規取引先の開拓で同92.9%増の3億62百万円だった。16年1月末のpopinfo利用ユーザー数は3133万(15年1月末比1250万増加、15年7月末比730万増加)だった。売上総利益は増収効果で同50.8%増加したが、売上総利益率は34.6%で同6.5ポイント低下した。販管費は人員増で同68.4%増加したが、販管費比率は30.5%で同1.9ポイント低下した。16年1月末の人員は48名で15年7月末比16人増加した。
なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(8~10月)2億29百万円、第2四半期(11~1月)2億62百万円で、営業利益は第1四半期10百万円、第2四半期10百万円だった。
■16年7月期は先行投資負担で利益を減額したが大幅増収基調に変化なし
今期(16年7月期)通期の非連結業績予想(3月1日に売上高を増額、利益を減額)は、売上高が前期(15年7月期)比49.6%増の11億14百万円、営業利益が同11.5%増の1億20百万円、経常利益が同11.1%増の1億20百万円、純利益が同10.6%増の80百万円としている。配当予想は無配継続としている。
先行投資負担の増加で利益を減額修正したが、月額報酬はpopinfo利用ユーザー数の増加、アプリ開発・コンサル等は既存取引先との取引拡大や新規取引先の開拓が順調に推移して増収増益基調に変化はないようだ。なお16年1月末の人員は48名(15年7月末比16人増加)で16年7月期末の人員目標を達成したが、下期以降も優秀な人材の確保に向けて積極的な採用活動を強化し、自社サービス開発強化や開発内製化による売上総利益率向上を加速する。16年7月期末人員は60人程度となる見込みだ。
popinfo利用ユーザー数については当面の目標として20年を目途に1億人超(2016年1月末現在3133万人)を目指している。顧客層の拡大、アプリ決済や企業ポイントプラットフォームなどサービスラインナップの拡充、単価上昇、開発内製化による売上総利益率改善、そしてpopinfo利用ユーザー数増加に伴うストック型収益(月額報酬)の構成比上昇などで中期的にも収益拡大基調が期待される。
■株価は戻り歩調で1月の年初来高値視野
株価の動きを見ると、2月の上場来安値2647円から切り返して戻り歩調の展開だ。3月29日の戻り高値5050円から一旦反落したが、4月5日と6日の直近安値3880円から素早く切り返して20日と21日には4870円まで上伸した。
4月21日の終値4790円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS29円14銭で算出)は164倍近辺、実績PBR(前期実績のBPS289円82銭で算出)は17倍近辺である。時価総額は約131億円である。
日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインの形だ。また週足チャートで見ると一旦割り込んだ26週移動平均線を素早く回復した。そして13週移動平均線が上向きに転じた。強基調への転換を確認した形だろう。中期成長力に加えてフィンテック関連のテーマ性も注目点となる。1月の年初来高値6000円が視野に入ってきた。