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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】巴工業は指標面の割安感を見直し、原油価格上昇も追い風
- 2016/5/17 09:02
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
巴工業<6309>(東1)は遠心分離機械や化学工業製品を主力として、中国ではコンパウンド加工事業も展開している。16年10月期は油井関連市況の悪化や中国の景気減速などで減益予想としているが、原油価格上昇が追い風となりそうだ。株価は16年10月期減益予想の織り込みが完了し、予想配当利回り3%近辺や実績PBR0.6倍近辺という指標面の割安感を見直す動きが本格化しそうだ。
■機械製造販売事業と化学工業製品販売事業を展開
遠心分離機械を中心とする機械製造販売事業、合成樹脂や化学工業薬品などを中心とする化学工業製品販売事業を2本柱として、中国・深圳ではコンパウンド加工事業も展開している。
13年11月には、中国の連結子会社・星科工程塑料に対するテクノポリマーおよび日本カラリングの出資持分をすべて譲り受け、両社との資本・業務提携を解消して当社主導で収益立て直しを進めている。
15年12月には、タイにおける商社活動を目的として、100%出資子会社TOMOE Trading(Thailand)の設立を発表した。
■15年10月期は減収、営業増益、経常増益、最終減益
15年10月期は機械製造販売事業における機械および装置・工事の販売減少、化学工業製品販売事業における国内合成樹脂分野の販売減少などで減収だったが、機械製造販売事業における収益性の高い部品・修理の販売伸長などで営業増益、経常増益だった。純利益は負ののれん発生益が一巡して減益だった。
15年10月期の売上総利益率は19.9%で14年10月期比1.1ポイント上昇、販管費比率は16.3%で同0.7ポイント上昇した。営業外収益では受取配当金が減少したが、為替差益が増加した。特別利益では投資有価証券売却益を計上したが、14年10月期計上の負ののれん発生益が一巡した。特別損失では減損損失を計上した。ROEは4.2%で同0.5ポイント低下、自己資本比率は73.4%で同2.6ポイント上昇した。配当性向は43.7%だった。
セグメント別にみると、機械製造販売事業は売上高が同7.6%減の94億28百万円、営業利益が同75.6%増の2億77百万円だった。収益性の高い部品・修理の販売伸長で営業損益が改善した。化学工業製品販売事業は売上高が同1.9%減の299億25百万円、営業利益が同0.5%減の11億10百万円だった。国内合成樹脂分野の販売減少に、中国・深圳のコンパウンド事業の販売数量減少による採算悪化も影響した。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(11月~1月)95億72百万円、第2四半期(2月~4月)105億14百万円、第3四半期(5月~7月)88億37百万円、第4四半期(8月~10月)104億31百万円、営業利益は第1四半期2億87百万円、第2四半期6億47百万円、第3四半期2億54百万円の赤字、第4四半期7億07百万円だった。第3四半期は売上減速に伴って営業損益が悪化した。
■16年10月期第1四半期は減収減益
今期(16年10月期)第1四半期(11~1月)連結業績は、売上高が前年同期比6.9%減の89億12百万円、営業利益が同62.0%減の1億09百万円、経常利益が同76.8%減の1億11百万円、純利益が同92.4%減の29百万円だった。化学工業製品販売事業は増益だったが、機械製造販売事業の大幅減収を主因として減収減益だった。
売上総利益は同15.8%減少し、売上総利益率は18.3%で同2.0ポイント低下した。販管費は7.8%減少し、販管費比率は17.1%で同0.2ポイント低下した。営業外では為替差損益が悪化(前期は差益1億68百万円計上、今期は差損10百万円計上)した。特別利益では前期計上の固定資産売却益15百万円が一巡した。
セグメント別動向を見ると、機械製造販売事業は売上高が同32.9%減の13億07百万円、営業利益が2億77百万円の赤字(前年同期は56百万円の黒字)だった。中国向け装置・工事が伸長したが、北米油井向け機械の販売が減少し、国内官需向けの部品・修理も伸び悩んだ。化学工業製品販売事業は売上高が同0.2%減の76億04百万円、営業利益が同67.6%増の3億86百万円だった。収益性の高い商材の構成比率が高い工業材料分野、機能材料分野の伸長が寄与した。
■16年10月期通期は増収減益予想
今期(16年10月期)通期の連結業績予想(12月9日公表)は、売上高が前期(15年10月期)比6.2%増の418億円、営業利益が同4.9%減の13億20百万円、経常利益が同21.9%減の13億30百万円、純利益が同35.8%減の6億60百万円としている。為替差益や特別損益を見込まず増収減益予想だ。配当予想は前期と同額の年間45円(第2四半期末22円50銭、期末22円50銭)としている。予想配当性向は68.0%となる。
セグメント別には、機械製造販売事業の売上高が同16.3%増の109億70百万円、営業利益が同11.9%増の3億10百万円としている。海外では北南米油井向け販売が減少するが、アジア市場での建て直しを図る。国内では官需向け低動力型遠心分離機の拡販を推進するとともに、化学・食品・医薬業界を中心とする民需向けの販売増を見込んでいる。
化学工業製品販売事業は売上高が同3.0%増の308億30百万円、営業利益が同9.0%減の10億10百万円としている。国内の機能材料分野の黒鉛製品や香港の樹脂原料・製品の販売伸長、中国・深圳コンパウンド事業の業績回復を見込むが、国内および中国・深圳コンパウンド事業における販管費増加の影響で減益見込みとしている。
通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は、売上高が21.3%、営業利益が8.3%、経常利益が8.4%、純利益が4.4%である。低水準の形だが、原油価格上昇が追い風となって第2四半期以降の挽回に期待したい。
■中期経営計画で16年10月期ROE6.3%目標
13年12月策定の中期経営計画「Target2016」では、経営目標値として16年10月期の売上高475億円、営業利益25億80百万円、経常利益26億円、純利益16億円、ROE6.3%、ROA4.4%を掲げている。
重点戦略としては、北米市場、南米市場、東南アジア市場を中心とする海外売上高の拡大に加えて、機械事業ではエネルギー分野への参入、化学品事業では二次電池やパワー半導体向け商材の開拓に取り組む方針だ。
油井関連市況の急速な悪化や中国の景気減速など、事業環境が急速に悪化して、16年10月期の目標達成は難しくなったが、次期中期経営計画では収益改善策を期待したい。
■株主優待制度は10月末に実施、ワインを贈呈
株主優待制度については、毎年10月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して実施している。優待内容はワイン(当社関連会社取扱商品)1本を贈呈する。
■株価は指標面の割安感を見直し
株価の動きを見ると、4月21日の戻り高値1548円から一旦反落したが、直近安値圏1400円近辺から切り返している。16年10月期減益予想の織り込みは完了しているだろう。
5月16日の終値1476円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS66円14銭で算出)は22~23倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間45円で算出)は3.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2525円47銭で算出)は0.6倍近辺である。なお時価総額は約155億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線突破の動きを強めている。そして13週移動平均線が上向きに転じてきた。16年10月期減益予想の織り込みが完了して出直る動きのようだ。予想配当利回り3%近辺や実績PBR0.6倍近辺という指標面の割安感を見直す動きが本格化しそうだ。