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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アドアーズは17年3月期大幅営業増益・最終黒字化予想で収益改善期待
- 2016/6/6 07:32
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アドアーズ<4712>(JQS)は、アミューズメント施設運営の総合エンターテインメント事業を主力として、不動産事業なども展開している。16年3月期は減損損失計上で最終赤字だったが、17年3月期は介護事業休止も寄与して大幅営業・経常増益、最終黒字化予想である。オリーブスパと業務提携した店舗サブリース事業の寄与も期待される。株価は株主優待制度導入で急伸した3月高値から反落してモミ合う展開だが、調整が一巡して戻りを試す展開だろう。
■Jトラストグループ
13年2月に、親会社Jトラスト<8508>グループで戸建て住宅分譲や商業建築など展開するキーノート、アミューズメント施設向け景品製作・販売など展開するブレイクを子会社化した。Jトラストグループ内で、総合エンターテインメント事業、不動産事業、商業施設建築事業の中核を担う位置付けである。
アミューズメント施設を運営する総合エンターテインメント事業では、利益率の高いメダルゲームジャンルを注力分野として収益改善を目指し、新業態開発やゲーム景品製造も強化している。不動産事業では一戸建分譲事業のエリア拡大や不動産アセット部門の強化を推進している。
■総合エンターテインメント事業が主力
総合エンターテインメント事業のアミューズメント施設運営部門の16年3月期末店舗数(ブレイク1店舗含まずアドアーズ店舗のみ)は50店舗(うちコラボ店7店舗)で、既存店売上は96.6%だった。ゲームジャンル別売上構成比はメダルゲーム35.5%、クレーンゲーム28.6%、プリクラ2.4%、アーケードゲーム20.1%、その他(コンテンツ関連含む)13.4%だった。不採算店閉鎖による店舗数減少で減収傾向だが、コラボ店舗増設などで収益力向上を推進している。なお16年4月に2店舗を閉店して16年4月末時点の総店舗数は49店舗となった。
14年9月には韓国JBアミューズメント(JBA)の第三者割当増資を引き受けて第2位株主となった。韓国・済州新羅ホテルでカジノ事業を行うマジェスターを含むJBAグループと協力関係を構築し、アミューズメント事業におけるシナジー創出や事業拡大を目指す。
15年4月には、フォーサイドエンタテイメントが運営するスマートフォン向けソーシャルコミュニケーションアプリ「Eyeland」による「地域コミュニケーション起点の店舗送客O2Oマーケティング」サービスの提供を開始した。当社が運営する店舗情報を「Eyeland」内の地図上に表示させ、当社のリアル店舗への送客を目指す。
16年2月には、ブレインプレスが運営する音声通訳代行サービス「マルチリンガルコンタクトセンターサービス」の運用、ネットスターズが運営する中国人観光客向け決済システム「WeChat Payment」および「WeChat」ユーザー向けキャンペーンツール「WeChat シェイク」の運用を開始した。既存店舗のインバウンド集客施策の一環として活用する。
16年5月にはアジア地域への事業拡大を目的として、子会社ブレイクが香港特別行政区に子会社(当社の孫会社)ブレイク・アジア(中国名:布雷克有限公司)を設立(16年7月予定)すると発表した。アジア地域における日本キャラクターの人気が根強いため、日本ライセンス商品の販売を拡大し、総合エンターテインメント事業の業容拡大を目指すとしている。
■介護事業は休止
14年11月に通所介護事業の日本介護福祉グループを連結子会社化して介護事業に参入したが、15年8月に同社株式の譲渡と介護事業の休止を発表した。
競争激化などで通所介護事業の低迷が続き、デューディリジェンスで想定していた金額を超えて大幅な債務超過となった。このため同社に対して追加出資を行って債務超過を解消したが、業績改善の兆しが見込めないため、同社の創業者である藤田英明氏に全株式を譲渡して介護事業を休止することとした。
15年12月には、日本介護福祉グループの創業者であり同社の代表取締役である藤田英明氏に対し、損害補償請求訴訟を東京地方裁判所に提起した。14年10月30日付株式譲渡契約書における表明保証違反に基づく損害補償請求で、訴額は3億1395万3066円としている。
■オリーブスパと業務提携
16年3月には、首都圏中心に全国34拠点(16年2月末現在、海外1店舗含む)においてリラクゼーションサロン「OLIVE SPA」等を運営するオリーブスパ(オリスパ社)と、オリスパ社の店舗開発、出店時の内外装工事、店舗サブリース、オリスパ店舗チケットを活用した販促活動に関して業務提携した。
店舗リース事業による収益強化、子会社キーノートの商業施設建築事業の拡大、株主優待制度導入などオリスパ社のブランド力を活かした販促活動が可能になるとしている。
