【今日の言葉】期間成果主義の弊害も
- 2016/4/23 09:05
- 今日の言葉
『期間成果主義の弊害も』=データ捏造の三菱自動車(証券コード7211)の株価が、わずか1週間で前の週末に比べ40%急落した。燃費をよく見せようと偽装したという。それにしてもどうして老舗名門企業のルール違反やインチキが多いのか。決算書類偽装のオリンパスや東芝、少し前には西武鉄道、最近では三井住友建設などのマンション杭打ち偽装が明らかになったばかりである。すべての老舗企業が同じとは言えないものの、あまりの多さが気になる。
問題を起こすのは、(1)企業内個人と、(2)経営幹部が絡んだ会社ぐるみ、という2つがあるだろう。前者の場合は、老舗企業の組織の中で待遇や存在感など個人(従業員)になんらかの不満があるように思われる。後者(会社ぐるみ)の場合は、世界規模の激しい競争の中で、一定期間に成果・利益を挙げることが求められる「期間成果重視」で、悪いこととは分かっていても足元の利益追求に走るということではないだろうか。
期間成果主義が広がったのは今から15年~20年くらい前だろう。コーポレートガバナンス(企業統治)思想によって、株主の発言力が強まったことがある。この際たるものが、「ROE」(株主資本利益率)を、できるだけ高くすることが株主から求められることだろう。非効率な経営をやっている企業にとっては,ROE向上を求められることは当然ともいえる要求だが、行き過ぎた要求もまた弊害のように思える。企業は、期間成果主義の下では負担となるような長期にわたる研究開発には及び腰となってしまうはず。それが、先行き日本の強さを失うことにもなりかねない。
IR(株主向け広報)は大切であることは言うまでもないが、コーポレートババナンスでは、企業は株主だけのものではない。従業員・家族、取引先、地域など多くの参加者で成り立っている。この点を忘れてはいけない。ROEを軽視する態度を取れば外国人投資家は日本株を売ってくるだろうが、ROEも含めて日本的経営のよさを見直すところのようにも思われる。
とくに、期間成果主義は、企業だけでなく若い人の犯罪増加という形で社会を蝕み始めているようだ。このままでは、日本のよさの「おもてなし」は消えてしまいそうだ。アメリカは自由平等を基本としてはっきりしているが、日本のベースは何だろうか。見詰め直すところに来ているように思われる。