- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- 【アナリスト水田雅展の銘柄分析】建設技術研究所は指標面に割安感、景気対策関連や災害復旧・復興関連で注目
【アナリスト水田雅展の銘柄分析】建設技術研究所は指標面に割安感、景気対策関連や災害復旧・復興関連で注目
- 2016/5/11 08:45
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
建設技術研究所<9621>(東1)は総合建設コンサルタントの大手である。中期成長戦略として新たな事業フィールドの開拓も推進している。16年12月期は減益予想だが、景気対策関連や災害復旧・復興関連が注目点となる。株価は第1四半期の赤字を嫌気して反落したが、3月安値まで下押すことなく下値固め完了感を強めている。1桁台の予想PER、0.5倍近辺の低PBRなど指標面の割安感は強い。反発のタイミングだろう。
■総合建設コンサルタントの大手
総合建設コンサルタントの大手で、河川・ダム・海岸・海洋、道路、橋梁、トンネル、都市・地方計画などの分野に強みを持っている。
13年9月には、農業・農村関連ビジネスへの参入を視野に入れて子会社CTIフロンティアを立ち上げた。また14年4月には太陽光発電事業に着手した。
15年6月には、環境総合リサーチ(旧ユニチカ環境技術センター)を完全子会社化(非連結子会社)した。土壌、大気、水質などさまざまな環境要素のモニタリング・解析が可能となり、環境分野でのソリューション提供力の強化を目指す。
15年11月には、スポンサー契約を締結(15年9月)していた民事再生手続中の日総建(東京都)が新設分割による新会社(連結子会社)としてスタートした。日総建の主力分野である建築設計と当社関連部門との連携による業務拡大が期待される。
■ダイバーシティを推進
15年12月に「ダイバーシティ推進計画」を策定し、多様な正社員が力を発揮するダイバーシティの推進に取り組んでいる。
そして「女性活躍推進法」に基づく一般事業主行動計画を策定し、東京労働局に届け出た。本行動計画は、建設コンサルタントという企業特性を踏まえて定めた「ダイバーシティ推進計画」をもとに、ダイバーシティ推進の一環として、まずは女性社員がその力を長期にわたり思う存分発揮できる会社とすることを目的としている。なお行動計画本文はHP上に掲載されている。
■期前半の構成比が高い収益構造
四半期別の業績推移を見ると、14年12月期の売上高は第1四半期(1月~3月)100億06百万円、第2四半期(4月~6月)108億72百万円、第3四半期(7月~9月)92億80百万円、第4四半期(10月~12月)93億66百万円、営業利益は第1四半期10億22百万円、第2四半期8億85百万円、第3四半期3億76百万円、第4四半期1億05百万円だった。
また15年12月期の売上高は第1四半期78億09百万円、第2四半期137億37百万円、第3四半期91億59百万円、第4四半期95億15百万円、営業利益は第1四半期1億92百万円、第2四半期15億05百万円、第3四半期4億84百万円、第4四半期4億17百万円だった。期前半の構成比が高い収益構造だ。
15年12月期の売上総利益率は27.0%で14年12月期0.7ポイント上昇、販管費比率は20.5%で同0.3ポイント上昇、ROEは7.2%で同0.3ポイント上昇、自己資本比率は53.9%で同0.8ポイント上昇した。配当性向は17.3%だった。
■16年12月期第1四半期は季節要因などで減収、営業赤字
4月28日発表した今期(16年12月期)第1四半期(1月~3月)の連結業績は、売上高が前年同期比3.7%減の75億21百万円、営業利益が43百万円の赤字(前年同期は1億92百万円の黒字)、経常利益が54百万円の赤字(同2億26百万円の黒字)、純利益が23百万円の赤字(同1億45百万円の黒字)だった。
季節要因などで減収となり、各利益は赤字となった。ただし概ね計画水準としている。受注高は同7.8%減の69億82百万円だった。
■16年12月期通期は増収減益予想
今期(16年12月期)通期の連結業績予想は前回予想(2月15日公表)を据え置いて、売上高が前期(15年12月期)比5.7%増の425億円、営業利益が同7.6%減の24億円、経常利益が同8.6%減の25億円、純利益が同2.0%減の16億円としている。
受注高は同4.1%増の420億円の計画としている。東日本大震災の復興関連業務の重点が設計段階から施工段階に移行することに加えて、財政再建のための公共工事発注減少も予想されるとして、やや慎重な見通しだ。ただし景気対策の公共投資前倒しや災害復旧・復興関連の補正予算はプラス要因と考えられる。
なお配当予想は前期と同額の年間20円(期末一括)としている。予想配当性向は17.7%となる。
■中期経営計画で18年連結受注高470億円目指す
15年5月にCTIグループ中長期ビジョン「CLAVIS2025」を策定した。そして15年11月には中期経営計画2018を発表した。
グループの目指す方向は、幅広いインフラを対象としてあらゆるニーズに対応する「マルチインフラ企業」、世界に貢献するために海外業務をさらに拡大する「グローバル企業」であり、これを技術者と技術を経営資源とする「アクティブ企業」への推進によって実現するとしている。
中期経営計画2018では、中長期ビジョン「CLAVIS2025」の最初の3年間の計画として、今後のインフラ多様化および競合の激化に備え、企業体力を強化するとともに事業ドメインの拡大を図り、マルチインフラ&グローバル企業へ向けての基盤を築くことを基本的な考え方とした。
そして中長期ビジョン「CLAVIS2025」目標(25年単体受注高400億円、連結受注高600億円)達成に向けて、中期経営計画2018では目標値として18年単体受注高350億円、連結受注高470億円、単体営業利益率7.0%(営業利益24億円)、連結営業利益率6.5%(営業利益30億円)を掲げている。株主還元については安定配当を維持する方針だ。
また中期経営計画2018における重点課題は、人材力向上戦略、経営・組織および生産の構造改革、受注シェアの戦略的拡大、新たな事業フィールドの開拓、品質および効率の向上としている。
■中期的に事業環境は良好
中期的に事業環境は良好である。20年東京夏季五輪関連、リニア新幹線関連など建設ビッグプロジェクトが目白押しであり、国土強靭化基本計画に沿って社会資本整備に対する計画的な投資が実行される。
防災・減災関連、老朽化インフラ補修・更新関連、都市再開発関連、アベノミクス重点戦略「地方創生」関連の案件が増加し、土木コンサルタント業務の積算に用いられる技術者単価や一般管理費の比率が上昇して採算改善も期待される。そして、技術力によって契約企業を選定するプロポーザル方式において優位性を発揮している。
中期的に良好な事業環境も背景に、CTIグループ中長期ビジョン「CLAVIS2025」で掲げた新分野・未参入分野・周辺分野・新業種等への事業領域拡大戦略も奏功して収益拡大が期待される。農業ビジネスへの参入でTPP(環太平洋パートナーシップ)関連としても注目される。
■株価は下値固め完了して反発のタイミング
株価の動きを見ると、第1四半期の赤字を嫌気して戻り高値圏1000円台から安値圏900円近辺まで反落した。ただし3月の年初来安値832円まで下押すことなく、下値固め完了感を強めている。
5月10日の終値895円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS113円15銭で算出)は8倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は2.2%近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1675円40銭で算出)は0.5倍近辺である。なお時価総額は約127億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線を割り込んだが、900円近辺が下値支持線の形だ。1桁台の予想PER、0.5倍近辺の低PBRなど指標面の割安感は強い。反発のタイミングだろう。