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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】神鋼商事は17年3月期減益予想だが指標面に割安感
- 2016/5/23 06:24
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
神鋼商事<8075>(東1)は鉄鋼・鉄鋼原料・非鉄金属関連の専門商社で、KOBELCO(神戸製鋼グループ)の中核となるグローバル商社を目指している。5月19日に単元株式数変更と株式併合を発表した。16年10月1日付で単元株式数を1000株から100株に変更するとともに、10株を1株に併合する。株価は17年3月期減収減益予想を嫌気して年初来安値圏だが、失望売りが一巡してほぼ底値圏だろう。5~6倍近辺の低PER、4%台の高配当利回り、0.4倍近辺の低PBRという指標面の割安感を見直す動きが強まりそうだ。
■KOBELCO(神戸製鋼グループ)の中核商社
神戸製鋼所<5406>系で、鉄鋼製品、鉄鋼原料、非鉄金属、機械・情報、溶接材料・機器などを扱う専門商社である。M&Aも積極活用し、KOBELCO(神戸製鋼グループ)の中核となるグローバル商社を目指している。
14年7月には筒中金属産業が新設分割によって設立した国内卸売事業会社(現コベルコ筒中トレーディング)の株式70%を取得して子会社化した。15年5月にはコベルコ筒中トレーディングが筒中金属産業から、韓国でアルミ高精度厚板の切断加工・卸売事業を展開している韓国筒中滑川アルミニウムの株式88.89%を取得して子会社化(現ケーティーエヌ)した。
15年8月にはミャンマー・ヤンゴン市に神鋼商事ヤンゴン支店を開設した。同支店を市場調査・情報収集の拠点として、鋼材・非鉄製品・溶接材料など取り扱い製品の拡販や、神戸製鋼グループの進出支援を図るとしている。
16年1月には、非鉄金属材料の素材・加工品を販売する中山金属が新設分割によって設立した国内外卸売事業会社の株式80%を取得し、国内外卸売事業会社および海外子会社を子会社化した。株式取得対象の国内外卸売事業会社の商号は中山金属(新)で、海外子会社は中国(上海)、タイ、インドネシアの3社である。
16年4月には、神戸製鋼所の子会社で溶接材料、溶接機器、産業用機械などを扱う商社エヌアイウエル(16年4月1日付で社名をエスシーウエルに変更)の株式80%を取得して子会社化した。神戸製鋼グループとして溶接事業におけるメーカーと商社の機能を明確化し、商社としての事業領域でシナジーを追求する。
■メキシコ線材二次加工拠点でグローバル展開加速
14年9月にはメキシコにおける線材二次加工拠点となる合弁会社を設立した。出資比率は当社40%、メタルワン25%、神戸製鋼所10%、大阪精工10%、メキシコGrupo Simec10%、米O&k American5%である。
メキシコは世界の自動車・自動車部品メーカーの進出で自動車関連産業の成長が期待されており、自動車用ファスナーや冷間鍛造部品などの素材となる冷間圧造用鋼線を製造する。
■売上総利益率は改善傾向
15年3月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)2140億42百万円、第2四半期(7月~9月)2124億16百万円、第3四半期(10月~12月)2140億78百万円、第4四半期(1月~3月)2298億71百万円だった。経常利益は第1四半期16億38百万円、第2四半期13億59百万円、第3四半期17億44百万円、第4四半期18億34百万円だった。
15年3月期の売上総利益率は2.98%で14年3月期比0.17ポイント上昇、販管費比率は2.20%で同0.07ポイント上昇した。ROEは10.2%で同0.5ポイント上昇、自己資本比率は10.2%で同1.2ポイント上昇した。配当性向は17.8%だった。
■16年3月期は減収減益
前期(16年3月期)連結業績は、売上高が前々期(15年3月期)比9.1%減の7913億42百万円、営業利益が同14.1%減の58億31百万円、経常利益が同10.1%減の59億08百万円、純利益が同12.4%減の34億80百万円だった。
資源価格下落の長期化や期末にかけての急速なドル安・円高進行などの影響で、主要需要家である鉄鋼・半導体・電機業界向けの取扱数量が減少し、鋼板製品の市況低迷、輸入鉄鋼原料の販売価格下落、国内人員増加による人件費増加なども影響して計画を下回る減収減益だった。なお売上総利益は同2.4%増加し、売上総利益率は3.35%で同0.37ポイント上昇したが、販管費は同8.3%増加し、販管費比率は2.62%で同0.42ポイント上昇した。
営業外では為替差損益が悪化(前々期は差益1億51百万円計上、前期は差損9億44百万円計上)したが、デリバティブ評価損益が改善(前々期は評価損1億51百万円計上、前期は評価益6億37百万円計上)した。営業外収益で受取配当金が増加(前々期5億85百万円計上、前期8億25百万円計上)し、持分投資利益も増加(前々期3億25百万円計上、前期3億41百万円計上)した。営業外費用では売掛債権剰余損が減少(前々期5億66百万円計上、前期3億88百万円計上)した。特別利益では固定資産売却益が減少(前々期4億14百万円計上、前期5百万円計上)した。特別損失では減損損失1億92百万円が一巡したが、投資有価証券評価損2億31百万円を計上した。
