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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】カナモトは調整一巡してレンジ下限から反発、16年10月期業績予想に増額余地
- 2016/5/24 07:51
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
カナモト<9678>(東1)は建設機械レンタルの大手である。国内ではM&Aも活用して営業拠点網を拡大し、長期ビジョンで成長エンジンと位置付ける海外展開も強化している。16年10月期は営業利益横ばい予想だが、震災復旧・復興関連も寄与して増額余地がありそうだ。中期的な事業環境も良好であり、16年10月期増配予想も評価材料となる。株価は安値圏だが、指標面に割高感はなく、調整が一巡してレンジ下限から反発のタイミングだろう。なお6月10日に第2四半期累計の業績発表を予定している。
■建設機械レンタルの大手
建設機械レンタルを主力として、海外向け中古建設機械販売、土木・建築工事用鉄鋼製品販売、IT機器・イベント関連レンタルなども展開している。北海道を地盤として東北、関東、中部、近畿、九州にも営業拠点網を拡充して全国展開と業容拡大を加速している。
16年4月に北関東エリア7店舗目となる桶川北本営業所(埼玉県北本市)を開設した。また5月18日には近畿・中国・四国エリア9店舗目となる中讃営業所(香川県善通寺市)を開設した。これにより当社の全国営業拠点数は180拠点、子会社・アライアンスグループを含めると447拠点となった。
なお理工系研究開発要員派遣のカナモトエンジニアリングについては、15年8月に全株式を技術者派遣会社のトラスト・テック<2154>に譲渡した。
■国内ではM&Aも活用して業容拡大
M&Aも活用して業容を拡大している。12年6月には道路建機レンタルと道路工事施工のユナイトを子会社化した。
15年7月には大手ゼネコン向け汎用小型建設機械レンタルを主力とする有限会社ヱーワ商会(埼玉県)の全株式を取得して子会社化した。非連結子会社となるため業績面への直接的な影響はないが、東京都内および関東地域におけるサービス拡大や営業基盤強化に繋がるとしている。
15年11月には、名岐エンジニアリング(岐阜県)および東友エンジニアリング(東京都)で構成されるグループとの、一部株式取得を含む建設機械レンタル事業に関する業務提携を発表した。トンネル工事向け有力プラントメーカーの名岐エンジニアリング、およびトンネル工事向けレンタルに強みを持つ東友エンジニアリングとの連携により、増加傾向のトンネル工事への対応力を高める。
16年1月にはニシケン(福岡県久留米市)との間で、同社株式の3分の2以上を取得することを前提に子会社化することに関する資本業務提携契約書を締結し、3月14日に株式取得が完了(出資比率76.62%)して同社を子会社化した。同社は建設機械レンタル事業ならびに福祉介護用品レンタル事業を、福岡県中心に九州各県や中国・近畿地方に展開している。九州地区での事業基盤強化、および福祉介護用品レンタル事業への事業領域の拡大が期待できるとしている。
■17年10月期ROE10%以上目標、成長エンジンとして海外展開強化
14年9月策定の新長期ビジョンおよび中期経営計画では、55期の19年を見据えたグループの目指す姿を新長期ビジョン「BULL55」として示した。そして実行計画である3ヵ年中期経営計画「BULL53」では、経営目標数値として17年10月期売上高1500億円、営業利益190億円、ROA5.0%以上、ROE10%以上などを掲げている。
新長期ビジョン「BULL55」では海外展開強化を今後の成長エンジンと位置付けている。そして15年1月にインドネシアの現地法人が営業を開始、15年6月にベトナムの現地パートナー企業との合弁会社が営業開始、15年7月にタイの現地パートナー企業との合弁会社が営業開始、16年3月にフィリピンの現地パートナー企業との合弁会社が営業開始した。
なお環境保全設備や地下施設建設機械などの製造・レンタル事業を展開する子会社KGフローテクノは、14年4月に中国・上海に現地法人を設立している。
■公共工事が増加する第1四半期の構成比が高い収益構造
四半期別業績推移を見ると、14年10月期の売上高は第1四半期(11月~1月)331億48百万円、第2四半期(2月~4月)310億64百万円、第3四半期(5月~7月)284億45百万円、第4四半期(8月~10月)328億98百万円、営業利益は第1四半期56億51百万円、第2四半期44億21百万円、第3四半期27億41百万円、第4四半期36億41百万円だった。
15年10月期の売上高は第1四半期363億27百万円、第2四半期319億80百万円、第3四半期306億49百万円、第4四半期343億36百万円、営業利益は第1四半期63億06百万円、第2四半期43億46百万円、第3四半期18億46百万円、第4四半期37億72百万円だった。
公共工事が増加する第1四半期の構成比が高い収益構造である。なお15年10月期の売上総利益率は31.1%で14年6月期比0.9ポイント低下、販管費比率は18.9%で同横ばい、ROEは14.4%で同1.4ポイント低下、自己資本比率は34.3%で同0.7ポイント上昇した。配当性向は13.1%だった。
