【アナリスト水田雅展の銘柄診断】イワキは16年11月期第2四半期累計の利益予想を増額修正、通期も増額余地

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 イワキ<8095>(東1)は医薬品・医薬品原料・表面処理薬品などを主力とする専門商社である。5月18日に16年11月期第2四半期累計の利益予想を増額修正した。ジェネリック医薬品向け原料の好調が牽引し、大幅増益予想の通期も増額余地がありそうだ。ジェネリック医薬品の数量ベース普及率を80%以上に引き上げる政府方針が追い風であり、有機EL関連としても注目される。株価は4月の年初来高値から一旦反落したが、指標面の割安感は強い。自律調整が一巡して反発のタイミングだろう。

■医薬品・医薬品原料・表面処理薬品などを主力とする専門商社

 1914年創業で、医薬品・医薬品原料・表面処理薬品などを主力とする専門商社である。グループ内に医薬品製造・販売の岩城製薬、表面処理薬品製造・販売のメルテックスといったメーカー機能も備えている。

 16年11月期から事業区分を再構成して、医薬・FC(Fine Chemical)事業(医薬品原料の製造・販売、医薬品の製造・販売、体外診断薬・研究用試薬の卸売および医療機器の販売)、HBC(Health & Beauty Care)事業(化粧品原料・機能性食品原料の販売、一般用医薬品・関連商品の卸売、化粧品通信販売)、化学品事業(表面処理薬品・電子工業薬品・化成品の製造・販売、表面処理設備の製造・販売)、食品事業(食品原料の製造・販売)の4事業とした。

 15年11月期の売上高構成比は、医薬・FC事業35%(原料薬品23%、医薬品9%、その他特約3%)、HBC事業43%(HBC原料20%、ファルマネット19%、オリジナル製品4%)、化学品事業11%(表面処理薬品7%、スペシャリティマテリアル1%、表面処理設備3%)、食品事業7%だった。

 15年12月には、当社の化成品事業における表面処理薬品原料等の販売事業を子会社メルテックスに承継した。グループ内の重複業務の解消、迅速な事業戦略の実行、グループ経営資源の効率的活用を実現させて事業基盤強化を図る方針だ。

■中期成長に向けて卸売・商社・メーカー機能の連携を強化

 全国の医薬品卸・医療機関・ドラッグストアなどに医薬品や機能性食品などを供給する卸売機能、国内外のメーカーなどを開拓して輸出入する商社機能、グループ内に岩城製薬とメルテックスのメーカー機能を併せ持つことが強みで、卸売・商社・メーカー機能の連携を強化している。

 中期的な事業基盤強化と収益拡大に向けて、医薬品事業での共同開発・受託品の拡大、ドラッグストア向けPB商品など自社企画商品の開発強化、医薬品原料事業における市場シェア拡大、インド・グレンマーク社など海外サプライヤーとの連携強化、岩城製薬の生産能力増強と新製品開発、メルテックスの新製品拡販、海外(タイ、韓国、中国)展開強化、日立化成<4217>とのアライアンスによる拡販などを推進している。

 15年10月にはベトナム駐在員事務所の開設を発表した。海外展開強化の一環として、ベトナムおよび周辺国における市場調査や営業支援等を推進する。

■15年11月期は化学品事業が新製品への切り替えで低調

 四半期別の業績推移を見ると、14年11月期の売上高は第1四半期(12月~2月)125億44百万円、第2四半期(3月~5月)141億92百万円、第3四半期(6月~8月)131億90百万円、第4四半期(9月~11月)142億19百万円、営業利益は第1四半期1億90百万円、第2四半期4億24百万円、第3四半期23百万円の赤字、第4四半期2億99百万円だった。

 15年11月期の売上高は第1四半期130億01百万円、第2四半期145億15百万円、第3四半期139億58百万円、第4四半期139億48百万円、営業利益は第1四半期90百万円、第2四半期3億08百万円、第3四半期1億46百万円、第4四半期15百万円だった。

 15年11月期は増収だが営業減益・経常減益で純利益は赤字だった。ジェネリック医薬品関連やインバウンド需要関連が伸長したが、新製品への切り替えを進めている化成品事業が減収だった。売上総利益率は19.4%で14年11月期比1.2ポイント低下、販管費比率は18.4%で同0.6ポイント低下した。営業外では持分法投資損益が悪化した。特別利益では固定資産売却益が一巡し、特別損失では減損損失が一巡した。また子会社メルテックスにおける繰延税金資産取崩も影響して最終赤字だった。配当は同1円50銭減配の年間6円(第2四半期末3円、期末3円)だった。

