- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- 【アナリスト水田雅展の銘柄分析】インテージHDは16年3月期営業増益予想で17年3月期も収益拡大基調期待
【アナリスト水田雅展の銘柄分析】インテージHDは16年3月期営業増益予想で17年3月期も収益拡大基調期待
- 2016/4/22 07:23
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
インテージホールディングス<4326>(東1)は市場調査の国内最大手で、国内外におけるM&Aも積極活用して業容を拡大している。19日にはみずほ銀行などと協働でビッグデータ利活用の実証試験を開始すると発表している。16年3月期は消費財・サービス分野のマーケティング支援事業、およびヘルスケア分野のマーケティング支援事業が好調に推移し、増収・営業増益・3期連続増配予想である。そして17年3月期も収益拡大基調が期待される。株価は3月の戻り高値圏から一旦反落したが、調整一巡して出直り展開だろう。なお5月12日に16年3月期決算発表を予定している。
■市場調査大手の持株会社、システムソリューションなども展開
13年10月に持株会社へ移行した。SCI(全国個人消費者パネル調査)やi-SSP(インテージシングルソースパネル)など国内首位の市場調査事業を主力として、システムソリューション分野や医薬情報分野にも事業展開している。
15年8月にはアメリカマーケティング協会「Marketing News」誌に「AMA GOLD GLOBAL TOP50 Report」(グローバルマーケティングリサーチ企業トップ50)が発表され、インテージグループは前年に続いて世界9位にランクインした。
■M&A・アライアンスを活用して業容拡大
国内外における積極的なM&A戦略で業容を拡大している。11年9月ベトナムの市場調査会社FTA、12年9月医療情報総合研究所、12年11月医療関連インターネット調査会社プラメド、13年8月香港の市場調査会社CSG香港を子会社化した。14年5月には子会社INTAGE INDIAがインドの市場調査会社RSMRS社の株式を取得してグループ化した。
アライアンス戦略では、12年4月NTTドコモ<9437>と合弁会社ドコモ・インサイトマーケティング設立、13年10月韓国の業界4位の市場調査会社Hankook Researchと包括的事業協力を締結、13年11月インドネシアの市場調査会社DEKA社と合弁会社を設立、14年10月医薬品有害事象情報システムの京都コンステラ・テクノロジーズと資本業務提携した。
また14年10月には、世界的な情報・調査企業であるニールセンの消費者購買行動分析部門ニールセン・カンパニー合同会社と、小売店パネル調査の相互販売を可能にするパートナーシップを締結し、新たな広告効果測定ソリューション開発を目指してインテージ・ニールセン・デジタルメトリクス(INDIGIM)を設立した。
15年7月には、子会社インテージテクノスフィアがクロスコンパス・インテリジェンス(東京都)と、人工知能情報処理技術を活用した企業向け事業に関する資本業務提携契約を締結した。人工知能情報処理技術を当社顧客企業のビジネス課題に適用し、当該技術のシステム実装および運用を行う企業向け事業を展開する方針だ。
15年10月には、子会社インテージの共創コミュニティプラットフォーム上に集英社の共創型コミュニティ「Love LEEs Cafe」をオープンすると発表した。生活感度の高い暮らしを楽しむ女性の声を新商品・サービスの開発に活かしたい企業向けに、共創マーケティング支援サービスの販売を開始する。
16年1月には、INDIGIMが開発したターゲットセグメントごとのデジタル広告到達率を測定するTargeting Metrics(ターゲティング・メトリクス)の販売開始を発表した。ニールセンのデジタル広告視聴率とインテージの消費者パネル情報を組み合わせた新たな広告測定指標である。
3月28日にはAGS(さいたま市)と業務提携に関する基本合意を締結し、当社連結子会社インテージテクノスフィアとAGSの共同出資による合弁会社を設立すると発表した。AGSの高いIT技術力やコンピュータ運用能力と当社の市場調査力など、経営戦略上の相乗効果や相互補完が期待できるとしている。
