- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- 【アナリスト水田雅展の銘柄診断】日本エンタープライズはドローン群制御技術で急伸した3月高値試す、16年5月期営業増益予想
【アナリスト水田雅展の銘柄診断】日本エンタープライズはドローン群制御技術で急伸した3月高値試す、16年5月期営業増益予想
- 2016/4/25 07:38
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
日本エンタープライズ<4829>(東1)はコンテンツ制作・配信、店頭アフィリエイト広告、企業向けソリューションなどを展開し、成長分野のM2M/IoTへの事業領域拡大も推進している。16年5月期は増収・営業増益予想である。株価は下値を切り上げて戻り歩調である。ドローン群制御技術で急伸した3月高値を試す展開だろう。
■コンテンツサービス事業とソリューション事業を展開
交通情報、ライフスタイル、電子書籍、ゲーム、メール、音楽などのコンテンツを制作してキャリアの定額制サービスで配信するコンテンツサービス事業と、店頭アフィリエイト(広告販売)や企業向けソリューション(システム受託開発)などのソリューション事業を展開している。
配信コンテンツを自社制作して「権利を自社保有する」ビジネスモデルを基本戦略としている。そしてM&A・アライアンスも積極活用して事業領域を広げ、ネイティブアプリや法人向け業務支援サービスを新たな収益柱に育成する方針だ。
■中国では携帯電話販売事業を展開
中国にも積極展開して、チャイナテレコムの携帯電話販売店運営や、電子コミック配信サービスなどを手掛けている。中国・上海の携帯電話販売事業については、キャリアの販売施策変更に影響されない収益構造構築を目指し、大口法人への営業強化、付属品販売強化、徹底的なコスト削減などの収益改善策を推進している。15年10月には中国向けサンリオキャラクター商品卸売事業を行う合弁子会社としてNE銀潤(当社出資比率51.0%)を設立した。
なお15年12月には、中国全土をカバーするコンテンツ配信ライセンスを保有する中国子会社の北京業主行網絡科技有限公司の出資金持分を売却した。05年12月に子会社化して中国の携帯通信事業者(チャイナモバイル、チャイナユニコム、チャイナテレコム)向けにモバイルコンテンツを配信してきたが、その後のコンテンツプラットフォームの多角化に伴って、ICPライセンス保有メリットが低下し、同社の損失計上が続いているため出資金持分の売却を決定した。
今後の中国における事業展開については、中国での経験やノウハウを活かして、携帯電話等販売事業(チャイナテレコムの携帯電話販売店2店舗の運営)、卸売をはじめとしたソリューション事業(銀潤控股集団有限公司に対するサンリオキャラクター商品の日本からの輸出など)、およびモバイルコンテンツ事業を積極的に展開するとしている。
4月21日には中国の子会社・因特瑞思(北京)が中国大手通信事業者の上海電信からの委託を受け、上海市浦東新区に携帯電話販売店「上海電信 御橋路店」を開店して営業開始したと発表している。因特瑞思は12年9月に「携帯電話等の販売および代理店業務」に関して上海電信と業務提携し、上海市で2店舗を運営している。
■中期成長に向けてM&A・アライアンスも積極活用
ネイティブアプリの開発力強化、ゲームコンテンツ市場への本格参入、法人向け業務支援サービスの早期収益化、成長分野のM2M/IoTへの事業領域拡大など、中期成長に向けてM&A・アライアンスも積極活用している。
13年3月音声通信関連ソフトウェア開発のandOneを子会社化、14年4月子会社のHighLabを設立、14年11月アプリ開発の会津ラボを子会社化、15年6月スマートコミュニティ事業および太陽光発電・販売の合弁子会社として山口再エネ・ファクトリーを設立、15年7月プロモートを子会社化した。
16年2月にはスマートバリュー<9417>と業務資本提携した。業務提携の内容は、双方の事業ノウハウ・地域特性および開発リソースを活用した法人向け営業・開発力の強化、M2M/IoTソリューションサービスの企画・開発・共同提案、その他各事業分野における相互支援としている。資本提携については当社がスマートバリューの株主から同社株式11万株(議決権取得割合4.86%)を取得する。
4月4日にはエキサイト<3754>と業務提携し、女性向けヘルスケアアプリ「女性のリズム手帳 Powered By Woman.excite」の共同運営を開始すると発表した。当社が「App Store」および「Google Play」で配信し、累計ダウンロード数330万超の人気を得ている「女性のリズム手帳」をさらにパワーアップして運営する。
