【鈴木雅光の投信Now】マイナス金利で注目続くJ-REIT

 東証リート指数が着実に上昇しています。今年に入ってからの同指数の安値(終値ベース)は、1月21日の1620.89ポイントでしたが、4月25日時点の終値は1970.72ポイントになりました。わずか3ヶ月間で21.58%の上昇です。

 J-REITが買われている理由は、やはり2月16日から導入されたマイナス金利の影響が大きいと思われます。10年物国債利回りまでもがマイナス金利になる一方、J-REITの平均配当利回りは、4月25日時点で3.18%です。

 一般的に、J-REITの平均配当利回りと、10年物国債利回りの差は300ベーシスポイント(3%)が適正水準と見なされています。J-REITは、国債に比べて価格変動リスクが高い。けれども、3%の金利差があれば、そのリスクを補って十分な期待リターンが得られると市場参加者が判断し、J-REIT市場に資金が流入すると考えられます。逆に、両者の金利差が3%未満に縮小したり、あるいは逆転したりした場合は、J-REITは国債に比べて相対的に買われ過ぎというサインになり、売られる可能性が高まります。言うまでも無く現在、10年国債利回りがマイナス金利で、J-REITの平均配当利回りが3.18%ですから、両者の金利差は3%超まで広がっており、まだJ-REITに買われる余地があると考えられます。

 こうした動きにいち早く反応したのが海外投資家です。1月時点で、海外投資家によるJ-REITの投資部門別売買状況は、金額ベースで34億円の売り越しでした。それが2月になると1167億円の買い越し、3月が832億円の買い越しになっています。

 特にこの間、外国為替市場では円高が進みました。これも海外投資家にとって、J-REITに投資する支援材料になったと思われます。円高トレンドが形成されたことによって、為替差損を被るリスクが軽減されたからです。

 気になるのは、銀行が売り越しに転じていること。1月は1億円の買い越しでしたが、2月は186億円の売り越し、3月も121億円の売り越しになりました。マイナス金利によって、余資運用の対象を国債市場からJ-REIT市場にある程度、シフトさせるのではないかという見方とは裏腹に、2月以降は売り越しが続きました。

 ただ、銀行にとっては最悪、償還まで保有すれば差損を回避できた国債までもがマイナス金利になったことで、今後は償還まで保有しても差損を被るリスクに晒されます。今の金利差からすれば、再びJ-REITへのシフトが起こる可能性が高いと考えられます。当面、J-REIT市場の需給動向は堅調と見て良さそうです。

(証券会社、公社債新聞社、金融データシステム勤務を経て2004年にJOYntを設立、代表取締役に就任、著書多数)

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