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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】インフォコムは03年の上場来高値視野、17年3月期営業増益・大幅最終増益・増配予想
- 2016/5/20 06:25
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
インフォコム<4348>(JQS)はITサービスや電子書籍配信サービスを主力として、IoT領域における事業創出も積極推進している。16年3月期は一過性要因の特別損失計上で最終減益だが、2桁営業増益だった。17年3月期は2桁営業増益・大幅最終増益・増配予想である。株価は年初来高値圏で推移している。そして03年の上場来高値が視野に入ってきた。
■ITサービス事業とネットビジネス事業を展開
帝人<3401>グループで、企業向けにITソリューションを提供するITサービス事業(医療機関・製薬企業向けヘルスケア事業、一般企業向けSIのエンタープライズ事業、ERPソフト「GRANDIT」や緊急連絡・安全確認サービスなどのサービスビジネス事業)、および一般消費者向けに電子書籍配信サービス、eコマース、各種デジタルコンテンツを提供するネットビジネス事業(子会社アムタス)を展開している。
14年9月には新規事業の発掘を目的として、米国シリコンバレーに連結子会社のコーポレートファンド(総額20億円規模、通称インフォコムファンド)を設立した。16年3月期末時点で投資実績は20社超となっている。また15年2月に米SYSCOMの株式を譲渡した。
■ITサービスは完全Web-ERPソフト「GRANDIT」などが主力
サービスビジネス事業では、完全Web-ERPソフト「GRANDIT」の導入企業数850社超、3800サイト超で、緊急連絡・安全確認サービス「エマージェンシーコール」は導入企業数800社超、登録従業員数200万人超の規模に達している。
15年9月にはサービスビジネス事業分野で、企業・団体向けに特化したMVNO(仮想移動体サービス事業者)サービスを開始した。格安SIMカードによるデータ通信・SMSサービスで、コストメリットをフルに活用できるサービスラインナップを取り揃えた。そして今後、スマートデバイスのレンタルサービスおよび中古スマートデバイスの買取・販売事業を開始する予定だ。
また16年1月にはサービスビジネス事業分野で、内閣府が推進する「地区防災計画」の「2015年度地区防災計画モデル地区(全国22地区)」に選定されたトキアス管理組合(東京都荒川区・620戸)に、危機管理総合ソリューションを構築・納入した。災害発生などの緊急時に住民間の迅速・的確な情報伝達・交換を行うために、利用者を住民などに限定した情報共有基盤である。
■ネットビジネスは電子書籍配信「めちゃコミック」などが主力
ネットビジネス事業の電子書籍配信サービスでは、06年11月開始のスマートフォン・フィーチャーフォン向け電子書籍配信サービス「めちゃコミック」が、月間利用者数600万人を記録するなど国内トップクラスの地位を強固にしている。13年11月開始のマルチデバイス対応電子書籍配信サービス「ekubostore(エクボストア)」も拡大基調だ。
ソーシャルゲームについては15年4月に「ソーシャルゲームサービスの自社開発・提供を終了」する方針を発表した。12年8月にイストピカを連結子会社化してスマートフォン向けソーシャルアプリゲームの開発・提供に取り組んできたが、市場環境の変化が激しく今後の収益化を見通すことが困難と判断した。自社タイトル開発・配信を終了して国内外の人気ミニゲームの流通に特化し、経営資源を電子書籍サービスに集中している。
■アライアンスも積極活用
中期成長に向けて戦略的M&A・アライアンスを積極活用している。そしてグループ会社統合・再編も進めている。
13年9月には医薬品業界CRM事業強化に向けて、ミュートスと合弁会社インフォミュートスを設立した。14年3月にはEC事業の運営効率化に向けて、アムタスグループ内で食品EC事業を展開する持分法適用関連会社のドゥマンを連結子会社化し、連結子会社イー・ビー・エスのアパレルEC事業をドゥマンに統合した。
