- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- 【水田雅展の銘柄分析】PCIホールディングスは自動車向け組み込み系ソフトウェア開発に強み、16年9月期増収増益予想
【水田雅展の銘柄分析】PCIホールディングスは自動車向け組み込み系ソフトウェア開発に強み、16年9月期増収増益予想
- 2016/5/6 07:00
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
PCIホールディングス<3918>(東マ)は、情報サービス事業を営む3つの事業会社を傘下に持つ純粋持株会社である。ソフトウェア開発をコアとして事業展開し、自動車業界向け組み込み系(エンベデッド)ソフトウェア開発に強みを持っている。16年9月期は増収増益予想である。株価は戻り一服の形だが、自律調整が一巡して中期成長力を評価する動きを強めそうだ。なお5月10日に第2四半期累計の業績発表を予定している。
■情報サービス事業の純粋持株会社
05年4月設立、06年11月純粋持株会社に移行、07年4月M&Sから現社名PCIホールディングスに社名変更、15年8月東証マザーズに新規上場した。情報サービス事業を営む3つの事業会社(PCIソリューションズ、PCIアイオス、Inspiration)を傘下に持つ純粋持株会社である。
事業区分(16年9月期から変更)は、自動車業界向けを中心に車載情報端末・情報家電機器・モバイル端末・ネットワーク機器組み込み系ソフトウェアを開発するエンベデッドソリューション事業(PCIソリューションズ)、金融・製造・流通・その他業界向けに業務システム開発および業務効率化を推進するビジネスソリューション事業(PCIソリューションズ、PCIアイオス)、エンベデッドソリューションの開発実績を背景として自動車業界やエネルギー業界向けに車車間通信モジュールや太陽光発電所遠隔監視システムなどを開発するIOT/IOEソリューション事業(PCIソリューションズ、PCIアイオス、Inspiration)としている。
■高い技術力と蓄積された知的資本が事業基盤
高い技術力(ソフトウェア開発力×アプリケーション開発力×通信・組み込み制御技術)と、蓄積された知的資本(豊富な開発実績×優良な顧客×モラルの高い社員×プロジェクト管理体制)を事業基盤として、主に大手SIer(システム・インテグレータ)から受注するビジネスソリューション事業、参入障壁が高くメーカーから受注するエンベデッドソリューション事業、成長ドライバーと位置付ける参入障壁が極めて高いIOT/IOEソリューション事業、さらに新たなビジネス領域へと事業展開している。
自動車業界向け組み込み系(エンベデッド)ソフトウェア開発に強みを持っていることが特徴だ。また徹底した開発工程管理で顧客からの信頼を獲得し、売上高上位20社の契約リピート率は100%を達成している。
■不採算プロジェクトを極小化
プロジェクト案件ごとの採算性が影響する収益構造だが、不採算プロジェクトの極小化にも努め、15年9月期の不採算プロジェクト案件は1件(戦略的先行投資案件を除く)にとどまっている。
なお15年9月期の売上総利益率は22.4%で14年9月期比3.0ポイント上昇、販管費比率は15.5%で同1.3ポイント低下した。そして売上高営業利益率は7.0%で同4.4ポイント上昇した。またROEは19.7%で同24.4ポイント低下、自己資本比率は64.3%で同19.8ポイント上昇した。配当性向は34.0%だった。期末従業員数は856人で14人増加した。
■16年9月期第1四半期は計画水準の増収増益
今期(16年9月期)第1四半期(10月~12月)連結業績は、売上高が20億63百万円、営業利益が1億60百万円、経常利益が1億61百万円、純利益が1億04百万円だった。前年同期(参考値)との比較で8.0%増収、15.1%営業増益、11.0%経常増益、30.0%最終増益となり、ほぼ計画水準で着地した。
3事業とも良好な事業環境で推移し、研究開発費や採用関連費といった先行投資費用を吸収して増収増益だった。特に高採算のIOT/IOEソリューション事業の好調やプロジェクト管理の徹底が、売上総利益の増加および売上総利益率の上昇に寄与した。売上総利益は前年同期(参考値)との比較で15.4%増加し、売上総利益率は23.2%で同1.4ポイント上昇した。
事業別に見ると、エンベデッドソリューション事業は売上高が9億38百万円で売上総利益が2億02百万円だった。既存顧客からの自動車向けカーナビゲーション開発やチップセット開発などの受注が計画どおりに推移し、車載系ECU(自動車電子制御装置)モデルベース開発といった新規案件も受注した。
