【アナリスト水田雅展の銘柄診断】キャリアリンクは17年2月期も2桁増収増益・連続増配予想、6月1日付で株式2分割

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 キャリアリンク<6070>(東1)は「チーム派遣」を強みとする総合人材サービス企業である。16年2月期はBPO関連事業の受注拡大が牽引し、採用費や研修費などの増加を吸収して2桁増収増益・増配だった。そして17年2月期も2桁増収増益・連続増配予想である。マイナンバー関連BPO大型案件も本格化する。また6月1日付で株式2分割を実施する。株価はモミ合いから上放れて年初来高値を更新した。好業績や株式2分割を評価して15年8月の上場来高値を目指す展開だろう。

■BPO関連事業が主力の総合人材サービス企業

 官公庁・地方公共団体・民間企業向けBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)関連事業を主力として、企業等のコンタクトセンター(コールセンター)向けCRM(カスターマー・リレーションシップ・マネジメント)関連事業、製造・物流分野の製造技術系事業、一般事務職分野の一般事務事業など、人材派遣・紹介や業務請負などの総合人材サービス事業を展開している。


 16年2月期の事業別売上高は、BPO関連事業108億53百万円(売上構成比65.4%)、CRM関連事業29億31百万円(同17.7%)、製造技術系事業16億32百万円(同9.8%)、一般事務事業11億89百万円(同7.2%)だった。

 なお3月31日に、優良派遣事業者認定制度にて「優良派遣事業者」として認定されたと発表している。

■顧客企業の業務効率化を実現する「チーム派遣」に強み

 顧客の業務効率化や品質向上などを実現する企画提案型の人材派遣および業務請負を特徴としている。特にBPO関連事業では、顧客企業の業務効率化や業務処理品質向上を実現するために「単なるスタッフ派遣」ではなく、経験豊富な社員をリーダーとして編成した「チーム派遣」を強みとしている。顧客にとっては、自社による導入時の研修や導入後の業務指導などに係る負担が軽減され、発注から短期間で大量業務処理の稼働開始が可能になるというメリットもある。

 またBPO事業者からの受注を含めて1000名を超える大型案件でも、稼働開始まで短期間で対応できるノウハウを有していることも強みだ。スタッフに対してはキャリアパス制度などを活用して能力、満足度、出勤率、稼働率を高める仕組みを構築しており、こうした仕組みもチーム派遣や大型案件に対する短期間での対応を支えている。

 中期的な経営基盤強化に向けて、BPO関連事業における官公庁・地方公共団体関連の大型特需案件や成長市場である民間BPO案件の受注拡大、高品質で顧客満足度の高いBPOサービス提供の強化、M&Aも活用したBPO関連事業の領域拡大、CRM関連事業や製造技術系事業における高利益案件をメインターゲットとした受注活動の強化、そして業容拡大に向けた人材採用・育成の強化を推進している。

■BPO関連事業が牽引して収益拡大基調

 15年2月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)28億78百万円、第2四半期(6月~8月)36億08百万円、第3四半期(9月~11月)38億41百万円、第4四半期(12月~2月)36億21百万円、営業利益は第1四半期1億15百万円、第2四半期2億94百万円、第3四半期2億71百万円、第4四半期1億51百万円だった。

 BPO関連事業が牽引して四半期ベースでも増収基調だ。15年2月期の売上総利益率は21.1%で14年2月期比3.0ポイント上昇、販管費比率は15.2%で同0.4ポイント低下、ROEは24.5%で同15.1ポイント上昇、自己資本比率は41.3%で同11.4ポイント低下した。配当性向は20.4%だった。

■16年2月期は計画超の2桁増収増益で増配

 4月14日発表した前期(16年2月期)非連結業績は、売上高が前々期(15年2月期)比19.1%増の166億07百万円、営業利益が同15.2%増の9億58百万円、経常利益が同14.9%増の9億44百万円、純利益が同21.3%増の5億91百万円だった。BPO関連事業の好調が牽引して計画超の2桁増収増益となり、過去最高益を更新した。

 セグメント別売上高はBPO関連事業が同29.1%増の108億53百万円、CRM関連事業が同3.6%減の29億31百万円、製造技術系事業が同5.6%増の16億32百万円、一般事務事業が同25.1%増の11億89百万円だった。

