【アナリスト水田雅展の銘柄診断】インテリジェントウェイブは年初来高値に接近、16年6月期第3四半期累計は大幅営業増益、通期増額の可能性

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 インテリジェントウェイブ<4847>(JQS)は金融分野や情報セキュリティ分野を中心にシステムソリューション事業を展開している。金融分野の案件増加やサイバーセキュリティ関連の好調などで、16年6月期第3四半期累計は大幅営業増益だった。通期は2桁営業増益予想で増額の可能性が高まっている。株価は1月の年初来高値に接近して出直りの動きが本格化している。好業績を評価して15年7月高値を目指す展開だろう。

■金融システムや情報セキュリティ分野のソリューションが主力

 大日本印刷<7912>の連結子会社で、ソフトウェア開発を中心にソリューションを提供する金融システムソリューション事業、情報セキュリティ分野を中心にパッケージソフトウェアや保守サービスを提供するプロダクトソリューション事業を展開している。

 高度な専門性が要求されるクレジットカード決済のフロント業務関連システムで特に高シェアを持ち、クレジットカード会社、ネット銀行、証券会社など金融関連のシステム開発受託・ハードウェア販売・保守サービスを収益柱としている。

 クレジットカードの利用承認や銀行ATMのネットワーク接続などの決済ネットワークを支える仕組みの「NET+1」(ネットプラスワン)、クレジットカードの不正利用を検知する「ACEPlus」(エースプラス)、内部情報漏えい対策システム「CWAT」(シーワット)などの製品が強みだ。

 16年1月には韓国の子会社(当社100%出資)を解散すると発表した。清算結了予定は16年5月である。韓国内において当社製品の販売および顧客サポートを行ってきたが、今後の事業計画を見直した結果、解散することに決定した。

■事業領域拡大に向けて新製品開発を強化

 金融システムソリューション事業ではクレジットカード決済のフロント業務関連システムから、バックオフィス業務関連など基幹業務システム関連への事業領域拡大を目指している。またプロダクトソリューション事業では、サイバー攻撃や情報漏えいに対応したセキュリティ関連のソリューションを強化している。

 15年6月には、内部情報漏えい対策システムCWAT(シーワット)の最新版となる「CWAT Version5.5」の出荷を開始した。CWATはPCなど情報端末のファイル操作、メール送信、外部メディアへの書き込み、接続などを監視し、企業の情報を守る情報漏えい対策システムである。最新バージョンではオプション機能としてWindows Server監視機能を追加した。

 さらに新製品開発では14年末から、当社保有技術を活用した新製品OnCore(オンコア)の開発を進めている。証券取引関連業務で培った技術を基に「NET+1」や「ACEPlus」等の機能を搭載し、さまざまなシステム開発におけるプラットフォームの基盤となる製品だ。16年1月から国内販売を開始し、大手クレジットカード会社での活用が決定している。ハードウェアをセットにしたパッケージ型製品として金融以外の業界に向けても販売を予定している。また国内だけでなく東南アジアでの販売も視野に入れている。

 4月20日には、クレジット決済システム新製品OnCore(オンコア)に、レッドハット社の製品を採用したと発表(レッドハット社のニュースリリース)している。

■アライアンス戦略も積極化

 アライアンス戦略では14年2月、ジーフィー(GIFI)と個人投資家向け次世代オンライントレードシステム分野で業務提携した。

 15年2月にはCyberArk社(イスラエル)と国内販売代理店契約を締結した。世界65ヶ国以上、1750社以上で導入実績がある同社の特権アカウントセキュイリティソリューションを販売する。またDevexperts Japan社と業務提携した。Devexperts社はトレーディングソフトウェア開発に優れたノウハウを持っている。戦略的業務提携によって、これまで実績のある高速取引、リアルタイム市況情報分析のソリューションから、デリバティブシステムを中心とした金融業務執行系プラットフォーム開発へ業務範囲を拡大し、金融業務の幅広いニーズに対応したソリューションを提供する。