■ネイティブアプリと法人向け業務支援サービスを収益柱に育成方針
法人向け事業では14年8月、スマートフォンを活用して企業の内線電話網を構築するアプリケーション「AplosOneソフトフォン」を開発した。従業員のデスク上のビジネスフォン(固定電話)が不要となり、スマートフォンを内線電話として使用できるアプリケーションだ。また14年10月にはビジネス専用メッセンジャーアプリ「BizTalk」を発表した。
15年5月には子会社の会津ラボが、会津若松市「桜咲く会津プロジェクト実行委員会」が実施する「次世代型食品生産トライアル事業」へ、農作物の高品質化・高付加価値化を実現するアプリケーションならびにシステムを開発して提供すると発表した。ICTを活用してスマート農業を支援する。
15年6月には子会社HighLabが、新機能「お絵かき通話」搭載したスマートフォン向け無料チャットアプリ「Fivetalk」最新版を公開した。15年6月にはIDCフロンティアとクラウド分野で業務提携して、クラウド型統合運用監視サービス「プレミアクラウド」サービスを開始した。15年8月には、千葉県が少子化対策事業の一環として県民を支援するために提供するスマートフォンアプリ「ちばMy Style Diary」を、千葉県からの委託を受けて開発・運用開始した。
15年9月には総合電子書籍サービス「BOOKSMART」PC版の提供を開始した。これまでスマホ・タブレット向けに提供してきたが、新たに未配信作品2万タイトルを追加投入してPC版サービスも開始した。また15年9月には子会社の会津ラボが、山口県周南市が運営する徳山動物園で、来園者を見たい動物の前まで道案内するナビゲーション「あるく動物ナビ」のサービスを開始した。
15年11月には静岡県下田市のスマートフォンを活用した妊娠・出産子育てを支援する住民サービス「子育て支援アプリ導入業務」を受託し、16年2月に子育て支援アプリ「しもだこどもDiary」をリリースした。
16年1月には千葉県山武群横芝光町が地方創生に資する若年層の定住促進を目的として実施する「横芝光町情報発信アプリサービス開発業務」を受託した。16年春のサービス開始に向けて、行政と町民の情報共有を活発化し、地方創生を促進するアプリサービスを開発・運用する。
また16年1月には、タニタのデュアルタイプ体組成計インナースキャンデュアルで計測した体重や体脂肪率などのバイタルデータを、ヘルスケアアプリ「女性のリズム手帳」へBluetoothを使用して自動転送・記録できるサービスを開始した。
16年3月には、子会社ダイブが「ミニエンゼルパイ<初音ミクのメロン味」との連携アプリ「エンゼルパイ×初音ミク」を開発した。初音ミクやエンゼルパイちゃんと一緒に写真が撮れるオリジナルフォトフレームを入手することができる。
■フリマアプリ譲り受けでEC分野に参入
15年12月には、クルーズ<2138>が運営するフリマアプリ「Dealing」サービスを譲り受けて、電子商取引(EC)分野に参入した。
競争激化するフリマアプリ市場へ初期投資を抑えながら短期間で参入できるとともに、当社が運営するヘルスケアアプリ「女性のリズム手帳」と「Dealing」を連携することで、あらゆるライフステージで女性の健やかな暮らしを支援するライフサポートプラットフォーム形成の促進が可能となる。
■ドローン分野の事業化に向けた技術開発も推進
3月28日には子会社の会津ラボが、会津大学との産学連携により開発したドローン群制御技術「Dronet(ドロネット)」を、ドローン展示会「Japan Drone 2016」で発表した。会津大学が研究を主導し、会津ラボが主な開発を担当した。
複数のドローンを給電ケーブルで接続し、ドローン間のケーブルの角度からドローン同士の距離を一定に保ち、ドローン群全体を安定制御する技術である。事業化に向けた開発も会津ラボが行う。
■15年5月期は販管費増加も影響
15年5月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(6月~8月)13億16百万円、第2四半期(9月~11月)11億98百万円、第3四半期(12月~2月)12億26百万円、第4四半期(3月~5月)13億76百万円、営業利益は第1四半期52百万円、第2四半期10百万円、第3四半期52百万円、第4四半期75百万円だった。
15年5月期はソリューション事業の売上が大幅に伸長したが、原価率の上昇や販管費の増加などで営業損益がやや低調だった。売上総利益率は47.1%で14年5月期比1.5ポイント低下、販管費比率は43.4%で同2.2ポイント上昇、ROEは3.8%で同7.1ポイント低下、自己資本比率は81.6%で同5.9ポイント上昇した。配当性向は64.8%だった。
