【アナリスト水田雅展の銘柄分析】第一実業は年初来高値に接近、17年3月期は増収増益予想で指標面に割安感

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 第一実業<8059>(東1)は各種産業機械が主力の総合機械商社である。グローバルビジネスを積極展開し、新規事業として植物工場システムやバイナリー発電関連への展開も強化している。16年3月期は大口案件減少や排水処理プラント建設におけるコスト増加などで減収減益だったが、17年3月期は一時的コスト増加要因が一巡して増収増益予想である。新中期経営計画では19年3月期純利益33億円を目標として掲げた。株価は1月の年初来高値に接近している。3%台の予想配当利回りや0.8倍近辺の実績PBRと指標面の割安感は強い。15年7月高値を目指す展開だろう。

■産業機械を主力とする総合機械商社

 各種産業機械を主力とする総合機械商社で、海外は米州、中国、東南アジア・インド、欧州の世界18カ国36拠点に展開している。なおセグメント区分は16年3月期から、プラント・エネルギー事業、産業機械事業、エレクトロニクス事業、ファーマ事業、航空事業とした。

 前期(16年3月期)のセグメント別売上構成比はプラント・エネルギー事業が23.2%、産業機械事業が35.0%、エレクトロニクス事業が34.3%、ファーマ事業が5.3%、航空事業が1.9%、その他が0.3%だった。海外売上比率は46.7%だった。

■植物工場やバイナリー発電関連など新規事業分野への展開も強化

 新規事業としては、植物工場システムに関するプロジェクトで埼玉県入間市にパイロットプラントを建設した。また14年3月には長野県飯田市でメガソーラー「第一実業飯田太陽光発電所」が竣工した。茨城県笠間市の太陽光発電所に続く2カ所目のメガソーラーである。

 バイナリー発電装置ビジネスに関しては焼却プラント6基、温泉地熱プラント5基が稼動し、焼却プラント向け1基、地熱・温泉向け11基を建設中である。

 14年4月に米アクセスエナジー社のバイナリー発電装置の日本国内での独占的製造権を取得し、14年5月に地熱・温泉業界向け小型バイナリー発電装置の独占販売代理店契約を締結した。地熱、温泉熱、焼却廃熱、一般工場廃熱など、未利用熱エネルギーを有効活用して発電するバイナリー発電システムの拡大を目指す戦略だ。

 15年4月には連結子会社の第一メカテックのDJTECH事業部門を名古屋電機工業<6797>に譲渡した。DJTECH事業部門は高性能はんだ印刷検査装置の開発・製造・販売を行っており、これらに関するノウハウ・技術を名古屋電機工業と一元化する。そして名古屋電機工業と当該検査装置事業に係る代理店契約を締結し、製販サービスの一貫体制を強化して両社の事業拡大を目指すとしている。

■四半期収益は設備投資関連の大型案件によって変動

 なお15年3月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)320億72百万円、第2四半期(7月~9月)412億59百万円、第3四半期(10月~12月)299億74百万円、第4四半期(1月~3月)400億56百万円、営業利益は第1四半期44百万円、第2四半期16億79百万円、第3四半期4億48百万円、第4四半期21億70百万円だった。受注高は第1四半期427億64百万円、第2四半期300億50百万円、第3四半期338億04百万円、第4四半期673億87百万円だった。

 大型案件の受注・完成動向で四半期収益は変動しやすく、さらに設備投資関連のため概ね第2四半期および第4四半期の構成比が高い収益構造である。なお15年3月期の売上総利益率は13.2%で14年3月期比1.0ポイント低下、販管費比率は10.2%で同0.7ポイント低下、ROEは8.7%で同0.5ポイント上昇、自己資本比率は38.3%で同0.1ポイント上昇、D/Eレシオは0.31倍で同0.03ポイント上昇した。配当性向は29.4%だった。

■16年3月期は減収減益

 5月11日発表した前期(16年3月期)連結業績は、売上高が前々期(15年3月期)比13.4%減の1241億77百万円、営業利益が同10.5%減の38億86百万円、経常利益が同7.8%減の43億79百万円、純利益が同8.9%減の26億37百万円だった。なお受注高は同19.0%減の1409億02百万円だった。

 アジア地域を中心とした海外向けプラント用設備の大口案件が減少し、自動車関連業界向け自動組立ライン、自動加工機、塗装ロボットなどの大口案件も減少した。また利益面では貸倒引当金繰入額が減少したが、排水処理プラント建設において下請け業者の作業品質に起因する工期遅延でコストが増加したことも影響した。

