【アナリスト水田雅展の銘柄分析】セーラー万年筆は16年12月期黒字化予想、18年12月期純利益1億30百万円目標

 セーラー万年筆<7992>(東2)は万年筆の老舗で、ロボット機器事業も展開している。得意分野や競争力のある分野に経営資源を集中することで収益改善を進め、16年12月期は黒字化予想である。そして5月に策定した新中期経営計画では18年12月期の純利益1億30百万円を目標としている。株価は安値圏でモミ合う展開だが、下値固め完了感を強めている。

■文具事業やロボット機器事業を展開

 文具事業(万年筆、ボールペン、電子文具、景品払出機、ガラスCD、窓ガラス用断熱塗料など)、およびロボット機器事業(プラスチック射出成形品自動取出装置・自動組立装置など)を展開し、15年12月期の売上構成比は文具事業68.3%、ロボット機器事業が31.7%だった。

 連結子会社だった写楽精密機械(上海)については清算手続きに入り、既に事業を取りやめている。中国市場における当社ロボット機器の販売・保守サービスは現地代理店に委託して代行・継続する。

■文具事業はブランド力の高さが強み

 文具事業はブランド力の高い万年筆を主力として、中期成長に向けて電子文具への事業展開も加速している。また熱を逃がす“冷めやすい塗料”の屋根・壁用太陽光反射・遮熱塗料「アドグリーンコート」の拡販も強化している。

 15年6月には、15年4月発売の新しい超微粒子顔料ボトルインク「STORiA(ストーリア)」が「第24回日本文具大賞2015」デザイン部門・優秀賞に選出された。

■ロボット機器事業はプラスチック射出成形用自動取出ロボットに強み

 ロボット機器事業は1969年に開発に着手した歴史を持ち、09年にはプラスチック射出成形品用自動取出ロボットで世界初の無線ハンディコントローラ搭載RZ-Σシリーズを開発した。
 
 15年7月には高速・高精度取出機RZ-ΣⅢシリーズが、日刊工業新聞社主催第45回機械工業デザイン賞において日本ロボット工業会賞を受賞した。

■15年12月期は赤字縮小

 前期(15年12月期)9期連続の最終赤字で継続企業の前提に疑義の注記が付されている。ただし前々期(14年12月期)に比べて赤字が縮小した。売上総利益率は27.2%で同1.0ポイント上昇、販管費比率は28.0%で同0.3ポイント上昇した。

 文具事業は売上高が同1.1%減の41億75百万円、営業利益が87百万円の赤字(前々期は30百万円の赤字)だった。万年筆や複合筆記具の中高級品は順調だったが、法人ギフト市場など低価格品の回復が遅れた。ロボット機器事業は売上高が同0.4%減の19億41百万円、営業利益が40百万円の黒字(前々期は60百万円の赤字)だった。製品価格低下や材料費上昇で利益率が低下したが、中国子会社の撤退による売上原価率改善などで黒字化した。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)16億07百万円、第2四半期(4月~6月)14億78百万円、第3四半期(7月~9月)14億07百万円、第4四半期(10月~12月)16億25百万円、営業利益は第1四半期29百万円、第2四半期12百万円、第3四半期15百万円の赤字、第4四半期73百万円の赤字だった。

■16年12月期第1四半期は減収減益

 今期(16年12月期)第1四半期(1月~3月)の連結業績は、売上高が前年同期比5.6%減の15億17百万円、営業利益が同7.6%減の27百万円、経常利益が同14.9%減の33百万円、純利益が同75.2%減の22百万円だった。ロボット機器事業における売上計上時期のズレなどで減収減益だったが、文具事業は営業黒字化した。

 売上総利益は同0.3%減少したが、売上総利益率は29.1%で同1.5ポイント上昇した。販管費は同0.2%増加し、販管費比率は27.3%で同1.6ポイント上昇した。営業外では為替差損益が悪化(前期は差益3百万円計上、今期は差損6百万円計上)した。営業外収益では持分法投資利益が減少(前期28百万円計上、今期23百万円計上)した。特別利益では前期計上の受取保険金15百万円および固定資産売却益40百万円が一巡した。

 セグメント別に見ると、文具事業は売上高が同0.9%減の10億96百万円、営業利益が8百万円(前年同期は27百万円の赤字)だった。万年筆と万年筆インクが好調だった一方で、輸入筆記具を中心とした仕入商品が減収となり、結果的に利益率が改善した。ロボット機器事業は売上高が同16.1%減の4億20百万円、営業利益が同66.7%減の19百万円だった。海外子会社の減収、および売上計上時期のズレなどで減収減益だった。

■16年12月期は黒字化予想

 今期(16年12月期)通期の連結業績予想は前回予想(2月15日公表)を据え置き、売上高が前期(15年12月期)比1.0%増の61億80百万円、営業利益が80百万円の黒字(前期は47百万円の赤字)、経常利益が60百万円の黒字(同82百万円の赤字)、純利益は20百万円の黒字(同1億51百万円の赤字)としている。配当は無配を継続する。

 得意分野や競争力を持った分野への経営資源の集中、原価低減プロジェクトへの取り組みなどで収益向上を目指すとしている。文具事業では、強みを持つ中高級クラスの万年筆・複合筆記具を中心とした製品群に開発および販売を集中する。また有望な販売ルートへの取り組みを集中的に行う。ロボット機器事業では、好調な米国、中国、東南アジア市場への納入ルートを足掛かりに積極展開して海外売上の15%アップを目指す。主力の射出成形取出機については汎用機種である「RZ-A」シリーズのコストダウンによって販売増を図る。

■新中期経営計画で18年12月期純利益1億30百万円目標

 5月16日に新中期経営計画を発表した。15年12月期が9期連続の最終赤字となり、15年末の代表取締役の異動によって新たな執行部が発足したため、14年に策定した3年間の中期経営計画を打ち切り、新たに16年12月期~18年12月期の3年間の新中期経営計画を策定した。

 新中期経営計画では、開発型メーカーとして、その製品において「最高の品質」を追求することにより、「顧客満足度の最大化」を図るべく研鑽を重ね、その継続的な努力により「SAILOR」ブランドの価値を向上していくことを企業方針としている。

 そして主力の文具事業とロボット機器事業に経営資源を集中し、自社製品の販売比率を上昇させることで一層の利益拡大を目指す。基本戦略としては、得意分野および競争力のある分野に経営資源を集中する、研究開発を強化して独創性に富む製品を提供する、組織をスリム化して変化する市場に対し迅速な経営判断を行う、積極的な海外戦略を実施して海外売上を拡大する、国内市場におけるシェアを拡大する、業務内容を見直して一層の経費削減を推進する、既存資産の見直しを実施して資産効率の向上を図るとしている。

 経営数値目標としては売上高経常利益率2.5%以上、有利子負債10億円以下を掲げた。そして17年12月期の業績計画は売上高64億円、営業利益1億40百万円、経常利益1億20百万円、純利益80百万円、18年12月期の業績計画は売上高67億円、営業利益1億90百万円、経常利益1億70百万円、純利益1億30百万円とした。

■株価は下値固め完了感

 株価の動きを見ると、安値圏31円~32円近辺でモミ合う展開だ。ただし2月安値29円まで下押すことなく、下値固め完了感を強めている。

 6月3日の終値31円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS16銭で算出)は194倍近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS14円61銭で算出)は2.1倍近辺である。時価総額は約39億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が横向きに転じた。下値固めが完了したようだ。きっかけ次第で反発展開が期待される。

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