【ドクター箱崎幸也の健康増進実践法】健康寿命推定プログラムの活用
- 2016/5/12 09:36
- 株式投資News
4月号で米国リー博士の健康寿命期間を推測する研究を紹介しました。この健康寿命推定研究は、年齢、病気の有無や日常生活活動度の12項目をスコア化して4年後の生存率を推定します。12項目のスコアは、(1)年齢(60~64歳;1点,65~69歳;2点,5歳毎に1点加算、85歳以上は7点)、(2)性別(男性2点)、(3)糖尿病(1点)、(4)癌(2点)、(5)慢性肺疾患(2点)、(6)心不全(2点)、(7)数週間前までの喫煙(2点)、(8)BMI(体重kg/身長m2)25以下(1点)、(9)1人で入浴出来ない(2点)、(10)500m~1km歩行不能(2点)、(11)金銭管理が困難(2点)、(12)椅子や小机などを動かせない(1点)と規定されています。
合計点数で4年後の死亡率は、1点では2%、3点では4%、5点では8%、7点では15%、9点では20%、10点では28%、12点では44%、13点では59%、14点以上では64%と推計されます。
今後この推計プログラムをもとに、各種検診を受診すべきなのか、脂質異常症(高コレステロール改善薬)の治療継続が必要なのかなどが参考になります。例えば、喫煙/心不全有り、入浴/歩行/金銭管理が困難な75歳男性のスコアは、16点になり4年後の生存率36%と推測されます。
一般的に75歳まで大腸癌検診が勧められますが、検診で発見された人の平均生存期間は5年以上あります。この男性では4年後の生存率36%であり、大腸癌検診の有用性は少なく積極的には勧められません。しかし、85歳女性は今まで病気無く日常生活も支障がなく元気で、合計スコア 7点で4年生存率 85%となります。この女性では年齢を除けば、大腸がん検診が推奨されます。個人的には、便潜血反応の一次検診は受け陽性なら腹部CT検査(単純)である程度の大きさの大腸癌発見に努めるべきです。
超高齢化社会の我が国では、この様な健康寿命推計プログラムを参考に効率的な医療が必要です。しかし、このプログラムに振り回されず上手く有効に活用し、主体的に検診や医療を受けて下さい。(元気会横浜病院々長・元自衛隊中央病院消化器内科部長)