■15年3月期は介護事業連結で営業損益悪化
15年3月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)56億85百万円、第2四半期(7月~9月)60億97百万円、第3四半期(10月~12月)61億04百万円、第4四半期(1月~3月)55億13百万円、営業利益は第1四半期3億60百万円、第2四半期3億52百万円、第3四半期1億10百万円、第4四半期1億58百万円の赤字だった。
第4四半期の営業損益悪化は介護事業の連結化も影響した。また15年3月期のROEは4.1%で14年3月期比4.8ポイント低下、自己資本比率は47.8%で同5.4ポイント低下した。配当性向は60.4%だった。利益還元については、将来必要となる設備投資や投資資金とのバランスを総合的に勘案したうえで、利益還元の充実を図っていくことを基本方針としている。
■16年3月期は減収減益、減損損失計上で最終赤字
前期(16年3月期)連結業績は、売上高が前々期(15年3月期)比4.3%減の223億96百万円、営業利益が同12.9%減の5億78百万円、経常利益が同8.0%減の5億07百万円、そして純利益が12億53百万円の赤字(前々期は4億61百万円の黒字)だった。売上高は一戸建分譲部門が好調に推移して計画を上回ったが、各利益は計画を下回った。
総合エンターテインメント事業のアミューズメント施設運営部門における店舗数の減少および既存店の減収、商業施設建築事業における大型施工案件の受注時期ズレ込み、15年8月の介護事業休止などで減収・営業減益・経常減益となり、介護事業休止に伴う減損損失計上、アミューズメント施設運営部門における店舗関連資産の減損損失計上、介護事業休止に伴う繰延税金資産取崩、その他法人税等調整額の計上で最終赤字だった。
売上総利益は同5.4%減少し、売上総利益率は14.2%で同0.2ポイント低下した。販管費は同3.5%減少したが、販管費比率は11.7%で同0.1ポイント上昇した。特別利益では固定資産売却益2億13百万円および関係会社株式売却益1億54百万円を計上したが、特別損失では減損損失が増加(前々期77百万円計上、前期16億85百万円計上)し、投資有価証券評価損51百万円も計上した。ROEはマイナス11.9%で同16.0ポイント低下、自己資本比率は46.1%で同1.6ポイント低下した。配当は同1円減配の年間1円(期末一括)とした。
セグメント別に見ると、総合エンターテインメント事業は売上高が同2.3%減の147億89百万円、営業利益(連結調整前)が同19.7%減の6億93百万円だった。アミューズメント施設運営部門は、コラボ店舗3店舗(うち1店舗は期間限定)を新規開設したが、ゲームセンター市場における個人消費意欲の減退、不採算店舗閉店による店舗数減少、主力のメダルゲームジャンルや収益を牽引してきたプライズジャンルの人気商品不足による落ち込み、アミューズメント景品・製造販売部門における円安による製造原価上昇や利益率の高いオリジナル商品の苦戦などで減収減益だった。なおアミューズメント施設運営部門の16年3月期末店舗数(ブレイク1店舗含まずアドアーズ店舗のみ)は50店舗(うちコラボ店7店舗)で、既存店売上は96.6%だった。
不動産事業は、売上高が同6.1%増の61億92百万円となり、営業利益が同19.1%増の4億93百万円だった。不動産アセット部門は前期に都心エリアの一部保有不動産を売却した反動で同66.1%減収だったが、主力の一戸建分譲部門は横浜支店開設によって取扱件数が順調に増加し、得意としている東京の城南エリアや大阪の北摂エリアにおいても販売物件の引き渡しが安定的に推移して同48.1%増収だった。一戸建分譲部門の引渡件数は同26件増加の111件だった。
商業施設建築事業は想定していた大型施工案件の受注時期がズレ込み、売上高が同56.0%減の7億69百万円、営業利益が同93.2%減の8百万円だった。なお介護事業(15年3月期第4四半期から連結、15年8月事業休止)は売上高が6億08百万円、営業利益が1億10百万円の赤字、その他の売上高が36百万円、営業利益が10百万円の赤字だった。
四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)54億74百万円、第2四半期(7月~9月)56億84百万円、第3四半期(10月~12月)54億08百万円、第4四半期(1月~3月)58億30百万円、営業利益は第1四半期11百万円、第2四半期3億37百万円、第3四半期1億36百万円、第4四半期94百万円だった。
■17年3月期は大幅増益予想で収益改善期待
今期(17年3月期)の連結業績予想(5月10日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比1.8%減の220億円、営業利益が同38.2%増の8億円、経常利益が同37.9%増の7億円、純利益が3億円(前期は12億53百万円の赤字)としている。配当予想は同1円増配の年間2円(期末一括)で、予想配当性向は92.7%となる。