5月10日には、クラウド型ID管理サービス「OneLogin(ワンログイン)」の積極的な販売を目的として、サーバーワークスとの販売代理店契約締結を発表した。
■中期経営計画でヘルスケア、GRANDIT、電子書籍配信を重点3事業
中期経営計画では、医療機関・製薬企業向けヘルスケア事業、完全Web-ERPソフト「GRANDIT」のサービスビジネス事業、電子書籍配信サービスなどのネットビジネス事業を重点3分野と位置付け、経営目標数値には17年3月期売上高550億円、営業利益50億円、21年3月期売上高1000億円、営業利益100億円を掲げている。
■ヘルスケア事業は新規分野も積極開拓
ヘルスケア事業では帝人との連携も強化しながら厚生労働省の「地域包括ケア」に対応した医療ITからヘルスケアサービスへの展開を強化している。そしてインフォコムファンドによる投資も積極化している。IoTクラウド基盤企業やセンサー開発企業への資本投資を促進して、米EverySense(エブリセンス)社に25%出資した。
15年3月にはヘルスケア事業の一環としてアスリート支援サービス「ATHLETE STORIES(アスリートストーリーズ)」を開始した。トップアスリートを目指す人の健康管理、コミュニティ機能、活動資金援助、就職支援といった引退後のセカンドキャリアに至るまでをサポートする無料サービス(アスリートプラットフォームアプリ)だ。使用するアスリートには費用が発生せず、当社は広告事業、職業紹介事業およびビッグデータのアスリート向け製品開発に活用する市場調査事業として展開する。15年8月にはトレーナー向けアプリも提供開始した。
15年7月には新規事業創出プログラム「デジタルヘルスコネクト」におけるアクセラレータープログラムの参加者募集を発表した。プログラム参加者に対して医師が抱える現場の課題(ニーズが明確なテーマ)を提供し、この解決策を挑戦者と一緒に考え具体化し、現場での試行を重ねて製品化を目指す。
15年11月には、医療事務受託の国内大手で介護サービス事業も展開しているソラスト社(旧日本医療事務センター)と、ヘルスケア事業分野における事業発展を目的として業務・資本提携した。ITを活用した医療・介護現場の効率化などを含む新たなソリューションの創出を目指し、ソラスト社の株式3%を取得する。
またリゾートソリューション<5261>とのメンタルヘルスケア事業における協業を開始した。当社の「メンタルヘルス管理クラウドサービス」を同社が展開する福利厚生サービスにおける重点メニューとして導入し、15年12月実施のストレスチェック義務化に合わせて、グローバル展開企業のメンタルヘルスケアをサポートする。
■GRANDIT事業はクラウド対応を強化
完全Web-ERPソフト「GRANDIT」(コンソーシアム方式により、業界を代表するSI企業のノウハウを集大成したWeb-ERP)のサービスビジネス事業では、クラウド対応やマイナンバー制度関連対応を強化している。技術者の育成を促進するととともに、提携パッケージソフトウェアと提携開発販売パートナーを拡充する。
なお「GRANDIT」の開発・販売を推進するGRANDITコンソーシアム(03年10月設立)は、16年4月時点でプライムパートナー14社、ビジネスパートナーを加えると57社で構成されている。そして5月17日にはパシフィックシステムがビジネスパートナーとして加盟したと発表している。
■電子書籍配信はコンテンツ拡充と海外展開による事業拡大を推進
電子書籍配信サービスの分野では、コンテンツ拡充と海外展開による事業拡大を推進している。
14年10月シフトワンと共同で次世代電子コミック「モーションコミック」の提供を開始した。15年2月にはアムタスが、中国でコミック関連事業を展開している厦門優莱柏網絡科技有限公司(ユーラボ社)、および恋愛・乙女系アプリ配信を展開しているKOYONPLETE(コヨンプリート社)(東京都)と業務提携した。コヨンプリート社に関しては第三者割当増資も引き受けた。
15年4月には「めちゃコミック」で「週刊少年ジャンプ」や「マーガレット」など集英社コミックの提供を開始し、15年5月にはグリー<3632>のSNS「GREE」にてスマートフォン向け「めちゃコミック for GREE」を開始した。15年6月には「めちゃコミック」にて秋田書店のコミックの提供を開始し、さらに業務提携先の中国・ユーラボ社が同社の100%子会社を通じて中国全土でスマートフォン向け電子書籍配信アプリ「新漫画」の提供を開始した。