 15年5月には、大日本印刷が米パロアルトネットワークスと販売代理店契約を締結したことに伴って、同社の標的型攻撃対策ソフトウェア「アドバンストエンドポイント プロテクションTraps」の販売を開始した。17年度までの3年間累計で約20億円の売上を目指すとしている。また15年10月には、米パロアルトネットワークスの標的型攻撃対策ソフトウェア「アドバンストエンドポイント プロテクションTraps」運用支援のための新サービス「Traps-エンドポイントログアナリシス(TELA)」を開発した。

 4月25日には、16年4月1日付でソフトバンクが日本IBMと共同で構築・提供する「IBM Watson エコシステムプログラム」のテクノロジーパートナーとして認定されたと発表している。クレジットカード決済システムや不正検知システム、内部情報漏洩対策製品などの自社製品開発および受託開発により培った技術力を活用し、Watson関連ビジネスの技術的な支援を積極的に行っていくとしている。

■金融業界のシステム投資や案件ごとの採算性が影響する収益構造

 15年6月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(7月~9月)14億26百万円、第2四半期(10月~12月)14億18百万円、第3四半期(1月~3月)14億57百万円、第4四半期(4月~6月)18億58百万円、営業利益は第1四半期94百万円、第2四半期89百万円、第3四半期99百万円、第4四半期2億01百万円だった。

 金融業界のシステム投資の動向や案件ごとの採算性などが影響しやすい収益構造である。15年6月期は不採算案件が一巡して営業損益が大幅に改善した。売上総利益率は28.9%で14年6月期比8.4ポイント上昇、販管費比率は21.0%で同2.8ポイント上昇、ROEは10.1%で同8.2ポイント上昇、自己資本比率は74.6%で同4.3ポイント低下した。配当性向は28.0%だった。

■16年6月期第3四半期累計は大幅営業増益

 5月9日発表した今期(16年6月期)第3四半期累計(15年7月~16年3月)の連結業績は、売上高が前年同期比13.6%増の48億86百万円、営業利益が同51.7%増の4億29百万円、経常利益が同51.9%増の4億46百万円、純利益が同0.7%減の2億86百万円だった。

 特別損失計上や税金費用増加で純利益は減益だったが、金融システムソリューション、プロダクトソリューションとも好調に推移して2桁増収となり、大幅営業増益・経常増益だった。金融システムソリューションでは金融業界やクレジットカード業界の新規設備投資案件、プロダクトソリューションではサイバーセキュリティ対策関連が好調に推移しているようだ。

 売上総利益は同12.8%増加したが、売上総利益率は27.9%で同0.2ポイント低下した。販管費は同0.9%増加にとどまり、販管費比率は19.1%で同2.4ポイント低下した。営業外収益では為替差益が増加(前期2百万円計上、今期8百万円計上)した。特別損失では関係会社整理損失引当金繰入額17百万円を計上した。法人税等合計は1億41百万円で、前期の4百万円から大幅に増加した。

 セグメント別に見ると、金融システムソリューションは売上高が同10.1%増の43億46百万円、営業利益が同13.2%増の4億56百万円だった。売上高ではソフトウェア開発が案件増加で同12.7%増の26億54百万円、他社製パッケージが証券会社向けなどに同94.3%増の3億40百万円と好調に推移した。保守とハードウェアは微減、自社製パッケージは横ばいだった。

 プロダクトソリューションは売上高が同52.7%増の5億39百万円、営業利益が26百万円の赤字(前年同期は1億20百万円の赤字)だった。売上高では第1四半期および第2四半期に比べて第3四半期はやや減少したが、累計ベースでは自社製パッケージが同22.4%増の2億62百万円、他社製パッケージが同98.6%増の2億76百万円と、いずれも好調に推移した。増収効果で営業損益が大幅に改善した。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(7月~9月)13億31百万円、第2四半期(10月~12月)16億65百万円、第3四半期(1月~3月)18億90百万円、営業利益は第1四半期34百万円、第2四半期1億68百万円、第3四半期2億27百万円だった。