ビジネスソリューション事業は売上高が9億23百万円で売上総利益が2億06百万円だった。BP(ビジネスパートナー)とのリレーション強化策も奏功し、大手SIerを通じた金融機関向け案件の受注が堅調に推移した。また自社開発パッケージ製品のカルチャーセンター向け大型案件の検収が予定どおり完了し、POSシステム関連機器販売は大口顧客の新規出店が継続寄与した。
IOT/IOEソリューション事業は、売上高が2億01百万円で売上総利益が70百万円だった。16年3月サービス開始V-Lowマルチメディア放送「i-dio」に係るソフトウェアモジュール開発案件、カーナビゲーション端末をゲートウェイとした各種センサとインターネットおよびクラウドとの連携機能開発案件、自動車販売店向けソリューション案件、自社ソフトウェア製品である太陽光発電所遠隔監視システム「Power Station」を活用したO&M(オペレーション&メンテナンス)サービス導入など、自動車向け中心に好調に推移した。
■16年9月期通期は増収増益予想
今期(16年9月期)通期の連結業績予想(11月11日公表)は、売上高が前期(15年9月期)比7.6%増の84億50百万円、営業利益が同6.0%増の5億80百万円、経常利益が同6.5%増の5億80百万円、純利益が同8.8%増の3億60百万円としている。売上総利益率は同0.2ポイント上昇の22.6%(上期23.2%、下期22.0%)の想定である。
配当予想は年間40円(期末一括)としている。16年4月1日付株式2分割を考慮すると前期の年間80円(普通配当70円+記念配当10円)と同額で、予想配当性向は37.3%となる。利益配分については、経営基盤の長期安定化に向けた財務体質の強化と今後の事業展開に備えるための内部留保を確保しつつ、安定した配当を維持継続し、業績に裏付けられた更なる配当水準の向上を図ることを基本方針としている。
通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は、売上高が24.4%、営業利益が27.6%、経常利益が27.8%、純利益が28.9%である。期初時点で利益は上期偏重の計画であることを考慮しても順調な水準だろう。受注拡大やプロジェクト管理徹底で好業績が期待される。
■中期成長に向けて新たなサービス領域へ積極展開
中期成長に向けた重点施策として、IT技術者不足への対応では、資本提携を含むBPとのリレーション強化、徹底したプロジェクト管理、人財戦略事業部の立ち上げと新卒採用の拡大を推進している。
またエンベデッドシステム開発で培ったIoT技術を応用して、新ビジネスサービスを提供する他業種企業との協業関係構築も推進し、V-Lowマルチメディア放送、バスロケーションシステム実証実験、TCSI社と協業(15年12月)した情報セキュリティ分野の秘密分散ソリューション「PASERI(パセリ)」など、新たなサービス領域へ積極展開している。
太陽光発電所遠隔監視システム「Power Station」を活用したO&Mサービス導入拠点数については、15年9月期実績2拠点、16年9月期見込み4拠点、17年9月期~18年9月期見込み各3~5拠点としている。太陽光発電所は長期運転が前提のため、一度受注すると長期安定収入となる。
なお4月18日には、連結子会社PCIソリューションズが神戸市や本田技研工業<7267>などとともに実証事業主体として参画している「市バスを情報通信基地とする実証実験」について、神戸市から実験の次なるステップに関するリリースが公表されている。PCIソリューションズは同実験で使用されている「V2Xユニット」を活用したソフトウェア開発に携わっている。V2Xとは自動車(Vehicle)と他の様々な機器やもの(X)を通信で繋げることである。
新たなサービス領域への積極展開を加速して、中期的にも収益拡大基調が期待される。
■株価は中期成長力を評価して戻り歩調に変化なし
株価の動き(16年4月1日付株式2分割遡及修正値)を見ると、2月の上場来安値1675円から反発した。その後は3月28日の戻り高値3745円から反落して戻り一服の形だが、徐々に下値を切り上げて自律調整一巡感を強めている。
5月2日の終値2850円を指標面(1株当たり数値は株式2分割後に換算)で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS107円32銭で算出)は26~27倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間40円で算出)は1.4%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS630円18銭で算出)は4.5倍近辺である。時価総額は約96億円である。
週足チャートで見ると、上向きに転じた13週移動平均線がサポートラインとなって下値を切り上げている。戻り歩調に変化はなく、自律調整が一巡して中期成長力を評価する動きを強めそうだ。