15年9月には中国およびアジア地域でのアニメ・マンガ版権の保護や産業の良質な発展の促進を目的として、アムタス、少年画報社(東京都)、業務提携先の中国・ユーラボ社、および中国通信事業者のアニメ・マンガ関連部門、中国政府機関などと共同で、アジア版権保護連盟を設立したと発表した。
中国政府機関も参画することで、版権侵害行為の取り締まりから法的手続きまで行うことができ、出版・版権元および運用企業の利益と権利を守ることが可能になる。中国アニメ・マンガ市場における版権保護と市場育成を進め、将来的には加盟企業・団体を増やすとともに、対象地域を拡大する予定としている。
■IoT領域における事業創出を積極推進
成長が期待されるIoT領域における事業創出も積極推進する。長期的な成長戦略としてIoT領域における事業展開・サービス開発を推進するため、15年12月に社長直轄組織のIoT推進部を設置し、16年1月から本格的な活動を開始した。
15年12月には、米EverySense社(エブリセンス社、14年7月にIoTおよびM2M領域における共同開発を目的として当社、光電製作所、コーデンテクノインフォの3社共同で設立)が、世界初のIoTデータ交換取引所を日本に開設している。また米Afero社と事業提携した。米Afero社はIoT向けにセキュリティの確保とネットワークへの接続性に優れた先進的なクラウドサービス基盤を開発・提供している。
16年3月にはIoTで漁業支援を行う共同研究開発プロジェクトのスタートを発表した。米エブリセンス社、光電製作所、およびブロードバンドタワーと共同で、魚群探知機で収集した漁場データ分析と情報共有基盤構築を推進する。
4月25日には、一般社団法人インターネット協会のIoT推進委員会IoT実証実験ワーキンググループが推進するIoTソリューションの有効性実証実験に参画し、当社を含む7社でオフィス内環境モニタリング実証実験をスタートすると発表した。
■ITサービス事業は第4四半期の構成比が高い収益構造
15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)81億99百万円、第2四半期(7月~9月)104億98百万円、第3四半期(10月~12月)94億11百万円、第4四半期(1月~3月)122億01百万円、営業利益は第1四半期2億26百万円の赤字、第2四半期8億16百万円、第3四半期3億99百万円、第4四半期26億17百万円だった。
ITサービス事業は年度末の第4四半期の構成比が高い収益構造である。15年3月期の売上総利益率は44.7%で14年3月期比0.6ポイント上昇、販管費比率は35.8%で同1.1ポイント上昇、ROEは10.9%で同0.2ポイント低下、自己資本比率は73.0%で同4.3ポイント上昇した。配当性向は23.3%だった。
■16年3月期特別損失計上で最終減益だが、大幅営業・経常増益
前期(16年3月期)の連結業績は、売上高が前々期(15年3月期)比横ばいの403億16百万円、営業利益が同22.8%増の44億27百万円、経常利益が同23.5%増の45億58百万円、純利益が同66.5%減の7億28百万円だった。
売上高は米国子会社譲渡、ゲーム子会社清算、eコマース子会社アパレル系事業譲渡などで横ばいにとどまり、特別損失計上で最終減益だったが、ヘルスケア事業の業績回復、電子書籍配信サービス事業の好調、ソーシャルゲーム事業の自社開発終了などの効果で営業利益と経常利益は大幅増益だった。営業利益と経常利益は上場来最高を更新した。
売上総利益は同1.5%増加し、売上総利益率は45.4%で同0.7ポイント上昇した。販管費は同3.9%減少し、販管費比率は34.4%で同1.4ポイント低下した。特別利益では前々期計上の子会社株式売却益1億75百万円が一巡した。特別損失では、中長期視点での事業構造改革の一環として新横浜データセンター(DC)によるサービス提供を終了(17年6月末目途)することに伴って、事業再編損25億45百万円を計上した。
なおROEは3.5%で同7.4ポイント低下、自己資本比率は66.5%で同6.5ポイント低下した。配当は同3円50銭増配の年間22円(期末一括)としている。配当性向は82.6%となる。
