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- 【アナリスト水田雅展の銘柄分析】クリナップは17年3月期大幅増益予想、0.6倍近辺の低PBRに割安感
【アナリスト水田雅展の銘柄分析】クリナップは17年3月期大幅増益予想、0.6倍近辺の低PBRに割安感
- 2016/6/6 07:35
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
クリナップ<7955>(東1)はシステムキッチンの大手でシステムバスルームなども展開している。17年3月期は大幅増益予想である。低金利や住宅取得優遇策なども追い風となって収益改善基調が期待される。株価は5月の年初来高値圏から反落して戻り一服の形だが、下値は切り上げている。0.6倍近辺の低PBRに割安感があり、調整が一巡して戻りを試す展開が期待される。
■システムキッチンの大手、システムバスルームも展開
厨房部門(システムキッチン)を主力として、浴槽・洗面部門(システムバスルーム・洗面化粧台)も展開している。16年3月期の部門別売上構成比は、厨房部門78.4%、浴槽・洗面部門16.1%、その他5.5%、販売ルート別売上構成比(単体ベース)は、一般ルート(工務店・リフォーム)78.9%、ハウスメーカー16.0%、直需(マンション)5.1%だった。
■中期経営計画で「ザ・キッチンカンパニー」目指す
中期経営計画では「ザ・キッチンカンパニー」の確立を目指している。重点施策として、システムキッチン「S.S.」「クリンレディ」「ラクエラ」を軸とした商品ラインナップの充実、中高級システムキッチンの販売強化と市場シェア上昇、リフォーム市場での競争優位となる商品の開発、全国のショールームを核とした販売戦略の推進、会員登録制組織「水まわり工房」加盟店との連携強化とリフォーム需要の取り込み、サプライチェーン全体での原価低減活動強化、設備投資およびコストの最適化、CPS活動の全社展開による業務効率化、20年サポートを支える業務システムの整備、そして海外事業の強化などを推進している。
16年1月には、新機能「流レールシンク」を搭載して15年5月発売したシステムキッチン「クリンレディ」が、2015年日経優秀製品・サービス賞において優秀賞日経産業新聞賞を受賞したと発表している。
全国のショールームを顧客接点の要、地域に根差したブランド戦略の重要拠点、そしてリフォーム需要取り込みの最重要拠点と位置付け、集客を強化するためリニューアルと生活提案型ショールームへの転換を進めている。シュールームのリニューアル数は12年3月期4ヶ所、13年3月期14ヶ所、14年3月期21ヶ所、15年3月期9ヶ所、16年3月期13ヶ所で、5期合計61ヶ所のリニューアルを実行した。
また会員登録制組織「水まわり工房」正会員数は、16年3月期末に4259社(15年3月期末比309社増加)となった。
生産面では16年2月、クリナップ岡山工業津山工場のプレス棟建築工事ならびにプレスライン設備工事が完了し、システムキッチンのステンレス製カウンタートップおよびシンクのプレス成型加工の生産体制が整った。16年7月本格稼働予定である。福島県いわき市の東日本の拠点と合わせて生産拠点の二極化体制が整い、西日本における供給体制を強化する。
海外展開は中国、台湾、シンガポール、マレーシアなどに展開している。中国にはハウスメーカーと共同進出して、瀋陽、蘇州、無錫、太倉の4地区にキッチン等を供給している。
■新設住宅着工やリフォーム需要の影響を受けやすい収益構造
なお15年3月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)319億24百万円、第2四半期(7月~9月)284億53百万円、第3四半期(10月~12月)288億39百万円、第4四半期(1月~3月)270億23百万円、営業利益は第1四半期19億68百万円、第2四半期5億49百万円、第3四半期11億13百万円、第4四半期6億02百万円の赤字だった。
新設住宅着工件数やリフォーム需要の影響を受けやすい収益構造で、15年3月期は消費増税の影響長期化や原材料費の上昇などで営業損益が悪化した。また15年3月期のROEは14年3月期比7.0ポイント低下して1.5%、自己資本比率は同2.5ポイント上昇して65.7%、配当性向は96.0%だった。利益配分については、長期的な安定と成長を実現することにより最大の利益をあげ、安定的な配当を長期的に継続していくことを基本方針としている。
■16年3月期は大幅減益