4月19日には、みずほ銀行、インテージ、NHNテコラス、データセクションの4社協働で、14年4月発足したデータエクスチェンジコンソーソアム(DXC)での活動を発展させた取り組みとして、ビッグデータ利活用の実証試験を開始すると発表した。
■収益力強化に向けてグループ再編も推進
収益力強化に向けてグループ再編も進めている。14年6月には子会社アスクレップの臨床開発事業を承継したエーケーピーを伊藤忠商事<8001>に譲渡した。アスクレップは医薬情報事業を継続する。15年4月にはコンサルティング事業を強化するため子会社インテージコンサルティングを設立した。15年10月には子会社インテージがビッグデータのクリーニング・分析・価値化を図るIXT(イクスト)を設立した。企業のマーケティング活動にビッグデータを活用する際の課題解決に取り組むとしている。
15年12月には創立55周年を機にグループとしてのビジョンや行動指針を示した「THE INTAGE WAY」を、新たに「THE INTAGE GROUP WAY」に改定した。そして4月1日にはコーポレートアイデンティティ「THE INTAGE GROUP WAY」の改定と、インテージグループのロゴ策定を発表した。新グループビジョンは「知る、つなぐ、未来を拓く」(対外メッセージ用英語表記はKnow today、Power tomorrow)とした。
また3月28日には監査役設置会社から監査等委員会設置会社に移行すると発表している。6月17日開催予定の第44回定時株主総会における承認を前提として実施する。
16年3月期からセグメント区分を、消費財・サービス分野のマーケティング支援事業(事業会社インテージ、インテージリサーチ、アクセス・ジェーピー、海外子会社)、ヘルスケア分野のマーケティング支援事業(事業会社アンテリオ、アスクレップ、医療情報総合研究所、プラメド)、およびITソリューション分野のビジネスインテリジェンス事業(事業会社インテージテクノスフィア)とした。
4月1日にはアンテリオの定性調査等のフィールド業務をプラメドに移管すると発表した。今回の業務移管によって、医師パネルの管理・運用およびフィールド業務全般をプラメドに集約する。
■期後半の構成比が高い収益構造
15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)91億78百万円、第2四半期(7月~9月)101億60百万円、第3四半期(10月~12月)107億98百万円、第4四半期(1月~3月)137億89百万円、営業利益は第1四半期2億71百万円、第2四半期10億46百万円、第3四半期12億52百万円、第4四半期10億02百万円だった。期後半の構成比が高い収益構造である。
15年3月期の売上総利益率は27.8%で14年3月期比1.0ポイント上昇、販管費比率は19.7%で同1.1ポイント上昇、ROEは13.4%で同3.3ポイント上昇、自己資本比率は59.3%で同8.8ポイント上昇した。また配当性向は24.5%だった。
■16年3月期第3四半期累計は営業増益
前期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比5.4%増の317億54百万円、営業利益が同3.7%増の26億64百万円、経常利益が同7.1%増の27億11百万円だった。純利益は同43.9%減の16億28百万円だった。
純利益は前々期計上の関係会社売却益が一巡して大幅減益だったが、ヘルスケア分野のマーケティング支援事業が好調に推移して増収、営業増益だった。売上総利益率は26.9%で同2.2ポイント低下したが、販管費比率は18.5%で同2.1ポイント低下した。
営業外収益では受取保険金・配当金が減少(前々期43百万円計上、前期10百万円計上)した。営業外費用では持分法投資損失が縮小(前々期1億01百万円計上、前期8百万円計上)した。特別利益では前々期計上した関係会社売却益29億11百万円が一巡した。特別損失では前々期計上した減損損失1億38百万円が一巡、特別退職金1億31百万円が一巡、退職給付制度終了損2億84百万円が一巡し、関係会社株式評価損1億21百万円を計上した。
セグメント別に見ると、消費財・サービス分野のマーケティング支援事業は売上高が同8.5%増の206億76百万円、営業利益が同6.8%減の11億22百万円だった。コミュニケーション分野やインターネット調査などが好調に推移して増収だったが、重点領域であるコミュニケーション分野における事業拡大に向けた費用増加で減益だった。