配当は前々期と同額の年間8円(第2四半期末4円、期末4円)で、配当性向は20.4%だった。またROEは8.2%で同2.0ポイント低下、自己資本比率は17.1%で同0.7ポイント低下した。
セグメント別(連結調整前、経常利益)動向を見ると、鉄鋼は同1.1%減収で同11.5%減益、鉄鋼原料は同21.3%減収だが同53.8%増益、非鉄金属は同0.8%減収で同16.3%減益、機械・情報は同6.2%減収で同6.9%減益、溶材は同3.9%減収で同55.6%減益だった。
鉄鋼は円安効果で鋼板製品や線材製品の輸出が増加したが、国内の数量減少や鋼板製品の市況低迷が影響した。鉄鋼原料は輸入鉄鋼原料の取扱数量が減少し、価格も下落したが、チタン原料の取扱量が増加した。非鉄金属は自動車用アルミ部材や液晶製造装置用アルミ加工品の取扱量が増加したが、半導体向け銅板条、空調用銅管、輸出用缶材、銅・アルミスクラップなどの取扱量が減少した。機械・情報は大型圧縮機、金属成膜装置、液晶用電子材料などが増加したが、タイヤ機械、小型蒸気発電機、太陽電池関連機材などが減少した。溶材は建築鉄骨向け溶接材料、汎用溶接機、鉄骨溶接ロボットシステムなどが増加したが、建設機械向け溶接材料、中国の化工機向け溶接材料などが減少した。
なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)2163億60百万円、第2四半期(7月~9月)2031億23百万円、第3四半期(10月~12月)1893億35百万円、第4四半期(1月~3月)1825億24百万円、経常利益は第1四半期20億49百万円、第2四半期12億46百万円、第3四半期13億33百万円、第4四半期12億80百万円だった。
■17年3月期減収減益予想
今期(17年3月期)の連結業績予想(4月28日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比4.0%減の7600億円で、営業利益が同26.3%減の43億円、経常利益が同25.5%減の44億円、純利益が同22.4%減の27億円としている。国内人員増加やメキシコ新工場立ち上げ費用などで減益予想だ。
配当予想は前期と同額の年間8円(第2四半期末4円、期末4円)で、予想配当性向は26.2%となる。配当については企業体質の強化と将来の事業展開に必要な内部留保等を考慮しつつ、各期の業績に応じた配当を継続していくことを基本方針としている。
セグメント別計画(連結調整前)を見ると、鉄鋼は売上高が2940億円で経常利益が21億円、鉄鋼原料は売上高が1890億円で経常利益が5億50百万円、非鉄金属は売上高が2160億円で経常利益が12億円、情報・機械は売上高が780億円で経常利益が9億円、溶材は売上高が460億円で経常利益が3億50百万円としている。機械・情報の損益が改善するが、鉄鋼および鉄鋼原料が大幅減益予想の見込みとしている。
■新中期経営計画を策定
新中期経営計画(16年度~20年度)では、10年後の姿をイメージした長期経営ビジョン(10年度発表)のもと、3つの全体戦略(グローバルビジネス加速、商社機能強化、経営基盤充実)を柱に諸施策を推進するとした。
そして経営目標数値には、21年3月期売上高8900億円、経常利益80億円(鉄鋼35億円、鉄鋼原料13億円、非鉄金属24億円、機械・情報14億円、溶材6億円)、純利益52億円、海外取引比率50%(16年3月期実績40.5%)、自己資本比率20%以上、ROE8%以上、D/Eレシオ1.0倍、期末人員1840人(16年3月期末1508人)を掲げた。
投資計画は4年間合計300億円で、鉄鋼(80億円)は北米・メキシコ・インドにおける線材二次加工設備増強、厚板溶断設備増強、鉄鋼原料(100億円)は北米・豪州・他における原料権益への投資、非鉄金属(50億円)はメキシコ・中国・韓国・ASEANなど海外事業拠点の増強、新事業拠点の設立、機械・情報(20億円)は国内外における機械メーカー、エンジニアリング、サービス会社への出資、溶材(10億円)は流通取引先への出資、本社(IT投資他)(40億円)はM&Aの検討、業務システム改善などを推進する。
■株価は失望売り一巡感、指標面の割安感を見直し
5月19日に単元株式数の変更および株式併合を発表した。16年10月1日付で単元株式数を1000株から100株に変更するとともに、10株を1株に併合する。併合後の発行済株式総数は886万562株となる。
株価の動きを見ると、17年3月期減収減益予想を嫌気して水準を切り下げ、5月13日には年初来安値となる176円まで調整した。その後は180円近辺で推移している。失望売りがほぼ一巡したようだ。
5月20日の終値180円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS30円49銭で算出)は5~6倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間8円で算出)は4.5%近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績連結BPS475円36銭で算出)は0.4倍近辺である。時価総額は約159億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だが、失望売りが一巡してほぼ底値圏だろう。5~6倍近辺の低PER、4%台の高配当利回り、0.4倍近辺の低PBRという指標面の割安感を見直す動きが強まりそうだ