15年10月のセグメント別業績を見ると、建設関連事業は売上高が同6.0%増の1235億72百万円、営業利益(連結調整前)が同2.0%減の155億92百万円だった。地域別に見ると北海道地区が同9.5%減収、東北地区が同19.7%増収、関東信越地区が同4.8%増収、関西中部地区が同2.0%増収、九州沖縄地区が同1.5%減収で、東北地区と関東信越地区が好調だった。中古建機販売については一定期間を経年した機械の計画的売却を進めて同26.6%増収だった。その他事業は売上高が同%増の97億19百万円、営業利益が同39.4%増の3億01百万円だった。鉄鋼関連、情報通信関連とも堅調に推移した。
■16年10月期第1四半期は減収減益
今期(16年10月期)第1四半期(11月~1月)の連結業績は、売上高が前年同期比3.4%減の350億79百万円、営業利益が同35.5%減の40億69百万円、経常利益が同36.2%減の40億63百万円、そして純利益が同37.6%減の25億33百万円だった。
民間建設投資は堅調だったが、公共投資が減少に転じ、全体としての建設需要は前年度を下回る水準だった。このため公共投資減少の影響を受けた北海道などの地域では、建設機械のレンタル需要が想定以上に減少した。事務所の新設は1拠点(熊谷営業所)だった。
売上総利益は同16.0%減少し、売上総利益率は29.4%で同4.5ポイント低下した。販管費は同4.5%増加し、販管費比率は17.8%で同1.4ポイント上昇した。営業外収益では前期計上の為替差益1億41百万円が一巡した。特別利益では前期計上の受取損害賠償金1億18百万円が一巡した。
セグメント別動向を見ると、建設関連は売上高が同4.7%減の325億40百万円、営業利益(連結調整前)が同36.6%減の39億円だった。北海道などの地域で建設機械レンタル需要が想定以上に減少した。また中古建機販売は、前年同期に前々期からのズレ込みを含めて自社機販売が収益を押し上げていたが、今期は例年並みにとどまり同60.2%減少した。その他は売上高が同17.0%増の25億39百万円、営業利益が同1.6%増の67百万円だった。
■16年10月期営業利益横ばい予想だが増額余地
今期(16年10月期)通期の連結業績予想(12月9日公表)については、売上高が前期(15年10月期)比0.5%増の1339億円、営業利益が同0.4%増の163億40百万円、経常利益が同0.7%増の162億70百万円、純利益が同7.0%増の102億30百万円としている。
前期同様に一部地区において公共工事の減少が予想されるとして営業利益横ばい予想だ。ただし東北被災3県における復興工事、首都圏における大規模再開発工事、さらに20年東京五輪に向けた関連工事の加速などで、東北地区および関東信越地区の好調が続く見込みだ。会社予想は保守的な印象が強く、熊本地震の震災復旧・復興関連も寄与して増額余地があるだろう。
なお通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が26.2%、営業利益が24.9%、経常利益が25.0%、純利益が24.8%である。熊本地震の影響については、九州地区の当社グループにおける人的被害および建物・設備に関する大きな被害はなく、今後の対応については子会社ニシケン本社に九州地区災害対策本部を設置し、地方自治体および企業と締結している災害時対応契約に基づく機材等の供給のほか、各官庁、電力、通信、病院等公共機関等および取引先の要請に応じて機材等を供給するとしている。
16年10月期の配当予想は同10円増配の年間45円(第2四半期末15円、期末30円)としている。予想配当性向は15.5%となる。配当政策については今後も事業環境に関わらず一定の配当を安定して行い、さらに業績に応じてさらなる利益還元を加えていきたいとしている。そのうえで、財務体質の強化と将来の積極的事業展開に必要な内部留保の充実を図ることを基本方針としている。
■中期的に事業環境良好で収益拡大基調
国内では震災復興関連工事、激甚災害現場復旧工事、防災・減災・耐震化関連工事、老朽化インフラ補修・更新関連工事、都市再開発関連工事などが活発であり、リニア新幹線関連工事や20年東京夏季五輪関連工事も本格化する。中期的に良好な事業環境に変化はなく、建機レンタル需要は高水準で推移することが予想される。
また中期経営計画に基づいて、関東・関西の都市圏や未出店エリアへの出店を加速させ、強固な営業基盤を構築する方針だ。今期(16年10月期)は収益改善基調が期待され、中期的には海外展開強化も寄与して収益拡大基調だろう。
■株価は安値圏だが調整一巡して反発のタイミング
株価の動きを見ると、熊本地震の震災復旧・復興関連を材料視した4月の戻り高値圏3000円近辺から反落し、安値圏の2400円~2500円近辺で推移している。
5月23日の終値2483円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS289円48銭で算出)は8~9倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間45円で算出)は1.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1969円16銭で算出)は1.3倍近辺である。なお時価総額は約896億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線に続いて13週移動平均線も割り込んだが、大勢2400円~3000円近辺のボックスレンジ下限に到達した形だ。指標面に割高感はなく、16年10月期増配予想も評価材料となる。調整が一巡してレンジ下限から反発のタイミングだろう。