【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ファンデリーは17年3月期も増収増益予想、健康食宅配事業で中期成長期待

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ファンデリー<3137>(東マ)は健康食宅配事業を主力として、ヘルスケア総合企業を目指している。健康食宅配のMFD事業が好調に推移し、16年3月期は計画超の増収増益だった。そして17年3月期も増収増益予想である。一人暮らし高齢者や生活習慣病の増加も背景に中期成長期待は強い。株価は年初来高値圏から利益確定売りで一旦反落したが、自律調整が一巡して15年12月の戻り高値を目指す展開だろう。

■健康食宅配のMFD事業が主力

 00年9月設立、01年4月栄養士による健康食宅配サービス「カウンセリングデリバリー」開始、15年6月東証マザーズに新規上場した。社名ファンデリーの由来は「FUN(面白さ・楽しさ・感動)をDELIVERY(お届けする)」である。

 企業理念には「一食二医社会の実現」を掲げている。健康増進を図るためには第一に「食事コントロール」があり、それでも困難なときに「医療」を行うことが望ましく、医療費削減に貢献するためにも「一食二医社会の実現」を目指すとしている。

 主力事業は健康食を宅配するMFD(Medical Food Delivery)事業である。健康食通販カタログを医療機関や調剤薬局などを通じて配布し、顧客(個人)から電話・FAX・WEBを通じて注文を受け、健康食(冷凍弁当)を宅配する。定期コースとして、当社の管理栄養士・栄養士が顧客の疾病、制限数値、嗜好に合わせてメニューを選び、定期的に届けるサービス「栄養士おまかせ定期便」も提供している。

 健康食通販カタログは医療機関・保健所・介護施設向け「ミールタイム」や、調剤薬局向け「ミールタイムファーマ」を発行し、健康食通販サイト「ミールタイム」も運営している。また09年には介護食系通販カタログ「ミールタイムケア」も創刊した。通販カタログ「ミールタイム」は年4回、通販カタログ「ミールタイムファーマ」は年2回発刊し、毎号半分程度のメニューを変更して旬の食材を提供する。なお「ミールタイム」発行部数は13年春号40万部、14年春号50万部、15年春号75万部と増加基調である。

 また健康食宅配サービスから派生した事業として、健康食通販カタログ誌面の広告枠販売、商品サンプリングや健康食レシピ作成の業務受託、健康食レシピサイト運営などのマーケティング事業も展開し、収益源の多様化を推進している。

■専門性の高い栄養士によるカウンセリングや宅配サービスに強み

 当社の健康食宅配サービスは、従来の食事宅配サービスと一線を画し、食事コントロールを通じた血液検査結果の数値改善を目指している。このため栄養士が開発した健康食メニュー、栄養士によるカウンセリング宅配サービス、さらに栄養士が電話対応する注文・相談・カウンセリングを特徴としている。15年7月1日現在、従業員50名のうち女性40名全員が栄養士である。

 健康食通販カタログを配布する病院や調剤薬局などの紹介ネットワークを通じた効率的な顧客獲得と、専門性の高い栄養士によって、食事制限が必要な方に対して「ヘルシー食」「ヘルシー食多め」「たんぱく質調整食」「ケア食」など多様な健康食を提案できることが強みだ。担当栄養士に対する信頼感でリピート率も上昇している。

 15年11月には在宅医療を必要とする患者等の食事療法をサポートするため、医療機関に所属する管理栄養士が作る健康食レシピサイト「はちまるレシピ」を開設した。

 なお16年3月期末時点のMFD事業の会員数は15年3月期末比3万134人増加の18万2905人、定期コース会員数は同859人増加の6938人だった。いずれも増加基調である。また1件あたり購入単価は6900円前後、定期コースの売上構成比は5割強で推移している。

■16年3月期は計画超の増収増益

 5月10日発表した前期(16年3月期)非連結業績は、売上高が前々期(15年3月期)比13.0%増の30億15百万円で、営業利益が同14.1%増の5億円、経常利益が同14.4%増の5億円、純利益が同20.4%増の3億12百万円だった。主力のMFD事業の好調が牽引して計画超の増収増益だった。

 売上総利益は16.8%増加し、売上総利益率は57.2%で同1.9ポイント上昇した。販管費はカタログ発行部数増加などで同18.0%増加し、販管費比率は40.5%で同1.7ポイント上昇した。営業外収益では受取補償金10百万円を計上し、営業外費用では株式公開費用12百万円を計上した。ROEは26.1%で同6.1ポイント低下、自己資本比率は78.5%で同8.4ポイント上昇した。配当は無配を継続した。

 セグメント別に見ると、MFD事業は売上高が同16.0%増の27億72百万円、営業利益(連結調整前)が同38.7%増の5億98百万円だった。当社をテーマとしたテレビ番組放送による知名度上昇効果なども寄与して新規会員数が大幅に増加し、定期購入サービスである「栄養士おまかせ定期便」の利用者も順調に拡大した。

 マーケティング事業は、健康食品通販カタログの広告枠販売が順調だったが、紹介ネットワークを活用した業務受託において期前半に見込んでいた一部案件に規模縮小が生じ、売上高が同12.6%減の2億42百万円、営業利益が同13.3%減の1億80百万円だった。