■16年6月期通期2桁営業増益予想で増額期待

 今期(16年6月期)通期の連結業績予想は前回予想(8月5日公表)を据え置いて、売上高が前期比5.5%増の65億円、営業利益が同11.6%増の5億40百万円、経常利益が同10.2%増の5億40百万円、純利益が同25.7%減の3億50百万円としている。特別損失計上や税金費用増加で純利益は減益予想だが、サイバーセキュリティ関連の好調などで増収、2桁営業増益・経常増益予想である。配当予想は前期と同額の年間5円(期末一括)としている。予想配当性向は37.6%となる。

 セグメント別の計画は、金融システムソリューションの売上高が同3.0%増の57億円、営業利益が同29.0%減の5億40百万円、プロダクトソリューションの売上高が同27.6%増の8億円、営業利益が0百万円(前期は2億76百万円の赤字)としている。金融システムソリューションでは、ハードウェアと自社製パッケージで減収を見込み、ソフトウェア開発は増収だが利益率の低下を見込んでいる。プロダクトソリューションは、サイバーセキュリティ関連の他社製パッケージソフトの大幅増収と、経費削減効果で営業損益が大幅に改善する見込みだ。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が75.2%、営業利益が79.5%、経常利益が82.6%、純利益が81.7%と高水準である。そして金融システムソリューションは第3四半期の受注が好調だったため、通期は売上、利益とも上振れ見込みとしている。新製品OnCore(オンコア)も売上計上される見込みだ。

■クレジットカード・金融業界のシステム投資は高水準

 クレジットカード・金融業界では、システム・ハードウェア更新投資、クレジットカード会社の資本関係変化に伴うシステム開発投資、不正検知を含むFEPシステム投資、ブランドプリペイドカードやモバイル端末決済など決済サービス多様化に対応したシステム投資、訪日外国人旅行客の増加に伴うコンビニエンスストアATMや海外カードに対応した新規投資などで、設備投資が高水準に推移する見通しだ。

 高水準の投資需要を背景にクレジットカード・金融関連の開発案件受注増加が期待され、さらにサイバー攻撃対策や情報漏えい対策などセキュリティ関連の需要増加も期待される。

 中期成長に向けて需要変動や採算性の影響を受けやすい開発請負型から、ASP方式によるセキュリティソフト・システム利用課金などストック型の収益構造への転換を推進する方針だ。そして従業員の意識改革や人材育成を目指した組織改正、開発プロジェクトの利益確保を目指した品質保証部門の新設などの施策も実施している。

 中期的な経営目標値としては、売上高100億円、営業利益10億円を目指している。運用関連分野でのM&Aの活用も視野に入れているようだ。中期的に収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は6月末に実施、セキュリティ製品を贈呈

 株主優待制度については、毎年6月末現在の1単元(100株)以上保有株主に対して、Dr.Web社のセキュリティ製品(Windows版またはMac版)1ライセンス(PC1台用)を贈呈する。

 Dr.Web製品は、ロシアの各政府機関や地方自治体をはじめ、世界中のグローバルカンパニーで利用されている業界最高水準のセキュリティ製である。

■株価は1月の年初来高値に接近、15年7月高値目指す

 株価の動きを見ると、450円~500円近辺での中断保ち合いから上放れて5月11日と13日に541円まで上伸した。そして3月の戻り高値545円、1月の年初来高値559円に接近し、出直りの動きが本格化している。

 5月13日の終値535円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS13円29銭で算出)は40倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間5円で算出)は0.9%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS183円55銭で算出)は2.9倍近辺である。なお時価総額は約141億円である。

 週足チャートで見ると中断保ち合いから上放れの形となった。そして13週移動平均線が26週移動平均線を上抜くゴールデンクロスを示現して先高期待を強めている。好業績を評価して15年7月高値690円を目指す展開だろう。

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