ヘルスケア分野のマーケティング支援事業は売上高が同1.4%増の73億85百万円、営業利益が同23.8%増の13億17百万円だった。売上面ではアスクレップの一部事業譲渡が影響したが、アンテリオにおけるカスタムリサーチの既存調査およびインターネット調査が好調に推移した。利益面では収益性の高い案件の伸びや事業譲渡によるコスト削減が寄与して大幅増益だった。
ビジネスインテリジェンス事業は売上高が同2.6%減の36億92百万円、営業利益が同25.5%減の2億24百万円だった。前々期に計上した大型案件の反動で減収減益だった。
四半期別業績推移をみると、売上高は第1四半期(4月~6月)93億27百万円、第2四半期(7月~9月)110億16百万円、第3四半期(10月~12月)114億11百万円、営業利益は第1四半期4億02百万円、第2四半期9億17百万円、第3四半期13億45百万円だった。
■16年3月期営業増益・3期連続増配予想
前期(16年3月期)通期連結業績予想(5月12日公表)は、売上高が前々期(15年3月期)比4.7%増の460億円、営業利益が同6.4%増の38億円、経常利益が同9.4%増の37億70百万円、純利益が同2.6%減の24億円としている。純利益は関係会社売却益が一巡して減益予想だが、市場調査の好調が牽引して増収、営業増益、経常増益予想だ。
配当予想は同2円50銭増配の年間32円50銭(期末一括)としている。3期連続の増配で予想配当性向は27.0%となる。利益配分については、連結業績をベースに配当と内部留保のバランスを考慮した利益配分を行うことを基本として、連結配当性向の目標は30%を目安としている。
セグメント別の計画は、消費財・サービス分野マーケティング支援事業の売上高が同6.3%増の308億円、営業利益が同3.3%増の19億80百万円、ヘルスケア分野マーケティング支援事業の売上高が同3.1%増の97億円、営業利益が同17.5%増の13億58百万円、そしてビジネスインテリジェンス事業の売上高が同1.0%減の55億円、営業利益が同7.5%減の4億62百万円としている。
パネル調査ではインテージのSCI(全国個人消費者パネル調査)やi-SSP(インテージシングルソースパネル)、さらに医療情報総合研究所の処方情報分析サービス、カスタムリサーチではアンテリオのヘルスケア関連インターネット調査などが好調に推移する。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が69.0%、営業利益が70.1%、経常利益が71.9%、純利益が67.8%である。やや低水準の形だが期後半の構成比が高い収益構造のためネガティブ要因とはならない。通期ベースでも好業績が期待される。
■中期計画で17年3月期営業利益46億円目標
第11次中期経営計画では重点課題として主力事業再強化による市場価値向上、「モバイル&シングルソース」「グローバル」「ヘルスケア」領域の着実な成長、リサーチの枠にとらわれない新たなビジネスモデルの模索と確立、最適化の視点による戦略立案・推進のマネジメント強化を掲げている。
そして経営目標値は17年3月期売上高520億円、営業利益46億円としている。M&Aやグループ再編も寄与して中期的に収益拡大基調だろう。
■株価は調整一巡して出直り
株価の動きを見ると、3月の戻り高値圏1500円台から反落したが、2月安値1264円まで下押すことなく、1300円台から切り返す動きだ。調整が一巡したようだ。
4月21日の終値1441円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS120円25銭で算出)は12倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間32円50銭で算出)は2.3%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS989円01銭で算出)は1.5倍近辺である。時価総額は約290億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線突破の動きを強めている。調整が一巡して出直り展開だろう。