【アナリスト水田雅展の銘柄分析】エイジアは06年以来の高値水準、17年3月期も2桁増収増益で連続増配予想

 エイジア<2352>(東マ)はメール配信システムの大手でeコマース関連分野を強化している。16年3月期は計画超の2桁増収増益だった。17年3月期も2桁増収増益で連続増配予想である。16年6月には、新製品BtoC企業向けマーケティングオートメーションツール「WEBCAS Auto Relations」と、人工知能アルゴリズムを駆使した感性分析型テキストマイニングシステム「WEBCAS Sense Analyzer」の発売を予定している。株価は06年以来の高値水準である。中期成長力を評価して続伸展開だろう。

■メール配信システム「WEBCAS」のアプリケーション事業が主力

 01年に発売した自社開発のe-CRMシステム「WEBCAS」シリーズを提供するアプリケーション事業を主力として、システム受託開発やマーケティングコンサルティングなどのサービスソリューション事業も展開している。

■「WEBCAS」シリーズは導入企業数2500社突破

 自社開発のメール配信システム「WEBCAS e-mail」は顧客の嗜好、属性、購買履歴などに基づいたOne to Oneメールを、世界トップレベルの最高300万通/時で送信することが可能な超高速性が強みである。総合通販企業、メーカー、生命保険、情報サービス会社など多様な業界の企業や官公庁に導入され、国内メール配信パッケージ市場でのシェアは1位である。

 メールマーケティングシステム「WEBCAS」シリーズは、メール配信システム「WEBCAS e-mail」を中心として、アンケートシステム「WEBCAS formulator」やメール共有システム「WEBCAS mailcenter」などをラインナップに抱えるe-CRMアプリケーションシリーズである。15年5月にはe-CRMシステム「WEBCAS」シリーズ導入企業が2500社を突破した。

 16年1月にはアマゾンウェブサービス(AWS)のパートナープログラム「AWSパートナーネットワーク(APN)テクノロジーパートナー」に認定された。

■「WEBCAS」シリーズの商品ラインナップを強化

 中期成長戦略として「メールアプリケーションソフトのエイジア」から、販売促進・マーケティング支援分野に事業領域を拡大して「eコマースの売上UPソリューションを世界に提供するエイジア」への発展を目指し、クラウドサービス(ASP、SaaS)の強化、新製品・サービス開発の推進、サービスソリューション事業の拡大に取り組んでいる。

 14年6月データベース作成システム「WEBCAS DB creator」を開始し、ジェイモードエンタープライズと共同開発した電子レシートメール送信サービス「レシートメール」も開始した。15年5月にはSMS配信システム「WEBCAS SMS」を開始し、カンタンCRM「WEBCAS CRM」も開始した。

 15年7月には「WEBCAS」シリーズとWebコンテンツ制作をセットにしたWebキャンペーン運営支援サービス「WEBCASキャンペーン支援パック」を開始し、VOYAGE MARKETINGのデジタルギフトサービス「ギフビー」とも連携した。15年8月には、日本最大級のクラウドソーシングサービスを運営するランサーズのメール配信基盤として、メール配信システム「WEBCAS e-mail」クラウド版を提供した。ランサーズがサービスインフラとして利用するアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)上の環境と連携して本格稼働した。

 15年9月には、資本提携先であるシステムインテグレータの「SI Omni Channel Services(SOCS)」と、当社の「WEBCAS e-mail」を連携したオムニチャネルマーケティング・ソリューションを開始した。また15年11月には、e-CRMシステム「WEBCAS」シリーズの新ラインナップとして、LINEビジネスコネクトを活用したセグメント抽出型メッセージ配信システム「WEBCAS taLk」を発売した。

 16年4月には、全国の自治体が取り組む地方創生関連施策のスムーズな推進および検証をサポートするCRMシステム「WEBCAS地方創生応援パック」を発売した。またアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)対応の「WEBCAS e-mail for AWS」を発売した。

■新製品マーケティングオートメーションツールを6月発売予定

 新製品のBtoC企業向けマーケティングオートメーションツール「WEBCAS Auto Relations(ウェブキャス・オート・リレーションズ)」の開発を進めている。複雑化したデジタルマーケティングを簡単に実現して効果を高めるためのBtoC企業向けマーケティング・プラットフォームである。マーケティング活動を自動化するマーケティングオートメーション市場は、米国を中心に急速に拡大し、日本でも拡大が期待されている。

 さらに「WEBCAS Auto Relations」の今後の開発戦略については、16年にはSTEP2としてチャネルの複数化・多様化、定性分析による顧客セグメント化、17年にはSTEP3として人工知能「将来予測エンジン」の搭載または連携、IOT技術を活用したビッグデータ対応を計画している。なお「WEBCAS Auto Relations」の販売開始日について、当初は16年3月予定としていたが、より一層の品質向上を実現するため販売開始日を16年6月27日に延期している。

