連休明け相場では自然体投資の基本に戻って5月期決算会社の高利回り上位株の配当権利取りから着手=浅妻昭治

編集長の視点

<マーケットセンサー>

 仮に自然体があるとして、自然体では為替相場はどの水準が適正レートなのか判断するのはなかなか難しい。ゴルデンウイーク中につけた1ドル=105円か、すでに決算を発表済みの3月期決算会社が、大方想定している1ドル=110円なのか、この中間の前週末水準の1ドル=107円か、それとも今年3月調査の日銀短観の大企業・製造業の想定レートの1ドル=117円なのか、それとももっとそれ以上の円高・円安水準なのか見方は分かれそうだ。

 自然体レートを余計に分かり難くさせているのには、為替相場を巡って日米間で政治的駆け引きの色彩が濃くなっていることも一因のようだ。日本と米国は、すでに今年4月中旬のG20(20カ国財務大臣・中央銀行総裁会議)当時から、現在の為替相場が、「無秩序」か「秩序的」かでやり合い、米国は、財務省が4月29日の公表した半期為替報告で、為替政策を監視する「監視リスト」に日本を指定し、日本の円売り介入を牽制した。しかも、前週末発表された4月の雇用統計では、非農業部門の雇用者数が、市場予想を下回り、景気の先行き懸念も強まって政策金利引き上げの先延ばしの観測も強まった。

 これに対してわが日本は、1ドル=105円台に急伸したことに危機感を強めて海外出張中の麻生太郎財務大臣と黒田東彦日銀総裁とが、揃って「躊躇ない」措置をとると言及した。この口先介入で円買い・ドル安を仕掛ける投機筋を押し止めることが可能かはなお予断は許さない。とくに5月26日~27日には、日本を議長国に伊勢志摩サミット(主要7カ国・地域首脳会議、G7)の開催が予定されているだけに、為替介入に国際的な合意が得られるか投機筋に足元をみられないとも限らないのである。

 為替相場の自然体レートが不透明なままでは、株価の自然体水準の判断もなかなかつき兼ねる。「リスクオン」か「リスクオフ」か悩ましい。1年半前の2014年10月に為替相場が、1ドル=105円台まで円高・ドル安となったときには、日経平均株価は、1万5000円台を割る急落となった。今回は、1万6000円台を割ったが、これで織り込み済みとなったのかどうかは、もしかしたらG7を終わって6月開催の米国FRB(連邦準備制度理事会)のFOMC(連邦公開市場委員会)や日銀の金融政策決定会合まで決着がつかない可能性すらある。「リスクオン」か「リスクオフ」か悩ましいところとなる。

 ただマーケットに買い気も買い待機資金はあるようである。それを如実に反映したのが、前週末の東証マザーズ市場の大幅続伸を筆頭にした新興市場株の逆行高である。前月4月の新年度相場でも、日経平均株価が、7日続落の記録的な急落をした相場環境下でも、バイオ株を先駆株にマザーズ銘柄が逆行高し、東証マザーズ指数は、9年3カ月ぶりに高値に躍り出ており、この再現期待を強めているものだ。ただ、この新興市場株買いが、自然体投資かといえば、「買うから上がる、上がるから買う」となるマネーゲーム的な色彩も否定できず、腕の覚えの投資家向きとなる可能性もある。

 そこで大型連休明け相場では、仮に待機資金があるとして、自然体で臨める銘柄への一考を進めたい。マネーゲーム的なキャピタルゲイン(値上がり益)追求より、基本に戻ったインカムゲイン(配当利回り)優先の5月期決算会社のなかの高配当利回り株である。実際にこのランキング上位に位置する銘柄は、11月決算会社で中間配当を予定している銘柄も含めて配当利回りが市場平均を上回っている上に、5月26日の配当権利付き最終日までの短時間で高配当をゲインできるわけで、所有期間利回り的に資金効率は一段とアップするからだ。

 現に前週末6日にこの一角に位置するウッドフレンズ<8886>(JQS)は一時、ストップ高し、大引けではことストップ高水準から約400円下げたが、それでも年初来高値を更新した。同社株は、今5月期の2期ぶりに90円の復配を予定しており、この配当異動が、高利回り買い・低PER株買いにプラスワンの好材料として評価されている。プラスワンの好材料は、この配当異動のほか業績の上方修正、増配・復配、株主優待制度拡充、自己株式取得などさまざまであり、5月期決算会社の高利回り株にこうしたプラスワンの好材料も揃う低PER株が、あるいは自然体投資の対象として有効になるかもしれない。権利付き最終日まであと正味2週間、時間は十分で、一考も二考もして選別投資をしてみたい。(本紙編集長・浅妻昭治)

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