■16年11月期第1四半期は計画超の大幅営業増益

 今期(16年11月期)第1四半期(12月~2月)連結業績は、売上高が前年同期比1.9%減の127億53百万円、営業利益が同78.4%増の1億61百万円、経常利益が同11.3%減の1億55百万円、そして純利益が同14.8%増の41百万円だった。医薬・FC事業の好調や販管費の抑制などで計画超の大幅営業増益だった。

 売上総利益率は20.3%で同0.3ポイント低下、販管費比率は19.0%で同0.9ポイント低下した。営業外収益では前期計上の有価証券償還益66百万円が一巡し、営業外費用では為替差損が増加(前期0百万円計上、今期34百万円計上)した。特別利益では投資有価証券売却益25百万円、特別損失では過年度決算訂正関連費用45百万円を計上した。

 セグメント別に見ると、医薬・FC事業は売上高が同8.2%増の47億72百万円、営業利益(連結調整前)が同28.9%増の2億76百万円だった。後発医薬品使用促進策も追い風となって自社製品が伸長した。特に医療用医薬品では主力の抗真菌剤やアトピー性皮膚炎治療剤が好調に推移し、医療用医薬品原料ではジェネリック医薬品の大型品目への新規納入が寄与した。一般用医薬品原料では主力の血管収縮剤の原料調達難が解消して国内・輸出とも好調だった。電子・機能性材料は受託のディスプレー用原料が好調だった。

 HBC事業は売上高が同0.1%増の52億44百万円、営業利益が37百万円の赤字(前年同期は12百万円の赤字)だった。化粧品原料が堅調に推移し、化粧品通信販売の主力製品も伸長したが、インバウンド需要による免税店向け商品がひと段落し、機能性食品がやや低調だった。

 化学品事業は売上高が同30.4%減の13億34百万円、営業利益が1億47百万円の赤字(同94百万円の赤字)だった。ライセンス契約終了に伴ってプリント配線板用「ルーセントカパー」シリーズなど新製品(全25品目)への切り替えを進めていることに加えて、中国を中心とするスマートフォン需要の減速も影響した。

 食品事業は売上高が同5.6%減の8億36百万円、営業利益が12百万円の赤字(同3百万円の黒字)だった。関連会社製品は既存顧客の需要増で伸長したが、農産加工品と天然調味料品は主力品の需要が落ち込み、全体として低調だった。

■16年11月期第2四半期累計の利益予想を増額修正

 5月18日に今期(16年11月期)第2四半期累計(12月~5月)の利益予想増額修正を発表した。前回予想(1月14日公表)に対して営業利益を1億70百万円増額、経常利益を1億60百万円増額、純利益を80百万円増額した。修正後の予想は売上高が前年同期比0.0%減の275億円、営業利益が同24.6%減の3億円、経常利益が同38.5%減の3億円、純利益が同57.1%減の90百万円で減益幅が縮小する。

 化学品事業は低迷しているが、医薬・FC事業におけるジェネリック医薬品向け原料の新規納入や既存品の納入量増大が牽引する。なお通期予想については、化学品事業の低迷など不安材料も勘案して前回予想(1月14日公表)を据え置いた。

■16年11月期は大幅増益予想、第2四半期累計の増額で通期も増額余地

 今期(16年11月期)通期の連結業績予想は前回予想(1月14日公表)を据え置いて、売上高が前期(15年11月期)比1.0%増の560億円、営業利益が同51.9%増の8億50百万円、経常利益が同29.6%増の9億円、純利益が4億50百万円(前期は1億43百万円の赤字)としている。配当予想は前期と同額の年間6円(第2四半期末3円、期末3円)で予想配当性向は45.0%となる。

 医薬・FC事業では、引き続きジェネリック医薬品の伸長を見込むが、16年4月予定の薬価改定の影響で厳しい環境も予想されるとしている。HBC事業では、インバウンド需要や機能性表示食品制度に対応した新商品投入などで、一般用医薬品、化粧品、機能性食品が堅調に推移する見込みだ。海外売上の拡大にも取り組む。

 化学品事業では、中国市場におけるスマートフォンの販売鈍化など全体として厳しい環境だが、新製品拡販効果などでメルテックスの収益改善を見込んでいる。食品事業では輸入原材料価格などコスト上昇圧力が強いが、商品開発効率化、生産コスト低減、既存原料の拡販などに取り組む。