 16年4月にはCMS開発・販売のミックスネットワークと業務提携し、当社の「WEBCAS Auto Relations」とWeb運営基盤ツール「SITE PUBLIS(サイトパブリス)」を連携すると発表した。

■M&A・アライアンスも積極活用

 M&A・アライアンス戦略では、12年4月ECサイト構築・運営事業拡大に向けてシステムインテグレータ<3826>と資本・業務提携、12年12月メールマーケティングコンサルティング事業拡大に向けてメールマガジン制作・運用支援のグリーゼと資本・業務提携、13年10月メールマガジン戦略立案・企画・制作・分析サービスのFUCAを連結子会社化、14年1月Webサイトソーシャル化支援サービスのフィードフォース社と業務提携した。

 15年5月にはソフトフロントやホオバルなど異業種各社と協業して、女性の起業をサポートする「コロコニ・プロジェクト」を発足した。女性の起業家に対して技術サポートおよびサービスの提供を共同で行っていく。

 15年11月にはNPS(Net Promoter Score)を活用した調査・コンサルティングサービスを展開するwizpraと業務提携した。NPSは米国の売上上位企業500社(フォーチュン500)のうち35%の企業が採用する「売上に直結する指標」である。企業のNPS向上を支援するソリューションを共同で提供する。

 16年1月には、ダイレクトマーケティング専門エージェンシーであるフュージョンと業務提携した。当社開発のBtoC企業向けマーケティングオートメーションツール「WEBCAS Auto Relations」を効果的に活用するための包括サービスを共同で提供する。

 16年4月には、米国トレジャーデータ社の日本法人トレジャーデータが16年4月から提供開始した「TREASURE DMP(Private Data Management Platform)」と、当社のメール配信システム「WEBCAS e-mail」が連携した。

■デジタルポスト社と業務提携して新サービス

 15年10月には「WEBCAS」シリーズと連携したDM送信サービスを実現するため、Webサービス「Digital POST」を提供するデジタルポスト社と業務提携した。デジタルポスト社は日本郵便のハイブリッド郵便サービスを事業化するため11年に設立され、ネットやアプリから郵便やDMを作成・配送できるユニークなサービスを提供している。

 そして15年12月には「WEBCAS」シリーズの新サービスとして、インターネット上からDM(ダイレクトメール)やハガキ、手紙などの作成から郵送までを行えるDM配送サービス「WEBCAS DM」の発売を開始した。デジタルポスト社から技術供与を受けた。

■新サービス提供や海外展開を加速

 15年10月には人工知能型「顧客の声」分析エンジンを提供するメタデータと資本・業務提携した。人工知能技術や自然言語解析技術を活用したマーケティングソリューションの共同研究・開発を目的として、同社の第三者割当増資により440株(所有割合14.2%)を約39百万円で取得した。基礎技術となる研究を目的としたシンクタンク機関の発足も予定している。

 16年2月にはメタデータが、人工知能を活用した高速マッチングエンジン「xTech(エックステック)」を販売開始した。「xTech」は実用性に乏しい機械学習アルゴリズム(ディープラーニング)や、処理が遅延しがちな従来型マッチングエンジンの問題を解決する超高速マッチングエンジンで、2社(サービス業界、人材業界)への納入が決定し、さらにEC業界、Fintsch分野においても提供を予定している。

 5月16日には、e-CRMシステム「WEBCAS」シリーズの新サービスとして、人工知能アルゴリズムを駆使した感性分析型テキストマイニングシステム「WEBCAS Sense Analyzer」を6月1日から発売すると発表した。人工知能技術や自然言語解析技術に高度な知識・ノウハウを有する資本行提携先のメタデータから技術供与を受けた。

 海外は15年12月、マレーシアでマーケティング支援業務を行うMarvelous International社を子会社化(所有割合99.81%)した。購買力の高い富裕層や中間所得層が拡大する成長市場マレーシアにおける事業を強化する。なお本資本・業務提携に伴い、12年12月にマレーシア市場での当社サービスの販売を目的に業務提携したCRESCERE社とのマレーシアにおける契約を終了するが、タイにおける業務提携は継続する。

■下期の構成比が高い収益構造

 15年3月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)2億22百万円、第2四半期(7月~9月)2億65百万円、第3四半期(10月~12月)2億67百万円、第4四半期(1月~3月)2億77百万円で、営業利益は第1四半期14百万円、第2四半期51百万円、第3四半期54百万円、第4四半期59百万円だった。

