「3本立て相場」にマイナス金利メリット株が加わって「4本立て相場」が発進するか期待は高まる=浅妻昭治

編集長の視点

 「手ぶらで帰すわけにはいかない」――男気が溢れると痛く感激させられたコメントである。今からおよそ4年前の2012年のロンドン五輪で、男子400メートルメドレーリレーで銀メダルを獲得した日本チームの松田丈志選手が、レース後のインタビューに答えて個人として五輪3連覇を逃し無冠に終わりそうなチームメイトの北島康介選手のために、チームの士気を鼓舞させるために発したと明らかにしたものだ。この松田選手が鼓舞したと同様にマーケットから「男気が溢れる」決断の期待を一身に集めているのが、日本銀行の黒田東彦総裁である。

 今週4月27日、28日と開催される日銀の金融政策決定会合について、マーケットには「まさかゼロ回答はない」、「追加緩和策がないのは危機意識がないのと変わらない」などとのコメントが溢れ返っているからだ。現に前週末22日には、一部外国通信社からは、金融機関の貸し出しにマイナス金利の適用が検討されていると観測報道され、銀行の収益圧迫要因が軽減されるとしてメガバンクを中心に銀行株が幅広く買い上げられた。

 確かに4月15日まで開催された20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、為替相場の現状認識については、日米に相克があり、為替乱高下を「無秩序」とする日本側に対して、米国側が、「秩序的」として為替相場介入に関しては水を差されたことは間違いない。円にとっての「グッド・ニュース」はドルには「バット・ニュース」となり、逆にドルにとっての「グッド・ニュース」は円には「バッド・ニュース」に振れるトレードオフの日米関係は否定しがたいことで、だからこそ黒田総裁には、「男気が溢れる」決断を期待したくなるのである。

 記録的な続落でスタートしリスクオフに傾いていた4月からの新年度相場は、7日以降、やや基調が変わった。主力株が動けないとみるや、バイオ株をリード役に東証マザーズ指数が急騰し、4月14日に熊本地震が発生すると、これに震災復興関連株買いが加わり、さらに原油価格底打ち・持ち直しと円高一服の相乗効果で輸出主力株や銀行株の急伸が追随し、3本立て相場の様相を強めている。マーケットでは、需給関係から「あちら立てればこちらが立たぬ」と、一方が買い上げられともう一方は売られることが経験則となっているが、前週末まで「双方とも立つ」どころか3本も立ち、この3本立て相場が、息長く人気をキープしており、どの投資家にとってもハッピーな相場展開となっている。

 今週の相場は、この3本立て相場にもう一本の柱が上乗せとなるかがポイントとなりそうだ。この前提条件は、冒頭に記述したように日銀の金融政策決定会合で、その前の4月26~27日開催のFRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(公開市場委員会)の向こうを張って何らかの追加金融緩和策が決定されることである。株価的には、輸出主力株や不動産株、銀行株の上値追いに弾みがつくことも前提となるが、この前提がすべてクリアされれば、4本目の柱としてマイナス金利関連株買いがスタートするとみられるからだ。

 マイナス金利関連株は、これまでも金利低下のメリットを受ける不動産株やノンバンク株、財務上で長期負債の支払金利の軽減が期待できる電力・ガス株、鉄鋼株、電鉄株などが買われてきた。しかしここでは、定番銘柄からやや視点を変えて、積極的な設備投資のための資金調達でメリットを享受する銘柄にターゲットを絞りたい。というのも、日銀がマイナス金利を導入して金利を引き下げても、企業の資金需要が低迷していることが金融機関からの貸し出しが伸びない要因となっているからだ。これを逆にみれば、積極的な設備投資を推進する会社なら低金利のメリットを享受し成長戦略の追い風となることが期待できることになる。

 今年1月29日に日銀が、マイナス金利の初導入を発表したあとに、東証の適時情報開示で積極的な設備投資を発表した銘柄は数多い。明治ホールディングス<2269>(東1)は、カマンベール製造棟と新研究所の建設を2回発表し、合計の投資額は約255億円に達する。また東邦チタニウム<5727>(東2)も、国内での新工場の建設とサウジアラビアでの合弁会社設立を発表し、TOTO<5332>(東1)は、総投資額約135億円で水栓金具工場を建設し、会計不祥事問題が尾を引く東芝<6502>(東1)が、約3600億円で半導体新製造棟を建設、減損損失で赤字転落した三井物産<8031>(東1)が、約450億円で複合用途ビルを建設し、鉄鋼株でも新日鐵住金<5401>(東1)が、八幡製鉄所に最新鋭の連続鋳造設備を新設、神戸製鋼所<5406>(東1)が、電力供給事業のために760億円程度の資金調達をするといった具合である。

 こうした主力大型株のほかに注目されるのが、積極的な設備投資を行うとともに、投資採算的にも割安な銘柄である。多くが小型株だが、成長戦略がマイナス金利にフォローされるとすれば、当然、上値余地の拡大が予想されるところとなる。(本紙編集長・浅妻昭治)

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