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【アナリスト水田雅展の銘柄診断】松田産業は調整一巡して戻り歩調、17年3月期増収増益予想
- 2016/5/19 07:14
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
松田産業<7456>(東1)は貴金属リサイクル事業を主力として農林水産品販売事業も展開している。16年3月期は減収減益だったが、17年3月期は増収増益予想である。なお株主優待制度の対象変更、および19年3月期を最終年度とする中期経営計画も発表した。株価は地合い悪化も影響した4月の年初来安値から切り返している。強基調に転換する動きだ。指標面に割安感があり、調整が一巡して戻り歩調の展開だろう。
■貴金属リサイクルや農林水産品販売を展開
貴金属リサイクル(貴金属事業)や産業廃棄物処理(環境事業)などの貴金属関連事業、および農林水産品を扱う食品関連事業を展開している。16年3月期の売上高構成比は貴金属関連事業が64.3%、食品関連事業35.7%、また営業利益構成比は貴金属関連事業が75.1%、食品関連事業が25.9%だった。
貴金属リサイクルでは、半導体・電子材料部材・化成品などの貴金属製品をエレクトロニクス業界へ販売するとともに、半導体や電子部品を製造する過程で規格外となった部品(スペックアウト品)などの貴金属含有スクラップを国内外のメーカーから回収・処理・製錬することで、貴金属(金・プラチナ・パラジウムなど)をリサイクルする。
産業廃棄物処理では、写真の感光材料からの銀の回収、廃酸や廃アルカリの無害化中間処理など、産業廃棄物の回収・処理を行っている。無害化処理技術に強みを持ち、全国47都道府県での収集運搬業許可を得ている。
貴金属関連事業では「東アジアNO.1リファイナー」を目指し、国内外の拠点拡充、貴金属原料の確保と化成品などの製品販売強化、および製品・技術開発強化を推進している。海外は中国、台湾、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシア、ベトナムに展開し、ベトナムでは貴金属製錬工場の建設を進めている。
なおグループ会社のゼロ・ジャパンが、5月24日~27日開催(東京ビックサイト)の「2016NEW環境展(N-EXPO2016TOKYO)に出展する。低濃度PCB廃棄物のSMCC分解・洗浄法による無害化処理技術を展示する。
食品関連事業では、すりみ・エビ・貝類などの水産品、鶏卵・鶏肉・ポーク・ビーフなどの畜産品、乾燥野菜・冷凍野菜などの農産品を取り扱っている。取扱商品の豊富さとグローバルな調達ネットワークが強みだ。海外は中国、タイに拠点展開している。
なお16年2月にガルフ食品の全株式を取得した。同社は水産品の専門商社として長年の輸入実績とノウハウがあり、当社の水産品販売とのシナジー効果が期待できるとしている。
■エレクトロニクス業界の生産動向や貴金属・食品市況が影響する収益構造
なお15年3月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)429億40百万円、第2四半期(7月~9月)446億83百万円、第3四半期(10月~12月)469億16百万円、第4四半期(1月~3月)449億84百万円、営業利益は第1四半期9億31百万円、第2四半期10億79百万円、第3四半期16億86百万円、第4四半期17億14百万円だった。
半導体・電子部品などエレクトロニクス業界の生産動向や、貴金属および食品市況の影響を受ける収益構造である。15年3月期の売上総利益率は9.4%で14年3月期比0.1ポイント低下、販管費比率は6.4%で同0.4ポイント低下、ROEは6.8%で同0.1ポイント低下、自己資本比率は69.7%で同1.8ポイント低下した。配当性向は19.9%だった。
■16年3月期は減収減益
5月13日発表した前期(16年3月期)の連結業績は、売上高が前々期(15年3月期)比9.7%減の1620億65百万円、営業利益が同42.2%減の31億25百万円、経常利益が同35.1%減の37億82百万円、純利益が同23.0%減の25億73百万円だった。
エレクトロニクス産業の低迷や貴金属相場の下落などの影響で減収減益だった。売上総利益は同8.8%減少したが、売上総利益率は9.5%で同0.1ポイント上昇した。販管費は同7.0%増加し、販管費比率は7.5%で同1.1ポイント上昇した。営業外収益では持分法投資利益が増加(前々期4億43百万円計上、前期6億05百万円計上)した。