 下期の構成比が高い収益構造である。15年3月期のROEは12.4%で14年3月期比4.7ポイント低下、自己資本比率は79.0%で同0.6ポイント上昇した。配当性向は26.6%だった。利益配分については、新規事業投資や研究開発投資等に必要な内部留保は従来どおり行いつつ、配当金による利益配分を行っていくことを基本方針としている。

■16年3月期は計画超の2桁増収増益で連続増配

 5月10日発表した前期(16年3月期)連結業績は、売上高が前々期(15年3月期)比11.1%増の11億45百万円、営業利益が同34.1%増の2億39百万円、経常利益が同34.2%増の2億42百万円、純利益が同47.9%増の1億61百万円だった。利益率の高いクラウドサービスが好調に推移し、計画を上回る2桁増収増益だった。配当は同3円増配の年間18円(期末一括)とした。配当性向は22.2%である。

 売上総利益は同16.0%増加し、売上総利益率は65.4%で同2.8ポイント上昇した。販管費は同9.1%増加したが、販管費比率は44.5%で同0.8ポイント低下した。ROEは15.6%で同3.2ポイント上昇した。自己資本比率は81.3%で同2.3ポイント上昇した。

 セグメント別に見ると、アプリケーション事業は売上高が同12.5%増の9億62百万円、売上総利益率が同3.0ポイント上昇の73.0%、営業利益(連結調整前)が同20.9%増の4億51百万円だった。合計8本の新サービスリリースなどで好調に推移した。重点分野として強化しているクラウドサービス(ASP・SaaS)の売上高は同19.0%増加の6億59百万円となった。

 サービスソリューション事業は売上高が同4.3%増の1億82百万円、売上総利益率が同1.3ポイント低下の25.2%、営業利益が同50.9%減の6百万円だった。13年10月子会社化したFUCAとの連携強化でコンサルティングサービスの売上高は同24.4%増の1億13百万円と伸長したが、受託開発案件への対応を最小限にしてエンジニアリングリソースを新製品マーケティングオートメーションツール「WEBCAS Auto Relations」の開発に注力したため、受託開発の売上高が減少した。

 なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)2億51百万円、第2四半期(7月~9月)2億90百万円、第3四半期(10月~12月)2億83百万円、第4四半期(1月~3月)3億21百万円、営業利益は第1四半期25百万円、第2四半期73百万円、第3四半期55百万円、第4四半期86百万円だった。

■17年3月期も2桁増収増益で連続増配予想

 今期(17年3月期)の連結業績予想(5月10日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比10.4%増の12億65百万円、営業利益が同10.7%増の2億65百万円、経常利益が同11.2%増の2億70百万円、そして純利益が同11.8%増の1億80百万円としている。なお配当予想は同2円増配の年間18円(期末一括)としている。予想配当性向は23.8%となる。

 BtoC企業向けマーケティングオートメーションツール「WEBCAS Auto Relations」や、人工知能アルゴリズムを駆使した感性分析型テキストマイニングシステム「WEBCAS Sense Analyzer」など、新製品投入も寄与してアプリケーション事業が好調に推移する。セグメント別売上高の計画は、アプリケーション事業が同13.5%増の10億93百万円(クラウドサービスは同26.3%増の8億32百万円)、サービスソリューション事業が同5.5%減の1億73百万円としている。

 なお投資・戦略的な出費計画として、クラウドサービス提供サーバー等のインフラ増強18百万円、ESOPによるモチベーション戦略21百万円、新卒採用を含めた人材投資23百万円、「WEBCAS e-mail for AWS」提供環境構築1百万円、マレーシア市場開発7百万円、合計約70百万円を計画している。積極的な先行投資を吸収して増収増益基調が期待される。

■株式付与ESOP信託を導入

 5月10日に、従業員を対象とした従業員インセンティブ・プラン「株式付与ESOP」の導入を発表した。本制度の導入に伴って、当社が保有する自己株式27万2500株(16年3月31日現在)のうち3万6700株(約98百万円)を、第三者割当によって処分(株式付与ESOP口)する。

■株主優待制度は3月末に実施

 株主優待制度については15年2月に新設を発表した。毎年3月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対してクオカード1000円分を贈呈する。15年3月期末から実施した。

■株価は06年以来の高値水準、中期成長力を評価

 株価の動きを見ると、強基調の展開で1月高値2700円を突破し、5月23日には年初来高値となる3250円まで上伸した。06年以来の高値水準である。好業績や中期成長力を評価する動きだろう。

 5月27日の終値2960円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS87円65銭で算出)は33~34倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は0.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS556円33銭で算出)は5.3倍近辺である。時価総額は約69億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって上昇トレンドの形である。中期成長力を評価して続伸展開だろう。

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