 なお通期会社予想に対する修正後の第2四半期累計の進捗率を見ると、売上高が49.1%、営業利益が35.3%、経常利益が33.3%、純利益が20.0%となる。やや低水準の形だが期初時点で下期偏重の計画であり、化学品事業の収益改善進展も考慮すれば通期も増額余地がありそうだ。

 医薬・FC事業は、後発医薬品の数量ベース普及率を80%以上に引き上げる政府の骨太方針が追い風となる。また韓国の大手メーカー向けに有機EL関連案件を受注したことも注目される。収益改善が課題の化学品事業は、ライセンス生産が終了して利益率が高い自社製品生産へシフトし、新製品拡販で来期(17年11月期)上期の黒字化想定としている。収益は改善基調だろう。

■グループ中長期ビジョンおよび新中期経営計画を策定

 創業111年を迎える25年11月期に向けて、グループ中長期ビジョン「Vision i-111」および新中期経営計画(16年11月期~18年11月期)を策定している。

 グループ中長期ビジョン「Vision i-111」では、基本戦略に(1)策揃え企業になる(Intelligent)、(2)ナンバーワン製品・事業に注力する(Innovative)、(3)海外市場への事業展開を図る(International)、(4)資本効率を意識した事業運営を行う(Investment)として、数値目標には創業111周年25年11月期の連結売上高1000億円、ROIC10.0%以上を掲げた。

 新中期経営計画(16年11月期~18年11月期)では、これまで独立的に運営されていた事業部門をプロダクツごとのバリューチェーンに従って統合・運営するため、組織体系を4事業(医薬・FC事業、HBC事業、化学品事業、食品事業)に再構成し、数値目標には18年11月期売上高600億円、営業利益10億円、ROIC4.0%以上を掲げた。

 医薬・FC事業(イワキ、岩城製薬)では、原料の選定から最終製品の提供までを「策揃え」で提供するほか、国内外の医薬関連企業との協業を通して、さらなる市場拡大に努める。

 HBC事業(イワキ、アプロス)では、OEMやプライベート・ブランド製品の自社企画・提案を通して、国内の健康食品原料市場における高シェアを維持・拡大する。海外市場の開拓も推進する。化粧品通信販売では「シルキーカバーオイルブロック」のさらなる拡販を図る。

 化学品事業(メルテックス)では、高い技術力・ブランド力を持つIチップ抵抗向けスズめっき「メルプレートSN」シリーズの世界市場シェアNO.1を確保するとともに、15年から販売開始した大型新製品のプリント配線板向け硫酸銅めっき「ルーセントカパー」シリーズのグローバルシェア拡大を図る。

 食品事業(イワキ、持分法適用会社のボーエン化成)では、商品開発の効率化、生産コストの低減、ボーエン化成における国産・高付加価値原料の受託加工強化などを推進する。海外展開に関しては、ハラル対応原料に特化したマーケティングを開始し、マレーシア、インドネシア、中近東諸国の市場開拓に注力する。

■自己株式取得は終了、総還元性向は69%

 4月12日発表した自己株式取得(取得株式総数の上限50万株、取得価額総額の上限1億05百万円、取得期間16年4月13日~16年7月4日)については、4月26日時点の累計で取得株式総数49万9000株、取得価額総額1億0489万8000円となって終了した。なお配当総額に自己株式取得価額総額を加えた総還元性向は69%となる。

■株価は自己株式取得も好感して急反発、戻り歩調

 株価の動きを見ると、急伸した4月25日の年初来高値227円から利益確定売りで一旦反落したが、年初来安値圏170円台まで下押すことなく、200円近辺で自律調整一巡感を強めている。

 5月18日の終値194円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS13円33銭で算出)は14~15倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間6円で算出)は3.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS514円23銭で算出)は0.4倍近辺である。時価総額は約66億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、上向きに転じた13週移動平均線がサポートラインとなりそうだ。3%近辺の予想配当利回りや0.4倍近辺の低PBRと指標面の割安感も強い。自律調整が一巡し、16年11月期第2四半期累計の利益増額修正も好感して反発のタイミングだろう。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  2. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…
  3. ■節約志向が市場を動かす?  日本の消費者は、節約志向と低価格志向を持続しており、これが市場に影響…
  4. ■投資家の心理を揺さぶる相場の波  日米の高速エレベーター相場は、日替わりで上り下りと忙しい。とく…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る