■16年5月期第3四半期累計は増収・営業増益
今期(16年5月期)第3四半期累計(6月~2月)の連結業績は、売上高が前年同期比7.5%増の40億22百万円、営業利益が同32.8%増の1億52百万円、経常利益が同33.1%増の1億67百万円、そして純利益が同20.2%減の1億29百万円だった。投資有価証券売却益が減少して純利益は減益だったが、ソリューション事業が大幅増収となり、販管費の抑制も寄与して営業増益、経常増益だった。
ソリューション事業の売上構成比上昇に伴って売上総利益は同1.3%減少し、売上総利益率は44.0%で同4.0ポイント低下した。ただし販管費は同3.6%減少し、販管費比率は40.2%で同4.7ポイント低下した。販管費では広告戦略の転換で広告宣伝費が減少した。営業外収益では前期計上の補助金収入12百万円が一巡し、営業外費用では前期計上の支払手数料8百万円が一巡した。特別利益では関係会社出資金売却益17百万円を計上したが、投資有価証券売却益が減少(前期3億31百万円計上、今期17百万円計上)した。特別損失では固定資産除却損が減少(前期10百万円計上、今期1百万円計上)したが、減損損失13百万円を計上した。
セグメント別動向を見ると、コンテンツサービス事業は売上高が同11.4%減の16億93百万円、営業利益(連結調整前)が同7.0%増の4億70百万円だった。キャリアプラットフォーム向けコンテンツにおいて広告効果の希薄化などが影響して減収だった。分野別には交通情報が同6.5%減収、エンターテインメント(ゲーム)が同7.9%減収、ライフスタイルが同31.3%減収だった。
ソリューション事業は売上高が同27.3%増の23億28百万円、営業利益が同26.7%減の95百万円だった。売上高の内訳はソリューション(受託開発)が新規連結も寄与して同50.4%増収、広告(広告代理サービス)が前期特需の反動をカバーして同0.1%減収、海外が中国における端末販売数の伸長で同71.2増収だった。利益面ではソリューションの増収に伴って売上総利益率が低下した。
なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(6月~8月)13億19百万円、第2四半期(9月~11月)12億28百万円、第3四半期(12月~2月)14億75百万円、営業利益は第1四半期57百万円、第2四半期14百万円の赤字、第3四半期1億09百万円だった。
■16年5月期通期も増収・営業増益予想
今期(16年5月期)通期連結業績予想は前回予想(1月8日に減額修正)を据え置いて、売上高が前期(15年5月期)比2.4%増の52億40百万円、営業利益が同10.7%増2億10百万円、経常利益が同12.4%増の2億30百万円、純利益が同21.2%減の1億40百万円としている。配当予想(7月10日公表)は前期と同額の年間3円(期末一括)で予想配当性向は87.0%となる。
コンテンツサービス事業においては、新規コンテンツ開発、ユーザーエンゲージメント向上、アライアンス拡充などの施策を推進する。ソリューション事業においては年度末(3月)需要の着実な取り込みを推進する。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は、売上高が76.8%、営業利益が72.6%、経常利益が72.9%、純利益が92.6%と、概ね順調な水準である。受託開発事業の積極推進、地方創生に伴う事業領域の拡大、新規事業の創出加速などで増収増益基調だろう。
■株価は戻り歩調、急伸した3月高値試す
株価の動きを見ると、ドローン群制御技術を材料視して3月29日に296円まで急伸する場面があった。その後は利益確定売りで一旦反落したが、4月8日の直近安値235円から切り返している。下値を切り上げて戻り歩調の展開だ。
4月22日の終値261円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS3円45銭で算出)は76倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間3円で算出)は1.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS126円65銭で算出)は2.1倍近辺である。時価総額は約106億円である。
日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインの形となり、週足チャートで見ると26週移動平均線を突破した。そして13週移動平均線が26週移動平均線を上抜くゴールデンクロスが接近している。ドローン群制御技術で急伸した3月高値296円を試す展開だろう。