セグメント別に見ると、貴金属関連事業は売上高が同16.3%減の1041億59百万円、営業利益が同47.4%減の23億47百万円だった。主力顧客である半導体・電子部品業界においてスマホや自動車等の市場動向に左右された変動が見られ、総じて生産状況が減少傾向となった。写真感材業界の市場縮小も継続した。このため貴金属リサイクルおよび産業廃棄物処理の取扱数量が減少し、貴金属製品および電子材料等の販売数量も減少した。金を除いた販売価格の下落も影響して減収減益だった。
食品関連事業は、売上高が同5.2%増の579億05百万円だったが、営業利益が同18.1%減の7億77百万円だった。販売数量は農産品が減少したが、水産品および畜産品が増加した。
なお配当は株式公開20周年記念配当2円を加えて年間28円(第2四半期末14円、期末14円)とした。前々期比3円増配で、配当性向は28.8%となる。ROEは5.0%で同1.8ポイント低下、自己資本比率は74.1%で同4.4ポイント上昇した。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)450億14百万円、第2四半期(7月~9月)403億52百万円、第3四半期(10月~12月)407億69百万円、第4四半期(1月~3月)359億30百万円で、営業利益は第1四半期9億68百万円、第2四半期10億79百万円、第3四半期7億09百万円、第4四半期3億69百万円だった。
■17年3月期増収増益予想で収益改善期待
今期(17年3月期)の連結業績予想(5月13日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比11.1%増の1800億円、営業利益が同12.0%増の35億円、経常利益が同3.1%増の39億円、純利益が同1.0%増の26億円としている。配当予想は前期と同額の年間28円(第2四半期末14円、期末14円)で予想配当性向は28.4%となる。
貴金属関連事業では、国内外の拠点強化を推進するとともに、新規の需要開拓を積極的に推進する。食品関連事業では、顧客ニーズを的確にとらえた営業活動を推進する。貴金属相場の回復などで収益改善基調が期待される。
■中期経営計画で19年3月期営業利益50億円目指す
5月13日に中期経営計画(16~18年度)を発表し、経営数値目標に19年3月期連結売上高2100億円、連結営業利益50億円を掲げた。
経営戦略は、既存事業の収益拡大化、新たな収益源の構築、東アジア地区での積極拡大、最適な管理体制の構築、人材育成・確保の5項目を重点方針とした。また貴金属関連事業と食品関連事業の両分野において、製品・技術開発、国内外の拠点整備や機能拡充など、事業拡大に必要な成長戦略を行う。
貴金属関連事業では、長年培った貴金属リサイクルおよび環境保全に関するノウハウやインフラを最大限活用し、資源リサイクルの総合力で顧客ニーズにマッチしたアイテム拡充と省金化への対応により、環境価値の高い商品・サービスを提供することでシェア拡大と収益性向上を図る。
食品関連事業では、これまで培った品質保証等に関するノウハウや調達力を活かして、安全・安心かつ高品質な食品原材料を安定的に供給することで顧客ニーズに対応し、海外を含めた市場拡大と収益向上を図る。水産品においては、16年2月に株式取得したガルフ食品との相乗効果を含めて事業拡大を図る。
■株主優待制度の対象を1年以上保有株主に変更
5月13日に株主優待制度の対象の変更を発表した。従来は毎年3月31日現在で当社株式1単元(100株)以上保有する国内在住株主を対象としていたが、今後は1単元以上を継続1年以上保有する国内在住株主を対象とする。
17年3月31日現在の株主から変更後の新制度を適用する。ただし新制度導入初年度に限り、1単元以上を半年以上継続保有する株主に対しても株主優待品を贈呈する。
■株価は調整一巡して戻り歩調
株価の動きを見ると、地合い悪化も影響した4月8日の年初来安値1096円から切り返している。5月18日には1259円まで上伸した。調整が一巡し、17年3月期増収増益予想も好感したようだ。
5月18日の終値1256円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS98円73銭で算出)は12~13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間28円で算出)は2.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1967円65銭で算出)は0.6倍近辺である。時価総額は約363億円である。
週足チャートで見ると戻りを押さえていた13週移動平均線を突破した。強基調に転換する動きだ。指標面に割安感があり、調整が一巡して戻り歩調の展開だろう。