 BPO関連事業では、首都圏におけるBPO大型プロジェクト案件が順調に推移し、民間BPO案件の新規受注も拡大した。マイナンバー関連の各種業務や臨時給付金関連業務など官公庁向けBPO案件も計画以上に受注した。またマイナンバー案件に関しては、企画提案型入札のプロポーザル案件で約40%のシェアを獲得しているようだ。

 CRM関連事業では、通信事業者などからコンタクトセンター向け派遣案件などを新規受注したが、テレマーケティング事業者への派遣が低調だった。製造技術系事業では食品加工業者や製薬メーカーなどからの受注が好調に推移した。一般事務事業では事務センターなど既存案件の受注量が伸長し、金融機関向け新規案件などの受注も寄与した。

 売上総利益は同14.1%増加したが、売上総利益率は20.3%で同0.8ポイント低下した。また販管費は13.7%増加したが、売上高販管費比率は14.5%で同0.7ポイント低下した。BPO関連事業拡大に向けた人員増に伴って人件費、採用費、研修費などが増加したが増収効果で吸収した。ROEは24.4%で同0.1ポイント低下、自己資本比率は47.3%で同6.0ポイント上昇した。配当予想は同2円増配の年間18円(期末一括)とした。配当性向は19.1%となる。

 なお四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)38億73百万円、第2四半期(6月~8月)40億40百万円、第3四半期(9月~11月)42億46百万円、第4四半期(12月~2月)44億46百万円、営業利益は第1四半期1億89百万円、第2四半期2億03百万円、第3四半期2億63百万円、第4四半期3億03百万円だった。営業損益は15年2月期第4四半期をボトムとして改善基調だ。

■17年2月期も2桁増収増益・連続増配予想

 今期(17年2月期)通期の非連結業績予想(4月14日公表)は、売上高が前期(16年2月期)比20.3%増の199億84百万円、営業利益が同16.8%増の11億19百万円、経常利益が同17.2%増の11億06百万円、純利益が同22.1%増の7億22百万円としている。

 事業別売上高伸長率は、BPO関連事業が約20%増、CRM関連事業が約6%増、製造技術系事業が約40%増、一般事務事業が約27%増の計画としている。BPO関連事業ではマイナンバー関連の大型案件が本格化し、臨時給付金関連の増加も寄与する。CRM関連事業では金融関連が増加する。製造技術系事業ではエリア拡大で受注が拡大する。一般事務事業では金融関連が増加する。

 17年2月期の営業戦略としては、オンサイトBPO関連市場におけるシェアNO.1を目指し、官公庁関連では取引自治体数の拡大、恒常的公共サービス領域への事業展開、ナレッジ化推進によるさらなる差別化、競争力と利益率を向上、民間関連ではアライアンス戦略強化、金融業界の多様なアウトソーシングニーズの大型案件への昇華などに取り組む方針だ。またCRM関連事業では金融機関における取引拡大、製造技術系事業では既存顧客との継続的拡大基盤の構築などに取り組む。

 利益面では売上総利益率は若干の低下を見込み、人員増加に伴って販管費も増加するが、増収効果で吸収して2桁増収増益予想だ。そして売上高、利益とも過去最高を更新する見込みだ。

 配当予想(4月14日公表)は年間10円(期末一括)としている。16年6月1日付の株式2分割を考慮して年間20円に換算すると、前期の年間18円に対して実質的に2円増配となる。なお予想配当性向は17.3%となる。

■BPO関連事業が成長エンジン、M&Aによる領域拡大も推進

 中期経営計画(ローリング方式、17年2月期~19年2月期)では、BPO関連事業を成長エンジンとした成長戦略を加速させる方針を掲げ、営業戦略の基本を大型BPO案件の獲得による売上規模拡大、企画提案力・運用力の強化とチーム派遣の拡大、M&AによるBPO関連事業の領域拡大としている。

 目標数値は19年2月期売上高300億円(BPO関連事業210億円、CRM関連事業39億円、製造技術系事業38億円、一般事務事業13億円)、営業利益18億50百万円、経常利益18億40百万円、純利益12億円としている。

 BPO関連事業では、BPOソリューションサプライヤーとしての地位からレベルアップし、IT分野などの上流工程を含めたTier1を目指す。CRM関連事業では高利益案件をメインターゲットとして、その周辺業務を取り込み、BPO関連事業の受注拡大を推進する。製造技術系事業では、西日本エリアをターゲットエリアとして高利益案件の受注拡大を推進する。一般事務事業では紹介予定派遣を軸として、派遣ビジネスモデルを高利益体質へ変革する方針だ。

