天下分け目の6月相場はウェルネットの分割権利取りの人気化次第で総還元性向100%銘柄がクローズアップ=浅妻昭治

 6月相場が、月替わり商いとなった前週末27日から実質的にスタートした。スタートから東証1部の売買代金は、1兆6581億円と7営業日連続で活況・閑散の境目の2兆円を下回って今年最低を記録した。模様眺め気分も極まっており、このままの推移はあり得ず、いずれ上か下かのいずれかに大きく放れる波乱含みを示唆しているようである。ことによると、日経平均株価が、上値を抑えていた5月のSQ(特別清算指数)値の1万6845円を上抜けて1万8000円、1万9000円と上値を追うか、それとも今年の年初来安値1万4865円を再び試しデフレ相場に舞い戻るか天下分け目となる6月相場となるかもしれない。その最初の分岐点は、今通常国会閉会日の6月1日に予定されている安倍晋三首相の記者会見となりそうだ。

 すでに安倍首相は、伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)後の記者会見で来年4月の消費税再増税の見直しに言及しており、これに加えて7月に衆参同時選挙があるのか、市場では10兆円規模にまで期待が膨れ上がっている財政出動があるのか、記者会見の焦点になる。安倍首相にいわせれば、世界経済は、リーマン・ショック並みの危機が再発してもおかしくないほど脆弱となっているそうだから、仮に同首相の危機意識を逆撫でするように、FRB(米連邦準備制度理事会)が、6月14日、15日に開催予定のFOMC(公開市場委員会)で政策金利の再引き上げを決定しようものなら、対抗して日銀の黒田総裁が、6月14~16日の金融政策決定会合で追加金融緩和策を発動したとしても追いつかないほどの一大事が出来しないか懸念される。

 前週末のマーケットは、幸いなことに安倍首相ほどの危機意識は見受けられなかった。しかし、東証1部の売買代金は、今年最低と気迷い感が強いだけに、安倍首相が、記者会見であまりにも危機意識を煽るようなら、消費者の生活防衛意識や節約志向に輪をかけ、デフレマインドが増幅することも懸念される。安倍首相を「狼少年」に例えては申訳ないが、「狼がきた」などと強調し過ぎて、本当に「狼」を呼び寄せ景気や株価をオーバー・キルしないよう政治的配慮を十分にお願いしたい。

 個別銘柄でも6月相場で天下分け目の正念場を迎えそうな銘柄がある。ウェルネット<2428>(東1)である。同社株は、今年6月30日を基準日に株式分割(1対2)を予定している。しかも、同社は、総還元性向を100%とする株主への利益配分の基本方針に従って、昨年10月に実施した自己株式立会外買付取引に続いて、今期配当を66円(前期実績50円)に大幅増配する。今6月期業績も、ネット決済サービスの大手としてバス会社、航空会社向けが好調に推移し、営業利益、経常利益は連続の過去最高更新予想にある。

 ただ株式分割を発表した今年5月19日以降に、株価が、諸手を挙げて株式分割の権利取りに沸いたかといえばやや限定的であったことは否めない。これは、同社の総還元性向100%とする基本方針が、2013年8月に公表された中期経営計画に基づき、今6月期に最終年度となり、来期以降の動向については、今年8月の決算発表を待たなければならない側面があったことが影響したようだ。

 しかしである。同社の100%の総還元性向のうち、配当性向は50%としており、実は前2015年6月期配当は、決算発表時に純利益が上ぶれて着地した分だけ増配し、期初予想の48円を50円に引き上げた。今期もこの再現の可能性があるのである。というのも、今年4月28日に発表した今2016年6月期第3四半期(3Q)業績は、2ケタの増収増益と続伸し、利益は、期初予想の6月通期業績に対して84~91%と目安の75%を上回る高進捗率となって、上ぶれ着地が有力であるからだ。6月27日の権利付き最終日に向け、株式分割と期末一本の配当の増配の権利取りで、株価が再騰し今年4月につけた年初来高値4500円を上抜く展開も想定範囲内となる。

 「類は友を呼ぶ」である。ウェルネットが、天下分け目の6月相場をスムーズにポジティブに通過するようなら、続いてアプローチしたいのが、同社と同じ総還元性向100%銘柄である。6月に全般相場の波乱懸念が残るなか、株式価値そのものに注目し、独自の株価推移を演じることを期待したい。(本紙編集長・浅妻昭治)

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