前期(16年3月期)連結業績は、売上高が前々期(15年3月期)比3.0%減の1144億45百万円、営業利益が同62.7%減の11億29百万円、経常利益が同67.9%減の8億67百万円、純利益が同61.5%減の3億40百万円だった。
住宅取得優遇策などで新設住宅着工戸数や住宅設備機器需要は一部に持ち直しの動きが見られたものの、リフォーム需要も含めて全体としては本格的に活性化するに至らず、製品生産台数が想定を下回ったことに加えて、需要期に向けたショールームのリニューアル費用やCMなどの広告宣伝費がかさみ、原材料価格の上昇なども影響して計画を下回り大幅減益だった。ショールームは15年10月に首都圏エリア旗艦ショールームとして「クリナップ・キッチンタウン・東京」をオープンしたほか、6ヶ所を新築移転、6ヶ所を全面リニューアルした。
売上総利益は同4.1%減少し、売上総利益率は32.4%で同0.9ポイント低下した。販管費は同0.9%増加し、販管費比率は31.5%で同0.8ポイント上昇した。なお売上総利益増減分析は、減収で約5.9億円、売上総利益率低下で約10.0億円としている。特別損失では前々期計上した厚生年金基金解散損失引当金繰入額9億15百万円が一巡した。ROEは0.6%で同0.9ポイント低下、自己資本比率は65.0%で同0.7ポイント低下した。配当は前々期と同額の年間20円(第2四半期末10円、期末10円)で配当性向は244.2%だった。
部門別売上高は、厨房部門が同1.6%減の897億55百万円、浴槽・洗面部門が同2.6%減の184億66百万円、その他が同2.2%増の62億23百万円だった。厨房部門のシステムキッチン「S.S.」は数量・金額とも減少、「クリンレディ」は数量・金額とも増加、「ラクエラ」は数量・金額とも減少した。浴槽・洗面部門のシステムバスルーム「アクリアバス」は数量・金額とも減少、「ユアシス」は数量・金額とも減少、洗面化粧台は数量・金額とも減少した。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)271億23百万円、第2四半期(7月~9月)292億70百万円、第3四半期(10月~12月)301億81百万円、第4四半期(1月~3月)278億71百万円、営業利益は第1四半期32百万円の赤字、第2四半期4億30百万円、第3四半期13億59百万円、第4四半期6億28百万円だった。
■17年3月期は大幅増益予想、収益改善基調期待
今期(17年3月期)の連結業績予想(5月10日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比4.0%増の1190億円、営業利益が同2.2倍の25億円、経常利益が同2.5倍の22億円、純利益が同2.5倍の12億円としている。配当予想は前期と同額の年間20円(第2四半期末10円、期末10円)で予想配当性向は69.3%となる。
部門別売上高の計画は、厨房部門が同3.5%増の929億09百万円、浴槽・洗面部門が同4.7%増の193億29百万円、その他が同8.7%増の67億62百万円としている。
会員登録制組織「水まわり工房」加盟店や流通パートナーと連携し、流レールシンクを標準装備したシステムキッチン「クリンレディ」や美コートワークトップを標準装備したシステムキッチン「S.S.」などを中心に拡販を強化する。生産設備の整備、ショールームの新設・移転・改装、情報基盤整備などへの投資を継続しつつ、生産面での原価低減や営業業務の効率化などで大幅増益予想としている。低金利や住宅取得優遇策なども追い風となって収益改善基調が期待される。
■株価は調整一巡して戻り試す
株価の動きを見ると、17年3月期大幅増益予想を好感して5月11日に年初来高値となる815円まで急伸する場面があった。その後は年初来高値圏から一旦反落して戻り一服の形だが、下値は切り上げている。
6月3日の終値763円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS28円85銭で算出)は26~27倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は2.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1340円97銭で算出)は0.6倍近辺である。時価総額は約320億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線近辺から切り返してサポートラインを確認した形だ。0.6倍近辺の低PBRに割安感があり、調整が一巡して戻りを試す展開だろう。