介護事業休止などの影響で減収だが、介護事業休止に伴って関連費用も減少するため、大幅営業増益・経常増益予想である。純利益は減損損失が一巡して黒字化予想である。
セグメント別計画は、総合エンターテインメント事業の売上高が同1.5%減の145億70百万円、営業利益(連結調整前)が同19.8%増の8億30百万円、不動産事業と商業施設建築事業の合計の売上高が同4.9%増の73億円、営業利益が同15.8%増の5億80百万円、その他(店舗サブリース)の売上高が1億30百万円、営業利益が20百万円としている。
総合エンターテインメント事業では、50周年記念イベントによる既存業態の認知度向上、自社開発メダルゲーム機の導入、クレーンゲームジャンルにおけるマシン増台や景品提供エリアの拡大、コラボ店舗のドミナント出店、香港進出による販路拡大などに取り組む。不動産事業および商業施設建築事業では、一戸建分譲部門の事業規模拡大、商業施設建築の大型案件受注に取り組む。なお一戸建分譲部門の引渡件数は同9件増加の120件の計画としている。
なお新規事業として店舗サブリース事業を開始する。業務提携したオリーブスパの店舗開発・出店準備に対して、当社の店舗開発ノウハウや情報網を活用し、内外装工事を含めた準備に加え、物件を店舗サブリースでオリーブスパに提供する。
■アミューズメント施設4月既存店売上は2ヶ月連続のプラス
アミューズメント施設の月次既存店売上高(前年比、速報値)を見ると、16年4月は104.8%で、2ヶ月連続の前年比プラスだった。50周年プロジェクトイベント、人気アニメキャラクター景品の多数入荷、コラボ企画などの施策が奏功した。
■中期経営計画で18年3月期ROE8%目標
15年5月策定の中期経営計画では、目標数値として最終年度18年3月期売上高330億円(アミューズメント事業148億円、不動産事業・商業建築事業80億円、介護事業102億円)、営業利益17億円、経常利益14億円、純利益9億50百万円、ROE8%を掲げている。さらに20年3月期には売上高410億円、営業利益29億円、経常利益23億円、純利益14億円を目指すとしている。
中期戦略として、総合エンターテインメント事業では自社コンテンツ保有、VRやARなど新たな遊びの活用、20年に向けたインバウンド施策強化、不動産事業・商業建築事業では一戸建分譲部門における自社施工比率の向上と「KEY STYKE」ブランドの確立、新規事業の店舗サブリース事業ではオリーブスパ以外の新規事業会社を対象とする展開も検討する。グループ連携強化も奏功して中期的に収益拡大が期待される。
■株主優待制度を導入、毎年3月末に実施
3月8日に株主優待制度の導入を発表した。毎年3月末日現在で、株式2000株(2単元)以上保有株主を対象として、16年3月期末から実施した。
優待内容は保有株数に応じて、業務提携先のオリーブスパが首都圏中心に運営するリラクゼーションサロン「OLIVE SPA」および「PANTHEON」の全店舗(16年2月末現在24店舗)で利用できるアロマオイルトリートメント120分ボディコース(2万円相当分)のサロンチケットを贈呈する。
■株価は調整一巡して戻り試す
なお2月29日に主要株主の異動、ならびにその他の関係会社の異動を発表している。2月25日付大量保有報告書で確認した。408万2500株(議決権数に対する割合29.38%)を所有して第2位株主だったGF投資ファンド投資事業有限責任組合が主要株主でなくなり、ユナイテッドエージェンシーが408万2500株(議決権の数に対する割合29.38%)を所有して第2位株主となった。
また5月25日に「資本準備金の額の減少ならびに剰余金処分および期末配当に関するお知らせ」をリリースした。繰越利益剰余金の欠損額を補填し、財務内容の健全化と早期の配当の回復を目的とするもので、資本準備金の額を減少してその他資本剰余金に振り替える。さらに繰越利益剰余金に振り替えて欠損補填に充当する。純資産の部の勘定科目振替のため純資産に変動はない。効力発生日は6月29日予定である。
株価の動きを見ると、株主優待制度導入で急伸した3月の年初来高値148円から反落し、100円~110円近辺でモミ合う展開だ。ただし急伸前の安値圏70円~80円近辺まで下押すことなく堅調に推移している。そしてモミ合い煮詰まり感も強めている。
6月3日の終値106円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS2円20銭で算出)は48倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間2円で算出)は1.9%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS69円08銭で算出)は1.5倍近辺である。時価総額は約148億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって下値を切り上げている。調整が一巡して戻りを試す展開だろう。