 売上総利益は同4.0%減少したが、売上総利益率は14.6%で同1.4ポイント上昇した。販管費は同2.1%減少したが、販管費比率は11.5%で同1.3ポイント上昇した。営業外では為替差損益が改善(前々期は差損40百万円計上、前期は差益66百万円計上)し、持分法投資利益が増加(前々期43百万円計上、前期74百万円計上)した。特別損失では減損損失54百万円を計上したが、前々期計上の事業譲渡損3億56百万円が一巡した。

 配当は同1円増配の年間17円(第2四半期末8円、期末9円)とした。配当性向は34.5%である。ROEは7.4%で同1.3ポイント低下、自己資本比率は37.9%で同0.4ポイント低下した。D/Eレシオは

 セグメント別の動向を見ると、プラント・エネルギーは売上高が同15.6%減の億91百万円、営業利益(連結調整前)が0百万円の赤字(前々期は5億33百万円の黒字)だった。アジア地域を中心とした海外向けプラント用設備の大口案件が減少し、排水処理プラント建設において下請け業者の作業品質に起因する工期遅延でコストが増加したことも影響した。産業機械は売上高が同15.3%減の434億88百万円、営業利益が同32.2%減の14億05百万円だった。自動車関連業界向け自動組立ライン、自動加工機、塗装ロボットなどの大口案件が減少し、家電・自動車部品製造の射出成形機および周辺機器も減少した。

 エレクトロニクスは売上高が同2.1%減の425億92百万円、営業利益が同2.3倍の9億32百万円だった。中国・アジア地域を中心にIT・デジタル関連機器製造会社向け電子部品実装機などの大口案件が減少したが、粗利益率が改善した。ファーマは売上高が同23.7%減の66億22百万円、営業利益が同6.2%増の9億円だった。錠剤外観検査装置やパッケージング用機器・装置などが減少したが、粗利益率が改善した。

 航空は売上高が同55.5%減の23億95百万円、営業利益が同70.8%減の90百万円だった。航空機地上支援機材や空港施設関連機器などの大口案件が減少した。その他は売上高が同16.6%減の3億31百万円、営業利益が87百万円の赤字(前々期は11百万円の黒字)だった。

 なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)296億61百万円、第2四半期(7月~9月)321億30百万円、第3四半期(10月~12月)226億66百万円、第4四半期397億19百万円、営業利益は第1四半期5億16百万円、第2四半期11億98百万円、第3四半期3億29百万円、第4四半期18億42百万円だった。受注高は第1四半期390億71百万円、第2四半期315億81百万円、第3四半期384億41百万円、第4四半期318億08百万円だった。

■17年3月期は増収増益予想

 今期(17年3月期)の連結業績予想(5月11日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比2.3%増の1270億円、営業利益が同8.1%増の42億円、経常利益が同2.8%増の45億円、純利益が同6.1%増の28億円としている。受注高の計画は同9.1%減の1280億円である。

 前期発生した一時的コスト増加要因一巡も寄与して増収増益予想である。配当予想は前期と同額の年間17円(第2四半期末9円、期末8円)としている。予想配当性向は32.6%となる。

■新中期経営計画を策定、19年3月期純利益33億円目標

 16年5月策定の新中期経営計画「DASH2018」では、基本方針を「グローバルに事業軸体制を進め、一層の業績拡大を実現する」「経営体質の向上を図り、強力なガバナンス体制を構築する」として、経営目標数値には最終年度19年3月期の売上高1330億円、営業利益50億円、経常利益53億円、純利益33億円を掲げた。

■株価は年初来高値に接近

 株価の動きを見ると、徐々に下値を切り上げながら5月20日に536円まで上伸し、1月の年初来高値543円に接近してきた。17年3月期増収増益予想を評価する動きだろう。

 5月20日の終値534円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS52円19銭で算出)は10~11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間17円で算出)は3.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS669円51銭で算出)は0.8倍近辺である。時価総額は約296億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線に続いて26週移動平均線を突破した。そして13週移動平均線が上向きに転じた。強基調への転換を確認した形だ。3%台の予想配当利回りや0.8倍近辺の実績PBRと指標面の割安感は強い。15年7月高値を目指す展開だろう。

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