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【水田雅展の銘柄分析】山下医科器械は15年6月以来の高値水準、16年5月期営業微減益予想だが増額余地
- 2016/5/6 06:56
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
山下医科器械<3022>(東1)は、九州を地盤とする医療機器専門商社で、福岡県での市場シェア拡大を再重点戦略としている。16年5月期は営業微減益予想だが増額余地があり、17年5月期は指名停止の影響も一巡して収益改善基調が期待される。株価は15年6月以来の高値水準である。5月期末一括で2%台の予想配当利回り、1倍割れ水準の低PBR、そして5月期末の株主優待制度も注目点となる。15年5月高値を目指す展開だろう。
■九州を地盤とする医療機器専門商社
九州を地盤とする医療機器専門商社である。医療機器の販売・メンテナンスおよび医療材料・消耗品などの販売を主力として、子会社イーピーメディックは整形インプラントを製造販売している。
中期成長に向けて、九州最大の需要地である福岡県での市場シェア拡大を最重点戦略としている。医療機関向けSPD(病院医療材料管理業務)の契約施設数増加に対応するため、13年7月に福岡SPDセンター(福岡県福岡市)を新設し、鳥栖SPDセンター(佐賀県鳥栖市)との2拠点体制とした。
15年1月には、西諫早産業団地(長崎県諫早市)への進出に向けて諫早市との協定を締結した。長崎TMSセンターとして物流体制を強化する。総投資額は約19億円で16年9月稼働を予定している。稼働後は物流センター2拠点、SPDセンター3拠点体制となり、物流の効率化と迅速化により信頼性とサービス向上を図る。
また15年10月にはパナソニックヘルスケアとの合弁会社パナソニックメディコム九州(出資比率パナソニックヘルスケア51%、当社49%)が営業開始した。電子カルテやレセコンなどのメディコム製品および関連機器の販売・サービスを展開する。
■指名停止と一般競争参加資格降格の期間満了
13年12月に判明した従業員による不正行為に関して、14年2月28日に独立行政法人国立病院機構から指名停止(14年2月28日~14年11月27日)と一般競争参加資格降格(14年11月28日~15年8月27日)の処分を受けた。
不正行為の再発防止策に関して4月17日再発防止策実施状況その1、5月16日再発防止策実施状況その2、6月13日再発防止策実施状況その3、8月18日再発防止策実施状況その4を発表している。また15年8月には第67回定時株主総会の承認に基づいて監査等委員会設置会社に移行した。
14年11月27日を以って指名停止期間が満了となり、15年8月27日を以って一般競争参加資格の降格措置期間も満了となった。
なお4月14日には、元従業員2名に対する損害賠償請求訴訟に関して、16年3月28日付で長崎地方裁判所佐世保支部より、元従業員2名に対して当社への損害賠償を命じる判決の言い渡しを受け、今般確定したと発表している。
■第2四半期と第4四半期の構成比が高い収益構造
15年5月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(6月~8月)105億82百万円、第2四半期(9月~11月)126億55百万円、第3四半期(12月~2月)118億52百万円、第4四半期(3月~5月)152億21百万円、営業利益は第1四半期45百万円の赤字、第2四半期2億21百万円、第3四半期50百万円、第4四半期3億12百万円だった。
15年5月期は指名停止が影響したが、医療機関の設備投資関連で第2四半期および第4四半期の構成比が高い収益構造だ。15年5月期のROEは6.3%で14年5月期比3.9ポイント低下、自己資本比率は32.0%で同1.9ポイント上昇した。配当性向は30.6%だった。
■16年5月期第3四半期累計は2桁営業増益
今期(16年5月期)第3四半期累計(6月~2月)の連結業績は、売上高が前年同期比4.8%増の367億86百万円、営業利益が同13.8%増の2億57百万円、経常利益が同5.0%増の2億92百万円、そして純利益が同10.3%増の1億78百万円だった。
増収に伴って売上総利益は3.2%増加したが、売上総利益率は11.2%で同0.2ポイント低下した。販管費は2.6%増加したが、販管費比率は10.5%で同0.3ポイント低下した。営業外費用では、持分法投資損失24百万円を計上したが、前期計上の解約違約金10百万円が一巡した。