 なおBPO関連事業の拡大に向けて、BPOベンダー等との関係強化を推進するための営業推進部、人材育成を強化するための研修センター、人材採用・開発力を強化するための人材開発部を設置するなど新たな体制を構築している。またキャリアパス制度による社員登用増、無期雇用社員の採用増、高スキル・高スペック人材の確保などで「チーム派遣」を一段と強化する方針だ。

■BPO関連事業の受注拡大が牽引して中期成長シナリオに変化なし

 中期的に事業環境は良好である。官公庁・地方公共団体関連では財政健全化に向けた費用抑制の流れ、サービス向上や業務効率化のニーズ増大も背景として、官から民間への業務委託・移管の増加が予想されている。民間企業関連ではコア事業への経営資源集中や固定費の変動費化の流れも背景として、業務のアウトソーシング化が一段と増加すると予想されている。

 BPO関連事業の業容拡大に伴って中途採用が必要なため、人材開発部および研修センターを強化している。

 業務効率化に向けた企画提案力、1000名以上の大型案件でも稼働開始まで短期間で対応できるノウハウ、官公庁向け大型BPO案件の受注実績などから、マイナンバー関連でも大型BPO案件を受注することが期待され、さらに改正労働者派遣法も追い風として期待される。BPO関連事業の受注拡大が牽引して中期成長シナリオに変化はないだろう。

■株主還元は総合利回りの向上を目指す

 株主還元については基本方針として、現金配当と株主優待を合算した総合利回りの向上を目指している。

 株主優待制度については毎年8月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して実施している。なお優待内容(6月1日付株式2分割後)は、100株以上~200株未満保有株主に対してオリジナルQUOカード500円分、200株以上~500株未満保有株主に対してオリジナルQUOカード1000円分、500株以上保有株主に対してオリジナルQUOカード2000円分を贈呈する。

■株価はモミ合い上放れて年初来高値更新、15年8月高値目指す

 なお4月14日に株式分割を発表した。16年5月31日を基準日(効力発生日16年6月1日)として1株を2株に分割する。投資単位当たりの金額を引き下げることで、当社株式の流動性の向上および投資家層のさらなる拡大を図る。

 また4月14日には監査役設置会社から監査等委員会設置会社への移行を発表した。5月27日開催予定の第20期定時株主総会での承認を前提とする。

 株価の動きを見ると、直近安値圏1500円~1600円近辺でのモミ合いから上放れて年初来高値を更新した。4月19日には1994円まで上伸した。好業績や株式2分割を好感した形だ。その後は利益確定売りで一旦反落したが、自律調整の範囲だろう。

 5月11日の終値1815円を指標面(1株当たり数値は6月1日付株式2分割前)で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS115円30銭で算出)は16倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は1.1%近辺、前期実績PBR(前期実績BPS424円53銭で算出)は4.3倍近辺である。時価総額は約114億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインの形となった。また週足チャートで見ると13週移動平均線が26週移動平均線を上抜くゴールデンクロスの形となった。強基調に転換して先高感を強めている。好業績や株式2分割を評価して15年8月の上場来高値2640円を目指す展開だろう。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■シスルナ経済圏構築に向け、グローバルなパートナーシップを強化  ispace(アイスペース)<9…
  2. 【先人の教えを格言で解説!】 (犬丸正寛=株式評論家・平成28年:2016年)没・享年72歳。生前に…
  3. ■物価高・人手不足が直撃、倒産件数29カ月連続で増加  帝国データバンクの調査によると、倒産件数が…
2024年11月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

ピックアップ記事

  1. ■化粧品大手は業績下方修正も、電鉄各社は上方修正で活況  トランプ次期大統領の影響を受けない純内需…
  2. どう見るこの相場
    ■金利敏感株の次は円安メリット株?!インバウンド関連株に「トランプ・トレード」ローテーション  米…
  3. ■金利上昇追い風に地銀株が躍進、政策期待も後押し  金利上昇の影響を受けて銀行株、特に地方銀行株の…
  4. ■トリプルセット行、ダブルセット行も相次ぐ地銀銀株は決算プレイで「トランプトレード」へキャッチアップ…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る