 なおMFD事業の主要指標の推移を見ると、会員数は15年3月期第4四半期末15万2771人、16年3月期第1四半期末15万6872人、第2四半期末16万994人、第3四半期末17万7025人、第4四半期末18万2905人、そして定期コース会員数は15年3月期第4四半期末6079人、16年3月期第1四半期末6252人、第2四半期末6185人、第3四半期末6772人、第4四半期末6938人と増加基調である。また1件あたり購入単価は6900円前後で推移している。

 また四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)6億58百万円、第2四半期(7月~9月)6億48百万円、第3四半期(10月~12月)8億98百万円、第4四半期(1月~3月)8億11百万円、営業利益は第1四半期1億05百万円、第2四半期72百万円、第3四半期1億74百万円、第4四半期1億49百万円だった。

■17年3月期も増収増益予想

 今期(17年3月期)の非連結業績予想(5月10日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比15.0%増の34億66百万円、営業利益が同13.3%増の5億67百万円、経常利益が同11.4%増の5億57百万円、そして純利益が同8.8%増の3億40百万円としている。

 知名度向上効果、紹介ネットワークの新規開拓や深耕などにより、主力のMFD事業が好調に推移して増収増益予想だ。販管費は同15.5%増の14億11百万円の計画としている。

 セグメント別の計画は、MFD事業の売上高が同14.2%増の31億66百万円で営業利益(連結調整前)が同12.8%増の6億75百万円、マーケティング事業の売上高が同23.7%増の3億円で営業利益が同26.9%増の2億28百万円としている。MFD事業の受注件数は同15.5%増の46万件、平均単価は同横ばいを想定している。

 配当については無配を継続する。当面は内部留保の充実に注力する方針だが、今後は事業規模や収益が安定成長段階に入ったと判断された時点で、経営成績・財政状態を勘案しながら、配当による株主への利益還元に努めるとしている。

■一人暮らし高齢者や生活習慣病の増加なども背景に中期成長期待

 中期成長に向けた戦略として、紹介ネットワークの拡大・深耕、定期コース顧客の獲得、コラボレーションによる商品付加価値の向上、マーケティング事業の拡大を掲げ、ヘルスケア総合企業を目指している。

 紹介ネットワークに関しては、開拓余地の大きい全国10万箇所強の一般病院・診療所向けに拡大を推進するとともに、既存紹介ネットワークにおいても栄養士の交流会「輝く栄養士の会」運営などを通じて、当社の栄養士と医療機関・保健所・介護施設等の栄養士とのコミュニケーション向上を図る。管理栄養士・栄養士のコミュニティサイト「Foodish(フーディッシュ)」も運営している。

 定期コース顧客の獲得では「栄養士おまかせ定期便」の拡充などの施策によってリピーターの獲得を推進する。リピーターの獲得によって安定的な売上・利益の拡大に繋げる。コラボレーションによる商品付加価値の向上では、食品メーカー・協会や病院栄養士とのコラボレーションを強化する。

 マーケティング事業の拡大では、健康食レシピ情報サイトに食品メーカー等の商品を使用した健康食レシピを公開するなど、健康食レシピ情報サイトも活用して事業を拡大する。

 高齢者数の増加、特に一人暮らし高齢者の増加、さらに生活習慣病患者や食事制限対象者の増加を背景に、健康食宅配市場は拡大基調が予想される。中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は自律調整一巡して15年12月の戻り高値試す

 株価の動きを見ると、4月中旬~5月上旬の年初来高値圏950円近辺から利益確定売りで一旦反落したが、大きく下押す動きは見られない。900円台を維持して自律調整の範囲だろう。

 5月19日の終値890円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS53円63銭で算出)は16~17倍近辺、実績PBR(16年3月期実績のBPS230円84銭で算出)は3.9倍近辺である。時価総額は約56億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が26週移動平均線を上抜いてきた。強基調を確認する形だ。中期成長期待は強く、自律調整が一巡して15年12月の戻り高値1100円を目指す展開だろう。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. 【先人の教えを格言で解説!】 (犬丸正寛=株式評論家・平成28年:2016年)没・享年72歳。生前に…
  2. ■2024年度上半期163件で過去最多更新  人手不足による倒産が急増している。帝国データバンクの…
  3. ■新たなモビリティ社会実現に向けた取り組み加速  トヨタ自動車<7203>(東証プライム)は10月…
2024年11月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

ピックアップ記事

  1. ■化粧品大手は業績下方修正も、電鉄各社は上方修正で活況  トランプ次期大統領の影響を受けない純内需…
  2. どう見るこの相場
    ■金利敏感株の次は円安メリット株?!インバウンド関連株に「トランプ・トレード」ローテーション  米…
  3. ■金利上昇追い風に地銀株が躍進、政策期待も後押し  金利上昇の影響を受けて銀行株、特に地方銀行株の…
  4. ■トリプルセット行、ダブルセット行も相次ぐ地銀銀株は決算プレイで「トランプトレード」へキャッチアップ…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る