セグメント別(連結調整前)に見ると、医療機器販売事業は売上高が同4.7%増の365億22百万円、営業利益が同9.0%増の6億94百万円、医療モール事業(主として賃料収入)は売上高が同9.0%増の54百万円、営業利益が6百万円(前年同期は0百万円の赤字)、その他(自社グループ開発製品の整形外科用インプラント製造販売)は売上高が同9.6%減の3億63百万円、営業利益が4百万円の赤字(同5百万円の赤字)だった。
なお医療機器販売業の売上高の内訳は、一般機器分野が同11.7%増の65億53百万円、一般消耗品分野が同3.9%増の144億49百万円、低侵襲治療分野が同3.5%増の95億09百万円、専門分野が同4.2%増の47億90百万円、情報・サービス分野が同7.0%減の12億18百万円だった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(6月~8月)114億70百万円、第2四半期(9月~11月)130億53百万円、第3四半期(12月~2月)122億63百万円で、営業利益は第1四半期4百万円の赤字、第2四半期1億97百万円、第3四半期64百万円だった。
■16年5月期通期営業微減益予想だが増額余地
今期(16年5月期)通期の連結業績予想(7月8日公表)については、売上高が前期(15年5月期)比2.9%増の517億74百万円、営業利益が同2.5%減の5億25百万円、経常利益が同2.5%減の6億円、純利益が同2.1%増の3億66百万円としている。
新物流センター設立に伴う先行費用の発生、営業人員増加による人件費の増加などを見込んで営業微減益・経常微減益予想としている。純利益については法人税等の実効税率低下で増益予想としている。
配当予想(7月8日公表)は同1円増配の年間44円(期末一括)としている。予想配当性向は30.7%となる。安定的な配当の継続を基本方針とし、配当水準として連結配当性向30%を基準としている。
通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が71.1%、営業利益が49.0%、経常利益が48.7%、純利益が48.6%である。低水準の形だが第4四半期の構成比が高い収益構造である。SPD契約施設数増加で一般消耗品分野が堅調に推移し、国立病院機構の一般競争参加資格の降格措置が第1四半期(6月~8月)で終了したことも寄与して増額余地がありそうだ。
■中期経営計画で18年5月期売上高580億円目標
15年7月策定の新中期経営計画では基本戦略として、さらなる基盤事業の強化と推進体制の構築、地域医療構想に即した新規事業の創出、グループ統制とガバナンス強化に即した経営体制の刷新、積極的な人材確保と教育、コンプライアンス・内部統制の徹底と経営理念経営を推進する。
そして経営目標数値には、18年5月期の売上高580億円、経常利益8億50百万円を掲げている。中期的に収益拡大基調が期待される。
■株主優待制度や自己株式取得で積極還元姿勢
株主優待制度は毎年11月30日および5月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して実施している。優待内容は100株~999株保有株主に対して500円相当のクオカード、1000株~1999株保有株主に対して1000円相当のクオカード、2000株以上保有株主に対して1500円相当のクオカードを贈呈する。
■株価は15年6月以来の高値水準
株価の動きを見ると、4月26日に年初来高値となる1904円まで上伸した。15年6月1965円以来の高値水準だ。
5月2日の終値1878円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS143円56銭で算出)は13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間44円で算出)は2.4%近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2302円20銭で算出)は0.8倍近辺である。なお時価総額は約48億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線が26週移動平均線を上抜くゴールデンクロスが接近している。強基調への転換を確認して先高感を強める形だ。5月期末一括で2%台の予想配当利回り、1倍割れ水準の低PBR、そして5月期末の株主優待制度も注目点となる。15年5月高値2194円を目指す展開だろう。