セグメント別動向を見ると、ITサービス事業は売上高が同4.9%減の237億37百万円、営業利益が同3.0%増の24億71百万円だった。前々期第4四半期に実施した連結子会社譲渡の影響で減収だったが、ヘルスケア事業で病院向けシステムの販売が好調に推移し、GRANDIT事業の堅調推移、売上構成変化による収益性改善なども寄与して営業増益だった。
ネットビジネス事業は売上高が同8.1%増の165億79百万円、営業利益が同62.0%増の19億56百万円だった。電子書籍配信サービスが積極的な広告戦略やコンテンツ拡充などの効果で好調に推移し、ソーシャルゲーム事業の自社開発終了も寄与して大幅増益だった。なお電子書籍配信サービスの売上高は150億円を突破した。
四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)86億88百万円、第2四半期(7月~9月)100億47百万円、第3四半期(10月~12月)90億39百万円、第4四半期(1月~3月)125億42百万円、営業利益は第1四半期1億54百万円、第2四半期10億49百万円、第3四半期8億78百万円、第4四半期23億46百万円だった。
■17年3月期2桁営業増益・大幅最終増益・増配予想
今期(17年3月期)連結業績予想(4月28日公表)は、売上高が前期(16年3月期)比11.6%増の450億円、営業利益が同12.9%増の50億円、経常利益が同9.7%増の50億円、純利益が同4.1倍の30億円としている。配当予想は同3円増配の年間25円(第2四半期末10円、期末15円)としている。中間配当を実施する。予想配当性向は22.8%となる。
セグメント別には、ITサービス事業の売上高が同5.4%増の250億円で営業利益が同5.3%増の26億円、ネットビジネス事業の売上高が同20.7%増の200億円で営業利益が同23.1%増の24億円の計画としている。
ITサービス事業では、ヘルスケアおよび企業向けSI・パッケージ販売が好調に推移し、新事業に係る先行投資などを吸収する。ネットビジネス事業では、電子書籍配信サービスが一段と拡大する。電子書籍配信サービスの売上高は180億円を目指すとしている。
なお新横浜DCによるサービス提供終了によって、運用コスト低減や、固定資産である建物・設備劣化に対する改修・新規投資の抑制など、データセンターのコモデティ化による売上減少回避なども含めて、10年間で約40億円の費用削減効果が得られる見込みとしている。
中期的にも医療機関・製薬企業向けヘルスケア事業、Web-ERPソフト「GRANDIT」のサービスビジネス事業、ネットビジネス事業の重点3分野の成長が加速し、eコマース分野の構造改革効果も寄与して収益拡大基調が期待される。
■株主優待制度は毎年9月末に実施
株主優待制度については毎年9月30日現在で1単元(100株)以上保有株主を対象として、連結子会社ドゥマンが運営する食品通信販売サイト「オーガニックサイバーストア」で利用可能なポイント(1ポイントを1円として利用)を保有株数と保有年数に応じて贈呈する。たとえば保有株数1000株以上で保有年数3年以上の場合は6000ポイントを贈呈する。
■株価は年初来高値圏、03年の上場来高値も視野
株価の動きを見ると、自律調整を交えながら水準を切り上げる展開で、5月6日の年初来高値1897円まで上伸した。その後は利益確定売りが一旦優勢になったが年初来高値圏で推移している。そして03年の上場来高値2247円(株式分割修正後)が視野に入ってきた。
5月19日の終値1691円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS109円73銭で算出)は15~16倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間25円で算出)は1.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS769円42銭で算出)は2.2倍近辺である。時価総額は約487億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって上昇トレンドを維持している。自律調整を交えながら上値追いの展開だろう。